第二話 音楽室のお話。
小学生の頃のお話です。
あれは、十月の終わりの事でした。
十一月の頭にある学園祭・・・五年生と六年生、先生が出店などを出すお祭りです・・・の準備をした放課後のことです。
季節柄、もう下校時間ギリギリのそのころは真っ暗です。
準備にキリをつけ帰ろうとして、玄関で忘れ物に気が付きました。
これが、必要ないものならともかく、宿題のノ-トなのです。
しかも、一時間目にその授業があります。
私は取って返し、二階に上がりました。
音楽室の隣の図工室が、その年の私の出し物の場所でしたから。
すると、音楽室から、「エリ―ゼのために」が聞こえてきたんです。
よく、小学五年生六年生の課題曲になっているそれです。
「あれっ。誰も居ないはずなの・・・。」
私が責任者と言うのもありますが、その前に先生に下校時間だと言われた時点で、他の面子は帰っているはずですし。
隣だった音楽室の面々も同じはずです。
ガラッ、私は戸を開けます。
ピアノのところには、黒く長い髪と白いブラウスの同じ年・・・小学校高学年の少女がピアノを弾いていました。
私は、声をかけました。
「ねえ。もう下校時刻過ぎてるよ。」
すると、『にたぁぁ』と音がしたかと思うほど、少女は、血のように紅い口で笑いました。
もう日も沈みかけで、暗いのにそれだけははっきりと分かったのです。
そして、「あのひとはぁぁぁぁぁ・・。」と、私ではない誰かを指して呼び、消えました。
この話には,後日談があり。
それは、昔、ピアノのうまい少女・・・仮に百合さんが、ピアノの発表会の少し前に亡くなったそうです。
幼馴染にそれで賞を取れたら、告白すると言うときに、交通事故で亡くなったそうです。
そして、百合さんがその時持っていた楽譜が・・・・。
百合さんのことは、同じ小学校出身の先生から聞いた話ですから、ホントウがどうかは知りません。
それでもあった私の二十年ほど前のお話です。