生徒会役員な私と彼らの転校生ちゃん迎撃作戦。2
生徒会役員な私と彼らの転校生ちゃん迎撃作戦。の続きです。
相変わらず短いです。これ単体では分からないと思いますので、良ければ前作もどうぞ!
私は今、非常に不味い状況に陥っていた。いや、演じている役割からしたらむしろ好都合かもしれない。しかし、だ。
まだ周りから人の机を漁る女だとは思われたくない!
いや確かに周りの人達は私たちのことを分かっているから、誤解はされないかもしれない。でも嫌なものは嫌なのだ。
落ち着いて今の状況を説明しよう。まず、涼に教科書を忘れたから貸してほしいと頼まれた。しかし、私達は仲良くない設定なので机の中に入れておくことにしたのだ。というかまず、仲良くない設定の人にそんなこと頼むなよ!という感じなのだが、そこはまあ彼のマイペースさがなせる技だ。というわけで、まだ誰もいないと思われる朝早くに来たのによりによって転校生ちゃんに見つかるなんてついてないなぁ!
転校生ちゃんが私のことを嘲笑して、口を開く。
「榴斗君の物が欲しいからって、机を漁るなんて最低!ただでさえ相手にされてないのに迷惑かけちゃダメだよぉ?」
おおう、これは不味い。朝からこんな不味い状況になるとは。これはもう仕方ない、最終兵器だ。
私はポケットの中に手を突っ込むと、中に入っていたコイン状のボタンを手当たり次第に押し始めた。これは生徒会役員と理事長、そして担当教師を呼ぶ特製ベルなのだ。
なぜ私がこんなものを持っているのか、と思うだろう。私もそう思う。まあこれには理由がある。昔、私たちがまだこんなことをしていなかった頃だ。
ある時転校してきた女の子が、3カ月ほどたった頃に急に颯天に交際を迫り出したのだ。そしてストーカー行為まで始めた。あれにはさすがの私も驚いた。私よりも驚いたのは、当然ながら颯天だった。それから颯天は学校を休み、颯天のお父さんに相談したのだ。
それに対して子煩悩な颯天のお父さんは、生徒会役員のお父さんに事の一部始終を話した。その結果、誰も彼もがお金持ちでハイスペックお父さん達の、やるなら徹底的にという信条の下、心を折ってから転校して貰うための資金援助をしてもらっている、というわけだ。
いきなり転校生ちゃんが目をキラキラさせて窓に駆け寄った。誰か来たのか、と期待して窓の外を見ると、一番会いたくない人が立って私に手を振っていた。これは……またいざとなれば窓から脱出した方がいいかもしれない。
私が会いたくない人、というのはとにかく役割を無視した先輩だ。毎回、転校生ちゃんの取り巻きになれ、と理事長から言われているのに、さらりと流して私にまとわりついてくるのだ。しかも強い、物理的に。このままでは傷害事件だ。早く、早く誰か来い!先輩以外で。
その時、ドアが開いた。絶望した面持ちでドアの方を見やると、担当教師だった。助けは来た!とばかりに目を輝かせると、担当教師はふっと顔を緩めた後、転校生ちゃんをかばう位置に入った。そして腕を横に広げて守る振りをしながら、さりげなく手のひらを見せてくる。おお、うまい!
"心配しなくてもすぐ助けは来る。遅くなってごめんな。とりあえずお前はあいつを押さえろ。"
担当教師の顔面だけでない男前度に感動しつつ行動を起こそうとした瞬間だった。
担当教師が、 派手な音を立てて、 吹っ飛んだ。
何が起きたのか一瞬わからなかったが、遅れて先輩が来てしまったのだと分かった。先輩は担当教師に飛び蹴りを食らわせたようだ。
担当教師はそんなダメージはなかったかのように起き上がり、先輩にいい放った。
「おい、お前な……、いつもながら思うけど、過激すぎるぞ。」
それに対して先輩は鼻で笑うと、
「いやいや、玲ちゃんに対してそんなことする方が悪いでしょ。」
といい放った。
そこに乱入してきたのが転校生ちゃんだ。正直、余計なことをしないでほしい。ただでさえ私の名乗った英梨を無視した先輩の言葉に心が折れそうなのだ。
「あ、あの!お名前は何て言うんですか?その人に騙されてますよ!私が助けてあげます!ねえ、そこの人、先輩を解放してあげて!先輩だって心のなかではそう思ってるの!」
えええぇー……先輩を煽るようなこと言わないでー!いっつもそう言われて先輩は相手をこてんぱんにしようとする(物理)から止めるの大変なんだよー。ほ、ほら!先輩の額に青筋が……せっかくハーフな美人顔なのにもったいないよ!だからおさめて、先輩!
担当教師はこれは不味いと転校生ちゃんをかばいに動く。口パクで外に先輩を誘導するように指示される。
その時先輩が口を開いた。
「ゆずせんせー。誰なのその子。ねえ。俺の玲ちゃんにそんな的はずれなこと言う子は。て言うかゆずせんせ、何でその子庇ってんの。ゆずせんせごと飛ばしちゃうから、ゆずせんせ逃げなよ。」
今更だが、担当教師は譲先生という。先輩は本名以外口にしないので、譲は本名だ。私達はゆずせんせと呼んでいる。
そんなこといってる場合じゃなかった。あ、先輩が今にも飛びかかりそうだ。私は咄嗟に先輩にタックルをかます。そしてそのまま先輩と私は窓を突き破って落下した。
そして、先輩は空中で体制を立て直すと、同じく体制を立て直した私に笑いかけた。私もつられて笑うと、先輩は
「この前の窓から脱出した時みたいだね、今回も三階だし。」
と言った。
「先輩見てたんですか!?うっわ、恥ずかしい!あ、とりあえず、降りたら校舎の中入って、理事長室で時間潰します。あー、窓ガラスの修理も頼まないとですね。」
先輩は了解、と短く返すと、猫のように優雅に着地した。私もそれを追って着地すると、校舎の中に入りながら、結局また窓から離脱かよ、とため息をついた。しかもまだまだ転校生ちゃんを追い出すのに時間がかかりそうなことを思って、ますます重たい気分になるのだった。
相変わらず文字が詰まっていますが、ここまで読んでくださった皆様ありがとうございました。