第三話 病院での妹分のこと。
アレは、十年以上前のこと。
まだ、義務教育だった頃のお話。
盲腸で私は、入院しました。
外科ってとこは、よっぽどの事がない限り、小学生は、いません。
まともな話、地方の病院よりも都市部の病院ならいるのかもしれませんが、そのときは違いました。
私が、入室したのは、六人部屋で小学2―6年の子達が同室で、1番年上の子に、「左奥の子は、かまわない方がいい」と,言われました。
おそらくは、比較的軽い数ヶ月で退院する子の部屋だったのでしょう。
それから数日後、退院したり検査だったりと、その子と2人きっりになりました。
黒髪で三つ編みにした女の子でした
「ねえ。貴女ここ初めてでしょう。」
「そうよ。」
「少し、お話しましょう。」
それから、何度かおしゃべりをしていましたが、また、2人になりました。
決まって、他の同室の子がいない時だけです、おしゃべりは。
私が年長なのもあり、『お姉様』と慕ってくれて、妹分になっていました。
……まぁ、長くは続かなかったのですけど。
そして、あれが起こったのは夜でした。
モチロン、そのときが初めてです。
「ねぇ。いっしょに、天国行きましょう。」
「嫌だといったら。」
「あなたの意志は、関係ないわ、お姉様・・・。」
「いやだね。死にたかないからね。」
「お姉様・・。」
顔が変化していきました。
鬼―。
天使と表してもいい子が、般若の顔に。
「お姉さま・・。行きましょう寂しいの・・。」
「わかった。」
(確か。タロットと十字のペンダントがあったはず。それで…。)
まぁ、無駄に死ぬ気は無いです。
昔も今も。
「嬉しい。お姉さま。」
「の前に、2つ身につけたいものがあるから、とってくるわ。」
私は、急いで取りました。
十字架の1つ首にかけます。
彼女には、金色のを。
モノは十字架ですが、親戚の坊様の聖別したものですので、ある種の焼きゴテに近いでしょう。
「いくのは、貴女だけよ。」
言った途端に、人ならぬ声を上げ 飛び掛ってきます。
そして、私の肩に、食らいついたのです。
逆に言えば、人の言葉を聞くだけの余裕があるだけの相手です。
逃げれないのは、致命的なものですよ。
親戚の坊様に手伝ってもらいながら、訳したお経を唱えました。
「天と地の間にありし精霊よ。」
牙は、食い込み、私から、集中力を奪うのです。
(やばいね。食いつかれても、身体は、ともかく心が危ない……。)
かと言って、諦めると朝には変死体コースでしょう、ええ。
「在りしものは、在りしべき場所に……」
(なるほど。)
途中で止めました。
そして、優しく語りかけます。
視てしまった彼女の生前が故に。
「お姉さんが死んだのは、あなたのせいじゃないわ。」
よくある不幸と言い捨ててしまえれば、そうなのだけれど。
この子は、数年前に、病院前でボ-ル遊びをしていたらしい。
ボ-ルが道路に、出て、運悪きことに、トラックが来て庇ったお姉さんごと、吹き飛ばされたようです。
お姉さんが、クッションになり死亡。
両親は、残った彼女を大切にしました。
そうならば、この話は無いでしょう。
―――「何であの子が死んで、おまえみたいなズベが、生きてるのよ。」
そういわれ続け、その時から二年前に、ここで、寂しく逝った。
「でね。死んだら、お姉ちゃんに会えると……会えなかったの。」
女の子はいつの間にか元の顔に戻り、盛大に泣いていた。
「じゃあ上逝く。そしたら、会えるかもよ。」
(転生してるかもしれないね・・。)
泣きつずける彼女。
「うえ・・逝きたくない。お姉さまといるぅ。」
「いつか、上にいくならいいよ。約束できるかい。」
「うん。」
にこっりと笑顔を見せる。
それを見届けたその後、自分のベッドに、倒れこみ、ナ―スコ-ルを押した・・。
1週間-。
私は、原因不明の貧血で、生死の境をさまよった。
退院が、2週間も遅れた。
でも、たまに現れて、おしゃべりをしていくその女の子。
12まで神の子いうけど、当時十四だった。
ちなみに、この子は、数年前にちゃんと上に上がりました。