第六話 とある中学校の話。
私が生まれ育ち、住んでる町のとある中学校。
そこの卒業生では無いのだが、最近、割と近くまで行くことが多い。
…………夜に。
まぁ、私自身が用事があるわけではない。
父親の用事だ。
中学校の前、国道側に建て直された消防署。
そこに父親を送迎する際にだ。
知り合いに、ありきたりな七不思議があるのは聞いている。
トイレのナニコさんやら、音楽室の怪談やら、体育館の跳ねるバスケットボール。
十三階段やら、技術室の血まみれの先輩だなんて話。
だけど、私が、外から見えたのは、そんなんじゃない。
多分、カーテンがないから、消防署側から見えるのは廊下なんだろう。
四階建てのその校舎の窓にびっしりとまとわりつき張り付いた暗いグレーの人影。
数えるのもアホらしいぐらいだ。
何よりも、その父親の送迎時は、ナイター設備のライトが煌々と夜を明るく照らすのだ。
なのに、此処に多少の違いがあり、詰め襟とセーラー襟から男女両方が居るのぐらいしかわからない『それ』が真っ当な人間であるはずがない。
真夜中と言うのを差し引いても、だ。
だから、これに関しては、何も言わないし、知らない。
ただ、その中学校は、毎年一人は、その中学校を卒業出来ない生徒が必ず出るらしい、と言う話が聞こえるだけだ。
そして、願わくば、真夜中に七不思議探索などをする大馬鹿者が出ないことを祈るばかりである。
オチもクソも無いが、触らぬ怪談に祟り無しってことで。