第五話~知らなかったぜ、コイツの特技~
お待たせしました。第五話です^^
私は、竹田 琴音。
そろそろ夏休みも終わりに近づき、宿題が山のようになっちゃって、困る時期。
やろうやろうとは思うんだけど、どうしても他の事に頭がいっちゃう。
でも今日は、絵の宿題を終わらせられる。
秋兄ぃと海兄ぃ、皆で一緒にでかけるの。
そこで宿題を終わらせる。
一人でやったらだめだけど、皆でやったら楽しいもんね。
あぁ、楽しみだなぁ♪
第五話
~知らなかったぜ、コイツの特技~
「お母さん、いってきまーす」
琴音がそう言いながら、玄関のドアを閉める。
……一応、予定より二時間遅れたが、無事サイクリングに行くことになった。
つまり、今は午後12時だ。
「じゃあ、行くか」
俺はそう言いながら、愛用の黒い自転車にまたがる。
「ちょっと待って」
と、琴音。
「どうした?なんか忘れものか?」
全く、そそっかしい奴め。
まぁ、そこが琴音のいいところでもあるんだけどな?
「で、何忘れたんだ?」
「秋兄ぃだよ」
そう言いながら琴音は、ショックのあまりフリーズしちゃっている秋を指差した。
………あ、そうだった。
あいつまだ固まったまんまじゃん(第四話参照)。
すっかり忘れてた。
「まったく、そそっかしいのはどっちよ」
「わりぃわりぃ、てか、また俺喋ってたのかよ!」
「うん」
……この癖、ホントマジなおんねぇかなぁ?
まぁいいか。
とりあえず、秋を元に戻すか。
俺は秋のところまで行き、体を揺すってみた。
「おーい。秋ー。元気ですかー?」
俺がいくら体を揺すって、呼びかけても、全く微動だにしない。
コイツめんどくせぇな。
それを見ていた琴音が、後ろから近づいてきた。
そして、秋の前に立ったかと思えば・・・・・
「痛っってーーーー!!!!!」
それは……、言うなれば、ドゴッ、が、一番相応しいだろうか。
そう、琴音は、秋の顔を思いっきり、グー、そうグーで!!! グーで殴ったのだ。
「な……、ナイスパンチ」
俺は、普段の琴音からは信じられない行動だったので、かなりおどろいた。
……そして、それを綺麗にくらった、当の本人はというと…………、鼻を押さえながら、涙目でなんか騒いでいて、よく見ると鼻血が出ている。
これは痛い(笑
それはそうと、
「ちょっとやり過ぎじゃね?」
さすがに可哀そうだろ。
「って言いながら、顔がニヤけてるよ……海兄ぃ」
琴音は、呆れたといわんばかりの顔で、そう言ってきた。
「えっ! やっぱわかっちゃう?」
いやぁ、なんか恥ずいなぁ~、ハハハッ☆
だって、いい気味ですやん。
すると、秋が鬼のような形相で、怒りをあらわにしている。
「て"め"ぇ"ら"、あとで殺す!!」
ハハハッ、そりゃ無理だ。
だって俺強いもん。
秋ごときに負ける訳が無いじゃないか。
「もう、バカやってないでいくよ!」
「へいへ~い」
「馬鹿っていった!! 今馬鹿って言った!! 元はと言えばお前が……」
「はいはい、いいからいくよ!」
バカと言われて、暴れまわっている秋を、琴音が軽くあしらう。
さすが兄妹だ、年季が違う。
兄の扱いに慣れてやがる。
とはいえ秋、そんな泣きながら、反論しなくても。
俺たちは、いい加減サイクリングに行きたいので、暴れる秋を無理やり自転車に乗せ、出発した。
…………そして結局、琴音の厳しい兄のしつけに関して、なぜグーでなぐったのかが、分からなかった。
琴音、パネェな。
とりあえず出発した俺たちは、道が分かれるたび、じゃんけんで決めて進んでいった。
そして3時間後………
「ここ、どこだよ!?」
そう、俺たちは完全に、道に迷っていた。
誰だよ!? じゃんけんで進もうとかいった奴!!
「てめぇだよ!!」
「そ、そうだっけか? ちょっと記憶が……」
秋が言ったんじゃなかったっけ?
「ふざけんな!!」
ちょっ、そんなにキレることないだろ。
ちょっとした冗談じゃないか。
謝ればいいんだろ?
謝るよ。
謝りますとも。
「本当ごめんなさい、てへっ☆」
「死にたいか……?」
「すすすすす、すみませんでしたぁ!!!」
俺は全力で謝った。
いや、全力で誤った。
……なにやら、すごい形相で、俺を睨みつけている秋とは対照的に、
琴音は、なんか冷めた目で俺を見ている。
琴音までなんだよ! じゃんけんで行こうって言ったのは俺だが、
お前らだってノリノリだったじゃねーか!
変な逆恨みはよせよ!!
そして琴音!!
そんな目で………
「そんな目で俺を見りゅなぁぁぁ!!」
………………べっ、別に噛んだわけじゃないんだからねっっ!!!
「……海兄ぃ、くだらない事してないで、帰り道探そうよ」
同情したような顔をしている琴音を見て、俺は全力で悲しくなった。
「……そうだな」
でもそんな簡単に帰れるのか?
ジャングルみたいなことになってんぞ? ここ。
周りは木だけ、家一つない。
そもそも、俺たちが通ってきた所も、もはや道かどうかすら怪しい。
自慢じゃないが、ここまで遠出したのは、今回が初めてだ。
そして一番イカンのが、みんな、携帯を持ってきていないことだった。
秋の家にかければ、場所ぐらいわかりそうなのに……。
「適当に進めば、知ってる道に出るんじゃね?」
俺が悩んでいると、秋が提案してきた。
「それもそうだな」
あいつも、たまにはまともなこと言うじゃないか。
少し見直したぜ。
「そうときまれば、急ごうよ、秋兄ぃ」
「じゃあこの、秋さまについてこい!!」
「おー♪」
ところで、とーーっても大事なことを忘れている気が…………
……気のせいか?
「海兄ぃー! おいてっちゃうよーー!!」
「わりぃ、今行くーー!」
すでに遠くにいる秋達を追いかけ、勢いよく漕ぎ出していく、俺。
そしてまた、3時間後………
俺たちはまた、迷っていた。
「あるぇぇ? おかしいなぁ?」
「おかしいなぁ? じゃねぇだろ!!!」
くそ、すっかり忘れてたぜ、秋は極度の方向音痴だったんだった!!!
俺としたことがぁ!!!
てか、ここどこだよぉ~?
さっきよりもジャングルじゃねぇかよぉ~。
それもこれも全てアイツのせいだ。
その一方で、秋は、なぜ迷ったのかが分からないご様子。
神様。
俺に一度だけ、あいつを殴らせてください。
『いいでしょう』
俺はそう聞こえた気がした。
さぁて、神様の許しを得たところで、
「秋!!! 歯をくいしばれぇぇぇ!!!」
俺はカッコよく自転車から飛び降り、右のこぶしを振り上げ、謎の奇声とともに秋に殴りかかった。
「ぐふぉぁ!!」
そしてみごとに、俺の拳が、秋の左頬に直撃する。
綺麗に円を描いて飛んでいく、親友の秋。
3mぐらい吹っ飛び、木に後頭部を強打。
そのあと動かなくなった。
人って結構飛ぶもんだなぁ。
勉強になったゼ。
「おーい、秋クーん? 生きてるー?」
俺は一応聞いてみた。
「グフッ」
と、秋の声がする。
よし、元気だ。
「どう見ても元気じゃねーだろ!? 重症だよ!? あんたおかしいよ!? 」
秋は、それだけを言い終えると、またご臨終した。
それにしても素晴らしいツッコミ根性。
身を削ってまで、ツッコむとは……。
てか、やっぱ元気じゃん。
「できた!」
突然琴音の声が聞こえ、気になって琴音のほうに目を移した。
琴音は、手に持っているスケッチブックを上に掲げ、満足そうに微笑んでいる。
どうやら、絵の宿題をしていたようだ。
「ちょっと見せてくれよ」
俺は、このジャングルをどのように絵にしたのかが気になり、見せてもらうことにした。
「いいよ」
琴音は、素直に見せてくれた。
俺は、琴音の差し出したスケッチブックを覗き込んだ。
そこに書かれていたのは、殴っている俺と、殴られている秋の姿だった。
そして何より、メチャクチャうまい。
「私、絵は得意なんだー」
へー。
俺、コイツにそんな特技があるなんて、知らなかったよ。
琴音によると、小学生のころに毎年金賞をもらっていたらしい。
もちろん絵のコンクールで。
って、ちょっと待て、その絵を描いたと言う事は……
「お前……自分の兄貴が殴られているのを、ずっと見てたと言う事だよな?」
俺は、自分の中で芽生えた疑問を、琴音にぶつける。
「そうだけど、何で?」
なんでってお前、目の前で兄貴がボコボコにされてたら………
「普通、助けね?」
平気で見てたとしたら、俺が信頼されてるか、秋なんかどうでもイイって事じゃん。
「秋兄ぃは、体が丈夫だから」
なるほど。
あいつの体の丈夫さを信頼いしてたんだな。
納得だ。
「てか琴音」
「ん?」
「その絵、宿題の課題と違うじゃん」
確か課題は、『風景』だったはずだ。
「あ、それは大丈夫」
「なんでさ?」
ま、どうせ、私にとっての風景はこれ、とか何とか言うきまっている。
昔っからそうだからな。
俺はまた、変な理由をくっつけて、これを提出するんだろうと思い、軽い気持ちで理由を聞いた。
だがしかし、琴音の答えは、違った。
「もう一枚書いてあるよ」
そう言って琴音は、スケッチブックのページを一枚めくった。
そのページに書いてあったのは、正真正銘のここ(ジャングル)の絵だった。
って事はあれか? 俺が秋を殴っていたあの短時間で、その写真を撮ったかのように、
葉っぱ一枚一枚がハッキリしている絵と、
秋が殴られる瞬間の絵を描き上げたということか!?
たしか、4分ぐらいしか経っていなかったはずだ。
ほかの時間は、ずっと自転車乗ってたから書けるわけないし、絵がこの場所だし、ほかに考えられない。
「琴音…………お前すげぇな」
俺は素直にすげぇと思った。
だが琴音は………
「何が?」
こんなの普通でしょ?
何がすごいの?
という、顔でこっちを見ている。
しかも、心の底から
そう思っているらしく、
心に揺らぎが無い。
俺は改めて思った。
琴音、マジパネェ
第五話 完
どうもー。
まず最初に、ご愛読ありがとうございました。
今回は、新キャラを出す予定でしたが、なんか脱線ww
なので、新キャラはまた次回!という事なんですけれども。
そして、琴音に特徴がねぇなぁと、思い始めたのがきっかけで、
琴音にいろいろ吹き込みましたww
それでこんな感じにww
琴音も、やっぱしあのお母様の娘という事ですねww
そして琴音の、絵の早さと精密さ!が今回の話になるわけでして、ええww
俺(作者)が絵が苦手なのでねw憧れです。
そして秋。
今話も最後のほうはセリフが無いというねww
なぜあんな感じになってしまうのだろう。
っと、長くなってしまいましたので今日はこの辺で。
次回
第六話をお楽しみに!!