第二十五話~悲劇の秋とその他少数~
八月下旬。
最近、時が経つのが早い気がする。
うん。早い。早すぎて困る。
もう休みが終わってしまった。
これじゃあ、ギャグ漫画とかによくある、都合のいい設定みたいじゃないか。
朝からバタバタ。
なぜなら今日は、待ちに待った登校日!!
クラスのみんなと、早く仲良くなりたいにょー!
そんなわけで俺は、ウキウキ気分で学校に出動なのでしたー!!
第25話
~楽しい楽しい学校なんだよー!~
「………なんヨ!!」
「『なんヨ!』じゃねーだろ。勝手に俺になり済まして語るんじゃない!!」
「えー?頑張ったんヨに~!」
「どこがだよ!!たしかに、いつもの語尾は出てないけれどもだな。とにかくおかしいんだよ。ほら、ここ見てみろ。」
「ん?どこなんヨか?」
クラスのみんなと、早く仲良くなりたいにょー!
「これだ。この、『にょー!』ってなんだよ!!愉快な仲間たちの一人みたいな語尾をつけやがって!!お前の中で、俺はどーなっているんだよ!!」
「え?カイってたまに言わないんヨか?にょーって」
「いやいわねぇよ!?言ったことねーよ!?こんなことするなよ!!読者に、頭おかしーと思われるだろ!?」
「えー!可愛いんヨー?にょって可愛いんヨー?」
「ああ、可愛い。確かに可愛いだろうな。男が言ってなければな」
「そうなんにょかー?ウチは良いと思うんにょ。どうなんにょ?ウチ、可愛いんにょか?」
「語尾やめろ。お前は全然可愛くない。しかも、時々男女に聞こえてしまって困る」
「にょーん!?」
「変なショックの受け方するな!!って、そうそう、そのあとの文も問題だ。」
そんなわけで俺は、ウキウキ気分で学校に出動なのでしたー!!
「これなんヨか?」
「あ、語尾が戻った。そうそう、これこれ。」
「どこが変なんヨか!!」
「まずその壱。『ウキウキ気分で』。これまずあり得ない。ウキウキじゃないもの。グテグテだもの」
「グテグテってなんなんヨかいったい。」
「そしてその弐。『出動なのでしたー』ね。これ陽気過ぎだろう!!なのでしたーってなに!?きょうのわんこぐらいでしか聞いたことねぇよ!?」
「きょうのわんこて。」
「さらに出動ってなにさ!!俺は消防隊員か何かなのか!?出動してどうする!!登校しょうぜ!!まともに登校しようぜ!!」
「そうそう、セリフばっかりで手を抜いちゃいけないんヨ作者さん!!まともに投稿しましょうなんヨ!!」
「ちょっとエメリィーヌ!!人の話を聞け!!どこ見て誰に話をしている!!俺はここだ!!」
「ちょっと諸事情のほうを。」
「難しい言葉知ってやがるな。地味にムカつく。……そうそう、あとサブタイトルも勝手に改ざんするなよ。」
第25話
~楽しい楽しい学校なんだよー!~
「これのどこが悪いんヨか!?」
「まずこれね。この、『第25話』ね。『25』は漢字だから!!正しくは『二十五』だから!!」
「か弱いウチに漢字は無理なんヨ」
「誰がか弱いだ。弱いのは頭のほうだろ。そして、これ。『~楽しい楽しい学校なんだよー!~』これね。良く『よ』をカタカナにしないで出来たな。」
「そこはものすごく頑張ったんヨ」
「ほーえらいもんだ。って違う!!サブタイトルに違和感バリバリだよ!!」
「バリ感?」
「違和感バリバリ!!二つくっつけちゃダメだ!!丸坊主にされるぞ!!」
「別にいじゃんヨかー!」
「あとなエメリィーヌ。サブタイトルというものは、その物語と関係のあるものにしなくちゃいけないんだよ」
「関係あるんヨ。だってカイは今日学校の……」
「あーじつはな?この回ではまだ学校行かないんだよ。だから、今回は『学校に行こう』系のサブタイはいらんのだ。OK?」
「じゃあ、カイならどうするんヨ?」
「サブタイトルの話か?俺ならこうするぞ。初めの部分の語りからやるから。」
「よろしくなんヨー。それではどぞー」
気がつけば、八月下旬。
宿題は何とか終わらせたが、学校というだけで気が重いものだ。
でもけして嫌われているから、登校が嫌で気が重いわけではない。
朝起きるのがかったるいのだ。
皆さんもおわかりだろうが、俺は三人分の朝昼夜飯を準備し、三人分の食器を洗い、三人分の買い物を済ます。
俺は、他の人より三倍も動いている事になる。
そうなると当然、他の人よりも睡眠時間が必要となり、必然的に朝は疲れが抜けない状況。
そんな状況の中、エメリィーヌに、最近ではオメガも加わり朝の地獄のモーニングコールならぬ、モーニングデスマッチのような起こし方をしやがる。
ちょっと意味が分からないが、つまりそれほど過激な起こし方なのだ。
そんな物で起こされるとなっちゃ、そうなる前に嫌でも早起きをしなければならない。
つまり、寝れない。
そんな事が体に染みつき、今じゃ普通に起きてしまうほどだ。
でも、体はだるい。
だが、起きてしまう。
ほら、今日だって。
今日は学校登校日なのに。
俺は元気にカーテンを開ける。
………外は真っ暗。
第二十五話
~悲劇の秋とその他少数~
今は夜中の三時。
当然外は真っ暗だよね。
そんなわけで、早く目覚めてしまったわけだ。
エメリィーヌがへんな恐怖植え付けるから悪いんだよ。
おかげで、初っ端から変な夢を見てしまった。
タイトルがどーのこーのって何だ?
意味が分からん夢だった。
……とりあえず、二度寝だ。
後二時間は寝られるはず。
寝られるときには迷わず寝てろ!!って、俺の脳内総理が言っている。
そんなわけで、俺は再び眠りに就いた。………就きたかったのに。
すっかり目が冴えてしまった。
眠れん。
これはあれだな。
起きてるしかない。
どうせこんな時間に寝た所で大差ないしな。
『わしの!?わしの明言は!?』と、脳内総理が騒いでいるが気にしない。
しかも地味に歳くってるなこの脳内総理は。
っと、バカやってないで、これからどうするかな。
まだ3時間位時間があまっちょるけん。
これはどうしたものか。
俺は頭をフルに稼働させ考えた。
………散歩でもするべ。
普段出来ない事。
それは深夜の散歩に限るね。
一度はしてみたかったけど、なかなか出来なかった事TOP3に入るよ。
てな訳で、俺はみんなを起こさないように、なるべく静かに家を出た。
外は夏のじめじめ感を感じさせるような、へばりつくような暑さ。
全く、夜中だというのに、どうしてこうも暑いんだよ。
この暑さは大っきらいな暑さだ。
でもまぁ、いちいち気にしてはいられない。
俺は、深夜の散歩へと踏みだした。
車もなければ、人もいない。
昼間の光景からは、信じられないほどの静けさだ。
いるのは外灯の周りに集まる虫たちのみ。
これから、何か起きそうな気がする。
よく漫画とかでもあるだろう。
こう夜中にひとりで歩いていると、いきなり後ろから肩をたたかれて、振り向いても誰もいない……てきな?
まぁ、まずないわな。
そんな事を考えていたその時。
『ピトッ』
肩に不思議な感触。
何かが触れたような、そんな不思議な……なんていうご都合展開もあったりしてな!
まぁ、あるわけないよなー。はっはっはっはっは。
『ピタッ』
……おいおいウソだろう。
本当にこんな展開があっていいのか。
なにかにメチャクチャ肩を引っ張られているぞ!
やばい、今度は本当にあれか。
こう振り向いたら誰もいないっていう……
………振り向くか?
だってあり得ない。
幽霊なんている訳がない。
この現代社会において、幽霊なんている訳が……でも、宇宙人はいたしなぁ?
いやでも、幽霊は別物だ。
うん。俺は今だけ、幽霊完全否定組の一員になってやる!!
いまだ振り向け。大丈夫。
よく考えてもみなさい。だって、もしいたとしても、見えないんだから。
そうそう。見えないんだもんな。なにを怖がる必要がある。
安心して振り向こう。
もしかしたらいい幽霊かもしれないしな。
こう、気軽に話しかければ大丈夫だよ。きっと。
幽霊だって、ノリがいいにきまっている。
だからこう、軽い感じで行こうぜ!
そう心に決め、顔が引きつりながらも今世紀最大の軽めな感じで、話しかける!
「へい!そこの幽霊ボーイ!!いや?ガールかな?どうしたんだい?俺に聞いてほしい事でもあるのかい?」
そう言いながら、振り向いた俺が見た物。
それは……
「うぎゃー!!!全く生きている気配が感じられない人がいる!!!心なしか、少し透けているような気がする!!!こいつ、よく見たらうっすらとしててどこにいるか分からない感じのっ『ぶっとばすぞコノヤロウ!!!』
『ゴンッ』と、俺は頭を殴られた。
ふざけるな。
「いてぇだろ秋!!!お前怖ぇんだよ!!気配が感じられねぇんだよ!!一瞬誰もいないかと思ったわ!!!」
「ふざけんな!!!俺はちゃんと声もかけたし!!無視し続けたのはお前のほうだろうが!!!」
え?うそ。
ぜんっぜん気付かなかったわ。
え、なに?こいつ、ずっといたの?
うわー。びっくりしたー。
「お前なに本気で気づかなかったような顔してるの!?俺ってあれか!?そんなにあれなのか!?」
必死に、俺に答えを求めてくる秋。
あれあれうるせぇな。
そんなもん、東大の人に1+1はなんですか?って聞いているようなもんだぞ。
恥を知れ。
「お前は人じゃない!存在感的に人ではないぞ!!」
「え!?ウソでしょ!?人だよ!!俺人だよ!!よくみてくれよ!!!!」
「嘘じゃない。存在感で言ったら、押入れの一番奥に保管されている日本人形のほうが上だぞ」
あれは怖いよな。
知らない間に髪が伸びてきたよー!みたいなのを見た事ある。
人形にも床屋が必要な時代か。
「おい!怖い事言うなよ!!怖いだろ!!」
「お前あれな。忍者に向いてるよ。敵の目を欺く忍者」
「忍者!?忍者って何だよ!!ふざけんな!!」
「え?お前忍者知らないの?ジャパニーズニンジャだぞ?ニ!ン!ジャ!!」
「ぶっとばすぞテメェ!!バカにしてんのかよ!!」
「ああ」
「こっ!!!……はぁ。落ち着こう。いったん落ち着こう。」
そう言って、深呼吸を始める秋。
こいつどこでも忙しい奴だなぁ。
って、そうそう。そういえば。
「おい秋。お前なぜこのような時間帯にここに?」
今は午前3時ちょっとすぎぐらいか。
秋がいるのはおかしい時間帯だ。
すると、深呼吸が終わったらしき秋が言った。
「いちゃ悪いか?」
うわめんどくせー。
誰もそんな事言ってねぇだろ。
いいか悪いかじゃない。
なぜここにいるのかだ。
「そうじゃなくてさ。お前怖がりのくせにうろつきやがっていやがるからさ」
「お前、その友達に話してます口調に、馬鹿にしてます口調を織り交ぜるのやめろ」
こいつはアホなのか。
俺が知りたいのはそんな事じゃない。
一つの質問の答えが帰って来るまでが長いよこいつ。
「何でここにいるのか聞いてんだよ!!このくそったれバカ!!」
「くそったれバカ!?初めて聞いたわ!!流行語大賞に選ばれそうだよ!!」
……………。
多分。
イラッ☆っと来たのは俺だけではないはずだ。
どうする?
こいつ、殺っちゃう?
俺多分、今この場にショットガンあったら、迷わず頭にブッ放していると思う。
あ、自害じゃないよ?
殺人のほうね?
秋の頭の事だから。
そんなダイナミック自殺みたいなほうじゃないから。
「………で、お前がここにいる理由は?」
「いやーそれがさー!色々あったわけよ!どうする?聞きたい?」
「永遠にサヨナラ」
さぁーてと。
そろそろ帰るか。
俺は、スタスタと帰宅を始める。
帰宅部もビックリの早歩きだ。
「え!?ちょっとー!!どこいくんだよーー!!」
学校かぁー!
かったるいな。
どうしよかねぇ。
でもあれだな。
最近楽しい事ばかりだな。
エメリィーヌが来てからか。
周りが賑やかになった。
琴音だって地味に素を出し始めてるし。
てか、今までの琴音って、ちょっと俺に気を使ってたりしてたのかな?
最近の琴音は、なんかいつもよりも元気というか……楽しそうなのかな。
やっぱり、俺と二人っきりというのはあれだったんだな。
オメガのおかげもあるかもしれない。
琴音って意外と活発系のほうだったんだなー。
おしとやかな方かと思ってたけど。
オメガが突っかかるから。
琴音も素を隠すほどの余裕がないのだろう。
エメリィーヌとも仲良く遊んでるしな。
俺の間にも、壁?みたいなのがなくなった気がする。
琴音は表面上では嫌がっているが、心の奥底ではオメガの事認めてるものな。
やっぱり、4人で集まると楽しいもんだ。
いまじゃ、俺達4人が当たり前だもんなー。
あ、一人は宇宙人だけどな。
まぁ、見た目は人間だし、日本語も喋っているから人間だな。
日本人。立派な日本人だ。
うん。エメリィーヌは人間だよ。
いや、髪の色的にハーフの部類かな。
そうそう、髪の色で言えばオメガもだけど。
元は黒髪だしな。あいつは除外だ。
って、そんなこと考えてるうちに家に着いた。
さてと、今日は体力を使いそうだからな。
残りの時間だけでも、程よい睡眠をとるか。
「……ただいまー」
俺は小さい声でささやき、音がたたないように丁寧にドアを閉める。
なんか不法侵入者がいる気がするが、気のせいだろう。
俺は静かに階段を上がり、自分の部屋へ。
そこでは、エメリィーヌが静かに寝息をた立ている。
クーラーも付いており、心地よい空間だ。
後ろから謎の不法侵入者がぶつぶつ言いながらついてきているが、気のせいだろう。
俺は静かに自分の布団にもぐりこむ。
なんか枕元に立ってずっと俺を見下ろしている謎の人物がいるが、これも気のせいだろう。
ふぁー。だんだん眠気が。
そろそろ寝るか。
俺は学校の為に、眠ったのだった。
なんか耳元で『本当に見えないのか?ねぇ!俺の事見える?声聞こえてるよね?なら返事してくれよ!うそでしょ?……返事をしないよ。俺って本当に見えなくなっちまったのかよぉぉ。こんな事ってあるのか?たたり!?俺があまりにも情けないから……神様。俺が悪かったよ。眠れないから海の家で遊ぼうと思った俺が悪かったから……何でもしますから、どうか俺にかけた呪いを解いてください!!お願いします!!お願いします!!かみさまぁぁぁ!!もう二度としませんから許して下さい!!俺が悪かったよ!俺はもっとみんなと一緒に、バカやったり、くだらない事で盛り上がったりしたかった。もっと!他にやりたい事だってあったんだよ!ごめんなさい……全部謝るから……また海と話をさせてくれよぉぉぉ!』と、泣きながら気持ち悪い事を言っているやつがいる気がするが、これも気のせいだろう。
――――――――そして朝。
「ううっ!!よく寝たー!!あの時間だったけど、スッキリ快眠!お目覚め抜群だわ!」
俺は大きく体を伸ばす。
そして、立ちあがろうと地面に手をついた時だった。
なんかぐっしょり濡れてる。
俺の枕の上の部分の布団がぐっしょり濡れてる。
俺は、何事かと思い後ろを振り返ってみた。すると……
『がみざまぁぁ』
と、唱え続けたまま、眠ってしまっている秋の姿。
目は赤くはれ、声は枯れて、とても秋とは思えない状態に。
これは多分、全部秋の涙であろう。
するとその時、丁度起きたエメリィーヌが、秋を見て一言。
「カイ……この不審者誰なんヨか……」
「………みなかった事にしようぜ」
「そうなんヨね……これが優しさというものなんヨ……」
「ああ。このまま寝かせておこうぜ。この不審者さんも、色々あったんだと思う」
「……そうなんヨね」
………。
「エメリィーヌ。朝飯作るの手伝ってくれないか?」
「なぜなんヨか?」
「この不審者さんに、栄養を与えてあげないとな。干乾びそうだ」
「……分かったんヨ」
俺とエメリィーヌは、一階に降りた。
リビングにつくと、オメガが優雅にコーヒーをすすっている。
つーか起きてたのかよ。
そんな優雅なオメガが、優雅に一言。
「あの干乾びそうな化け物はいったい何だったんだい?」
「……みなかった事にしようぜ」
「……うむ。それが最善の策だと思う。」
「……そうなんヨ」
「とりあえず、あの妖怪に飯は与えてあげよう。俺の部屋でひからびて、虫でも湧かれたら困るから」
「賛成するよ」
「それじゃあ!レッツクッキングなんヨ♪」
一人で楽しそうなエメリィーヌと一緒に、俺は朝食を作り始めた。
それから20分後
「………朝食は出来たんだが……」
「問題は、誰があのモンスターを呼んでくるかってこと」
「ウチは嫌なんヨ」
「俺も嫌だ。」
「僕も同様だ」
「いや、お前行けよ、オメガ。俺とエメリィーヌは飯作ったんだ」
「そうなんヨ!キョウヘイはなにもしていないんヨ!!」
「……この悪魔どもめが」
そう言って、オメガが二階へと上がっていく。
あのオメガの口から、呪われそうな言葉が出てくるなんて。
ヤヴァイナ。
そして、程よく時間が経過した時。
『ぐおぁぁぁぁぁぁ!!!!!!サリーちゃん助けてぇぇぇぇ!!!!!』
という悲鳴が、俺の家全体に響き渡った。
鳴沢 恭平。脱落。
「おいエメリィーヌ。よろしく頼むぞ」
「……超能力使用許可を願いたい」
「許可する」
「妖怪の身の安全は、一切責任は持たないんヨ。オーケー?」
「OK」
「カイ教官!!ウチにもしもの事があったら、後は任せたんヨ!!!」
「おう!!エメリィーヌ隊員!健闘を祈る!!」
程なくして。
『なんヨぉぉぉぉ!!!!!!!!!臓器が危ういんヨぉぉぉぉ!!ゴホッ!!!』
という悲鳴が、俺の家全体に響き渡る。
エメリィーヌ。脱落。
とうとう俺だけになってしまったか。
だがしかし、最後のエメリィーヌの言葉。
あれで大体は状況把握できた。
1.秋が人に話しかけられる。
2.嬉しさのあまり、秋が抱きつく。
3.ベアハッグ(プロレスでいう、相手に抱きつく形になりそのまま胴体を締め上げる技。)が華麗にきまる。
4.内臓やばい
というわけなのだろう。
これさえ分かれば十分だ。
まず、腹と背中に、まな板を装着!
そして、秋を黙らせるためにこの包丁を……ってのは冗談で、この2リットルスポーツドリンクを、秋の口にはめる。
これで、秋は水分を補給し、その場で落ち着いてくれるってわけだ。
これで完璧!!じゃあ行ってきます!!
俺はすぐさま二階へ上がり、俺の部屋のドアを開けた。
するとそこには、みるも無残な姿で倒れこむ二人と、血に飢えた魔獣のような目をして俺を見つめてくる秋の姿。
俺は、秋に話しかけてみた。
「秋クーン?朝ご飯出来ましたよー……」
「ウンゲリュリャッパー!!!!!」
俺が秋に話しかけた瞬間。魔物の言葉を発しながら飛び付いてくる秋。
そして、俺の予想通りの展開に。
「へへへ。残念だったな秋!お前の行動はすべてお見通しだ!!」
ギリギリと、俺の胴体を閉めるけようとする秋。
その顔はとてつもなく嬉しそうだ。
するとその時。
「……カ…イ…油断は……ダメ」
「え!?」
エメリィーヌが言ったと同時に、『バキッ』という奇妙な音が。
おいおい、マジかよ。
まな板が割れただとっ!?
真っ二つに折れたまな板は、もはや機能果たさず。
だんだんと俺は締めあげられ、とうとうドリンクを放してしまう。
「グッ…カッ!!」
もうだめだ。
限界。
内臓をぶちまけそう……だ…。
その時だった。
「秋兄ぃー!なにしてるの?」
そういって、琴音が俺の部屋を覗き込む。
琴音も今日から学校なので、制服姿だ。
セーラー服というマニアックな制服。
そして急いできたためか、食パンを一枚加えている。
ナイスだ琴音!!といいたいところだが、不法侵入しすぎだろお前ら。
しかしそんな事も言ってられない状況。頼りは琴音のみだ。
「こ…とね……」
俺は頑張ってみたが、琴音の名前しか呼べなかった。
苦しい。本格的に死ぬ。
琴音!へるぷみ~!!
「……失礼しました」
ペコリと頭を下げ、なかった事にしようとしている琴音。
「ちょ……こと…ね…たすけ」
「はぁ…海兄ぃ。秋兄ぃの事無視し続けたでしょ。たまにこうなるんだよねー。……しょうがない。秋兄ぃ!!ごめん!」
そう言って、一瞬にして秋の背後に回り込む琴音。
見事にオメガに写真を撮られている。
そんな事も気にせず、秋に蹴りを入れた琴音。
見事に、秋が悶絶。
そして。
「いってぇぇ!!なにするんだよ琴音!!」
「秋!!正気に戻った!!」
見事に、いつもの秋に元通り。
これで、解決だ。
そんなとき、 オメガが言った。
「琴音ちゃん……その……ほら、あれだ。その…」
オメガが、何かを言いたげだが、言いづらそうにしている。
「ん?どしたのメガ兄ぃ?」
琴音は気付いていないみたいだな。
「あ、そ、山空!翻訳求む!!」
「はぁ!?え、いや、その。」
急に俺に回すなよ。俺だって言いづらいんだから。
「どうしたの海兄ぃ?」
くそ、もうこうなったらどうにでもなれ。
俺は悪くない。
オメガに頼まれただけだからな。
「琴音……その、あれだ。えと…とても言いづらい事なんだがね……ほら…その、あれだよ…制服……スカート…なんだからさ……あまり蹴り技とかしない方が……オメガも…その…倒れてたんだし…ね?」
俺の言葉を聞き、とても顔が赤くなる琴音。
そして、わなわなと震えている。
こ、これはまずい。
「こ、琴音!!お、俺は関係ないから!!その…事故というか!ほら…ね?オメガなんか写真まで撮ってたはずだぞ!!」
「山空!?」
すまぬオメガ!!俺の身代りになってくれ!!
「お、おいエメリィーヌ。ぶっ倒れてないで、あ、朝ご飯食べるかー!」
「そ、そうなんヨねー。ウチも丁度おなかがすいたんヨからねー」
「じゃあ琴音……ほどほどにな?」
そう言って、二人は部屋を出て行った。
あいつ!!ゆるさん!!
「こここ、琴音ちゃん!!僕は写真は撮ってない!!撮りたかったけど撮ってない!!」
「メガ兄ぃ。海兄ぃ。見たの……?」
やばい。琴音がおとなしい。
怖すぎる。
「えー、あーその。ごめんなさい!!!許して下さい!!すみません!!」
俺は謝った。
心から。
だがオメガは。
「バッチリ見た!!けどあれは事故というもので……!!!!」
「そう。海兄ぃはもう良いよ。確かに私の不注意だから。」
……え?
許して、くれたのか?
「ちゃんと謝ってくれたし。でもメガ兄ぃは許せないよね。言い訳しちゃいけないんだよ。海兄ぃみたいに謝ればよかったのにね。」
こ、琴音!お前えらいよ!
ちゃんと自分も悪かったと思っているんだな!
良かった。琴音が無差別暴行犯じゃなくて本当に良かった。
そして、謝っておいて良かった。
「琴音!!!ありがとう!!じゃあなオメガ!あばよ!!」
なんか許してもらった俺は、全力でその場を離れる。
一階に着くと、朝飯を美味そうに食べている輩が約二名。
その中に、俺もさわやかな気分で参加する。
「はぁ~。うまいな!」
それとほぼ同時に。
『ぐぉぉぉ!!!!!!山空のトンビがぁぁ!!!』
と、俺の家中に悲鳴が響き渡った。
「トンビって何だよ!!変な悲鳴上げてるんじゃねぇよ!!」
と、秋のツッコミもおまけで付いてきた。
第二十五話 完