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俺の日常非日常  作者: 本樹にあ
◆日常編◆
31/91

第二十三話~カッパとオレと夏休み~

突然だが、皆さんも聞いた事はないだろうか?


河童(かっぱ)の川流れ。


これは、『どんなに泳ぎのうまい河童でも、時には水に押し流されることがある。』というたとえだ。


ここで、一つ疑問がある。


河童って何なのだろう。


河童は本当に泳ぎが上手かったのか。


川にすんでいるからと言って、決めつけるのは早いと思う。


河童だって、色々な奴がいると思うんだ。


たとえばもしも、足が速い河童。


頭がいい河童。とても気楽な河童。


それとは対照的に、いつも暗い河童。


幼い河童もいれば、大人の河童もいる。


その中で、みんながみんな泳ぐのが上手いとは限らない。


のび太くんのような河童だって中に入るだろう。


いじめられて、泣かされて。


みじめな思いをしながら家に帰る河童。


別にどこか優れている訳でもなく。ごく平凡な河童。


泳ぐのが上手くなくても、必死に生きている河童。


キュウリが好きで、甲羅を背負い。


全身緑で、くちばしつけて。頭に皿を載せている河童。


でも中には、そうじゃ無い河童もいるかもしれない。


でも、何の理由もなく、そんな事がいい伝えられて来る訳がない。


実際に見た人がいる。


そしてそれが、現代に伝わってきているのだ。


そこで本題。


なぜこんな事を聞いたかというと。


そんな河童が、今現在目の前にいるからだ。




第二十三話

~カッパとオレと夏休み~




それは、今日の昼にさかのぼる。


いつものように起床し、いつものように朝食を取り、いつものようにエメリィーヌ達と雑談し、いつものように夕飯の材料を買いに出かけ、いつものように買い物を済まし、いつものように帰宅する途中だった。


そんないつもの出来事の中に、いつもだったら絶対にあり得ない物が視界に入る。


不審者。


そう、いうなればそれが一番相応しい表現だろう。


全身緑色で、甲羅を背負い、くちばしがある。


俺の記憶が正しければ、これは河童に間違いないだろう。


だが。


麦わら帽子。


これが非常に目立つ。


麦わら帽子をかぶった緑色の不審者。


河童だとしたら、この強い日差しの中、皿を守るためだと思われる。


よく言うじゃないか。


皿が乾くと死んでしまうと。


だから、まだそれは納得できた。


でもそれ以上に納得が出来ない事がある。


なぜこの現代社会において、河童がいるのだろうか。


この時代。この場面。この街中で。


陽気にブランコに揺られている河童。


たまたま通りかかっただけだ。


近くのスーパーなので歩きでの外出。


そう、気分転換のつもりで帰り道を変えただけ。


それはよくあることだ。


だが、緑色の人物。


手にはリンゴ。


それをムシャムシャとうまそうに頬張っている。


心なしか、歌を歌っているようにも見える。



……どうやら、俺は疲れているみたいだ。


普段エメリィーヌ達の相手で忙しいからな。


うん。


なんかこっち見ているけど気のせいに違いない。


さっさと帰ろう。



俺は、静かに歩き出した。


でもあれ?


おかしいぞ。


こいつちゃっかり俺についてきちゃってるよ!?


幻覚なのだろうか。


俺の隣で、手を繋いできていますけど。


っておい!


リンゴでべたべたじゃねぇか。


うん。しょうがない。


あとで眼科と精神科。


あと脳内検査もしてもらおう。


それまでこいつは相手にしない方がいいな。



すれ違う人々。


陽気にあいさつしてくる近所のおばちゃん。


隣でシャリシャリ音を立てているコイツ。


明らかに他の人には見えてないよね。


やっぱり俺がおかしいのだろう。


ちょっと暑さにやられてしまった。


帰って寝よう。


大きく息を吸いまして。


「ダッシュ!!DASH!!ダァァァァッシュ!!!」


全力で走った。


もう足がちぎれるほどに走った。


もうウサインボルト並みに走った。


その衝撃で、天と地が分離するんじゃないかという勢いで。


「うぉぉぉぉぉぉ!!!!!!」


頑張ろう日本!!


頑張ろう俺!!!


世界が平和になるその日まで!!!


うおうおうおうおうお!!!!


ふざけるなぁぁ!!!!


もう大丈夫だろ!!!!


さすがにあいつも来ないだろう!!!!


わははっはははは!!!!


「チラッ」


「ニッ」


いやがる!!


隣でリンゴ食ってやがる!!


手がべとべとする!!


なんか微笑ましい顔でこっちみとるぅぅぅ!!!


どうするよ。


このキラキラな笑顔どうするよ。


とりあえず家に入ろう。


なんか足がものすごい分身しているように見えるのは気のせいだろう。


上半身はリンゴ食ってっけど、下半身はマンガの急いで走っている時のグルグルっぽくなっているが気のせいだろう。


「はぁ…はぁ…ただいま!!」


いつもの我が家。


俺は、玄関のドアを開け、みんなの待つ、リビングへと足を踏み入れた。


「お帰りなんヨ!!」


いつもの笑顔で迎えてくれるエメリィーヌ。


「今日の夜ご飯はなんなんヨか?」


「ふふふ。聞いて驚け!見て楽しめ!!なんと今日は!レトルトカレーだ!!」


「本当はなんなんヨ?」


「とんかつとサラダだな」


「おお、それは嬉しいんヨ!」


「僕もとんかつは好きだね」


「そうか、オメガもとんかつは好きか。ならよかった」


「うむ。楽しみにしているよ」


「おう、任せろ」



普通の会話。


ごく普通の、仲がいい人同士の会話。


ごく平凡だが、ある意味幸せな時間。


いつもは気付かない、そのありがたみ。


俺も、そんなに気にしていなかったであろう。


……こいつがいなければ。


俺は、さっきからリンゴの汁をリビングに散らしまくっているコイツを見た。


さっきからリビングを果汁園ならぬ果汁まみれにしているコイツは、俺の顔を見るなりイイ笑顔。


ははは。ふざけんな。


とりあえず、ふざけんな。


何で俺に付きまとう。


あり得ない。


もろ河童だよ。


帽子かぶっている以外もろ河童だよ。


ここでみんなに、良い事を教えておいてあげよう。


部屋の中泥だらけ。以上。


外から帰ってきたよー。


こいつ裸足なんだよー。


そのまま家に上がったんだよー。


ほら、泥だらけ。


そして当の本人?は。


「ニッ」


良い顔してました。


とりあえず、無視。


無視に限る。


こういう厄介事は、無視すりゃ解決って総理が言ってた。……気がする。


無視だ無視。


今日一日いつも通りい暮らそうぜ!


そうすりゃきっと!いい事あるさ!!



~PM3:00~


「カイ!おやつなんヨ!!」


「ああ、冷蔵庫にプリンがあるぞー?」


「僕のおやつはないのー?」


「ああ、オメガの分は冷凍庫にあるだろ」


「なぜ凍らせてしまったし」


「オメガだからな」


「オイラのは無いのか~」


「……ニッ」


「ニッ」



~PM6:45~


「ほらエメリィーヌ!これ持ってくの手伝ってくれー」


「えー」


「えーじゃない。やれ」


今Wei(ウェイ)をやってるんヨにー」


「Weiはいつもやってるだろ!ほら、Weiリモコン握りしめているんじゃない」


「ぶー。もう分かったんヨ」


「ほら、はやくしろ」


「今やるんヨ!!」


「うむ。このWeifit(ウェイフィット)とやら、なかなかハマるね」


「こらそこ。ちゃっかり遊ぶな」


「僕は遊んでなんていない。ゲーム攻略に命をかけているんだ!!」


「うるさいな。早く持ってけ。」


「おいオマエ!オイラもやっていいか?」


「……ニッ」


「ニッ」



~PM9:00~



「ふぅ。一日の汗を流すこの時が一番幸せだなぁ!!」


「オイラは熱いのは嫌いだぞ?」


「それにしても、手がベトベトだなぁ」


「オイラは大丈夫だぞ?」


「うえぇい。良い湯加減」


「オイラにはちょっと熱い気がするぞ」


「やっぱり風呂は良いもんですなぁ」


「オイラもフロは好きさ」


「それにしても、エメリィーヌのやつ、まだゲームやってるみたいだな。ずっと声が聞こえるぞ?」


「オイラも遊びたかったぞ。でも、今日はとても楽しかったぞ!」


「……さて、そろそろ上がるとするか」


「やっぱり大勢いると楽しいぞ」


「……じゃんけんほい」


「負けちまったぞ」


「……ニッ」


「ニッ」



~PM10:30~


「じゃあエメリィーヌ。電気消すぞー」


「オーケーなんヨー」


「僕も構わないぞ」


「じゃあおやすみー」


「おやすみなんヨー」


「うむ」


「オヤスミだぞ」


「ってオメガ。なに当たり前のように俺の部屋にいる」


「気にしない方向で」


「無理だ。なぜクローゼットの中で寝ている」


「押入れがないからだ」


「ネコ型ロボットかお前は」


「なにを言っている山空。ロボットというのはだな」


「あー分かった分かった。もういい。好きにしてくれ」


「みんなで寝ると楽しいぞ」


「うるさいんヨー」


「あーすまん」


「ゴメンねエメル」


「怒られてしまったぞ」


「分かればよろしい」


「許してもらったぞ。オマエもよかったな!」


「……ニッ」


「ニッ」




―――――朝。


俺はスッキリと目覚める。


すぐに確認する。


そう、あの左手を。


「ん?お!?やったぜ!!」


いない。


あのにっくき緑悪魔イイ顔河童の姿はない。


やはり、あまりの暑さにやられていたのだろうか。


まさか幻覚を見る事になろうとは、思ってもみなかったぞ。


なんか凄い開放感があるな。


うん。俺のいつも通りの朝だ。


あれは夢だったんだ。


そうに違いない。


俺は浮かれ気分で一階に下りる。


いやー。本当にまいっちゃうよねー。


あんな緑色して、くちばしがあって、甲羅しょってる麦わら野郎が見えちゃうなんてさー。


どうかしてたよ。


そうそう、こんな風に俺の左手をべとべとにして…って、は?


ベトベト。


そう。ベトベト。


なんだこの感触。


凄く最近あったような気がする。


俺の左手に、なんの科学物質が張り付いているのかな?


「チラッ」


「ニッ」


「……ニッ」


うん。いるねこれ。


ばっちりいるよね。


凄いスルーしてきたけど間違いないね。


もうしょうがない。


会議を始める。


俺は、リビングの真ん中で正座する。


「おいこら。お前はそっちだ。」


「お、すまなかったな。ここでいいか?」


「おう、そこで正座しなさい」


こうして、俺と謎の緑ベトベトリンゴ野郎は正座で向き合う形となる。


まず一つ目だ。


「お前は何者だ?」


「オイラはカッパだぞ」


やっぱりネー。


「じゃあ次に、河童っていたのか」


「そうなんだぞ。オイラ達の先祖が昔地球にやってきた事があるぞ」


「そうか。要らない情報をありがとう。」


…って、ん?地球?


ってこたぁまさか。


「お前、宇宙人か!?」


「ちがう。オイラはカッパ!」


それは分かったいるんだがな。


「じゃなくて、お前はどこに住んでる!!」


「それは、遠い宇宙の向こうの、ミドリ亀星ってのがオイラの国さ!」


宇宙人じゃねぇか。


100%宇宙人じゃねぇか。


しかしミドリ亀星ってなに。


お前ら亀だったの?


妖怪とかじゃなく、亀だったの?


「いや山空。河童は亀の妖怪だと聞いた事がある」


「へぇ。なるほどね。」


「ヨウカイ?オイラ達はヨウカイではないぞ!!」


「まぁ、怒らないでくれ河童。地球ではそういう事になっているんだよ」


「オイラは河童だけど名前はあるんだぞ!!」


「お、そうなのか?名前なんて言うんだよ。カパ太郎か?」


「なにそのダサい名前。オイラはカパロウってんだよ!!」


「そんなに変わらねぇじゃねぇか」


「それよりカイ。朝ご飯まだなんヨか?」


「おお、エメリィーヌいたのか。まってろ、今作る」


「じゃあそれまで、カパロウは一緒に遊ぶんヨ!!」


「え?いいのか?オイラが遊んでも!」


「別に構わないんヨ。だってもう友達なんヨから」


「トモ…ダチ?オイラ達はトモダチなのか?」


「当たり前なんヨ」


「そうか!!オイラトモダチ初めてだ!!」


「そうなんヨか?まぁ、ウチも前は友達はいなかったんヨがね」


「お?じゃあオイラ達は似た者同士だな!」


「ふっ、そうなんヨね!」


「おいお前らー。あまりはしゃぐなよー」



それにしても。

カパロウは友達初めてなのか。


エメリィーヌと同様に、いじめられてたりしたのかな。


結構苦労してるな。宇宙人も楽じゃないらしい。


エメリィーヌも嬉しそうだ。


新しい友達が出来たんだもんな。


そりゃうれしいさ。


そういえば、カパロウって何食うんだろう。


リンゴ食ってたよな。


でも聞いてみるか。


「おい、カパロウ!お前何食う?」


「リンゴ!」


「いやそれ以外だったら何食える?キュウリとかさ」


「キュウリは嫌いだぞ!!あとはリンゴしか食べたことないから分からないぞ!」


え?キュウリ嫌いなのか。


河童なのに。


「じゃあ、適当に作るから。残さず食えよ!」


「わかったぞ!!」


「ほらほら、そんなこと話してると負けちゃうんヨ!」


「うわっ、それはずるいぞ!」


ふふふ。仲が良いな。


よし、じゃあ適当にサラダと、味噌汁。


それと玉子焼きで良いか。



俺は、みんなの分を作り始める。


簡単なので、10分ちょっとで出来上がった。


「ほら、できたぞー」


俺はそう言って、テーブルに朝食を並べる。


「お、これはなんだ?」


「味噌汁だ。熱いから気をつけろよ?」


「お、山空。すまないな」


「気にすんなって、もうなれたからな」


「それじゃあ、いただきますなんヨ!!」


「いただきます?それはなんだ?」


「これは、日本における食べる前のあいさつみたいなものだよ」


「へーそうなんだ!じゃあ、いただきますなんだぞ!」


「おう!たくさん食えよ」


いいよなぁ。こういうの。


みんなで食卓を囲むって良い事だ。


エメリィーヌも嬉しそうだし。


オメガも結構興味あるッポイし。


カパロウもみんなとたのしく……って。


「お前らこいつの事見えてたのかよ!!!」


見えないんじゃなかったの!?


俺だけの幻覚じゃなかったの!?


コイツ実在してたの!?


「山空。あたりまえだろう。昨日から一緒だったんだから。」


「そうなんヨ。いきなり連れてきた時は驚いたんヨ」


「じゃあなんかあるだろ!!一言あっただろ!!誰そいつ?とか!!」


「いや、山空から言うと思ってたからね」


「ウチはその時おなか減り過ぎて気にならなかったんヨ」


えー。まじかよ。


俺一人で悩んだたんだぞ。


もしかしたら俺が異常をきしたまともでない人なのかと思ってたんだぞ。


俺の脳内を調べ上げられると覚悟してたのに。


なんか言おうぜ。


そこはなんか言おうぜ。


人として言おうぜ。


そりゃたしかに、いきなり緑色のリンゴシャリシャリ小僧と手を繋いで帰って来るなんて、とてもシュールな光景だとは思うよ。


でもなんかあるだろう。


冗談混じりでもいいから、なんかあったろう。


『なんでやねんっ!!』とかツッコんでほしかったぞ。


とりあえずあれだ。


謎を解明しましょう。


俺は、元気に味噌汁をすすっているこやつに聞いた。


「おいカパロウ。お前なぜ地球にいる」


宇宙人だろ?


なぜ地球に来ているんだ。


「ぼべばびぼべ」


「おいこら。味噌汁を置きなさい」


味噌汁をすすりながら喋りやがって。


おかげで豆腐が散乱している。


「えと、オイラは逃げて来ちまったんだぞ」


味噌汁の入っているお椀を、散乱した豆腐の上に置いてから話し始めた。


おいこら。ぶっとばすぞ。


豆腐がグチャグチャになってるじゃねぇか。


テーブルに豆腐を塗るなよ。


「ん?逃げてきた。とははどういう事なんだい?」


オメガが聞いている。


たしかに、よくわからん。


「もしかして、家出なんヨか?」


おいおい、お前じゃねぇんだから。


「その通りだぞ……」


おいおい!?宇宙では家出が流行ってんのか!?


そしてなぜ俺のことろに来る!!


お前らの星は、困ったら俺の家へ来れば大丈夫法でも定められているのか?


星ぐるみの犯行だったわけか。


はた迷惑な法律作りやがって。


「山空の東京ドーム大のスケールな逆恨みの独り言は放っておいて、なぜ家出したんだい?」


おい。


「オイラは落ちこぼれだって村のみんなにバカにされて…家でもカーチャンやトーチャン。ニーチャンやネーチャンたちにも可哀そうな奴だって憐れんで……」


おい。


なんという悲惨な子なんだ。


エメリィーヌとはわけが違うぞ。


「どんなふうに言われるんヨ?」


さすがガキンチョ。


よく何の躊躇もなく、そういう一つ間違えれば古傷をえぐるような質問が出来るな。


ある意味ナイスだ。


「それが、河童のくせに泳げないってバカにされて。カーチャンにはみんなに苛められるなんて可哀そうな子だって。トーチャンにはみんなに仲間外れにされて、可哀そうな子だって、ニーチャンは泳げないなんて可哀そうな奴だって言ってバカにするし。ネーチャンは、アタシの弟なのんなんて可哀そうな奴だってバカにされて」


おいちょっと待て。


「それバカにしてないんじゃないか?」


「いや、だってみんなの顔が怖いんだ」


おいおい、それは息子や弟をいじめられて、ムカついただけなのでは?


自意識過剰すぎないか?この子。


「だって、そのあといやだて言ったのに無理矢理川に連れていかれて、放り投げられたんだ」


おいおい、それも練習させて泳げるようになってほしいという心優しい行動なんじゃ?


お前の家族が悲惨だぞ。


その時だった。


「…うわぁ!?」


「……バカな!?」


「なんなんヨ!?」


「あ」


そう、目の前に、突然現れた謎の人物。


人数的には四人だ。


その姿は、なんとカパロウそっくり。


だがそれぞれ違う特徴を持っている。


一番大きい奴は、頭にシルクハット。


その隣にいる優しそうな人は、頭にバンダナ。


その前にいる元気そうな奴が、頭に野球帽。スポーツ帽子だな。


んで、その隣にいるおしとやかそうな奴は、頭にリボン。


そしてカパロウが麦わら帽子。


もしかして。


いやもしかしなくても。


「カパロウ。お前の家族か?」


カパロウは無言だったが、静かに頷く。


するとエメリィーヌが言った。


「カパロウ。みんなの所に帰るんヨ」


……俺は、それを見守る。


「でも……」


「カパロウ。カパロウの家族は優しい人なんヨ。見て分かる」


おお、エメリィーヌ凄いな。


『ほら』と言って、カパロウの背中を軽く押すエメリィーヌ。


カパロウは、静かに家族のもとへ歩き出す。


「あ、えっと、カーチャン…」


カパロウは震えている。


怒られると思ったのだろう。


だが、カパロウのカーチャンは優しく言った。


「……カパロウ。おかえり」


うお。カーチャンいい人だ。


「うっ、カーチャァァン!!」


そう言って、泣きつくカパロウ。


ただ俺は、その姿を見るエメリィーヌが、少し寂しそうなのが気になった。


そりゃそうか。やっとできた友達だもんな。


寂しいよな。


「おほん、すまなかったね。カパロウが迷惑をかけたみたいで」


トーチャンが、俺に向かって言った。


「いえ、こっちも楽しかったです。また遊びに来てほしいくらいに」


「はい。良い経験が出来ましたからね。カパロウくんも楽しそうでしたし」


妙に礼儀正しいオメガ。正直キモい。


そして、カパロウが言った。


「エメリィーヌちゃん!またオイラと遊んでくれるか?」


「……もちろんなんヨ!!いつまでも友達なんヨ!」


ベタな言葉だ。


だが、それを見ていると、微笑ましいものだ。


「じゃーなーカパロウ!」


「さようならー」


「もう家出はダメなんヨー!!」


おい。お前が言うなよ。


「うん。ありがとな!オイラ頑張るよ!!」


そういって、カパロウ達は消えた。


いや、帰ったのだろう。


エメリィーヌは、とても寂しそう。


少し、目が潤んでいるように見える。


ちょっとかわいいなコイツ。


「じゃあ、朝食再開だ」


「そうなんヨね」


「でもカパロウの所グチャグチャだぞ?」


うわっ。


味噌汁ひっくり返ってやがる。


なんて置き土産をして行きやがったんだ。


まぁいいか。


―――そんなわけで、不思議なカパロウとの、半日は終わった。


そう。たった半日だからな。


俺はそれほど出もない。


だが、エメリィーヌには忘れられない時間となる事だろう。





第二十三話 完




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