調理家電も宇宙仕様
買ってしまった。
ナマコを捕獲した特別ボーナスで、ある家電を買った。
EMHクッキングマシンというやつで、今ではどの家電メーカーもこぞって新しいものを出すというくらい普及率が上がっている。
ようは、IHの進化したものらしいが、仕組みはよくわからない。
IHのように、フラットな面に調理器具を置くのだが、それが変わっている。
炊飯器にもなれば、レンジのように温めたり、コンロとして加熱調理できたりと、乗せる器具を変えることでいろいろなことができる。
その中でも最近話題になっているのが、宇宙アサリクッキングキッドだ。
20〜30センチの宇宙アサリを殻ごと焼いたり、蒸したりできるもので、発売当初から凄く気になっていた。
家で、アサリバターやアサリの酒蒸しとか、簡単にできるのだ。
宇宙魚介類の中でも、貝は大きさゆえに調理が面倒臭いことがある。
この調理器具は殻ごとできるので、茹でてから中身を出したりという手間がない。
今日の勤務が終わったら、宇宙アサリを買って、酒盛りをしよう!
「あ、内山さん!」
勤務後に、調理部隊の控え室を覗くと、内山さんがいたので話しかける。
「高嶺さん、どうした?」
「アサリのクッキングキッドを買ったんです。それで、おすすめの調理方法とかあれば教えていただきたくて」
そうだなぁと呟くと、紙に何やら書き込みだした。
「アサリは合わせやすいから、レシピも多くてな」
そう言うと、いろいろな組み合わせをあげてくれた。
酒蒸し一つでも、日本酒と白ワインで変わってくるし、キャベツ、きのこなどを一緒にすると美味しいらしい。
トマトソースで煮込んだり、パスタ、パエリアとか、貝柱を刻んだスープとか、たくさんありすぎた。
「まぁ、まずはバター醤油だろう。アサリはこれが一番美味いと、俺は思うね」
わかる!
凄くわかる!
あの、バターの香りが食欲をそそるし、醤油の塩味とバターのコクとアサリの旨味がマッチして、汁まで飲み干したくなっちゃうやつ。
内山さんからレシピをもらったけれど、今日はバター醤油に決定だ。
急いで買い物を終わらせて、宇宙アサリをクッキングキッドの上に乗せる。
折りたたみ式の透明なカバーをかけることで、熱が逃げずに身がふっくらになるらしい。
あと調理方法を選ぶと、自動で温度や時間を管理してくれるのでありがたい。
アサリの口が開ききると、お知らせしてくれて、調味料の入れ忘れを防止する。
カバーを開けると、なぜか磯の匂いがした。
宇宙魚介類の不思議の一つである。
宇宙空間を泳ぎ、大気圏突入も平気で、調理すると磯の香り。
海の要素が一切ないのにね。
バターと醤油を入れると、凄くいい匂いになった。
もう食べたい!すぐ食べたい!
ぐっと我慢して、少し蒸らす。
できましたという音声がしたら、お皿に移して、テーブルへ。
あとは、地元の地酒を注げば、準備万端。
では、いっただっきまーす!!
「高嶺さん、アサリどうだった?」
「めっちゃ美味しかったです!やっぱり、バター醤油最強です!!」
山内さんにそう報告すると、彼もだよねと同意する。
「小ぶりの貝ならなんでも調理できるから、いろいろ試してみるといいよ。俺はアゲマキガイがおすすめ」
確かに、小ぶりならホタテやサザエもいけそう。
あ!ヒオウギガイなら、おしゃれな料理になるかも。
「暇なときでいいなら、調理方法教えるから」
「ありがとうございます!」
しばらくは、貝ブームが続きそう。
うん。今日も日本国は平和だった。
ヒオウギガイはカラフルなホタテに似た貝です。
アゲマキガイは、西日本で食べている細長い二枚貝。これ、めっちゃ美味いです!
そして私はシッタカが食べたくなった(笑)