第六十七話~そして~
お久しぶりすぎました!!!
こんにちは!!!!
ごめんなさい!!!!
「あぁ、その子らならあっちの方へ走って行ったよ」
手当たり次第に近所を訪ねて9軒目。
相内先生の考え通り、やはり目撃している人がいた。
行方不明になったウサギのモフを探しに幼稚園を飛び出した二人の園児。竹田 琴音と小野 和也。
二人がウサギを探すとしたら、果たしてどういう行動をとるだろう。
そんなの考えるまでもない、今、相内先生が二人を探すためにしていることと、同じことをするに決まっている。
そう、“人に聞く”。
先生にとって二人が大事な園児であるように、二人にとってはウサギのモフは大事な友達なのだ。
大事な人を探すとき。それも、もう行く当てもなくなってしまったこんな状況なら、ただ当てもなく捜し歩くなんてことはしないだろう。
だから、二人が訪ねるであろう付近の民家に、先生は我武者羅に飛び込んだ。
結果、二人を目撃した人の情報をこうして手に入れることができたのだ。
だったらあとはどうするか。
その情報通りの場所を、ひたすら探す。
「すみません! 二人の子供を見ませんでしたか!? 4歳ぐらいの男の子と女の子なんですけど!」
複雑に枝分かれした道。
まさかすべての道を探しに行くわけにもいかない。
だからこういうときは、もう一度この付近で情報を集める。
先生は荒くなった呼吸を整えることさえ忘れ、庭の手入れをしていたご年配の男性に必死に尋ねた。
この人がずっと庭にいたとしたら、二人の姿を見た可能性が非常に高い。
事実、その考えは当たっていて。
「あぁ、あの子たちかい。あの子達なら、公園に向かったよ。ほら、あの小さなところの」
「ありがとうございます!!」
このあたりの公園といえば、先生が思い当たるのは一か所しかなかった。
そしてそこは、先日個人的にモフを探しに行った時も、探索した場所でもあった。
もちろん、そこにモフは居なかったけれど……。
「お願い……無事でいて……!!」
事故にあっていないか。誘拐されていないか。
残酷な想像が何度も相内先生の頭をよぎる。
想像力は無限大。嫌な想像が、考える分だけ浮かんでは焼き付けたように離れない。
胃がきりきりと痛くなって、涙が零れそうになる。
だけど、こんな気持ちを。
二人は……特に琴音は、何日間もずっと……モフがいなくなってから、今だって感じていたに違いない。
考えれば考えるほど、相内先生は胸が苦しくなった。
その苦しみを早く吹き飛ばしたいと、無我夢中で走って二人を探した。
二人が向かったという公園は、ここからさほど離れていない。
すでに視界の端にその場所の遊具が映り込んできていた。
「琴音ちゃん! 和也くん!? どこ!?」
公園の中に入り、大声でどこにいるかもわからない二人に問いかけてみるも、……返事はない。
すでにここを離れて別の場所に行ってしまったのだろうか。
考えるが早いか、相内先生はすぐに公園を離れて辺りを見回す。
二人の移動する速さは、子供と大人の足の長さの違いから鑑みても、すぐ近くにいるはずなのだ。
「返事して! 琴音ちゃーん!! 和也くーん!?」
公園内にはいなかった、だから、公園の外周を一周する。
「居たっ!!」
ブロック塀のかわりに垣根に覆われたこの公園。
見つけた二人は垣根の中を覗き込むように屈んでいた。
道理で見つけられないはずだ……と、心の中で呟きながら、相内先生はほっと胸をなでおろした。
「もう、二人とも、狭いけど一応ここも道路だからね。気を付けないと車にひかれちゃうか……ら……」
二人を見つけた安心感に顔を綻ばせながら、ゆっくりと二人に近づいたとき、相内先生は異変に気づいた。
遠目から見たら、琴音が屈んでいたように見えた。
けれど、近づくたび、二人の表情がはっきりと捉えられるようになるたび、その違和感に悪寒が走る。
琴音は……屈んでいるというよりも、尻餅をついていて、何かに怯えたように顔を真っ白に染めながら、ぼろぼろと、声もあげずに頬を濡らしている。
そんな琴音の一歩後ろで立ち尽くす和也もまた真っ青になりながら、険しい目つきで垣根の草の中を見つめていた。
「琴音ちゃん!!!」
反射的に、相内先生はなるべく“ソレ”から遠ざけるように、垣根を背にして琴音を強く抱きしめる。
ここは見通しの悪い道路。相内先生も二人に「危ないよ」と注意したばかりなのだから、ソレは充分に起こりえた出来事だ。
ブンブンと耳元で羽音を立てるコバエが五月蝿い。
わなわなと足元を横断する蟻が気持ち悪い。
レバーをぐちゃぐちゃに掻きまわして何日間も放置していたような、鼻腔を劈く腐臭。
「せんせぇ……」
胸元に顔をうずめている琴音のか細い声が、相内先生を呼ぶ。
今朝、琴音が先生らしいと褒めてくれたエプロンの蓮華草は、彼女の涙を吸って鈍い色になっていた。
「琴音、ちゃん……」
――見なくてもわかる。
「せんせぇ……!! ぐすっ……ひっくっ……」
――でも、私は“ソレ”を、目に、胸に、心に、焼き付けなければいけない。
「モフちゃんが……モフちゃんがぁあ……!!」
――この子の涙も、苦しみも、何もかも全部、刻み付けなければならない。
「モフちゃんが……ひっく……死んじゃったぁあ……!!」
――だって、これは私が真剣にならなかったせいで起こった、事故なのだから。
第六十七話
~そして~
「……先生、モフちゃんのこと、他の先生にも伝えてこなくちゃいけないから……先お部屋に戻っててくれる?」
「……」
幼稚園に戻り、先生は琴音達に先にクラスで待っているように促した。
琴音は無言ではあったものの、小さく頷いてそれを了承する。
泣き止んではいるものの、琴音はずっと俯いたままだった。
そんな琴音を見ると胸が締め付けられそうになって、苦しくて、どう言葉をかけていいのかもわからないため、相内先生はそれ以上何も言うことなく琴音達のもとを離れて他の先生が待つ職員用の部屋へと向かった。
「ことちゃん、クラスにもどろうよ」
下向いたままの琴音に声をかけ続けながら、すぐ後ろについていくように歩く和也くん。
琴音を先導するように、和也くんはクラスの扉を開けた。
スライドドアのガラリといった開閉音。
その音に反応し、クラスにいる園児たちの視線が自然と琴音達に集中する。
その中の一つ、りなちゃんが琴音に問いかけた。
「モフちゃん連れてきた?」
“モフちゃん”という単語。
その言葉を聞いた瞬間、琴音は止まった涙を再び溢れさせながら、地面にへたり込んだ。
「ごめんね……ぐすっ……りなちゃんごめんね……!! モフちゃんが……モフちゃんがぁ……!!」
ぼろぼろとこぼれた涙で床を濡らしながら、琴音は嗚咽交じりにただひたすらりなちゃんに謝った。
いろいろ言われたけれど、りなちゃんも本当にモフが大事だったってことは琴音は理解していた。だから、謝ることしかできなかった。
もっと早く見つけてあげられていれば。
モフが逃げないように、あの時しっかりと抱っこしてあげられていれば。
きっとこんなことにはならなかったはずなのに。
「ど、どうしたの……?」
突然泣き崩れる琴音に、りなちゃんも戸惑う。
なんで自分が謝られてるのか理解できずに、琴音のすぐそばにいた和也くんに答えを求めるように視線を移した。
「モフ……車にひかれて、死んじゃってたんだ」
和也くんが答えると、一層琴音の両目から涙が溢れ出た。
そして、りなちゃんもまた、目を丸くして、言葉を失っていた。
「……う、うそ……モフちゃんが……モフちゃんが死んじゃったなんてウソだ!」
和也くんの言葉の意味を理解できずに――いや、理解したくなくて、りなちゃんは嫌な想像を振り払うように大声で怒鳴った。
ウソだ。死んじゃったなんて、モフちゃんともう会えないなんて。
モフちゃんに嫌われたままで。怯えられたままで。まだ、抱っこだってしてない。ごはんだって食べてもらってない。
まだ全然、モフちゃんと遊んでない……。
ぐるぐると視界が回る。
理解したくないはずなのに、気づけばりなちゃんは、琴音と同様に顔を濡らしていた。
「ことねちゃんが殺したんだ!」
そう言い放ったのは、りなちゃんではなく別の子だった。
あまりモフと関わってこなかったせいか、モフを“友達”ではなく“ただのウサギ”としか思えていない子が、さっきまでの延長で琴音に好き勝手言い始めたのだ。
「っ……! 違う……!! わたしじゃない……!!」
全員、琴音がモフを殺したなんて思っていなかった。
でも、場の雰囲気と、単純に騒ぎたいだけの人達が、琴音を悪者にしようとどんどん乱暴な言葉を吐いていく。
「うそつけよー! お前が殺したんだろ!」
「そうだそうだ!」
「さつじんはーん! さつじんはーん!」
「ちがう……わたしじゃない……わたしじゃない……!!」
「嘘つき。アンタが殺したんじゃーん」
弁解しようとすればするほど、どんどんエスカレートしていく罵詈雑言。
和也くんも必死に琴音をかばうけれど、ヒートアップしてしまったみんなには声が届かなかった。
琴音を虐めるためだけに、クラスの心が一つになる。
「ちがうのに……ぐすっ……わたしじゃ、っないのに……!」
言いがかりを浴びせられ、委縮する琴音。
けれど、そんな琴音の弱弱しい姿が、周囲を余計に奮い立たせた。
「お前が死ねばよかったのに」
その時、琴音の耳にそんな言葉が飛び込んできた。
――ことねちゃんなんか……死んじゃえ!!!
あの日、りなちゃんに言われた言葉が頭の中で反響する。
そしてそれが齢4歳の琴音の心を折るには、充分すぎる言葉だった。
「どうしたの!?」
騒がしいクラスの様子を見に来た相内先生が、ただ事ではないことを敏感に察知する。
うずくまり泣いている琴音と、それを取り囲むような園児たち。
相内先生は急いで琴音に駆け寄り、落ち着かせようと声をかけようとした。
けれどそれよりも前に、琴音が何かを呟いていることに気付く。
――わたしじゃない。
もそもそとくぐもった声と濁った瞳で、琴音はその言葉を何度も何度も復唱していた。
壊れたカセットテープのように、何度も、何度も。
――わたしじゃない。
わたしじゃない……わたしじゃない……。
わたしじゃない……わたしじゃない……わたしじゃない……わたしじゃない……。
わたしじゃない……わたしじゃない……わたしじゃない……わたしじゃない……わたしじゃない……わたしじゃない……わたしじゃない……わたしじゃない……。
「ッ……!! 琴音ちゃん……!?」
今度は琴音の身体が、ガタガタと震えはじめる。
何があったのかわからなくても、異常事態ということは見て取れた。
「琴音ちゃん、お家の人呼ぶから、今日は帰りなさい、いいわね……!?」
モフが死んでしまったことによって、精神が不安定になっているに違いない。
相内先生はそう判断し、琴音に早退するよう勧めた。
*****
「――って言うことがあってな。それ以来琴音は幼稚園に一度も行ってない」
「……そっか」
琴音に昔何があったのか、秋は掻い摘んで俺達に説明してくれた。
「好きだったウサギの死骸に群がる大量の小蝿や蟻、そんなもん見せられたらそりゃあトラウマにもなるわな……」
無残にも転がったウサギ。そこに集る虫たち。
俺でさえ今想像しただけでも背筋が寒くなるくらいだ。当時4歳の琴音には刺激が強すぎる光景だったに違いない。
……それと、もう一つ。
「琴音が人見知りなのも、その時のトラウマが原因かもしれないな」
俺が琴音と入れ替わっている時に感じた、人に対しての異様な警戒心と恐怖心。
人が近づいてくるだけで、身体がビクッと反応してしまう。
ただ単に琴音が緊張しいで上がり症なだけかとも思ったけど、それにしては過剰なほどだった。
「友達に正面から死ねと言われた。そして、クラス中から目の敵にされた……人間不信になるのも無理はねぇよ」
それが虐めだと意識的に分かったうえでやってる中高生とは違う、それが悪いことだともわからない、純真無垢で、無頓着な子供特有の虐め。
それは、自尊心も罪悪感も働かないから、常にアクセル全開でぶつかって来る恐ろしいものだ。
何もわからない、無邪気さという残忍さ。それを突然クラス中から向けられたんだ。琴音だってたまったもんじゃなかっただろう。
虫嫌いにせよ、人見知りにせよ、琴音は当時の恐怖が心に沁みついてしまっている。そしてそのトラウマを自分が弱いからだと思い込み、無意識のうちに自分を責めてしまっているのだろう。
それが自分のことを卑下しがちな琴音の心理なのだ。
「もしユキがうーみん先輩に“死ね”とか言われたらと考えると……琴音っちの苦しさが凄いわかりますですよ。ユキなら四半世紀は立ち直れそうにないですもん」
「年数にすると25年か……リアルだな」
ユキは今15歳だから……なるほど、40歳になる頃には立ち直っちゃってるわけか。ちくしょう、ちょっと寂しいじゃねぇか。
「でもなんで竹田くんが幼稚園でのこと知ってるの?」
一緒に話を聞いていた委員長……春風 燕が、不思議そうな顔で秋を見た。
確かに、委員長の言うとおりだ。秋と琴音は年齢が離れている。同じ時期に一緒の幼稚園に通っていたわけでもあるまいに……なんでそんなに詳しいんだお前。
「あの時は琴音が何も言わずにずっとふさぎ込んでたからな。幼稚園の先生に直接聞いたんだよ。琴音が心配だったし」
「へぇ~、竹田くんって、良いお兄ちゃんだ!」
にこりと委員長が笑顔を見せた。
「おう!」
そんな委員長に、秋は力強くうなずいて見せた。
ははっ、シスコンかな?
「シスコンじゃねーよ!」
「心の声読むんじゃねえよ!」
「山空くん喋ってたけど」
ウィッス。
「山空くんって表裏がなくていいね!」
「そりゃあ悪いこと考えてもどうやら全部筒抜けらしいんで」
無意識のうちに喋ってしまう癖なんてさすがにもう受け入れましたわ。
きっとこのままおじいちゃんになってもずっと俺はべらべらと脳内さらけ出していくんですわ。
あ、でも歳とれば顔にシワとか増えるし表情から読み取られることも少なくなるのでは?
「……? どうしたの山空くん、私の顔に何かついてる?」
あっ、ダメだわ。オーラがいたわ。オーラでモロバレカーニバルですわ。
「あっ、今幻滅した!? 山空くん今私を見て幻滅したでしょ!? なんで!?」
幻滅したことが分かっちゃうからじゃないですかね。
「ひぃい! オーラ!!!」
そして心霊的なヤツすべてに怯えてんじゃねえよ秋。見境なしか。
「そうですつばめん先輩! うーみん先輩がユキのことどう思ってるかオーラで見ることってできますですか!?」
「お前何怖いこと思いついちゃってくれてんの!?」
プライバシーの侵害だからな! 人の気持ちってそんな簡単に覗き見て良いもんじゃないからな!!!
「できるよ! やる?」
「やらんでいい!!」
なんで委員長も乗り気なんだよ! 人に気味悪がられたり避けられたりしたくないから霊能力のこと内緒にしてるんじゃなかったのかよ! ばりっばり悪用してんじゃねえよ!
「まぁやるとかやらないとか以前に本能的にわかっちゃうから、山空くんが雪ちゃんのことどう思ってるかもう知っちゃったんだけどね」
「マジで? ぶっちゃけ俺自身もよくわかってないのに?」
「え? そうなの? ふ~ん……そっか!」
にたぁ、と委員長がよくわからない微笑みをさらけ出しながら俺に視線を送って来る。
マジで何なの? キミは俺のオーラで何を感じ取ったの?
「それと雪ちゃん、覚悟だけはしておいた方がいいかも……」
「なんですかその含みのある言い方!?」
……もしかしなくても、委員長は小悪魔気質があるらしい。
小悪魔なんて可愛い言い方しちゃいるが、簡単な話ただのいじめっ子だ。
「……それで、琴音ちゃんはどうなったんだ?」
琴音を救うべく、一人パソコンのキーボードをリズミカルにカタカタやっていたオメガが不意に言った。
琴音の話はパスとか言っていた彼だったが、やはり気になる分には気になるらしい。
「たしか、コトネは幼稚園に行かなくなっちゃったなんヨね?」
必死に話に食い付こうと頑張ってるエメリィーヌが神妙な面持ちで秋に問いかけた。
「あぁ……まあ無理もないだろ。4歳の琴音には強すぎた刺激だしな」
「でもじゃあ、琴音っちはどうやって立ち直ったんですか? 話聞く限りでも相当なご様子でしたけど……」
「俺やお袋は何もできなかった。ただそばにいて、慰めることぐらいしか方法が分からなかったんだ……でも、アイツは違った」
「アイツ?」
「カズっちゃんだよ。琴音の幼なじみの。海はもちろん、エメリィーヌも前に会ったことあるだろ?」
「誰なんヨっけ?」
「ほら、海の指が折れたとか折れてないとか騒いでた時の……」
「あの時のなんヨか!」
「なんですかそれ。ユキ知らないんですけど」
簡単に説明すると、俺が琴音に指をつかまれたと同時に俺の携帯の着メロ(骨が折れる「ボキィッ」音)がタイミングよく鳴り響いて、「指折れた!?」みたいな騒ぎになった話である。
その時居合わせたのが、秋と、エメリィーヌと、そして琴音の幼なじみであるその小野 和也くんだ。
そして、ショックが大きくて幼稚園に通うことをしなくなった琴音を元気づけたのも、彼だという。
俺もカズくんとは、例の《入れ替わり》の間だけ少し一緒にいただけなのだが、彼は琴音を守るために、ビビりながらも不良に立ち向かってくれた漢気の持ち主。普段はヘタレを彷彿とさせるけれど、ここぞというときは誰よりも勇気を振り絞れるなかなかにカッコイイ子だった。
だから、その彼がふさぎ込んだ琴音を元気づけてあげたという話も、妙にすんなりと想像できる。
「琴音ってさ、みんなももう知っての通り、ゲーム好きだろ?」
ソファの上ですやすやと寝息を立てている琴音を見ながら、秋が苦笑いを浮かべる。
「それってさ、実は、そのカズっちゃんが発端なんだよな」
「そうなんです?」
「あぁ。もともと俺んちはゲームとかしない家だったから、知ってるゲームと言えばトランプとかぐらいでさ。ゲーム機……それもテレビゲームなんてものは、CMで見かけるおもちゃ、程度の認識だった」
「あのコトネにもゲームをしてない時代があったなんヨか……」
琴音がゲームしているところをそんなに見たことのないエメリィーヌでさえ、「琴音=ゲーム」という方程式が成り立っているぐらい琴音のゲームへの情熱は本物だ。
俺だって「琴音はゲーム機を持ったまま生まれてきた」とか言われれば信じてしまいそうなぐらいである。
でも、やはり誰しも、今好きなものがあるとしたなら、過去をさかのぼっていけば好きになるような切っ掛けが必ずあったはずなのだ。
そして琴音の場合――。
「カズっちゃんがさ、琴音が幼稚園に通わなくなって3日目くらいだったかな……ゲーム機もって家に遊びに来たんだよ――――」
第六十七話 完
まだまだ続くぜ!