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イカは総じてエイリアン

今日は朝から訃報が届いた。


「ロシア帝国で、イカの捕獲に当たっていた甲板(こうはん)が亡くなった」


死角からの触腕に気づかず接触し、森林地帯に墜落したとのこと。

日本国では、宇宙魚介類による死者はまだ一人も出ていない。


亡くなった隊員に対して黙祷を捧げると、上司が一つ指令を出す。


「今回隊員が亡くなったことに対して、ロシア帝国の皇帝が気にしていらっしゃるようでな。それで、日本国にイカの対処法を教えて欲しいとの申せがあった」


イカの対処法……。

特にこれといってマニュアル化されているわけでない。

イカと言っても、宇宙イカにもいろいろと種類がある。

ホタルイカ、ヤリイカ、コウイカなど。


「そこで、日本国のSEAFOODは、全チームにそれぞれの対処法を聞き取りし、いくつかのパターンをマニュアルとして渡すことになった」


日本国だけでも、13の区域に分かれ、一つの区域に最低でも6チーム、多いところでは12チームある。

それらすべてとは、また面倒臭いことを。


「三日後までに、イカの対処法をチームでまとめ、レポートとして提出するように」


「ラジャー!」


工藤隊長が代表して返事をすると、チームのみんなはなんとも言えない顔をしていた。




「というわけで、ミーティングをするぞ」


早速、今まで行ったイカの捕獲をおさらいすることに。


「まず、今回ロシア帝国で出現したイカは、ケンサキイカだ」


ケンサキイカは、日本国では大変人気のあるイカだ。

イカ刺し、天ぷら、しゅうまい、塩辛など、そのまま食べても、加工しても美味いという。


「ケンサキイカですか。確かに、長い触腕は厄介ですね」


「でもあれ、ゲソ焼きにすると、歯ごたえがあって美味いよな」


雪間さんは真面目に言っているのに、筒井さんは食べる方向になっている。

気持ちはわからなくもない。


「墨もあるし、イカやタコはあまりやりたくないですね、正直」


美味しいものほど厄介なのが、宇宙魚介類というやつだ。

宇宙イカの墨は、宇宙タコと違い液状なのだが、一度付着してしまうと落ちないという迷惑な性質を持っている。

人が住んでいる地域に出現されると、辺りが真っ黒なんてことも。

今では、地震などの災害保険に宇宙魚介類も加えられているので、保険がおりるし、行政に手続きを行えば、国からの補償金ももらえる。


「地球産のイカでも同じだが、ケンサキイカは激しく動くと反応する。触腕を伸ばして、捕まえようとしてくる」


イカによっても、捕食のやり方は違う。

ケンサキイカは、獲物がパニックになったときを襲う。

魚がパニックを起こせば、触腕を避けたり逃げたりすることが難しいからだと思われる。

逆に、ヤリイカは海底でゆったりと動くものに反応する。

カニやエビといった甲殻類は、格好の獲物だ。


「ホバリングしながら、目を狙うのがベストってことですか?」


イカは頭足類といって、頭のように見えるのが腹で、その下に頭、足と続いている。

ある意味、地球産のイカもエイリアンみたいなもの。

両目の間に脳があるので、目を射抜けば、脳にダメージを与えることもできる。


「それしかないだろうなぁ」


「ヤリイカはその逆ってことか?」


工藤隊長はケンサキイカの対処法を決めたようだ。

ヤリイカについて、筒井さんが尋ねる。


「それでもいいんだが、その場合、墨やブラストにはどう対応する?」


イカは腹の部分から水を吸い込み、漏斗(ろうと)という部分から勢いよく発射することで推進力を得ることができる。

宇宙イカはそれを空気でやるので、飛行機なのどのエンジンの噴射という意味で、ブラストと言っている。


「ブラストは予測可能です。外套膜(がいとうまく)が膨らんだあと、閉じる気配があれば…」


雪間さんの言う通り、ある程度ならイカの行動を予測することはできる。

腹の部分が膨らんだら、回避行動を取ればいい。

そして、イカが推進力を得て移動している間、足を動かすことができない。

足を動かしてしまえば、空気抵抗ができ、スピードが落ちる。

この間に、同じスピードで並走すれば、銛を打つことは可能である。


「イカと同じスピードで並走しながら銛を打つなんて、ロシア帝国の砲手にできるかな?」


筒井さんはそう言うが、スピードは速いというわけではない。

瞬間時速150kmくらい。

宇宙魚介類の中で一番速いのはカジキ類だ。

あいつらは平気でマッハまでスピードを出す。


「やってもらわんと、被害が大きくなるだけだ」


「じゃあ、ヤリイカの対処法はこれでいいですか?」


「他に思い浮かぶか?」


工藤隊長が聞くが、みんな首を振った。


「あとは、ホタルイカ、アオリイカ、コウイカ…」


「ダイオウイカにニュウドウイカもあるな」


多田さんと中川さんが、イカの種類をあげていく。

大型のイカで有名だが、体内にアンモニアがあるため、とても食べれたものじゃない。

イルカやクジラの餌にしかならない。

めったに現れることはないが、現れたらイルカを飼育している施設に寄付という名の処分をしてもらうことになっている。

なので、これらは捕獲と言うより、掃討とかの方が正しい気がする。


「アオリイカとコウイカは、体色の変化が他のやつより大きいから、着色してからだな」


工藤隊長の言う通り、アオリイカとコウイカには、体色を変化させるというステルス性を持っている。

厄介なのは、その際レーダーにも映らないことだ。

なので、真っ先に宇宙イカの墨を原料とした、特殊ペイントを使う。


「ホタルイカは簡単なので、大丈夫でしょう」


雪間さんの言葉に、筒井さんも強く頷く。


「網で一発だもんな!」


ホタルイカも群れで現れるが、宇宙魚介類の中では超小型だ。

30センチくらいだろう。

なので、大きな投網を使い、群れごと捕獲する。

投網は改良されたものなので、目標に投げたあとは自然と閉まる。

逃げられることもなく、目標も生きているので落ちることもない。

そして、回収も楽といういい事尽くし。

ホタルイカの沖漬け、また食べたい。


工藤隊長がレポートを提出したあと、全チームのレポートをまとめた、最終報告書が私たちにも渡された。


「日本国人って、本当にイカが好きなんですねって言われたらしいぞ」


お偉いさんがロシア帝国のSEAFOODにイカの対処法を渡したときに言われたと、上司も笑う。


私もこんな結果になるとは思っていなかった。

ほとんどのチームが、私たちのチームと同じ回答していたなんて…。


「お礼にロシア帝国からたくさんニシンもらったらしいぞ。調理部隊が、塩焼きと炊き込みご飯にするって……」


「もうできてますよね!?いってきます!!」


筒井さんが上司の言葉を遮り、真っ先に出ていった。

工藤隊長が謝っているけど、上司の目は笑っていない。


ニシンの炊き込みご飯ってどんなんだろう?


今日も日本国は平和ですねぇ。


イカの構造が、エイリアンでもおかしくないと思うのです。

特に、生物学的にも目の構造が優れていて、だからイカの目はでかいのかと納得した記憶が。

大きなイカは美味しくないらしいですが、バカイカは食べられますよ!

美味しいかは別として(笑)

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