第十五話 アクタとの出会いのこと。
一応、赤木甲子郎の直接のモデルはいますが、数人を足し引きして、キャラになってます。
具体的には、酒をくれてる先輩と結婚した先輩は別人だったりする。
俺は、赤木甲子郎。
叶野の先輩にあたる。
俺が所属してたサークルの先輩後輩だ。
今は、同窓生と結婚して、三人の子のパパになってる、平凡な男だろう、多分。
言っちゃ悪いんだが、叶野は、よくいるかまってちゃん系だと思ってた。
あれだ、「わたしぃ、霊が見えるんですぅ」系のヤツ。
そうじゃないってわかったのは、いつだったか。
うんそうだ、入学式から数ヶ月、前期のテストが終わる頃だったか、同じサークルの田中にしとく、それなり親しい奴が紙みたいに顔を白くして、部室に来たんだ。
そん時は、特に活動日でもないし、電車とかの時間合わせにか、俺と叶野と他数人はいた。
むしろ、週頭でそこまで体調悪そうにする原因も分からない。
ありたいていに言っても、田中は死人に見えた、棺桶に片足を突っ込んだと言うか。
「おい、田中どうした、財布でも落としたか?」
「い、いや、昨日眠れなくて、ね。」
「…………先輩、昨日、どこ、行きました?」
元々、高くない声を更に低くして、珍しく割り込むように、叶野が話しかけてきた。
それにいつも以上に、抑揚がない。
総合するなら、俺がその前に浮気した時の当時の彼女・ミサよりも怖かった。
田中の回答を待たずに、分かってるかのように、叶野は目が全く笑ってない笑顔でこう言った。
「○×のトンネル、行ってませんよね?
まさか、脇の、石碑倒して、ないですよね?」
こっから巻いて書くと、叶野の指摘はあたってた。
田中の背中に、女性などがくっついてたらしい。
ゲンコツと説教、ついでに現地まで行ってくっついてたものを戻した。
ちなみに、叶野は下宿のその日の夕食・唐揚げを食べ逃したらしいが、夏休み開け、田中が学食で数日、お昼を奢っていたようだ。
そのうち一回は運動部でも、食いきれない奴が多いスペシャル定食を完食してたのは、驚いたが。(唐揚げ3つウィンナー揚げ4本、トンカツ一枚、キャベツ山盛り、Lカレー、プチデザートのセット。値段は九百円。当時としたら学食でも高いメニューだな。)
半分は、霊力補完のそれに使ったとは言ってたが、実際はどうか知らん。
この件があってから、何つか、叶野は不可思議なことの駆け込み寺になってた。 俺や田中みたいなナンパ組がその頻度は高かったしよく世話になってた。
ついでに、俺を含めた何人かは、カップめんよろしく、霊感?が開いたみたいだ、叶野とそういうのに関わってたせいで。
叶野を頼るのが当たり前だったし、頼られたら叶野も「仕方ないなぁ」と言う感じにどうにかしてくれた。
悪くない関係だと思う。
それは、紅山が死んでも変わらなかった。
だけど、黒いアイツが叶野についたのは、後悔しかない。
大体、十年前かそれぐらいだ。
叶野が大学卒業して、紅山が死んで二年ぐらいだからそれぐらいだろう。
いつも通りと言うか、あんまり褒められたことじゃねぇけど、心霊スポットに行ったわけだ。
俺と同じサークルだった男女に、叶野で七人。
叶野が、年数回、名古屋に来るときは、大概、二泊三日だ。
んで、大概は一泊目に駅前で呑んで、その勢いで行くわけだ。
大抵何もない。
叶野が言わない範囲でだが。
ちなみに、叶野はそこそこ強い。
ワインだったら、フルボトル三本呑んで潰れるぐらいだし、そういう心霊スポット行くときは、グラスワインで二杯までにしてるっぽい。
正確には、甘いカクテルやサワー系な。
そん時も、そういう意味でハズレだった。
詳しくは伏せるが、かなりマニアックなサイトの更に裏に載ってるようなそういう場所だった。
入り口、一番道路側の出入り口を便宜的に呼ぶけど、そこから見て奥。
貴族なんかの家で言うなら、食料庫とか倉庫とかみたいなある程度、広さのある場所。
分かり易い。
それに尽きる扉だった。
注連縄に御札、十字界にアンク(遊戯王カードの「死者蘇生」ってカードのあれ)が、ベッタベタに貼ってある扉。
俺みたいな木っ端でも 分かるぐらいに、ヤバい扉だ。
他のサークルメンツも、大なり小なりカップめん組だ。
前に、ひっぱたかれて説教受けた二人組もそれは同じだもの。
「どうやら、当たりも当たり、大当たりだ。
中に居るのは、ガキか。」
『夕海、油断するでないぞ、わしやシェンナがおると行ってもやりあおうとするでない』
「と言うわけで、見なかったことにしよう。」
叶野の後ろにいるキツネミミ小天狗も即座に言う辺り、ヤバいのだろう。
でも、巡り合わせなんだろうが、田中、始めの話の奴が、なんかに蹴躓いて、注連縄をむしり取ってしまった。
出て来たのは、黒い奴としか言いようがない。
顔は分からない。
一番、近いのを言うなら、某カオナシからあの白い仮面を剥いで、顎の先も見えないぐらい目深にフードを被って、袖だけ別の引きずるぐらいのマントの上から切り込みのあるケープを着て、それを更に微妙に色の違う黒でギリー加工(狙撃の際のカモフラージュのあれ)したら、アイツと同じ感じになる。
俺達もだけど、叶野も顔を青くしてた。
「とりあえず、下がって。」
用意してたらしき、いろはすで結界で区切る。
後の本人曰わく、防空頭巾並みに無いよりマシぐらいの強度らしい。
地元で買った地元取水のいろはすに、地元の塩の簡易霊具、地元の縁から霊力を貰う代物らしい。
らしいらしいばっかだけども、「素人だからね、こだわれるならこだわりたいのよ?」と言うことらしいから、叶野なりのこだわりなのだろう。
「オマエ、ナニ?」
「貴方こそ、なに?」
「ワカラナイ、デモ、ニンゲンオイシイ」
助詞のないノイズ混じりの言葉は、そういう特徴を抜けば、子どもっぽいあどけなさってのかな、そういうたどたどしい感じの口調。
内容はともかく、内容はともかく、だけども。
後、肉声として聞こえた時点でかなりマズイ存在なんだろう。
「汝、弱きもの、アクタ。
我に従うか?」
「オマエ、オモシロイ、ツイテク。」
「…………やっちゃった」
妙に空々しく、叶野のそんな声が響いた。
後になって聞くと、黒い奴……アクタは、所謂、フランケンシュタインの化物に近いらしい。
それから、叶野の後ろにいたりいなかったりする奴だ。
――「腕はね、人間っぽいんだけど、胴体はぬいぐるみっぽい。」
――「閉じ込めた人間自体を恨んでるし、かつ、私なんかが敵わないねぇ?」
――「安っぽいビスクドールみたいな感じ?」
――「一応、こっちの名前出さないで、アクタの名前で縛ったけど、私が持つかね、二十年かな。」
アクタは、塵芥のアクタ らしい。
かつ、叶野の話からすれば、フランケンシュタインの化物ってことは、ツギハギってこと。
つまりは、誰かが造ったってことだ。
詫びってのを含めて、地元の清酒を送っている。
――「送られた清酒があるから、破滅までの距離を減らせてるわ、ありがとう。」
後は、チラシ裏。
叶野弓子が語るお話。
まず、アクタが出来たのは、此処百年程だ。
古い封印と制御の癖からして、同じ方式を知っている。
カディと言う私のトコにいる野良を指輪に封印していた術式と同じ。
ニュアンスで言うなら、同じフォントだった。
ただし、カディを封印したのとアクタを封印された古い方の術式は、同じフォントだけど、違う人物によるもの。
更にニュアンスだけど、アッシュブラックとアッシュグレーぐらいに違うけど同じ雰囲気だったけども。
それに、封印したから、此処まで大きくなったんだろう?
うん、あえて質問しよう、何ヶ月どころか年単位でご飯を食べれなくて、久々に封印解かれて、美味しそうなご馳走が並んでたら、まぁ食べたくならない?
そういうこと。
と言うか、アマチュアが言う台詞じゃないけど、始末するか、受け継ぎ続けなよ、そういうのは。
最後に封印したの今から二十年は前だけど、その封印が酷いもん。
私もたいがい、現代的な意味でウィッチクラフト使いだけど、ある程度はバランスとってる。
この場合の魔女術は、「アンクを額につけてヨガのポーズで般若心経を唱えながら九字を切ってから銃を撃てば必ず当たる」みたいな宗派形式を越えて組み立てる術式のこと。
とある本で知り便宜的にそう言ってる。
はっきり言うなら、効率はめっさ悪い。
お経のひとつを上手く使った方が効率が良いぐらいに悪い。
私の場合、対処療法で経験を重ねたせいか、しっちゃかめっちゃかになってる部分が多いからそういうパッチワークになった。
アクタの封印の場合、扱えなくなったのを自分か知り合いのとこに、なんでも良いから、封じたいって感じの切実さの封印だった。
ハード面は、アクタ程ヤバいのは、片手ぐらいしかいないし接触したこと無い。
人工としちゃ最高レベルにカミサマに近いんじゃない?
一応、あえて言うなら、多分、妖怪だけど。
それなりの神社の主宰に成れる程度には高性能。。
だけど、ソフトウェアが“子ども”なんだわ。
最初の印象が、某カオナシなこともあるんだろうけど、自分の考え方がマズいと理解したら、契約切って去ろうとするし。
私の寿命を食ってるの解ったら、去ろうとするし。
(ちなみに、契約切って去った場合、それなりの被害出しつつ、二年以内に消滅の可能性大)
(色々やって、破滅までを年間1メートルなとこを年間3センチまで削ってるけど、通常の寿命以外に削れてるのが嫌らしい。)
身長も相まって、デカい犬と言うか、シュナウザーとかのモップ犬っぽい。
何十年後かには、連れてくんだろうなぁ、なんてかね、こいつ、外見も何も似てないのに、ジョーカーっぽい。
それ以外を知らなくて、今になってそれ以外を知って、立場的に私がリィンかよとは思ったし、はっきり言うなら、何か解らないアクタは、本来なら消すべきもんだと思う。
袖触れあうも他生の縁だしね、拾った以上は行き着くとこまで行く気でいる。
つーか、中身幼児だけど説明すれば分かってくれるし、いい子ではあるんだ。
ちなみに、アクタは絶対に顔を見せてくれない けど、身長も猫背なのを考慮しても180以上ある成人男性っぽいのに、甘いものが好きだ。(抱き心地がそんな感じ。)
洋酒を利かせたのは食べない。と言うか食べれない。
そのくせ、好みは柚餡の一六タルト(スポンジでアンコを包んだの)が好きらしい。
あげたら、花が散る幻影が見えるぐらいにね。
一緒にいる率はそこそこ。
このめ的には、あんまり気に入らないっぽいけど、縁があるうちは、一緒に居るんだろう。
『アクタ』は、多分、人工式神なんだろうけど、本来なら造った本人か継いだ人間が、消すのが礼儀だと思う。
人間に造られた妖怪は、ノラには成れないんだしね。
後、アクタの精神年齢はわざと抑えられてると思う。
そこからして、制作者の底意地の悪さがあると思うもの。




