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プロローグ

初投稿です。

よろしくお願いします。



昔々あるところに争いごとを好まずのんびりと暮らす背に羽を生やした人々の国がありました。

そこに住む人々は穏やかな日々を過ごしておりましたがある日、優秀な魔術師である一人の青年が言いました。

「こんな退屈な生活はもう飽き飽きだ!下界へ遊びに行く!」


人々が暮らす国は天界と呼ばれており、その下には住人達からは『羽なし』と呼ばれる魔力と羽を持たない人々が暮らしておりました。

『羽なし』達は天界の人々とは違い日々戦いに明け暮れた生活を送っており、その青年は暇つぶしとしてその戦いの渦中へと飛び込んでいきました。

周りの人々はいくら優秀な魔術師だからといっても危ないからと止めましたが、青年は一切耳を貸さずそれどころか賛同を得た仲間達とともに嬉々としてあちこちの争いごとに首を突っ込み、戦場を混乱させては楽しげに『羽なし』達を破滅へと追い込んでいきました。

彼らは優秀過ぎたためにその能力を発揮することが出来ない日々に耐えられなくなっていたのです。

そうして戦場に赴く度に天界には存在しなかった穢れを全身に浴び、彼らの身体に徐々に穢れが溜まってゆき、次第に彼らの人格を捻じ曲げてゆきました。


「もっと力が欲しい...もっと下界を混乱の渦へと陥れることが出来る強い力を...!」

彼らは更なる力を欲しましたがすでに彼らは強くなりすぎていたため、これ以上の力は望めませんでした。

そんな時仲間の一人が思いつきました。

「これ以上の力が望めないのなら1から人を創ってみたらどうだろう。

我らではあのような兵器を作ったところで今より強い威力を出すには時間がかかりすぎる。

下界の者達が使っているような兵器のような者を造ればもっと強大な力を手に入れられるのではないか?」

仲間達はそれに賛同し、強い人を造ることにしました。

この時既にまともな思考を持つものはいなくなっていたのです。

そんな事になっているとはつゆ知らず、周りの人々は研究に没頭する彼らを見てやっと落ち着いたかと安心してしまいました。


そしてついに彼らは術を完成させてしまいました。

その術は赤子を宿している女性を利用するというもの。

赤子を媒体とし母親や周りの供物の力をその赤子へと取り込ませ、強い人を造るという極めて下劣な術でした。

潜在能力が高ければ高い程に強い人が出来る…そう思い彼らはこの国で最高峰ともいえる能力の高い王族を利用することにしました。

ちょうど王妃の出産が迫っていたので彼らは城から王妃を攫いました。平和な国でしたので彼らにとっては警備も生温く、容易く攫うことが出来てしまったのです。


そして彼らは術を起動。

しかしそこで誤算が生じました。

どうやら赤子の潜在能力が高すぎた故に術が暴走、赤子を中心に母親は勿論、術を起動した青年達や国の4分の1ほどの面積の生物や土地までも力として赤子に吸収されてしまいました。

強大な力を吸収してしまった赤子は一気にとても美しい女性へと成長しました。彼女は力として吸い上げた母親や生き物達の記憶を有していたので、自分がどういった者なのかを理解していました。

幸いにも彼女を孕んでいたために1番近くにいた母親の記憶をベースとした人格を形成したので力を欲した青年達の願いを叶えることはありませんでした。


こうして天界に歴史史上最強の力を持った一人の女性が誕生しました。

しかし彼女は王様によって牢へと繋がれてしまいます。

その強大な力を持った彼女を住人達が恐れ、しっかりとした人格を有していたとしても自由にさせておくことが出来なかったからです。

そして青年達と同じ過ちを繰り返さない為に王様は住人達に役割を与えました。

下界の『羽なし』達を見守る、という役割です。

再び青年達のような者を生み出すだけではないか...。

住人達は最初はそう反発しました。

しかし王様は皆とは違う考えを持っていました。

「この国は平和すぎた。故に彼らのような者を生み出してしまった。ならばこの国にとどまり続けるのではなく下界へと赴き、『羽なし』達を見守り、彼らのようにならないよう己を戒めることも大切なのではないか?我らの生活はとても穏やかだ。しかし『羽なし』達の生活を見るととてもではないが平穏とは無縁な生活を送っている。それを見守ることで我らの生活を見直すことも出来る。それに彼らを見てきたそなたたちなら再び同じ過ちは繰り返さぬであろう。」

住人達は王様にそこまで言われては反論し難いと渋々その役割を受け入れました。しかし罪を犯した者達の血をこの国に残してはおけない、親族を牢へと繋ぐべきだと進言してくる者達も現れました。王様は苦渋の選択として彼らの親族を下界よりも更に下。地界へと追放することにしました。地界は下界とは違い未だ未開の地としてろくに生き物が住んではいないだろうという結論が出た地。そんな所へと追放するのであればそれで充分な厳罰へとなるだろうと王様は考えたのです。

住人達、親族達も納得し、地界へと追放されました。




もともと穏やかな気質の彼らはただひたすらに静かに決して争いに介入せず『羽なし』達を見守り続けました。

偶に穢れを浴びてしまう者もいましたが、下界へと赴いた者達は穢れを落とす術を研究、修得し、全身を穢れで覆われ、過去の罪人達と同じようになることはありませんでした。

天界の人々は下界の『羽なし』達を魔力すら持たない『羽なし』と言って見下していましたが、見守り続けることで彼らを見直し、下界に住む人々を『人間』、天界に住む自分達を『空人』と呼び、天界という呼称も『空界』へと変えることにしました。

そして一部の『空人』にいたっては『人間』との間に子をもうける者も現れました。『人間』と『空人』の間に生まれた子供達は『空人』の気質を受け継ぎ、次第に下界からは争いはなくなり、平和になっていきました。


そして時は流れ、恐ろしい出来事だったはずの事件も生みだされた彼女の存在も次第に住人達にとって、本として残されてはいるもののただの御伽噺となり果てました。真相は限られた人達に繰り返してはならない伝承として受け継がれていったのです。


ーーーーーー

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ーー




彼女の行方だけは一人を除き誰も知らぬまま...ーーー





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