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俺の日常非日常  作者: 本樹にあ
◆日常編◆
34/91

番外編!第三幕~今日の竹田家take2~

番外編です

番外編!第三幕

~今日の竹田家take2~



「秋兄ぃー!今ひまー?」


「今忙しい」


「うん。暇だね。じゃあ、実はお願いがあるんだけどさー」


「相変わらず俺の意見は無視ですか」


「いやそれどころじゃなくて、今とても秋兄ぃに頼みたい事があるんだよ」


「え?鬼ヶ島?いやいや、そんなもん桃から生まれた男の子に任せておきなさい」


「違うよ」


「あー。恭平の集めた琴音の写真を貰ってきてほしいのかー。お前自分大好きだもんなー」


「違うよ」


「じゃあなに?この俺がカッコよすぎて恋心抱いたとか?」


「えっ!?なんだ分かったの!?秋兄ぃすごいよ!!」


「え!?嘘でしょ!?いやいや、そんな俺困るよ!!」


「秋兄ぃバカでしょ。そんなこと、地球に氷河期が再来するぐらいあるわけないでしょ」


「それはそれでひどいな。しかも、妙に変な言い回ししやがって」


「変なのはあんたでしょー?急にボケ始めてさ。なに?目立つ為の新しいキャラ作り?」


「おい。『あんた』は無いだろ。せめて兄貴と呼びなさい」


「バカ兄貴ー!お願いがあるんだけどさー」


「バかをつけるなよ!!琴音って、意外とひどい奴だな。海達の前ではいい子ぶるくせに。」


「……だからね秋兄ぃ。リアルの妹なんて、所詮はその程度だって前も教えたはず……」


「ストップ!!!ダメダメ!!琴音がそういう事言ってると、なんかダメな気がする!!」


「なんでさ?」


「イメージが変わるからだよ!!こう、可愛らしくて、大人しい感じのイメージが」


「私はそんな性格じゃない」


「うわっ。誰にも見られてないと急にきついなコイツ。いつもの琴音はどこ行った」


「あのね秋兄ぃ。海兄ぃの前だって、普段と変わらずに……」


「いや、100%いつも家にいる時の琴音とは違う!!」


「それを言うなら、秋兄ぃだって……どこか……全然変わらないや」


「だろ!?俺はいつも俺なのにさ。琴音ってなんかキャラ作ってるみたいな?」


「べ、別に作ってなんかないしー!」


「いや、作ってるね。だってよ、海達の前では、純情乙女な清潔感あふれる、おしとやかな少女じゃん?」


「そう?」


「でも家にいる時なんかは、適当だし、口悪いし、なんか兄貴をパシリに使うし、『あぢぃー』とかいいながら、クーラーつけて大の字で転がってるし、部屋汚いし、宿題しない、外出ない、暴力的で怖いし、恥ずかしがる素振りも見せないわ、兄貴を思いやる気持ちなんか一切感じられないわで……」


「わー!わー!わー!!ちょっとやめてよ!いいじゃん家ではくつろいだってさ!!しかも、秋兄ぃをパシリに使った事ないし!!部屋だってそこそこきれい……なはずだよ!!」


「おいまて。なぜ一瞬言葉に詰まった。自覚あるなら片づけろよ」


「だからちらかってないよ!!ちょっとものが多いだけだよ!!」


「うわっ!出たよ琴音のへ理屈。ホントお前って性格悪いな」


「ちょ!!……もういいよ!そうだよ!私は性格が悪い適当な妹ですよーっだ!!」


「もうさ、お前恥ずかしがってないで、いっそのこと海達の前で自分をさらけ出してみたらどうだ?以外とそうでもないもんだぞ?」


「べっ、別に恥ずかしがってなんかないし!いつもの私だしっ!!」


「嘘つけ。お前はあんないい子じゃないはずだ。俺は信じてる!!」


「ちょっと意味分かんないから!!それに、よくあるでしょ!?こういうの!!」


「あ、認めたな?お前認めましたな?私はいつも良い子な感じを作り出している、小汚い女だって認めたな?」


「こ、小汚くないよっ!!……それに、海兄ぃ達の時の私も、家にいる時の私も。どっちも大事な私の一つなんだよ……。だから私は、どっちの私も大事にしたいと思うんだ!」


「……まぁ、なんかかっこいい事言ってるけど、要は素直になれないって事だろ?」


「いや意味分かんないし」


「とりあえず、まず勇気を持ってだな」


「……秋兄ぃって影薄いよねー」


「はぁ!?今関係ないだろ!?」


「ん?私なんでこんな所で一人で呟いているんだろう。誰もいないのに」


「ふざけんなよ!!自分がまずい状況だからって、俺の気にしている事を直球にえぐるんじゃねぇよ!!!やる事が汚ねぇぞ!!!!」


「あーきこえない。きこえない。しかも、別に私はまずくなかったしー!」


「聞こえてるだろ!!もうお前、絶対聞こえてるだろ!!!」


「あ、そうそう。お願いがあったんだった。でも、秋兄ぃいないなー」


「この野郎!!調子に乗るなよ!?さすがの俺でもキレるぞ!?」


「おかーさーん!秋兄ぃがねー!お母さんの事を、おば」


「ちょちょちょちょ!!ストップ!!!……ひきょう者め!!お袋が暴れ出すだろ!!」


「って、そういえば、お母さん買い物に行ってるんだっけ。わすれてたなー」


「くっ……琴音め。お袋がいないのをいい事に、ワザと俺を脅しやがって」


「あ、そうだ。秋兄ぃ。ちょっとお願いがあるんだけどさー」


「お、おぉ。急になんだよお前。いきなり話しかけてくるのかよ。いつも驚かせてくれるな。……っと、お願いって何だ?」


「あ、いやね。そんなんでもないんだけどさぁ」


「なんだよ。早く言えよ」


「本当に大したことじゃないんだけどさぁ」


「じゃあ言わなくてもいいや」


「聞けよっ!!」


「なら早く言えよ!!!」


「今、夏じゃん?」


「ああ、夏だな」


「とても暑いじゃん?」


「ああ、とても暑いな」


「そこで、私はこういう想像をしてみた」


「どんな?」


「暑いといえば砂漠。そんな砂漠に、青年は一人ぼっち。水もなく、食料もない。暑さにやられて熱中症になり、とうとう青年は動けなくなった。そして、倒れた青年は思ったんだ。『せめて最後に、冷たい物が食べたかった』と。そして、次々にそうまとうのようなものが、頭の中に流れ始める。愛する家族の顔。息子達。その家族との思い出。初恋の相手や、あの時、あの場所、あの出来事などが次々に浮かび上がる。おいしい料理。それはまるで夢のような料理。暑さでやられている為か、匂いまでも感じて来るような気がした。ラーメン、うどん、そば、焼きそば。そこで、最後にある物が流れてきた。とても冷たいアイス。その時私は思った。『アイスか……食べてみたかったが、今となっては、叶わぬ夢だろう。』その言葉を最後に、不幸な青年は力尽きた……。どう?」


「え?どうってなにが?」


「だから、何か気付いた事は?」


「……その青年って、どんだけ麺類が食いたかったんだ?」


「はぁ!?」


「いやだって、そうまとうで見た料理が、四つ続けて麺類だったからさ」


「しらないよ!!そこじゃなくて、もっと他には!?」


「え?ほかに?……んー」


「ほら、青年がさぁー」


「青年が?」


「だから、青年があれでしょー?」


「ああ!!なるほど!!」


「やっと分かったのー?それじゃあさぁ」


「この青年って、結婚してたのか?」


「しらんがなっ!!そうじゃなくて、もっとあるでしょ!!こう、青年の望み。みたいなのがさ!!」


「望み?……あぁ!!」


「わかった!?」


「この青年って、無理矢理 誰かに砂漠へ連れて行かれたんだな!?で、砂漠にホントは行きたくなかったというのが、青年の望みで」


「なんでっ!?え、なにその設定!?ありえないでしょ!!てか、気付こうよ!!もう気付いてよ!!」


「はぁ?いったい何なんだよ?」


「だからさー。青年が言ってたでしょー?死ぬ間際に!」


「ああ!『僕は帰ったら結婚するんだ!!』ってやつか!!」


「はぁ!?いつ言ったのよ!!その青年がいつそんな言葉言ったの!?しかもなに?結婚?もう子供までいるんでしょ!?愛する家族がいるんでしょ!?なに堂々と不倫発言してんのよ!!もう!他にあるでしょ!!青年は冷たい物が食べたかったんだよ!!」


「あぁ。アイスが食いたいってことか?」


「はぁ……そうそう。やっと分かってくれたんだね」


「あのな琴音。青年は確かにアイスを食えなくて可哀そうだとは思うよ。でもな?アイス以上に、愛する家族がいる。青年は、そっちの方が悲しかったんだと思うぞ?あと、青年は本当に不幸だったのかな。もしかしたら、青年は満足だったかもしれない。この砂漠に来て色々な物を知って。愛する家族に囲まれて。消して、青年は不幸じゃなかったと思うぞ?だからな、ここのあたりを踏まえて書くと、なかなかいい感じになるぞ!」


「へぇー。そんな考え方もあるんだね!秋兄ぃって意外と凄いね。」


「いや、琴音もなかなかに凄いよ。この調子でいくと、将来は本当に小説家になれたりするかもなー。……琴音、俺は応援してるから!頑張れよ!!」


「うん!ありがとう秋兄ぃ!!私頑張って、みんなを感動させるような物が書ける小説家を目指すよ!!!……って、ちっがーーーーう!!!!!なに小説家って!?意味分かんないんだけど!?」


「え?琴音小説家目指してるんじゃないの?俺はてっきり、小説のアドバイスが欲しいのかなと思ったんだが……違うのか?」


「違うよっ!!小説家なんて目指してもなければ、書いたことすらないし!!どんだけアホなの!?」


「アホって何だよ!!俺は真剣に考えてだな!!つーか、そんなにキレるんだったら、本当の答えはなんなんだよ!!」


「ほら!青年が言ってたでしょ!!アイス食べたいって!!」


「ああ、言ってたな」


「つまりはそういう事だよ!!!」


「……へ?あ、ちょ、え?」


「いや、だからね?青年が可哀そうだったでしょ?だから、私も青年みたいにならないように、秋兄ぃにアイスを買ってきてもらって……って、なんで私が説明しなくちゃいけないの!?メチャクチャバカみたいじゃん!!」


「え?じゃあ、つまり、お前がアイス食いたいから、俺に買ってきてもらいたいと?」


「そう!」


「って事はあれか?たったそれだけを伝えたいがために、俺はあの長ったらしい青年の話を聞かされてたってことか?」


「そうだよ!」


「……めんどくせぇ!!お前めんどくさいわ!!素直に頼めばいいだろそんくらい!!なに凄い遠まわしに言っちゃってくれちゃってんのよ!?」


「う、うるさいな!!元はといえば秋兄ぃがアホだからいけないんじゃんか!!このアホ兄ぃ!!」


「はぁ!?なんだその言いがかりは!!素直に頼まないお前が悪いんだろ!??」


「じゃあ私が素直に頼んだら、秋兄ぃは買いに行ってくれたの……?」


「ああ。もちろん!」


「じゃあ、お願いするよ。私が悪かった。謝るから、アイス買ってきてください」


「……自分で行けよ」


「それが嫌だから頼んでんじゃん!しかもさっきと言ってる事が違うしっ!!」


「あのな?琴音。最近の若者はずるいんだよ」


「自分で言うなしっ!!」


「言うなしっ!!ってなんだよ。お前おかしいぞ」


「うるさいな!もういいよ!!秋兄ぃにはもう頼まないから!!ふんっ!!」


「おい、ちょ、待てよ琴音!スネるなよ!買ってきてやるからさ!!」


「え?ホント?じゃあ、いつも私が買ってるやつね。はい、これ財布。あ、ちなみにソーダ味じゃないほうにしてね?じゃあ、よろしく!ありがとね!お兄ちゃん!!」


「うわぁ……お前物凄い分かりやすい性格してんな。急にお兄ちゃんとかやめろや。……って、もういいわ。買ってくりゃいいんだろ?」


「うん!ありがとう!!あ、ちなみに、溶けちゃうとやだから、すぐ帰ってきてね?」


「はいはい」


「走って帰って来てよ?全速力で!!絶対だよ?」


「はいはい」


「あ、ちなみにお金足りなかったら秋兄ぃがだしといてね。多分100円ぐらい足りなくなる予定だから」


「はいは……って、ええ!?ちょっと待てよ!!!……おい!お前の財布の中、五円玉一枚しか入ってねぇじゃねぇか!!」


「はい、秋兄ぃ行ってらっしゃい!アイス105円だから、ぴったり足りるはずだよ!」


「足りてねぇよ!!ちょっとまてよ!!おかしいだろ!?っておい!琴音!!ドア閉めるな!!」


「はいはい。早く買ってきてね!お兄ちゃん♪」


バタンッ

カチャ


「おい琴音!!鍵閉めるなよ!!うわっ!なにこいつ!!こいつの作戦が気持ち悪いほど精密に練られてやがる!!おーい!!開けろー!!」


『秋兄ぃ!近所迷惑だよ!ドア叩かないでよ!』


「うるさいな!!お前のせいだろうが!!開けろよー!!」



「……あら、竹田さんちの。秋君、こんにちわ」


「開け……、え、ここ、こんにちわっス」


「なに?また琴ちゃんに追い出されたの?」


「あ、えと、違います!最近の遊びっス!!もう飽きて、これからアイスでも買ってこようかと思いましてね!!」


「あら、そうなの。まぁいいわ。とりあえず、竹田さ…いや、お母さんによろしく言っておいてね。この前はどうもありがとうございましたって。」


「ああ!醤油がなくなった時のやつッスね!わかりました!伝えておきます!!」


「じゃあ、琴ちゃんには優しくしてあげてね。」


「はいっス!さよならっス!」


「はい、さようなら」



「……まったく……琴音のせいでえらい目に合ったぞ。完璧に笑われてたじゃねぇか」


『秋兄ぃが悪いんでしょうが。早く買ってきてね』


「お前まだそこにいたのか!!てか、やっぱり兄貴をパシリにしてるじゃねぇか!!」


『しつれいなっ!パシリだけじゃなくて、財布としても使ってるよ!!』


「なおのこと悪いわっ!!」


『じゃあ、よろしくね。お.に.い・ちゃん♪』


「お兄ちゃんやめい!!っくそ、まぁ、いいや。まってろ!すぐ買ってきてやるから!」


『うん。ありがとね。悪いとは思ってるよ。ホント秋兄ぃは頼りになるよ。』


「嘘つくな」


『あ、ばれた』


「え!?嘘なの!?え、ちょっと待ってよ!!」


『早く行ってきてよ』


「え、あ、ああ。分かったよ!この小悪魔め!!」


『行ってらっしゃ~い♪』


「くそっ。妹に良いように使われるなんて……後で覚えてやがれ!!!」


『……でも、本当にありがとうね』


「うるせー!!行って来る!!」




そう。これが秋と琴音。この二人の兄妹の日常風景なのだ。


これはその、ほんのわずかにすぎない。


二人のドタバタな日常は、これからも長々と繰り広げられることだろう。




終わり。

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