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王都にある、冒険者ギルド。夕陽に変わりつつある陽射しが差し込む広間で、マスターは苦笑する。
「じゃあ、レキ少年のパーティ加入……いや、再加入の件はしばらく無しなのね?」
とまとは「しばらくっつーか、二度と組まないし」なんて言っている。
「俺も、とまとと組む気は無いです」レキは不敵に笑う。「むしろ、とまとより先に一番すごいダンジョンを攻略してやりますよ」
「は?」とまとがにんまりとレキを眺める。
「うーん、それはちょっと無理ちゃう?」うずらも苦笑した。
「何その微妙な反応」
「あー、少年にはまだ話さなかったっけ? 冒険者には金銀銅木ってランクがあってね。少年はまだ『木級』だから、大規模なダンジョンには入れないわ?」
「ええー……」レキはがっくり肩を落とす。
「常識っすよ」ナビが鼻で笑うが、「常識くらい先に教えてくれよ」とレキに言い返された。
「ちなみに私達は『銅級・二つ星』!」とまとが威張る。
「『三つ星』になったら、この辺りで一番大きなゴブリン窟に入れるんよ」狐耳を動かしながら笑ううずら。
「だからクソ野郎は諦めて、私達が活躍するのを眺めてなって!」
「……いや、逆に燃えてきたわ」
「ふーん?」とまとの目が光る。
「とまとと俺、どっちが先に大ダンジョンを攻略するか勝負だ! 負けたほうが、自分が悪かったって土下座で謝ること! いいな!」
「上等! クソ野郎を三日で土下座させてやるよ!」
この瞬間。レキととまとの、プライドを賭けた勝負が始まった!
「あの」成り行きを見守っていたナビが、とまと達に話しかける。
「どっちが勝っても女神様的にはオッケーだと思うんで、ナビも女子側に行っていいっすか?」
「お前ーっ!」レキが叫ぶ。「すみませんレキ様、これも女神様のためっす」ナビが申し訳なさそうな言葉を、ニヤけながら言う。
一瞬顔を見合わせる、とまととうずら。
「私達のところには、もう別の天使が来てるけど?」「えっ」
とまとの言葉に、ナビが固まる。
「王都に来たその日やったなぁ。ナビちゃんは、女神様から聞いてないん?」
「……まだ一回も連絡が来てないっす」
「ついでに言うと、そもそもウンコ宣言したのはナビじゃん? 私的には、レキの共犯レベルだから置いて行ったんだけど」
「そ、そんな……」
ショックを受けるナビ。
(自分も置き去りにされたと気付いてなかったのか……)レキは思ったが、口に出さないだけの情けはあった。
「……レキ様! あいつらをボッコボコに負かしてやりましょう!」
「え……ああ、そうだな」
やる気になったナビと共に、レキは決意を新たにする。
(でもナビって、女神に言われて来た割にはポンコツなんだよな)
そう思ったが、やっぱりレキは口に出さないでいた。