第二十七話~奇想天外!学校生活~
「ふっふっふ。カイめ。ウチをどうにか出来ると思ったら大間違いなんヨ……」
海の家のリビングで、一人怪しくほくそ笑む少女。
その少女はが、引出しの一番上をあさっている。
いったい何をしているのか。
「お、これなんヨ。カイめ。勾玉を残しておいたのが運のつき。これでカイの学校に一っ飛びなんヨ!!!ふふふ。ふふふふふ。」
明らかに悪者なこの少女。
一人でいるのによく喋るこの少女は、エメリィーヌ.ジョセふごぁがぁ!!!
「作者さん!!ウチをフルネームで呼ばないんでほしいんヨ!!呼ぶなら、エメリィーヌと呼んでくれなんヨ」
『わ、わかったから。い、いきなり首を絞めるのはやめてもらえないでしょうかね?』
「あ、ごめんなんヨ。つい超能力を使ってしまったんヨ」
『ははは。分かってくれればいいんだよ。じゃあ、続けるよ?』
「お仕事の邪魔してごめんなさいなんヨ。どうぞ続けてくださいなんヨ」
えー。ごほんっ。改めまして、一人でいるのによく喋るこの少女は、エメリィーヌちゃん。
実は何と宇宙人なんですよ!!私実は、こう見えても謎の生命体とか好きなんですよねぇ!!
「……作者さん、なにくだらない事してるんヨか。ちゃんと真面目にやってくれなんヨ。じゃないと、先に進めないんヨ」
『あ、ちょっと!私が作者だという事は内緒なんですからっ!ここでは、ナレーションでお願いします!せっかく口調も変えているんですからっ!!』
「分かったんヨ。もう先進めてくれなんヨ。」
『ごめんねー。じゃあ、仕切り直します。』
えーごほんっ。あー。あー。
現在この家にいるのは、この宇宙人の女の子、エメリィーヌただ一人。
怪しい笑みを浮かべて、いったい何をするつもりなのか。
「これを使えば、超能力で一っ飛びなんヨ……ふふっ」
ちょ、超能力ー!?あの超能力をこの目で見れる時が来るなんて夢のような…
「ナレーションさん!?」
げっ、あ、その、ごほんっ。落ち着きました。……そう、彼女は、この勾玉を持つ事で、強力で様々な超能力を使う事が出来るのだ。
「カイもバカな奴なんヨ……勾玉を置いて行くとは……」
怪しい。怪しすぎますよエメリィーヌちゃん!!
いよっ!いかにも悪者って感じですねぇ!
実は私、善人よりも悪人を応援したくなる性分でして……サスペンスとかでも犯人頑張れって。はい。
「それじゃあ早速……」
電気のついていない暗い部屋で、少女が何かを始めようとしている。
海君!逃げてー!!
「あ、その前に戸締りの確認なんヨね。」
……エメリィーヌちゃんは良い子でした。
良い子すぎ。良いこ過ぎますよエメリィーヌちゃん!!
「……ナレーションさん。もうそのノリで良いんヨから、ちゃんとやってくれんなんヨ」
『いやー。私、初登場な物でねぇ、つい盛り上がっちゃうんですよね!いつもは海君ですから』
「わかったんヨ。でも、物語に支障の無いようにお願いするんヨ……はい、牛乳なんヨ」
『あ、これはこれは、どうも。……グビッ…うん。美味しいですねぇ!やっぱり牛乳はこうでなくちゃ』
「それ飲んだらさっさと仕事に戻るんヨ」
ありゃ。叱られてしまいました。エメリィーヌちゃんはご機嫌斜めのようですねぇ。
では続けます。
「戸締り良し。電気も全部消えてるんヨね。……では!」
すべてを確認し、意気込む少女。
良い子なのか悪い子なのか……まったく見当もつきません。
それにしても涼しい。外は暑いから私も嬉しいです。……あ!
『ちょっとちょっと!!』
「またなんヨかぁ…?今度はなんなんヨ…?」
『クーラーつけっぱなしですよ!』
「ヨ、本当なんヨ。危ない危ない。」
これを御覧の皆さまも、気をつけて下さいよ?ホント電気代って、ばかにならないんですから。
パソコンの電源の消し忘れ、冷蔵庫の開けっ放しなどには注意してください!!
「それじゃー、気を取り直して。出発なんヨ!」
『あれ?場所分かるんですかエメリィーヌちゃん』
「知らないんヨ」
あ、エメリィーヌちゃんの超能力の瞬間移動は、移動する場所が分からないとダメなんですねぇ。
『海君達の学校は……あ、ここだね』
「ありがとうなんヨ作者さん!」
『だから今はナレーションでお願いしますよ!』
「あ、ごめんなんヨ……では改めて」
まったく…。
『あ、私が教えたことは、どうか内密に……』
「分かったんヨ……それじゃ!」
それじゃー私も、最後はきちんと決めたいと思いますよ!!!
「えーと、カイの学校なんヨね」
少女が場所を確認し、両目を閉じる。すると、勾玉が徐々に光り出す。
「………はぁ!!瞬間移動!!」
少女が唱えると勾玉の光が最大になり、少女を包み込んで、少女と共に消えた―――
『うわっ!すっげぇ!!!さすが超能力!!やべぇ!!これはすごい!!どうしよう!俺見ちゃたよ!!フゥー♪』
『……え?まだ私の出番終わりじゃなかったんですかぁ!?うそでしょ!?』
『えーあーその、皆さん!大変失礼しま
第二十七話
~奇想天外!学校生活~
やぁ、俺だ。海だ。隣に秋もいる。
俺達の現在地は玄関だ。
ここから、俺達のクラスのある二階へとあがって行かなくちゃならない。
俺達はそれぞれ靴を脱ぎ、それぞれ自分の下駄箱へとを靴をしまう。
そして、上履きに履き替えるってわけだ。
「お前良かったなぁ!」
いきなり秋が謎の発言。
「はぁ?いったい何がだよ?」
遅刻したのがいいこと?こいつ馬鹿なのか?
「お前の彼女さんの事だよ!この幸せ者め!!」
ああ。あれのことね。
てか彼女じゃねぇし!!
「お前耳付いてる?どう聞いたら、あれがめでたい事になるんだよ?」
そう、『あれ』とは他でもない。
前回を見てもらえば分かる事だが、少し掻い摘んで説明しておこう。
俺は、学校に来る途中の曲がり角、つまり、曲がり角だ。
「おい。その『つまり』の意味あるのか?」
「うるせぇな。意味はねぇよ」
その曲がり角を曲がった時、ある女の子と衝突。
それが、今現在話の的になっている白河 雪だ。
そいつが、初対面な俺を見るなり、やばい顔して付き合え!!などとほざきやがったんだ。
さらにそいつは、俺と同じ高校に通っているらしい。最悪の極みだな。
めんどくさくなった俺は、その白河を騙して逃げてきたわけだ。
で、話は戻る。
「あの子結構可愛いしさ。くだらない事言ってないでオーケーしちゃえよ」
俺達はどうせ遅刻なので、ゆっくりと歩きながら話をしている。
「なら、秋にくれてやるよ。あんな変人。」
酷い奴だな。女の子にそこまで言うなんて。と思っている方も少なくはないだろうが、実際本当の事なんだから仕方がない。
なんかえらい興奮してたし。あれはまるでオメガだ。女版オメガ。
「くれてやるって俺に!?いや、いらねぇよ!!」
とても嫌がる秋。
「なんだよ秋。お前もやっぱり嫌なんじゃねぇか」
「いや違うぞ。あの子はお前が好きなんだ!俺が奪えるかよ。……変人だし」
「やっぱり他人事なんじゃねぇか!!なにこっそりつぶやいてくれてんねん!!!」
ほら。基本人には優しい秋さえも、変人だと認めているんだ。
もうあいつはベストオブ変人だな。
「そういえば琴音は?」
「はぁ?今さらかよ。琴音はちゃんと中学行ったぞ。」
「あ、そうなんだ」
「そういえば琴音が、ニヤニヤしながら言ってたぞ?『海兄ぃも隅には置けないねぇ』って。」
琴音の奴。あとでぶっ飛ばす。
「やめとけ。逆にやられるぞ」
……そうだな。琴音には勝てない。あきらめよう。
そんな事を話していると、俺達は階段を上り終わった。
「じゃあ秋。俺こっちだから。」
前にも言ったと思うが、俺は2組で、秋はとなりの1組だ。
「海!せーので入るぞ?」
「やだよ。遅刻しましたー」
「おいっ!」
俺は秋の言葉を無視し、一人で教室のドアを開ける。
そこには……
「おい秋。誰もいねぇぞ?」
そう。誰もいない。
静まり返った教室だ。平和だ。
「は?そんなことあるわけ……あ、誰もいないな。」
秋のクラスも同じらしい。
……あれ?今日って学校登校日だよな?
そう錯覚させてしまうほどの静けさ。
でも、玄関にもカギはかかってなかったし、下駄箱だって靴でいっぱいだった。
てことは、みんなどこ行ったんだ?
俺が悩んでいると、秋が言った。
「あ!もしかしてさ、体育館じゃね?ほら、よく集まるじゃん。」
あー。あー。なるほど。その手のあれか。
「どの手のあれだよ」
「まぁ、なら、多分そこだ。」
「どうすんの?今から行くか?」
『行くか?』とは、もちろん体育館の事だ。
そんなもの聞くまでもないだろうが。
「今から行ってもどうせアレだしよ。教室で待ってようぜ」
「そうだなー。」
こんな感じで、教室で待つ事にした俺達は、それぞれの教室の、自分の席に座る。
学校なんて正直どうでもいいしな。自由にやるのが一番なんだよ。
あ、ちなみに俺の席は、窓側だからな。一番奥の。ついでに言っておくと、俺の隣の席は誰もいない。
なんか避けられてるッポイのと関係があるのだろうか?
そしてさらに言っておくと、この空席がとても不安なんだ。この、一人分の空席が。
………俺の隣にあいつが来ない事を祈る。てか、俺のクラスに来るな。来たら呪う。この学校を呪っちゃうよ。……絶対来るなよオメガ!
「ふぁ…!どうでもいいけど眠いな。」
そうか。俺って今日あまり寝てないんだったな。えーっと?今8時50分だから、あいさつなどが終わって教室に来るのに、あと10分くらい?いや、オメガの転校生紹介的な時間も含めれば15分くらいか?
つーか高校生にもなって、『俺は転校生です!』って、皆の前でとか恥ずいな。西郷の奴何考えてるんだよ。
っと、勝手に話を進めてしまったが、つまりはこの高校は変だ。
大体は西郷…俺の担任だな。その担任が、なんか変なノリで色々な事始めやがるから。
去年なんか、文化祭とか年に3度やった。バカだろ。
意味もなく家庭訪問とか始まりだすし、この高校頭おかしいとしか言いようがない。
なんとも愉快な高校だな。親から苦情とかこないのか?
と、言う風に、おかしな所を語り出したらキリがないほどあるのだ。
イベント大好きな高校ってわけだな。
つーか今思うと、西郷って何者なんだ?学校全体を動かすなんて……いや、学校側が皆賛成してるのか。余計アホだな。
まぁ、そんな感じだ。よく隣の中学の校長に怒られてたりするのを、俺は知っている。
「そんな事より、しばしの休憩だな。皆が来るまでひと眠り……」
「カイ、みんなの所には行かなくて良いんヨか?」
「いいのいいの。どーせ、校長という肩書背負っただけのただのジジイの話を、長ったらしく聞かされるだけなんだから」
「そういうもんなんヨかねぇ」
「そういうもんなんだよ。つーか俺寝るから、エメリィーヌは大人しくしてろよ?」
「分かったんヨ」
はぁ、エメリィーヌのやつ。大人しくしてろって言ったそばからはしゃぎ回りおって。
これじゃ、休めねぇじゃねぇか。……ん?エメリィーヌ?
「って!なんでお前ここに居んの!?」
俺は思わず、机に手を突き立ちあがってしまった。
ちょっと眠くてボーっとしてたから気にならんかったが……こいつ家においてきたはずだ。
「いまさらなんヨか……?」
あきれ果てた目で、俺を見るエメリィーヌ。ぶっとばすぞガキ。
「海ー!なんかあったのかよ?ってエメリィーヌ!?」
俺の声を聞き、様子を見に来た秋。分かりやすいほどに驚いている。
「なんヨー♪」
……っておい!エメリィーヌ!!黒板に落書きするなよ!!
「おい海。これどうすんだよ……」
秋が聞いてきた。
どうするって言われたってよ。俺だって困るよ。
つーかエメリィーヌ。お前なぜよりによってそのダサい恰好なんだよ。
「カイ!今なんて思ったか分かったんヨ!!これはウチの星では、みんなが来ている服なんヨ!?バカにしちゃいけないんヨ」
だまれこの緑色野郎。
「ウチは緑色野郎じゃないんヨ!!」
うおっ!?こいつ人の心を読みやがった!!
「海。お前が読まれたと思った時。大概は自滅している事を覚えとけ」
「うるせぇな!!」
「そんなことより、給食はまだなんヨか?」
「だまれそこっ!!お前もう帰れよ!!」
「おいエメリィーヌ。今日は早帰りだから、給食は無いぞ?てか、ここ給食制じゃないし」
「そ……そんな…ならウチは何のためにここまで……」
「不純な理由で俺の邪魔しに来るんじゃねぇよ!!!」
ゼェゼェ……いったん落ち着け俺。平常心平常心。
冷静に考えよう。こいつがいきなり現れたのは、超能力を使ったからだ。
ならこいつに再度使わせ、家に帰す。これで解決だ。よし。決行。
「エメリィーヌ。お前帰れ」
「いやなんヨ」
首を横に降っているエメリィーヌ。ぶっとばしていいか?
「海。今日は早いんだしさ。エメリィーヌの面倒見てやれよ」
「そうなんヨ。」
お前が言うなよ。しかも秋にいたっては他人事だろ。
こういう時に、琴音がいないのがきつい。琴音なら絶対エメリィーヌを説得してくれるに違いないのに。
「まぁ、俺はもう自分のクラス戻るからよ。どうするかはお前ら二人で決めろ。」
そういって、カッコよく去って行った秋。ざけんな。
「カイー。今日だけで良いんヨからさぁー。」
でた。小動物のようなキラッキラした瞳。
つーかめんどいわ。もういいわ。心折れたわ。
「……もう勝手にしてくれ。」
まぁ、少しだけなら何とかなるだろう。
そう思った俺は、許可したんだが。
「やったーなんヨ!カイが許してくれたんヨ!!これでいっぱい遊べるぜぃ!!」
……まさか2秒で後悔することになるとは。
「おいエメリィーヌ。もう帰れとは言わないから、俺の言う事だけは聞いてくれ」
俺は、元気よく飛びはねているエメリィーヌに言った。
「なんなんヨ?」
「絶対に俺のそばから離れるなよ。」
動きまわられちゃ迷惑だ。体が持たん。
「……カイって大胆なんヨねー!」
急にわけわからん事を言い出すエメリィーヌ。
いったい何が大胆なんだよ。俺はいたって普通だぞ。
「意味分からん事言うなよ」
「だって、『もう絶対に俺のそばから離れるなよ……ずっと俺と一緒にいてくれ……』……みたいな?」
「意味分からん。しかもよくありそうな設定だな。」
「そうなんヨ!主人公のサトルと、ヒロインのハルカ。その二人の前に立ちはだかる様々な障害を、二人の愛で乗り切りながら、頑張って行くんヨ。」
なんじゃそりゃ。
あぁ、オメガの影響だな?ったくオメガのやつ。なにこんな小さい女の子に恋愛もの見させてるんだよ。つーかエメリィーヌもハマりすぎだろ。
つーか主人公の名前ありきたりだな。ヒロインもそうだが。
「あ、ちなみにこのシーンは、サトルとハルカがケンカした時のラストシーンなんヨ。ここはウチが一番好きな所なんヨ。サトルがそっと抱きついて涙を流しながら……」
いや聞いてねぇし。
相手を思うあまりのケンカでの決別みたいな事か?
で、自転車の一部分みたいな名前してるサトルが、ハルカとまたお互いの気持ちを確かめあっているシーンっぽいな。
たぶん、ここは感動のシーンなんだろうな。ちょっと見てみたいな。
「で?そのサドル達はどうなったんだ?」
「サドルってだれなんヨか!?サトルなんヨ!!自転車の一部分のような名前にしないでほしいんヨ!!」
あ、思わず口を滑らせてしまった。
はっはっは。爆笑もんだな。サドルってなに?自転車と愛の物語?はは。だっせぇー!
「あの二人をバカにするななんヨ!!」
「わりぃわりぃ。…で?そいつらどうなったんだ?」
「サトルは嫌われてしまうんヨが、まぁ、結局は仲直りするんヨがね。」
「えっ!?嫌われんのかよ!?サトルが悲惨すぎるだろ!だって涙流しながらあんな恥ずかしいセリフをハルカに言ったんだぜ!?」
可哀そう過ぎる。ハルカさん。もう許してやろうぜ。
「ん?なに言ってるんヨか?ハルカはその時カラオケ行ってたんヨ。」
はぁ?ハルカに言ったんじゃないのか?
「じゃあ、サトルは誰に言ったんだよ」
まさかほかの女の人?うわぁー。サトル最低だな。
「他の女の人じゃないんヨ」
違うのか?じゃあだれだ?もしかして母親か?はっはっは。そりゃ爆笑もんだな。主人公が母親大好き人間だったなんて。マザコンって言ったっけか?そりゃ嫌われるわな!
「違うんヨ!!なに一人で爆笑してるんヨか!?」
「はぁはぁ、腹いてー!……てか、違うなら誰に言ったんだよ?」
マザコンのサトルは。いったい誰に向かって言ったんだ?
「抱き枕なんヨ」
………はい?
「え、は?」
「だから、ハルカの写真がついてる抱き枕なんヨ!!」
「う、嘘だろ……ぷっ。ぎゃはははは!!!むりむり!ありえねーだろ!!あのサトルが変態だったのかよ!!!きもちわりぃー!!そりゃ、嫌われるわ!!ひぃー。苦しい!」
つまりサトルは、泣きながら、抱き枕を優しく抱いて?『そばにいてくれよ……』ってばか丸出しじゃねぇかよ!きめぇ!
全国の振られた男子の究極系のような主人公だなぁ!おい!
そりゃ嫌われるわー!つーかハルカ、最終的に許したんだろ?いい人すぎるだろ。
そこからまた、サトルを絶望のどん底に叩きつけてやれよハルカ。そうすれば面白いのに。
『サトル……許してあげる……』『ハルカ……』『なんてなぁ!気持ちわりぃんだよこのブタ野郎!!』『……え…?』『お前なんか泣きわめいていればいいんだよぉ!!!』
みたいな?つーか、ハルカはなにキャラだよ。ちょっとヤバいな。笑い過ぎておかしくなっちまったぜ。
「カイ!いつまで笑っているんヨか!?」
「ヒィヒィ……すまんすまん!いやぁー。それにしても、全国のさとるくんがいじめにあいそうな内容だな!!」
「アホなんヨか……ヨ?なんか音がするんヨ」
「え?音?……あ、どうやら終わったらしいな。」
丁度いい時間だしな。皆が教室に入って来る頃だ。
……って、こいつどうしよう。まったく考えてなかったが、こいつどうしよう。
いやー。困った。
困ったから、とりあえず自分の席に着こう。
俺は何となく、自分の席に座った。
「カイ!妖怪が来るんヨ!!逃げるんヨ!!わー!」
なにが妖怪だ。お前の方が妖怪のようなもんだろ。
エメリィーヌは、みんなの足音を、妖怪だと言って騒いでいる。
とても楽しそうだ。
どうして子供ってくだらない事でこんなに盛り上がれるんだろうな。
「そういえばエメリィーヌ。お前、クラスの奴らに出会った瞬間『ウチは宇宙人なんヨ!』とか、『超能力使えるんヨ!』とか言うなよ?」
絶対頭おかしいと思われるしな。
「なんでなんヨ?」
「だから、絶対言うなよ!それが出来ないなら帰れ!」
「わ、分かったんヨ。言わないんヨ」
これでよし。
クラスの奴らには、黙っておこう。評判が今以上に悪くなられでもしたら、さすがに居心地が悪くなる。
……ってやべぇ!!黒板エメリィーヌの落書きまみれだ!!
黒板には、わけのわからない生き物の絵がたくさん書かれている。
つーか、エメリィーヌって絵が上手いんだな。
ちゃんと生き物って分かるんだから。
「これはチューリップなんヨ!!」
訂正する。絵が下手すぎだろ。
つーかとりあえずあれだ。皆が来る前に消さなくては。
遅刻した上に黒板に落書きとなっちゃ、さすがの西郷もゴロピカリだ。
「ゴロピカリ?お米なんヨか?サイゴウはお米!」
「違う!!違うがどうでもいい!!」
俺はすぐに黒板に駆け寄り、手元にある黒板消しで、落書きをなかった事にし始める。
「ウチもやりたいんヨ!」
もちろん、邪魔してくるやつもいる。
「うるせぇ!邪魔だ!あっちいってろ!!!」
「ぶー。カイのけちんぼ!」
悪態をつきながら、エメリィーヌが離れていく。
いったい誰のせいだと思っていやがる。
だんだんとみんなの声と、足音が近づいてくる。
だが、エメリィーヌの身長だ。書ける範囲はたかが知れているので、すぐにすべてを綺麗に消し終わる。
「よっしゃ!これで完璧!」
俺が消し終わったと同時に、教室の扉が開いた。
そして、久しぶりに西郷とTHE・ご対面だ。
「なんだ山空!お前生きてたのか!」
おい。
「生きてるに決まってるだろ!!」
「ほぅ。先生に向かってその口のきき方。山空ぁ。いい度胸だなぁ?」
やべぇ。いつもエメリィーヌとかにツッコミを入れる感じに言ってしまった。
「めめめめ、滅相もございません!」
「ふん。まぁいい。ところで山空。お前は遅刻までして何をやってたんだ?」
「黒板を綺麗にしてました!!」
「ほほぅ。いい心がけだ。だがしかし!遅刻してまでやる事ではないのも確かだ」
なんだと?それは違う。間違っている。
「黒板が綺麗という事は!教室にいる人たちが皆気分よく勉強ができるという事なんです!!つまり、学力上昇につながる!それ故に、この高校の評判もいい感じになる!ほら。いいことばかりじゃないですか。」
「……なかなかに上手い言い訳を考えたものだ。よしわかった!その熱意に免じて、今日の所は!」
よっしゃ!俺の勝ちだ!!
西郷が俺の遅刻を許そうとしたその時だった。
「ちょっと、この緑の子だれ?」
………。まぁ、そうなるよな。
後ろの方のドアから入ってきた女子生徒Aに、エメリィーヌが見つかってしまった。
まぁ、同堂と突っ立ってればそりゃ嫌でも視界に入るだろうが。
「ウチは、エメリィーヌなんヨ!!よろしくなんヨ!!」
………。元気にあいさつしてます。
俺と西郷は、ほぼ同時にエメリィーヌのいるであろう方向に振り向く。
そこには、後ろの黒板に書かれた落書きと、それを一生懸命消している途中であろうエメリィーヌ。
そして、そのエメリィーヌにあいさつされた、……あれは里中か? その後ろに、ぞろぞろとこのクラスの生徒達が入って来る。
「えっと……どこの子……?」
しばらく困惑している様子。西郷も黙って見守っている。
唯一その中で普通なのが、俺とエメリィーヌだ。いや、俺もちょっと動揺している。
もっとこう、さりげなーい感じで行こうと思っていたのに。
「ウチはコッカコラ星から来た、コッカ星人なんヨ!!」
いきなり暴露。
こいつには物事の順序みたいなものはないのか。
宇宙人だって事はばらすなよって、あれだけ言いきかせたのに。
「う、宇宙人……?」
ほら。だから駄目だよ。頭おかしいと思われるから。
……いやでもあれだな。俺がエメリィーヌと関係あるのはまだ分かってないはずだ。
なら、俺の評判が落ちる事はまだない。
つまり!エメリィーヌが俺の事を言わなければ、まだ大丈夫!!!
「カイー!つい口がすべったんヨ!!」
うん。終わったね。
こっちみながら、手まで振っているんだから。最悪だろ。
「……あの金持ち不良の妹……?」
「か、金持ち不良!?嘘だろ!?」
つい声に出して驚いてしまった。
俺が避けられてるのって、金持ち差別だけじゃなかったのかよ?
不良!?嘘だろ。あり得ねぇだろ。
そりゃ遅刻は多いし、サボったりも多々あるけどさ。
それでっ不良って事は無いんじゃないか?
あと思い当たるのは、目つきがちょいと悪いぐらい……これかぁ!!
不良の根源はこれかぁ!!
あ、だからちょっと震えてる人とかいたんだ。俺が通るだけで。
なるほどね。そりゃそうだよ。金持ちだけで、クラス中が嫌うはずないもの。
良く不良に絡まれたりするし。うわぁー。納得だわ。
て事はあれか?俺いつも授業中とかつまらなそーにしてたから、それ見て不良だと勘違いして、で、クラス中に噂という噂が……。
へー。ま、今となっちゃどうでもいいけどな。
その時、不意に西郷が言った。
「おい山空。お前に妹がいたなんて知らなかったぞ」
「いやその妹じゃ……」
ん?まてよ?今は妹の方が都合的にはいいんだよな。
宇宙人で居候って、なんか変だし。
いやでも、こいつを妹にするなんて無理だ。バカすぎる。
「確かエメリィーヌちゃんって言ったっけ。」
里中が喋り出す。
「そうなんヨ!」
「あの……あいつと知り合いなの?」
「そうなんヨ!カイはウチを家に居候させて、いつも色々な事を教えてくれるんヨ!」
おい。人によっちゃ、えらい誤解が生まれかねないぞ。
エメリィーヌの言葉で、他の奴らがざわざわと騒ぎ出す。
『噂には聞いていたが……』『最悪だぜ、あの噂は本当だったのかよ』
『あいつ気にいらねぇな』
……あちゃー。
俺の知られざる印象が、俺の目の前で暴露されている。
噂って何?俺に教えてくれよ。
この学校での俺のイメージっていったい……涙が出てきた。
俺の学校生活を、さらに気まずくさせるようなエメリィーヌ。
俺はいったい、これからどうなるんだ。
第二十七話 完