File №002 入学式
今回は、1話目ですっぽり抜けていた説明などを載せています。
まだ本題に入っていない感じです。
ここは某専門学校の体育館の中。前日が大雨だったこともあり、まだ春だというのに、汗が滲みそうな程の熱気に包まれている。熱気に包まれている理由はそれだけではない。今日はこの学校の記念すべき20回目の入学式なのだ。式はもう終盤に差し掛かっており、今もなお登壇して喋り続けている校長先生の長々とした答辞と保護者代表による挨拶、それと校歌斉唱だけだ。
1学年の人数は200人。5学年まであるので、全校生徒は合わせて1000人。教員も含めると、実に1050人という化け物じみた学校だ。その中にいる、体が華奢で中性的な顔立ちをした、女装をすれば誰にもばれなさそうな少年が僕、夕涼慎。女装をすれば似合いそう、というのは心外なのだが、友人だけでなく両親にまで言われる始末。父親も高校生の時、学園祭で女装をさせられ、好評だったらしい。僕にも同じ運命が待っている可能性は高い。学園祭なんて中止になればいいのに……憂鬱だ。
それはさておき、僕はこの学校の生徒1000人のうち、3人にしか知れられていない重要な秘密を抱えている。家族やクラス担任、校長先生などを除く、関係者以外の誰にも知られてはいけない。知った者が危険な事態に巻き込まれない様にするためだ。僕が抱えている秘密というのは、
警察官である、ということ。
警察官という職業に就こうとした場合、通常は警察官採用試験というものを受けなければならない。この試験、受験資格が設けられていて、結構細かい。身体的な基準としては、男性であれば身長約160センチ以上、体重約47キロ以上胸囲は78センチ以上。視力が裸眼で両目とも約0.6以上で、矯正でも約1.0以上。色覚が正常であり、体に障害や異常がないこと。
さらに、一次試験は試験内容がA区分とB区分に分かれており、A区分は大学卒業程度、B区分は高校卒業程度の内容で
「おいっ!」
横にいる藤森が耳元で喋りかけてきた。
「ん?どうしたん」
「どうしたん、じゃねぇよ入学式もう終わるぞ。意識を体に繋ぎ止めとけ」
前を見ると、校長先生の答辞が丁度終わったところだった。
「あーごめん、ありがと」
「なぁに、いいってことよ」
「ははは…」
この、体格が良く、日に少し焼けている爽やか(?)な青年、藤森暁也――今まで女子にもてたためしがない――は、僕の秘密を知っている人間の一人だ。知っている、どころではない。コイツは僕が所属している△〇県警未成年者犯罪特別捜査部、通称『青二才の部署』のメンバーの一人である。略称は特捜B。Bは『青二才』(メンバー全員が25歳未満なので、青二才にも程がある)からきていて、青=Blueだから。
僕は約1時間半前と同じように、後ろを振り向いた。目線の先には、今朝出会った不審な少女。彼女もこの学校の新入生だった。大体予想はついていた――が、科まで一緒とは思ってもみなかった。相変わらず何を考えているのか、どこを見ているのか(多分、保護者代表)分からない。どこか日本人離れした雰囲気を纏っている。
―――ま、今はいいか。どうせ同じ教室で、少なくとも三年間はほぼ毎日顔を合わせることだし
僕は前を向いた。保護者の代表はもう、降壇していていた。
「新入生、在校生、起立」
ピアノの伴奏に合わせ、全校生徒による校歌斉唱が始まる。
「…………歌詞知らないのにどうやって歌えっていうんだ」
所詮、素人が書いたものですので温かい目で・・・とか言いつつ、しっかりと批評を受け付けます。オカシナところ等があれば、遠慮せずに言ってください。……マゾじゃ無いですよ。