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他所は他所、うちはうち①

基地にけたたましくサイレンが鳴り響く。

急いでオペレーションルームへ向かうと、休日組以外のチームが全員揃っていた。


「集合したな」


珍しく上司が険しい顔をしている。


第2区(セカンドエリア)でホオジロザメが出現した。しかも、超特大のやつだ」


上司の発言に、騒めきが起こる。

ホオジロザメといえば、非常に厄介なやつで、過去には大きな被害をもたらしたこともある。

捕獲に失敗し、気が荒くなったホオジロザメが、旅客機に体当たりして墜落したという、宇宙魚介類の被害の中で最大の死傷者を出した。

その記憶があるゆえに、ホオジロザメは捕獲よりも確実に殺すことが優先されている。


「第2区だけでは対処ができないということで、我々第1区(ファーストエリア)第3区(サードエリア)で応援を出す」


応援ということは、今担当している二宮隊、江橋隊ではなく、待機中の工藤隊が行くことになる。


「工藤、行ってくれるな」


「ラジャー!」


上司の命令により、工藤隊はまず第2区の基地に向かうことになった。

捕獲用戦闘機に乗れる皆様は、愛機でひとっ飛びだが、私はそうもいかない。

というわけで、人員輸送ヘリで送ってもらった。

こんな組織に勤めていても、ヘリは人生初である。

怖い、楽しい、爽快と、感情の起伏が大きくて忙しかった。

うん。また乗りたい。


第2区のオペレーションルームへ行くと、張り詰めた空気が重かった。


「第1区工藤隊オペレーター、高嶺(たかみね)きよ、到着しました!」


「ご苦労。早速、状況を説明する」


ここの司令官は怖そう。

彼の徽章(きしょう)を見て納得した。

連合軍からの出向組だ。

つまり、エリートである。


「実弾の許可はおりなかった。手がつけられないようであれば、連合軍へ討伐を依頼する」


一応、捕獲用戦闘機には、実弾装備もできるのだが、武力行使に当たるので、今まで一度も許可がおりたことはない。

旅客機が巻き込まれたときも、実弾を使用していれば、悲劇は起きなかったのではないかとメディアに叩かれたこともある。

しかし、実弾を安易に使えば、それはそれで叩かれる要因になるだろう。

そういうわけで、討伐やむなしという場合は、連合軍にお願いすることになった。

ただ、その場合、戦闘機の火力によって、食べられる部分はほとんどないし、研究に利用できる部位も期待できない。

ホオジロザメなら、質は落ちるがフカヒレが取れるだろうに…。

これは頑張って捕獲せねば!


「銛は12号を使用していい」


銛も大きさや殺傷能力で使い分けされていて、今のところ1号から12号まである。

最大である12号は、マッコウクジラを一撃で仕留めることができる、強力な銛だ。


工藤隊が12号の銛を装備して、出動準備が終わったころに、第3区のチームが到着した。


「工藤隊、準備完了」


「出動せよ」


「ラジャー」


出動命令を伝えると、次々と発進していく工藤隊。


「今、目標は比較的大人しく、(エコー)地点から(フォックスロット)地点へと移動しています。また、指定範囲内の避難は完了しているとのことです」


『ラジャー』


画面に映されるホオジロザメを見て、どう対処するかを考える。

今まで出現したホオジロザメの中でも、最高記録と思われる大きさだ。

尾びれがかすっただけでも、撃墜するかもしれない。

となると、距離を取りつつ、弱点を狙うしかない。

柔らかいお腹を狙うっていう手も……。

あ、だめだ。研究所から内臓欲しいってリクエスト来てるわ。

特に肝臓。肝油でも作るつもりか?


「筒井さん、雪間さん。アタックの指示が出たら、目と鼻を狙ってください」


『サメならそこだよねー』


「それもありますが、肝臓が研究指定部位になってます」


『ラジャー。目標はでかいんだ。拓己、外すんじゃないぞ』


『今日の俺は調子いいからな!見てろよ!』


この二人は、仲がいいんだか悪いんだか。

いつもこんなやりとりばかりしている。


「工藤隊はふざけているのか?」


後ろからの視線が痛い。


「彼らなりのモチベーションの上げ方です」


物は言いようだ。

砲手には、凄い集中力が必要だと聞く。

あの会話が、集中力するためのルーティーンなら、司令官とて文句は言えまい。


「工藤隊、真面目にやれ。処罰の対象にするぞ」


…言えたよ。

うちの上司がこの人じゃなくてよかったわ。本当に。

第2区のオペレーターに視線をやると、彼女は怯えていた。

たぶん、いつもこんな雰囲気なのかもしれない。


第3区のチームも、目標周辺に到着すると、ようやくアタックの指示が出された。


「雪間さん、チェーンをつけたまま、目を狙えますか?」


『チェーンをつけたまま?』


「はい。銛が刺さったままだと、次の銛を弾くおそれがあります」


『なるほど。やってみるよ』


激しく暴れることがわかっている目標に対して、銛にチェーンをつけたままだと、機体が引っ張られる可能性が高い。

しかし、雪間さんの操縦技術なら、上手くやってくれる、と思う。

これはかけでしかないのだけれど。


一番銛(ファースト・アタック)、命中!目標から離れてください!」


第2区の担当のチームが、一番銛を打ち、続いて二番銛、三番銛と打ち込まれていく。

すべてがエラに命中しているにもかかわらず、目標は大きな口を開けて、激しく暴れている。

頭を振られては、弱点である目と鼻を狙えない。

さて、どうしたものか。


今日の日本国は、少しピンチです。


「ジョーズ」のBGMをかけると、より臨場感が楽しめます(ウソ)

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