表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
俺の日常非日常  作者: 本樹にあ
◆日常編◆
46/91

第三十五話~誰にでも悪運の日ってあるんだね。だって今日は普段ならあり得ない事が起こるんだもの~

実は今日、この俺に不思議な事が起こり始めた。


不幸の連鎖。悲惨の連鎖。


悪運の日。厄日。ついていない日。


そう、それは。

朝起きてから、今現在…昼頃になってもずっと、俺の身に降りかかっている。


そんな事があるわけない。と思うだろ?


信じないあなたのために、朝から現在までの俺の不幸な出来事をダイジェストでお送りしよう。


それは、今日の朝に(さかのぼ)る―――


その日は、なぜか朝から落ち着かなかった。


昨夜はいつもと同じ時間に就寝したのに、午前4時ごろ目が覚めてしまったり。


学校に行くために靴を履こうとしたら、靴紐が切れてしまったり。


登校中には、朝だというのにカラスが俺を見て鳴いたり。


やたらと黒猫を見かけたり。


さらには、バナナの皮にすべって転んだりもした。


ついでにミカンの皮にも滑って転んだ。


こんな不吉な事が、朝から連続して俺の身に降りかかっている。


学校につけばギリギリ遅刻し、今日に限って宿題を忘れ、西郷に色々こき使われ、やっとの思いで座った自分の席のイスが不自然に倒れ、俺は見事に転んだ。


そのあとも抜き打ちテストがあり、いざ回答しようと思ったらシャーペンの芯の残量が尽きていて、オメガに鉛筆を借り何とか回答。


だがしかし、回答を終えたと思ったら書く欄が一段ずつずれていて、慌てて書き直そうと思えば消しゴムが無いことに気付き、オメガに借りて時間ぎりぎりですべて直し終え、そして終了。


だがしかし、答案回収の時に気付いた。

ギリギリ間に合ったと思いきや、名前を書き忘れたのだ。死にたくなった。


結果、0点間違い無しだ。


で、そのあとも色々あったが、何とか頑張り昼食タイム。


弁当はユキに貰い、いざ食べようとした時にひっくり返し、結果台無し。


仕方なく散乱した弁当箱とその中身を片付け、ショックのあまり机の上でふて寝しているわけだ。


「はぁ……ついてねぇ……」


こんなに不幸な事が重なると、自分でも怖くなってくる。


今日は絶対に悪運の日だ。そうに違いない。

厄日どころの騒ぎではないぞ。


今までの不幸の連続により、疲れがいつもの何倍も蓄積されていた。体力的にも、精神的にもだ。


だがしかし、今までの悲惨なる不幸の連鎖など、ほんの予行練習にすぎなかった。


『ヴィィン』と、右ポケットに入れておいた携帯電話が震えだす。


「ん? メールか」


俺は携帯をポケットから取り出し、メールを確認した。


「えーと……『お前のスターが、戦場より今帰らんとする。マイホームへいざ行かん!』だって? なんだこれ。迷惑メール?」


メールのタイトルに書かれた言葉からは、謎めいた時代設定の、バカげた痛い奴だという事が見て取れた。


俺にこんなバカげたことを言う知り合いはいない。……はず。


そう思いながら、俺はメールの本文を確認する。


そう、この本文が、今日一番の不幸の引き金になることなど。

そんな事、この時の俺が知る筈もなく―――――




第三十五話

~誰にでも悪運の日ってあるんだね。だって今日は普段ならあり得な事が起こるんだもの~




俺はさっきまでふて寝していたので、いや、正確にはふて寝しかけていたので、寝ぼけながらメールの本文を確認した。


「なになに……『よう!俺だ。覚えてるか、川之助。まぁ、そんな事は良い。実は今日、日本に帰るから。てかもう帰って来ちゃったよーん!お前が学校が終わるころぐらいに会えるぞ!!愛しき父さんより』……川之助って誰だよ」


まったく。

親のくせに息子の名前を間違えるなよな。


それにしても、父さんが今日帰ってくるのか……あの父さんがねぇ……父さん父さん……。


「…………父さん!?」


俺は驚きのあまり、クラス中に響くような大声と共に、立ちあがってしまった。


周りはもちろん、俺に注目する。とても視線が痛い。


もしこの場に目玉おやじがいたならば、『なんじゃキタロー』と返事が返ってくるだろう。


父さん……俺は鬼太郎じゃないぜ!!

ってことは、父さんじゃねぇよな。目玉だ。ただの目玉。


って、そんな事はどうでもいい。この痛い視線をどうにかせねば。


ここはあれだ。誤魔化すしかない。


だがしかし、寝ぼけた頭で考えてもいい案が思い浮かばなかった。


もうやけくそになった俺は、行き当たりばったりの、自分の口から出る言葉に身を任せることに。


「と、父さん……父さん……父さんが倒産!なんつって!!」


身を任せた自分の口からは、リアル過ぎて笑えない親父ギャグが飛び出した。


なんだこれ!!寒っ!!俺寒っ!!馬鹿か俺は!!


自分で自分に驚いたぞ畜生め!!


俺は見事に、周りの痛い視線をさらに強力にしてしまった。


ただのその場で立ちつくす俺。……見るに堪えない。


みんなが引きつった顔しながら、俺からゆっくりと視線をそらす。


………これが、今日一番の不幸&悲惨な出来事。


父さんのメールを確認したばっかりに、俺は寒い男と化してしまったのだ。


今日から俺は、『寒い!痛い!オヤジ!の三拍子がそろったボケ不良』とかなんとか言われて、みんなに避けられ続けるのだろうか。


俺はふと、昼食中の里中が座っている、里中の席を見てみる。


……見なきゃよかった。と、後悔。


続きまして、サビついたロボットのような首の動きで、隣にいるオメガ&エメリィーヌペアを見てみる。


……見なきゃよかった。と、ショボくれる。


「エメリィーヌ。今の俺って……どうだ…?」


真っ青な顔をしながら、例えるならそう、『お通夜に美少女戦士セーラー○ーンのコスプレで参上した日本男児』を見るかのような目で俺を見つめるをエメリィーヌに、俺は聞いてみた。


別に気になったわけじゃないんだ。

やっとの思いで絞り出した言葉がそれだったんだ。


いつもなら俺だって、高確率で自らを傷つけるような質問をしようだなんて思わないよ。

俺はドMじゃないんだ。


だけどね……何か喋らないと、隙間風(すきまかぜ)で吹き飛ばされるんじゃないかと不安だったんだよ。

この、灰と化した俺が。


で、エメリィーヌは。


「え……あぁー、そうなんヨね。普段と変わらないんじゃないんヨかね……」


エメリィーヌが気を使ってくれた。


でもね。エメリィーヌが気を使うとね。ほとんど逆効果になることが多いんだよね。


エメリィーヌの言葉を聞いた周りの奴らが、こそこそと噂話をし始めた。


『あの不良って家ではいつも『ああ』なの……?』

『うわぁ……痛いな……。俺嫌いなんだよな。『ああ』いう勘違い野郎』

『どんな神経してんだよあの不良。『ああ』はなりたくないな』


あは。あははは。


どうしてだろう。涙が全然止まらないや♪


もうみんなが『ああ』を(もち)いて会話をし始めたよ。


「山空。あれは普段の僕よりも痛かったよ」


ぶっ殺すぞオメガ。

なにトドメの一撃してんだよ。


つーか自覚あったんだ。自分が変だって自覚あったんだ。


……なおさら悲しいぞオメガ。


オメガは相変わらずノートパソコンで何かしてる。

俺の方を見ずに、俺だけに聞こえるように小さく呟くだけ。


そんなオメガの言葉だからこそ、俺の心にグサッと来た。死ねた。


あぁ、こんな時。秋ならなんて言ってくれただろうか。


わざと笑ってくれただろうか。俺が傷つかないように励ましてくれただろうか。


……多分、バカにするだろうなぁ。

くそっ、あいつにまでバカにされる始末かよ。今の俺は。


……こうなったら、絶対に許さんぞ秋。全部お前のせいだ。すべてお前が悪い。俺はお前を一生恨み続けてくれるわ。


『なんで俺だよ!!俺無関係じゃねーか!!俺は無実だ!!』


うわっ!? 秋め。俺の妄想にまでツッコミを入れてきやがって。どこまで目立ちたいんだお前。


「おい海。俺がどうかしたのか?」


「うわぁ!?」


声がして後ろを振り向けば、さっきまで俺の妄想の中にいたはずの秋がいた。


……妄想内のお前の方が何倍も存在感があったな。パンチパーマだったし。


「どんな妄想してんだよ!? 気持ち悪っ!!うわっ、気持ち悪っ!!気持ち悪っ!!」


「なんで三回も繰り返すんだよ!!」


「ほら、よくあるだろ。『大事なことなので3回言いました。』みたいなやつ。てか、気持ち悪っ!!」


し……つ……けぇぇぇ!!!!


「しつけぇよお前!!マジしつこいわ!!しつこいしつこい。しつこすぎて同情するわ!!しつこいよまったく!!しつこさの塊!!しつこさの世界遺産めが!!」


「お前の方がしつこいわ!!つーかあれだぞ。『父さん!?』ての、隣のクラスまで響いて来たぞ。何があったんだ?」


……あ、そうだった!!父さんだ!!


父さんが帰ってくる!!やばい。

あんないい加減な親父、みんなに合わせたら大変なことに……。


俺のイメージダウンもいいとこだ。


あのオヤジ、俺が中学に入る前ぐらいにはもう海外へ行った。


しかも突然だ。


俺なんか、母さんに事情を聞くまでの、約一年もの間、失踪やら蒸発やらをしたんだとばかり思ってたのに。


つーか母さんも母さんだ。一年も黙ってるなんておかしいとしか思えん。


『あれ、言ってなかったかしら?』って、最悪かつお約束過ぎる返答だろ。


そして、俺、母さんとしか連絡取ってないんだぞ。


小学校六年ぐらいから父さんと話したことないんだぞ。


それがいきなり帰ってきて、しかも俺の携帯のアドレスまで知ってるとかどんだけなんだよ。


やばい。

こんないい加減な父親、言っちゃ悪いが恥でしかない。


……こうなったら、父さんが外国へ帰るまで、みんなに隠し通してやる。


そのためにはまず、余計な情報はシャットアウトだ。


父さんが帰って来たなんて分かれば、特定の人物は絶対に会いたがるに決まっている。


つまり、ユキに伝わってしまったらおしまい。結婚の挨拶とかされて俺の人生が台無しになる。


だから、ユキに近い人物にも教えるのは避けた方が良いだろう。


ユキと最も親しく、身近にいる人物。


つまり、俺たちだ。

秋、琴音、オメガ、エメリィーヌ。


この四人は何としても誤魔化さなければ。


……あ!? オメガとエメリィーヌ!!


あいつら俺んちに絶賛居候中じゃねぇか!!


やばい。……どうにかしてごまかさねぇと。


「おい海。ちょっとこっちに来い」


「ちょ、なんだよ。引っ張んなよ!痛ぇな!」


俺が必死に策を考えている最中、秋に捕まりどこかに連れてかれる。


……男子トイレだ。……しかも一番奥の個室だ。


「お前なんでこんな所…に……もしやお前……俺のあれを……」


「ち、違ーよ!!なに考えてんだよお前!!バカじゃねーの!?」


「知ってるよ。お前のようなヘタレに俺の財布をカツアゲ出来る筈がない」


「あ、あぁ、なんだ。カツアゲね」


「ん? 他に何があるんだよ」


「なんでもねーよ!」



てか、カツアゲじゃなかったら、なんでこんな所に俺を連れ込んだよ。


何が嬉しくて、こんなアンモニア臭漂う所に閉じ込められなきゃいけねぇんだ。


そのような事を、秋にテレパシーで伝えようと必死に頑張っている俺に、秋が小声で言った。


「恭平とエメリィーヌは気付いてなかったっぽいけどな。お前、全部喋ってたぞ」


………ん?


「なにを?」


「父さんが帰ってきたぜ!って」


………え。嘘だろ。


俺の計画が早くもこんな奴に狂わされただと!?


くっそおのれ。存在感ないのをいいことに盗み聞きしやがって。


「お前が自ら暴露したんだろうが」


……どうする。

秋に聞かれてしまった。


これはあれか。

目撃者ならぬ聞いちゃった(しゃ)抹殺行くしかないか?


幸いここはトイレ。

汚物を流す場所だ。


目の前の汚物をひと思いに流してしまえば問題ない。


「問題あるだろ。どこの狂った奴の思考だよそれ」


「うるさい。ちょっと黙れ。お前の完全抹殺について思考中なのだ」


「黙れねーよ!!つーかさ、なんのために俺がここに連れ込んだと思ってんだよ」


秋が呆れながら、俺に何かを伝えようとしている。


なぜここ(男子トイレの個室)に連れ込んだのか。


……まさかこいつ!?


「カツアゲる気だな!?」


「違う。てかカツアゲるって何だよ」


「ならカラアゲる気だな!?」


「なんでだよ!!」


「ま、まさか、この俺の自慢のヘアスタイルをカリアゲる気だな!?」


「仮にそうだとして、俺はお前の髪を刈り上げて何がしたいんだよ」


「はっ!まさかお前!!」


そうだ。

誰にも聞かれなさそうな場所に連れ込んだって事は。


あれしかないだろう。


「やっと気付いたか」


秋が言った。


ああ。気付いた。

秋お前……


BL(ボーイズラブ)に目覚めたのか!!!」


「違うわっ!!てか、そこにたどり着くまでが遅いな!!普通真っ先に思い浮かばね?」


「思い浮かばねぇよそんなもん。普通、トイレといったらカツアゲかイジメって相場は決まって……っ!? ………お前……まさか……」


「なんだよその顔は!!いじめじゃねーよ!!」


「本当か…? 俺をボコボコにする気なんじゃないのか?」


「そんなことしたら俺もカウンター食らうじゃん」


「そりゃそうだ。この俺様がヘタレなお前にボコられるはずがねぇ」


「おい、俺をなめるなよ!海ぐらいにだったら勝てるぞ!!ギリで!!」


「何をたわけたことを。やるか?」


「ああ、良いだろう……本気で来い!!」


そんなわけで、俺と秋は狭い個室で熱き喧嘩パートへと……


『先生!!ここです!ここから『BL』だの『やるか』だの『本気でこい』だのと!!!』


『なに?』


………………はっはっはっはっは。脱出!!


俺は華麗にトイレの壁を登り、隣の個室へ移る。


もちろん、秋を置いて。


「おいお前だけ卑怯だぞっ!くそっ、もうだめだ!」


外に声が漏れないように、小声で秋が言う。


と、同時に、さっきまで俺と秋がいた個室のドアが、勢いよく放たれた。

誰かが勘違いして呼んできてしまった教師、西郷の手によって。


さらば。秋。

ジ・エンド・オブ・秋。


俺は隣の個室で、見つかったであろう秋に両手を合わせ、軽くお辞儀をする。


()()ー」


だが。


『んー? なんだ。誰もいないじゃないか』


『え? そんなはず……あれ?』


……どうやら秋は、何らかの方法で身を隠したらしい。

よくあの短時間でそんなこと出来たな。かくれんぼの天才かあんた。


『そんな事より、なぜ女子のお前に、男子便所の声がハッキリと聞こえたんだぁ?』


『お、大きい声だったんです!別に覗こうと思ったわけじゃない!!』


『そーかそーか。話は職員室で……な?』


『……最悪……』


そんな会話をしながら、二人の足音は男子トイレから離れて行った。


「………おい、秋。お前どんな方法使ったんだよ」


そう言いながら、俺は自分の入っている個室を出て、秋がいたであろう個室のドアを開けた。


………だが、そこには誰もいない………。


一番奥の個室だから、隣の個室に移ったとなれば俺の方しかない。


窓もない。


あるのはトイレの清掃用具のみ。一番奥の個室は、清掃用具をしまっておく場所なのだ。


バケツやらモップやらゴム手袋やら。


……つまり。

あの状況の中、見つからずにやり過ごせるわけない。


やり過ごすとしたら、俺のいた個室に秋も移って来るしかないのだ。


なのに……どうしていない。


……考えた結果、秋は神隠しにあいましたとさ。めでたしめでたし。


「全然めでたくねーよ……」


どこからともなく、秋の声が聞こえる。


……どこだ?


上を見ても、下を見ても、秋はいない。


………これはまさか。秋のステルス能力か!!


「んなわけねーだろうが……てか、早くドア閉めろ!」


「え? ドア?」


秋に言われ、個室側に全開だったドアを閉めてみる。


この時、俺は個室の外にいるからな。


すると……しばらくゴソゴソしたのち、秋が鼻を押さえながら出てきた。


なるほど……そういうカラクリか。


一見よくある隠れ場所だが、見落としやすい場所。つまり、扉の裏側!!


もう説明も必要ないだろう。


ドア開けます。開いたドアと壁のすきまに立ってます。で、見えません。以上。


まぁ、その拍子に鼻を打ったらしいが……軽傷でよかった。


「馬鹿野郎。どう見ても軽傷じゃないだろ。ほらみろ、鼻血大量だぞ」


秋が鼻から手をどけると、一筋の赤い血が鼻から緩やかに垂れて行くのが分かる。


つか、やっぱ軽傷じゃん。


「くそ、なんでこんな目に……大体、俺がぶつかったら感触で気づくだろ……普通」


秋が愚痴っている。


……確かに、隠れられるとはいえ狭い。


人が一人でもいれば、ドアを開けた時に絶対にぶつかって気付く筈なのに……


俺があけたときも全然気付かなかったな……。


そうか。わかったぞ。


「お前ほら、影薄いじゃん? だから、感触も気付かないほど存在感ないんだよきっと」


よくある話だ。


「よくある話じゃねー!!なにそれ!?そんなのあり得ないだろうが!!」


秋が過敏にキレる。


あるわけないって言ってもさ。それつまり事実なんだもの。


しょうがないよ。


それにほら、前も似たようなことがあった。


結構前だが、俺が廊下を走ってた時に秋にぶつかったらしいけど、俺は気付かなかったんだよ。


あの時は、『変な言いがかりはよせよ』って思ってたけどさ。


多分このせいだわ。うん。


「くそ……あ、そうそう、海、お前親父さん帰って来るんだろ?」


秋がいまだ鼻を押さえながら聞いてきた。


親父さん。親父さん……父さん!? 『なんじゃキタロー』……って、その妄想はもうやったっつーの!!


「どうしよう!!やべぇよ!!」


すっかり忘れてた!

ユキに聞かれないようにしなくちゃいけねぇんだ!


って、秋にばれたんだっけ。そうそう、で、コイツ抹殺計画を……


「おいおい。だから、その件に関してちょっと話があるんだ」


「ダメだ!!絶対に面会はダメだ!!面会お断り!!」


「じゃなくてさ。よくわかんねーけど、親父さん帰ってくんだろ?」


なんか珍しく秋がまとも…………っていうのは嘘。うん。


しょうがない。

秋には話しておくか。どうせばれたんだし。


「そうなんだよ。帰って来るんだよ」


「久しぶりなんだろ?」


「ああ」


「そんなときに、俺達が邪魔しちゃ悪いだろうからな。琴音と白河には、俺が上手いこと言っておくよ」


しゅ、秋のやつ……さすがは俺の親友。

話が分かる。


いつもそうだ。


秋は肝心な時に役に立つ奴だ。


すぐに話を理解し、陰ながら頑張ってくれる奴だ。


そんなんだから……すぐに話を理解したりするから、出番がすぐ終わってしまうんだ。


きっとそうだ。真面目だから出番が無いのだ。間違いない。


「おい。なんか失礼なこと考えてそうな顔してるぞ」


「きっと気のせいだ」


「そうか、気のせいか」


ほらね。

もっと食い付いてくればいいのに、納得しちゃうから出番が少ないんだ。きっとそうだ。


「とにかく、俺にまかしぇろ」


「うわぁ、肝心な所で噛んだ。たよりねぇ!」


「うるせーな!そろそろ授業始まるぞ、海!」


「わかってるよ」




―――――そんなわけで、仲間一人確保。


あとはオメガとエメリィーヌを家から追い出す方法だ。


そして、いつもならあり得ないこの悲劇や不幸の連鎖。


そんな連鎖のおかげで、秋が目立つというあり得ないことが起きた。


つまり、まだ俺には何かが待ち受けているというわけだ。怖いな。



突然だが、ここらでいっちょ次回予告でもやっておくか?


次回!≪俺の策は大成功!!≫よろしく!!


…………なんか変なフラグを立ててしまったような気も……考えすぎか。


「海、なに一人でブツブツ言ってるんだ?」


「な、なんでもねぇよ。てか、鼻血止まってんじゃん」


「おお、ホントだ。ラッキー!」


そんな感じで、俺達は自分のクラスへと戻って行ったのだが。


…………皆の視線が痛いでごわす。




第三十五話 完


先生に報告し逆に職員室に連行されたのは。


2年3組の莅戸(のぞき) 真麻子(まあこ)。女性。

通称:マーコとみんなから呼ばれ、最近の趣味はもっぱら覗き。

しかも男子トイレを覗くのが趣味という、変わった感性の持ち主。


今後登場の予定は無し。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ