第十七話 琥珀との出会いの話。
後ろの子……眷属のように言っては居るけれど、主従或いは仕事の意味での契約はしていない。
強いて言えば、友人程度の薄い縁。
名付けてしまったから、ある意味親子だけど、後ろの子であるだけだ。
出会ったのは、高校生の時で文化祭の時だ。
良くも悪くも、部外者がいても目立たない。
高校と言うのは、割と部外者が目立ちやすい。
栗色の髪をポニテにして琥珀色の猫みたいに好奇心満載の瞳。
制服っぽい、ブランドで言うなら、イーストボーイっぽい着合わせしていた。
緑地に銀ボタンのブレザーに紺のカーディガン、黒地に赤と緑のラインを下に入れたプリーツスカート。
スレンダーで男装をさせても違和感は無いんじゃないかな、制服って意外とパス度をあげるし。
測ったこと無いけど、Aカップ無いんじゃないかな、骨ばってる風でもないし、最近の定番のアジアンチュニックとデニムでも胸目立たないし?
カントボーイだとしても、もう少し骨骨しいだろうから。
なんてかな、変にエキゾチックなのに、目立たない感じな子。
そのの時は、私は放送室に居た。
音楽を流しつつ、時折、宣伝放送をするための監督役。
積み木崩しみたいなそういう遊技系企画の男子と一緒に来たのがその子だった。
雰囲気だけを言うなら、彼氏と行動してる校外彼女。
そんな感じだった。
まぁ、宣伝はすぐに終わる。
若干、初々しいなぁぐらいでなんもない。
その彼女が残ったぐらいで。
『君は、ナニ?』
「人間、としか言えない。
と言うか、アナタこそナニ?」
『さぁ?
あ、刀の付喪じゃないよ?』
「あー、間違いだったら悪いけど、校長室辺りにある?」
眼をパチクリさせて、彼女はケラケラと笑って肯定する。
演劇部で、その前を通って合宿棟にも行くからね、その時に薄っら青い感じの気配がよくするし、同じ系統の気配がするから、カマかけてみたらそうだったらしい。
『…………ナニかなんて聞く辺り、君って慣れてる?』
「超残念なことに慣れた、慣れなきゃ死んでるね。」
『そうじゃの、此奴は無茶しいでの』
『へぇ、稲荷狐だ。
君の式?』
ちなみに、このめはミキサー(音響機械)の上で、アイスとカチワリ氷とお好み焼き、ベビーカステラ、たこ焼き、蒟蒻田楽、マフィンにクッキーなどなど、盛大に文化祭を楽しんでた。
サイズ子猫サイズなのにどれだけ入るんだ、とは思った。
一応、お腹がポンポンになってたから物理的限界はあると思いたい。
嗜好品の為の食事な為、食べなくてもいいんだけども、おいしそうに食べるところを見るとつい。
ちなみに、この頃、このめがはまっていたのは自身の身長近いたけのこパンである。
(※バケットなんかの硬いパンを半分に割ってごってりマーガリンと砂糖を挟んだパンのこと。
形状からたけのこパンと呼ばれる。」
「一応、は。
しばらく前にね、物好きよ。」
『此奴はほっとくとぽっくり逝きそうじゃし、着いていくとおもしろそうじゃったからの。
あの領域で、アイツならまだしも、わしまで見るのは珍しいからのぅ。』
『ふーん、名前つけてよ。』
「はい?」
うっかり、日本茶の缶を握り潰した。
弁解するなら、アルミ缶だったんだわ。
当時、ヤバい七眷属のうち、契約済み(或いは縛済み)なのは四眷属。
シェンナとカディ、藍蓮、このめだった。
ノリで言うなら、五分五分か三分七分の契約を明言化してるのは、シェンナとカディ、このめ、後々言うなら、琥珀とアクタだけだ。
アクタの場合は、「テメェ、弱いんだから俺に従え、くのやろう」ってしてるだけだが。
(脱線で言うなら、多分、アクタに叩きつけなきゃ、大学生グループ行方不明コースの可能性大)
藍蓮の場合、某妖怪アパートの龍さんか骨董屋並なぐらい薄い繋がりだけど、一応、契約済みではある。
正確には約束、だけど。
ヤバくないと言うか、最悪、除霊を出来るの他に何眷属か居るけど。
少なくとも、五分五分であっても、向こうから名前を付けてと言うオプションだけで、九分一分ぐらいに分が変わる。
付けるので、三分七分の親子杯盃になるぐらいかな。
前のアクタの場合、多分、アクタだけだったら、慌てて誰か契約してくれるのを探すぐらいに、ヤバいバランスでした。
縄を引っ張る力が無くなったら食われるようなそういうもんだった。
私は、(食料の意味で)美味しいかもしれないし、力はそこそこだろう。
ただ、食うだけならもっと楽なの居ますもん。
名古屋なんか一日歩くと1人2人、霊力強そうな割に無防備よねって、人。
『あ、食べたいわけじゃないよ?
好みとしたら、吸血鬼で言う異性で糖尿病で低脂血を好みにするぐらいニッチだもん。』
「…………正気?
やり方次第だけど、奴隷になりたいってのと変わらん?」
『うーん、言っちゃ悪いけど人間のそれはちゃんとしたのじゃない限り、古ければ、ムロマチぐらいの比較的若い子ぐらいなら破れるよ、ペナルティーが無い訳じゃないけど。』
「だろーね、じゃないと蒼真さんが一体も自然式が居ない理由が解らないし?」
『ノリとしては、お姉さんの知り合いの篠ちゃん達と同じだね。
本体が亡くて遺る遺物を転々と寝るだけの変わり者だけど。』
篠と言うのは、知り合いの木の精霊?妖怪?である。
また、いつか語るとして、と言うことは、木の精霊としての性質を捨てる代わりに、自分の本体の細工物に寄り付く付喪になったわけか、まで考えた。
同時に、名前をつけて名乗るとマズい、超マズい。
完全に、妖怪精霊ならまだいいんだけども、付喪であっても、神様区分だ、末席でも。
だけど、名付けないと逆にまずい。
アクタの時も言ったけど、「俺に名付けられるぐらい弱いんだから従え」理論だ。
『無茶しいじゃ、繋がりが合った方が死なんじゃろ』
『昔から、変わらん。』
口を挟んだのは、このめとカディ――カーディナル・オブシディアンだった。
詳しくはまた語るとして、黒髪黒眼の真っ黒な枢機教風の衣装を着た二十歳から三十歳ぐらいに見える青年姿のナニかである。
肌と幾つかの装飾と瞳の境以外は濃い黒だ。
私の自室に居る場合は、ムササビっぽいシルエットのフリースを着るようなお茶目さんだが。
ちなみに、完全に食事はコーヒーやタバコと同じく嗜好品派である。
勧めなければ食べないぐらいには。
この時も、缶コーヒーとアイスをつついてたぐらいだ。
『お姉さんっていくつそういうの持ってるの?』
「最低、四。」
『それにの、ほんに警戒心が薄いんじゃ、それで無茶しいじゃからの』
『俺はともかく、狐の胃が心配だな。』
『お主も、ワシの胃を滅多刺しにするじゃろが。 夕海の未練になれば良いとは思うが。』
カディは私の無茶を助成する方だものん。 色々とあれだから、語るにしてもかなり後か語らないかもしれない出来事が、あって実際胃の辺りを押さえてたから。
オカンと言うか、まぁ、苦労人ならぬ苦労狐である
『で、どうする?』
「我は汝を『琥珀』とする。
あくまでも、友人程度、盾も矛も要らないわ。」
やけに瞳に視線思考が引き付けられるから、のネーミング。
アクタも琥珀も、必要に迫られてのそれはあまり気持ちのいいもんじゃない。
契約は、命を握るから。
あっちの都合で解けるとはいえ、それは関係ない。
『んふふ、やっぱり、面白いね。
私が“ナニカ”知ったら解ったら求める人ばかりなのに?』
「身が守れりゃ充分。
本名じゃないが、呼ぶなら、夕海で。」
『あだ名?』
「筆名。
偽名が必要ならそっちを名乗ってる。」
『ふーん、面白いね。』
何があったか知らんが、私が酒が飲めるようになってから、語り合おうぜ?
実際、琥珀は結構お喋りだしね。
契約が、主従(に類する)物じゃないのに、割と側に居ることが多い。
食事の有無は投げといて、琥珀と石榴は割と人間と乖離してると思う。
それでも、人間好きだからか、人間ならこう考える系の擬態が上手だからか、そういうのは下手じゃない。
だけど、ちょいちょい、「あ、コイツ、人外だ」とか、「コイツ、カミサマだわ」とかってなるんですよね。
なので、裄瀬次女に執着してる戦白黒など、カミサマらしい神様は、この琥珀と石榴がモデルになってたりするわけです。
ちなみに、現在も、琥珀の遺物は母校の校長室から動いていない。
つまりは、学校の持ち物になっているらしい。
…………それなりに良いものだけど、なんで、刀があるんだろうね?
本人話さないから詳細不明だけど、最低短刀、下手したら、打刀。
壷や剥製ならまだしも、刀ねぇ?
まぁ、色々あった学校だしね?
(三年で両手に余るナニカを体験したからなぁ?)
名付けは両刃ですけど、名付けすらできない相手も居ますからね?
夏ホラーのミラーハウスの彼の元ネタみたいに、それしたら瞬殺なのもいるのです。
琥珀は、まだ人間好きですから(笑)
では、夏ホラーラストスパート逝きます。




