魚介類談議
先日、大量に捕獲したカタクチイワシ。
全部市場に流すと、飽和するということで、真空冷凍保存されることとなった。
カタクチイワシは、食用より加工食品にされることが多い。
特に、カタクチイワシの頭を使って作る出汁が絶品らしく、高級料亭でも使用されているらしい。
地球産のもので取る出汁より、繊細な旨味があるとか。
高級料亭で食べたことはないので、すべてメディアからの受け売りだ。
「今日は何が出てきますかね?」
「大韓国では、エイが出たらしいぞ」
上司が他国の情報を教えてくれるが、エイはちょっと。
食べられないこともないが、日本国では馴染みがない。
宇宙魚介類は、初めて出現した日から、毎日365日24時間、世界中で出現している。
日本国では、首都を中心に13の区域に分け、管轄のSEAFOODの面々が日夜捕獲に当たっている。
ロシア帝国では、国が広大すぎて区域が100以上あるらしい。
絶対に大変そうだから、ロシア帝国だけは勤めたくないな。
「お、第3区でタコが出た!」
「タコかぁ。最近たこ焼きパーティーしていませんねー」
「いや、タコは面倒臭いだろ」
そう、上司の言う通り、タコの捕獲は面倒臭い。
宇宙魚介類の中でも知能が高く、蛸壺で捕獲しても逃げ出すことが多々ある。
蛸壺も逃げられるたびに改良を施しているにもかかわらず、やっぱり逃げてしまうのでいたちごっこのようだ。
さらに、タコは墨を吐く。
地球産のタコと同じ様に、煙幕の役割を果たすようだが、その正体が知りたくなかったと今でも思う。
宇宙魚介類研究所の調査によると、宇宙タコは地球の成層圏まで入ってしまうと、体内にガスが発生する。
危険が及ぶと、そのガスを用いて、排泄物を煙幕のように使用する。
排泄物、ようは……。
しかも、この煙幕、細かい物体なので捕獲用戦闘機との相性が悪かった。
煙幕がエンジン内に入ると、エンジン故障を引き起こすことも。
なので、砲手は墨を避けつつ、タコを蛸壺に入るよう追い込まなければならない。
また、蛸壺を吊るしている甲板も、墨に巻き込まれないようしつつ、蛸壺を安定させなければならない。
そして、残った二機には、送風機を設置して、墨を散らす作業がある。
なので、出動するまでの準備も大変な作業なのだ。
たこ焼きは美味しいけれど、タコは面倒臭い。
経験した誰もがそう思うだろう。
あと、厄介なのは深海魚。
宇宙魚介類研究所の面々が、どういう生態で生きているのか宇宙の謎と言わしめた、謎多き魚。
体がふにゃふにゃしたものが多く、死ぬと傷みやすい。
なので、いつも生け捕り生け捕りと、研究所からのプレッシャーも強い。
上司と呑気に宇宙魚介類談議をしていたら、宇宙魚介類出現の警報がなる。
「喜べ、きよ。目標はキンメダイだ!」
「キンメダイですね!煮物にして、炊きたてのご飯と一緒に食べたいです!!」
甘辛い煮汁に、ほくほくの白身。
それをご飯と一緒に食べられる幸せ!
「筒井さん、雪間さん、絶対に獲ってきてください!」
『おう!任せとけ!』
あぁ、今日も日本国は平和だなぁ。