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俺の日常非日常  作者: 本樹にあ
◆日常編◆
30/91

第22.5話 その2~決着!これがみんなの力~

後編です

『ドコッ』


と、音が聞こえた。


私は慌ててその方向に視線を移す。


鼻を押さえている金髪の不良。


拳を前に出している秋兄ぃ。


どうやら、秋兄ぃが殴ったみたい。


正直、私は驚いた。


あの秋兄ぃが、人を殴る。


そんな事初めてだったから。


だけど。


「海!今がチャンスだ!!!俺と一緒に……ってあれ!?」


この言葉で、なぜ殴ったのかが理解できた。


海兄ぃがいるので安心したのだろう。


だけど海兄ぃは、一人で違う方向に走って行ってしまった。


なんでだろう。理由は分からないが、多分何か思いついたんだと思う。


『ふふふ。ビビリのくせに良いパンチ持ってんじゃねぇか』


金髪の不良が言った。


『大丈夫かお前?鼻血出てるぞ』


『ああ、鼻血が出ちまったんだよ。たぁっっっぷり、お礼をしてあげないとなぁ?』


『へへっ。そうだな。こいつには、絶対にしてはいけない事をしたということを、たっぷりと教え込んでやらなくちゃなぁ?』


ちょっと!?大丈夫秋兄ぃ!?


また震えてきてるよ!?


海兄ぃがいないと分かり、不良に睨まれて震えだす秋兄ぃ。


どうしよう。


私も怖くて動けないや。


海兄ぃ!何かするなら早く!!


その時、秋兄ぃが喋り出す。


「あーえっと、大丈夫で『あ゛ぁ゛!?』…じゃないですよね…当然……」


あちゃー。だめだ。


すっかり弱気だよ。


声が震えてるもの。


そんな秋兄ぃに向かって、とうとう不良が腕を振り上げた。


『こいつ全然反省してねぇようだな。俺と同じ目にあわせてやるよ。くたばれや!!』


まっすぐ、秋兄ぃの顔めがけて殴りかかる金髪の不良。


ってちょっと待ってよ!


危ない!!



第22.5話 後編!VS不良

~決着!これがみんなの力~





「秋兄ぃ!!!!」


私は叫んだ。


なぜか。それは、秋兄ぃの横から、黒髪の不良も殴りかかっていたからだ。


秋兄ぃはそれに気付いていないみたい。


危ない!


私は、怖くなって目をつむってしまった。


「うわぁぁ!!」


秋兄ぃの悲鳴。


『ドゴッ』

『バキッ』


そのあとに、殴られたときにしか聞こえないはずの音が。


私は、目を開けるのが怖かった。


目を閉じているので、視界での情報がない。


聞こえるのは音だけ。


だがそのあとに、不良の声が。


『いてぇぇぇ!!テメェなにしやがんだ!!』


『くそったれめ!!』


そう、きこえた。


私は、ゆっくりと目を開けてみる。


するとそこには、恐怖でうずくまっている秋兄ぃ。


そして、おたがい顔を押さえている不良たちの姿。


どうやら、急にしゃがんだので、不良同士で殴りあってしまったらしい。


運がいいのか悪いのか。


「いてぇ!!死ぬ!!!俺死んだかもしれない!!」


と、情けない声が響く。


え!?よけてないの!?当たっちゃったの!?


秋兄ぃ!!!!!


私はとても心配になったが、メガ兄ぃが言った。


「竹田兄!きみには一発も当たっていないぞ!!」


ないのかよっ!!


「え!?あ、ほ、ホントだ。生きてる。俺生きてるぞ琴音!!」


「ちょっと大丈夫!?逃げようよ!!ほら!今のうちに!!」


今なら逃げれるよ!今なら!


そう思って、必死に秋兄ぃに呼び掛ける。


だが。


「いやだ!琴音にあんなことしやがって。こいつらはゆるさねぇ!!」


と、なんかかっこいい事言っている。


だが、怯えたままだ。


さらに屈んだままだ。


声が震えている。


無理しなくてもいいのに。


『おいてめぇ、調子乗ってんじゃねぇぞ!!』


金髪の不良が、秋兄ぃの髪をつかんで、無理矢理立たせる。


黒髪の方は、まだ顔を押さえている。どうやら重症のようだ。


「ちょ、痛いから!自分で立つから!!ひー!!」


うわ。見事なまでの怯えっぷりだよ。


その秋兄ぃの言葉で、見事に火がついてしまった金髪の不良。


秋兄ぃの顔の前に、拳を突きだし脅している。


『その顔ムカつくなぁ?一発殴らせろや!!』


「へ?ちょ!怪我するよ!?鼻折れちゃうでしょ!?」


『くたばれぇ!!!』


そういって、秋兄ぃの髪を掴んだまま、思いっきり殴りかかる。


秋兄ぃ!!!!


私は、本気で涙があふれ出た。


私がもうちょっと戦えれば。


もうちょっと勇気が出せれば。


秋兄ぃだってこんな目にあわなかったはずなのに。


丁度その時だった。


「はい!どっかーん!!」


メガ兄ぃの声と同時に、金髪の不良の拳に青いスライムがつく。


それとほぼ同時に、不良が秋兄ぃを殴った。


「ギャース!!」


秋兄ぃの変な叫び声が聞こえたが、それとは裏腹にびくともしていない。


私が困惑していると、メガ兄ぃが言った。


「これは、『衝撃吸収スライムレーザー銃』だよ。衝撃緩和クリームのスライム板だと思ってくれていい。殴る衝撃と、殴られた衝撃を吸収した。すなわち、衝撃をゼロに近い事になる」


「メガ兄ぃ!ナイス!!」


すごいや。メガ兄ぃ。


衝撃…緩和…って。


私は気付いてしまった。


なので、メガ兄ぃに確認を取ってみる。


「もしかして、クリームのほう塗ってるなら殴られても平気なんじゃ……?」


そうだよ、クリームは確か塗ってたはず。


なら大丈夫なはずじゃ……


するとメガ兄ぃは少し考えた後言った。


「あ……そうだね」


やっぱり!


なら秋兄ぃに教えてあげなくちゃ!!


「秋兄ぃ!!」


私は、秋兄いに呼び掛ける。


すると、秋兄ぃがこちらを見た。


「こ、琴音!危ないからさがってろ!!」


っておい。違うんだよ。


全くしょうがないな。


「秋に『てめぇ、いい加減にせぇや!!!』


とうとう痺れを切らした金髪の不良が、私の言葉にかぶせるように言った。


『おい後ろのクソ兄貴の妹さんよぉ!これから兄貴がぼこられる姿を見てやがれ!!』


クソ兄貴!?


秋兄ぃが!?


ふざけないでよ。少し怒るよ?


私は、不良の言葉で、恐怖心よりもムカつきが上回った。


『ふざけ「ふざけないで!」


私は、秋兄ぃより先に言った。


いや、かぶせてしまったのだが。


今はそれどころじゃない。


秋兄ぃが弱いだなんて。黙っていられるわけがないよ!!


「あんたら不良に、私のお兄ちゃんを馬鹿にする資格なんてないよ!!……それに…あなた達は負けてるよ」


そう。私は分かってるよ。


『はぁ!?なに言ってんだテメェ?こんな腰抜け兄貴のなに負けてるってんだ!?』


分からないの?


まぁ、それも仕方がないこと。


それが分からない時点で、あんた達は負けてるんだよ。


私は、不良たちに言った!


「それは腰抜けっぷりさ!」


「ちょっと今いい所なんだから!メガ兄ぃは黙ってて!」


まったく。メガ兄ぃはどっちの味方なのよ。


『で?どこが負けてるって?』


はぁ、しょうがないね。


教えてあげよう。


私って優しい。


私はその場でゆっくり立ち上がる。


「どこが負けてるか、それは全部だよ。」


『はぁ?意味が分かんねー。俺のどこがこいつに負けてるってんだよ!!』


「秋兄ぃは、あんた等みたいに人を傷つけないし。少しヘタレだけど、それでも立ち向かってるよ。それがたとえ、どんなに強くても。それがたとえ、絶対かないそうもなくても。誰かを守るために立ち向かっている秋兄ぃは、どこの誰よりも立派だよ!!!」


私は、鋭い目で金髪の不良を睨みつける。


するとその時だった。


『いい加減にしやがれ。なに勝手な事ぬかしてんだ!このクソ女ぁぁぁ!!!!』


ずっとうずくまっていた黒髪の不良が、私に向かって走って来る。


その手には、鉄の棒のようなものを持って。


いったい、どこからあんな物を。


……ん?ああ、あっちのやつか。


さっきまで黒髪の不良がうずくまっていた付近に、建築材料らしきものが大量に置いてある所がある。


そこの一つを持ってきたのだと思う。


『うぉぉぉ!!!』


声を荒げて、鉄の棒を振り上げて走って来る。


うわっ!もうこんな近くに。


「琴音ちゃん!?」


メガ兄ぃがそういって、立ち上がろうとしている。


そんなメガ兄ぃに、私は優しく言った。


「大丈夫。こんな奴らに負けないよ」


『くたばれぇえ!』


黒髪の不良が、鉄の棒を振り上げ、私の頭めがけて殴ろうとしてくる。


これ当たったら死んじゃうじゃん。


この人たちは大丈夫なのかな。誰か死んじゃったらえらいことだよ?


『ガキッ』


そう音がする。


『なっ!?』


黒髪の不良が驚く。


頭の上で腕を組み、鉄の棒を止める。


っ!!結構痛い!


ちょっとむかついた。


「はぁぁぁ!!!」


『がっ!!』





………―――――


琴音の言葉で、すっかり震えが止まった。


ありがとう琴音。


スッキリしたぜ!


もう俺は、こんな奴らにビビったりしない。


『うおぉぉ!!』


そういって、黒髪不良が琴音に突っ込んでいく。


そして琴音は、全く動じずに無言で睨みつけている。


あれは、琴音が本気の時だ。


あいつは、本気の時は無言になる。


とても怖い。


『おい、助けねぇと。死ぬぞ?』


目の前の金髪不良が俺に言った。


おいおい何言ってるんだ。


逆にお前らのほうが心配だぞ。


「まぁまぁ、お互い、向こうが決着つくまで一時休戦としようぜ?」


『な、お前は妹を見捨てるつもりか!?』


「それはどうかな?ほら、見てみろって」


俺が言うと、驚きながらも、琴音達を見る金髪不良。


俺が急に強気になったもんだから、とても驚いていやがる。


『くたばれぇえ!』


黒髪の不良が、鉄の棒を振り上げ、琴音の頭めがけて殴ろうとしている。


その時やっと、琴音が動き出した。


『ガキッ』


見事なまでに、華麗に受け止める。


『なっ!?』


黒髪不良が驚いている。


そりゃそうだ。


頭の上で腕を組み、鉄の棒を止める琴音。


あんな小さい女の子が、メチャクチャ強いなんて思ってもみないだろう。


鉄の棒止めた時、琴音の蚊をが少し引きつる。


多分痛かったのだろう。


そりゃそうだよ。鉄の棒なんだから。


ほら、琴音がキレた。


表情が変わったよ。


「はぁぁぁ!!!」


気合と共に、相手の鳩尾(みぞおち)に蹴りを入れる琴音。


『がっ!!』


鉄の棒を振り上げていたため、もろクリーンヒット。


それをくらった黒髪不良は、鉄の棒を放し、その場にうずくまる。


だが、そこで終わる琴音ではない。


終わったためしがない。


これは体験談だ。


『グホッ!?』


うずくまっている不良の背中に、肘鉄(ひじてつ)をくれる。


相手が倒れた所で、琴音は髪をつかみ上げ、無理矢理立たせる。


ナイスなお力で。


不良は、先ほどのクリーンヒットの恐怖からか、腹をガードしている。


「はぁぁ!!」


『うぐっ!!!』


だが琴音は、思いっきりあごにアッパー。


「はっ!!」


『ボグフォ!!!!』


そのあと、隙だらけになった腹に正拳突きをくれた。


少し吹っ飛び、床に倒れこむ不良。


その間。わずか五秒。


恐るべき早業。


あっぱれ。


普段見慣れている俺とは違い、金髪不良、そして恭平までもが驚いている。


『おい……あいつ、あんなに強かったのか!?』


「ああ、そうなんだよなぁ。俺も苦労させられるんだよ。あ、死んじゃいないから安心しな。琴音は手加減してたしな」


『あれでか!?お前の妹おかしいぞ!!』


「だよなー。いつも大変なんだよ。これが。」


って、俺はなに仲良く会話してるんだ。


「じゃあ秋兄ぃ、後はその人を」


って嘘だろ!?


あの黒髪の野郎、まだ立ちやがる。


タフすぎるだろ。


しかも琴音気付いてねーよ!?


俺は慌てて、琴音に教えようとしたが。


「ことっモグフォ」


『へへっ、ちょっくら黙っていてもらおうか』


俺は、金髪野郎に口をふさがれ、喋る事が出来なかった。


「秋兄ぃ!この、秋兄ぃを放せ!!」


おい、こっち向かって来てるから!!


油断するな琴音!!


『ふふふ、死にさらせぇ!!』


そういって、琴音に殴りかかる不良。


琴音は、その時やっと気付いたようだ。


だがもう遅い。


だめだ!!よけれない!!


そう思った時。


「はい、またまたどっかーん!」


『ベチョ』


そういって恭平が、黒髪不良の振り上げている腕にあの青いスライム。


当然、衝撃緩和!


「メガ兄ぃ!ありがとう!」


『くそ!!あいつをねらえ!!』


黒髪が、恭平のもとへ。


くそっ!あいつじゃ不安だ!!


「もが!もがが!!」


『ほらほら、暴れるんじゃねぇよ』


そういって、薄気味わるい笑みを浮かべる金髪。


だが、琴音が追いかけている。


なんとか大丈夫そうか?


するとその時、恭平がかばんから何かを取り出す。


それもやはり、銃のようだ。


いや、バズーカか?


大きい筒状の銃。


そしてそれを。


「あたれぇ!どっかーん!!」


『あぶねぇ!!』


バズーカ砲の中から、白い球体が飛び出す。


そして、不良の足元へと飛んでいくが、ジャンプで回避されてしまった。


「いかんぞ!ミスッたわ!!」


『くたばれぇ!!』


そういって、黒髪不良が蹴りかかった。


『――念力(サイコキネシス)


「なぬっ!?」


『へっ、どうだ!!』


恭平の体は、吹っ飛んでいく。


だが、吹っ飛んで行く方向がおかしい。


真横。


正面から蹴られたはずなのに、真横に飛んでいく。


いや、吹っ飛んではいない。


静かに移動した。


その方が正しいかもしれない。


そう、こんなこと出来るのは。


「大丈夫なんヨかー!?」


「むぐふぉ(エメリィーヌ)!!」


「エメル!!」


「エメリィちゃん!!」


そう、エメリィーヌだ。


エメリィーヌが、超能力で助けた。


おかげで、オメガは無事だ。


「エメリィちゃ『ベチャ』…あ」


エメリィーヌの所に走り出そうとした琴音が、恭平のミスした何かを踏む。


「うわっ!なにこれ!!動けないんだけど!?」


「説明しよう!!先ほど僕が撃ったのは、『とりもちバズーカ砲』といって、あたった相手の動きを制限する効果を持っている。まぁ、とりもちだね。粘着力凄いね」


なるほど。


これで相手を動けなくしようってわけだったのか。


でもダメじゃん。


この中で多分、一番強い琴音を動けなくしちゃダメじゃん。


大事な所で使えないな。


てかこいつ、いつまで俺の口をふさいでやがる!


ふざけるんじゃねぇ。


『ドコッ』


『ウグッ』


俺は、金髪不良の顔面に裏拳を決めた。


すると、不良が俺を放した。


「よっしゃ、エメリィーヌ!黒髪を頼んだぞ!」


「良く分かんないけど任せるんヨ!」


「恭平は琴音の開放に全力を注げ!!」


「うむ!」


「琴音はとりあえず応援よろしく。」


「えー」


くそ、こんなときに海はなにしてるんだよ!?


俺が思っていると、ふと海の声が聞こえた気がした。


『――待ちやがれぇぇ!』


おれは、声のした方を見てみる。


すると。


ウォータースライダーの所に、海らしき姿が。


え?嘘でしょ?


あいつ何やってんの?


遊んでるじゃん。


何やってんだあいつ!!


後で殴る。


『なにカッコつけてるんだよこの野郎!!』


さっきまで痛がっていた金髪不良が、俺を睨みつけてくる。


うお!?迫力がやばい。


「秋兄ぃ!!クリーム塗ったの!?」


急に琴音が言いだす。


ん?クリーム?


クリーム……クリーム…あ!?


そうだった。クリームだよ。


衝撃緩和クリーム!


殴られても平気じゃんか。


でも待てよ?


もしかしたら、効果ないんじゃ?


もう落ちてるとか。


ためしてみるか。


「おい金髪。お前に頼みがある」


『あ!?なんだってんだ!?』


「ちょっとこの辺殴ってくれない?」


そう言って、俺は腹を指差す。


すると、とても驚いたようだった。


よく見ると、琴音達もポカーンとしている。


『はぁ!?なに言ってんだお前!?正気か?』


「うるせぇな。ごちゃごちゃ言ってねぇで早くやれよ!!」


こっちだって怖いんだから。


『え、よくわかんねぇが、お望み通り殴ってやるよ!!』


そう言って、腕を振り上げる金髪。


『だが、こっちにな』


『ボゴッ』


俺の顔面に、思いっきり殴って来やがった。


だけど。


「……ふっふっふっふ。きかねぇなぁ?きかねぇよ!!」


『な、なんだと!?そ、そんなはずは』


驚いたぜ。全く痛くない。


恭平。お前天才だわ。


クリームの存在を知らない金髪は、きみの悪い物でも見るような目で、俺を見ている。


そして、明らかにやけくそであろうパンチを繰り出す。


『く、くそがぁ!!!アタタタタタタタタタ』


「ふふふ。俺は無敵だ!!効かないね。たとえ何発くらおうが、俺は無傷だ」


痛くないって素晴らしい。


怪我しないって素晴らしい。


もう俺には、恐怖心は無く。


あるのは、優越感と、こいつをぶっ飛ばせるという嬉しさだけだった。


「ほらほら、顔ががら空きだっ!!」


『ボコッ』


俺は、顔面を殴った。


『グハッ!!』


その一撃が、相手を冷静にさせてしまったのだろうか。


水着のポケットから、何かを取り出し始める。


ちなみに、恭平以外はポカーンとしたままだ。


黒髪の不良まで。


『なるほどねぇ。おかしいと思ったら。そこのメガネ野郎が何かしやがったな?』


鋭いなコイツ。


どんだけ頭がキレるねん。


『殴っただけじゃだめだった。なら、コイツァどうだ?』


そう言って俺に見せつけてくる。


……なにコレ。


え?ナイフ?


スパッと切れる系のあれですか?


俺が凶器の登場に混乱していると、恭平が慌てて言った。


「竹田兄!!ナイフはまずい!普通に切れる!!」


『ふふふ。やはりそうか。なら、これで終わりだぁ!!』


そう言って、ナイフを振りかぶって来る金髪不良。


おい恭平。


言っちゃダメでしょ。


ってか危ないって。


ナイフ危ないよ。


でもあれだよなー。


痛いだろうな。


切れるんだもん。


いたいよ。


あーあー。可哀そうに。



あまりの出来事に、現実逃避しかけている俺。


そんな時。


「秋兄ぃ!!逃げてー!!!」


琴音の声が聞こえた。


「あぶねぇ!!」


俺は、そのおかげで間一髪でよける。


しっかりしろ俺!!


動きをよく見てかわすんだ。


大丈夫。俺なら出来る。


いつもお袋や琴音と格闘しているんだ。


こんな奴になんか負けない。


『くっそ、くらえ!』


不良がナイフを横になぎ払ってくる。


俺は、しゃがんで回避。


見える。


やばい見えちゃうよ。


相手の動きが。


俺って、いつの間にか鍛えられていたらしい。


不良が、振り下ろす。


「遅い!!」


俺は、不良の後ろに回り込んだ。


『くそっ!?どこだ!!』


「こっちだ馬鹿野郎!!」


俺は、無防備な背中を蹴りとばす。


やばい。俺強くね?


誰も俺にはかなわないぜ!!


「遅いぞ!!」




………―――――――


秋兄ぃが凄い。


とてもすごい。


攻撃を全部よけている。


その反射神経は秋兄ぃの凄さ。


でも、もう一つは違うよ。


「遅いぞ!!」


『い、いつのまに!?』


ほら。また。


「こっちだ!!」


『なんでそこに!!』


ほら今度も。


「くらえ!秋様のパンチ!!」


『こいついつのまに!!』


うん。絶対そうだ。


秋兄ぃ、影薄いから。


存在感がないから。


すぐに移動されると分からなくなるんだ。


気配を感じないみたいな?


まさか。こんなところで役に立つとは。


秋兄ぃ。そのステルス能力も便利じゃん。



もうノリノリで金髪の不良を殴り続ける秋兄ぃ。


可哀そうに。


こんなの、見えない敵と戦っているようなものじゃん。


私は、少し不良に同情してしまった。


すると、なんかエメリィちゃんのほうから足音がする。


私は、そのほうを見た。


すると。


「エメリィちゃん!!その人を止めて!!」


そう、秋兄ぃに夢中になっている間に、黒髪の不良が秋兄ぃに向かって走っていく。


私の言葉で、エメリィちゃんは気付いた。


「あ!待つんヨ!!って、なんヨ!?」


慌てたものだから、滑って転んでしまったエメリィちゃん。


そして、秋兄ぃが後ろから掴まれてしまう。


「くそっ!!なにすんだ!!はなせ!!ひきょう者め!!」


必死に抵抗しているようだが、向こうのほうが力が強いらしい。


あーもう。調子に乗るから!!


そして、金名発の不良がナイフを秋兄いに向けて言った。



『よくもさんざん殴ってくれたなぁ!?』


「いや、その危ないでしょ!?ナイフ危ない!!」


必死に説得していても、向こうは聞こうとはしない。


そして、金髪の不良がナイフを振り上げる。


「琴音ちゃん!!取れたグフッ!」


メガ兄ぃが、私に着いたとりもちを取ってくれた。


それと同時に走り出したので、メガ兄ぃを蹴ってしまった。


だけど今はしょうがない。急いで止めないと!!



だがしかし。


『俺達に喧嘩売った罰だ!これで苦しめや!!』


だめだ!!間に合わない!!!


私が思った時。


『そこの不良どもめ!!警察に突き出してやる!!』


そう声が聞こえた。


私も含め、秋兄ぃ達も声のした方を見ている。


エメリィちゃんは転んでぶつけた所をさすっているけど。



その視線の先には、あの警備員さん。


そして、海兄ぃだった。


海兄ぃが、不良たちに向けて銃を構えている。


「食らえ!スライム式腫れ引きレーザー銃!!」


おお!!かっこいいよ海兄ぃ!!


ってあれ!?撃たないの?


突然、海兄ぃが構えるのをやめる。


なんで?


私が思っていると、メガ兄ぃが言った。


「多分燃料切れなんだと思う。くそ、どうする!!」


そういいながら、かばんをあさるメガ兄ぃ。


メガ兄ぃも必死だ。


エメリィちゃんは!?今なら超能力で何とか!!


そう思って、エメリィちゃんを見る。


だが。


「あれー?勾玉がどっか行っちゃたんヨ!」


転んだ拍子に無くしたみたいです。


どうしよう!!


悩んでいると、なにを思ったか海兄ぃが急に銃を投げ始めた。


『なっ!?』


それに驚いた不良が、ナイフを振りおろそうとした。


すると。


「よし。これだ。」


メガ兄ぃの声。


それと同時に。


『もがっ!もががっ!!』


不良の顔に、赤いスライムが張り付く。


衝撃吸収スライムとは別のやつだ。


そのおかげで、振り下ろすナイフが一瞬止まる。


その時、海兄ぃの投げた銃が、奇跡的にナイフにあたり、ナイフを弾き飛ばした。


『きみたち!警察に連行します!!』


警備員さんが、不良たちを捕まえる。


その途端、私は全身の力が抜けて行くのを感じた。


「お、あったんヨ」


エメリィちゃんの声。


どうやら見つかったらしい。


「はぁ、死ぬかと思った。海!カッコ良かったぜ!!」


と、秋兄ぃが言う。


「ホント、危機一髪だったな」


海兄ぃは答えた。



よかった。本当に良かった。


まさかこんな事になるなんて。


でも、よかったよ。


あ、そういえば。


「メガ兄ぃ、その銃はなに?」


赤いスライム。


なんだろう。


「これは、実は昨日作成したんだよ。なずけて『ハバネロスライムレーザー銃(防音式)』だね。」


「ハバネロか。」


前、海兄ぃが苦しんでたなぁ。


「そうそう、防音式って?」


「あ、うん。顔に張り付くと大変しみるからね。悲鳴がうるさくなってしまう。だから防音式にして、悲鳴が聞こえないようにしたんだよ」


「あー。だからもがいてたのね」


「そういうことだね」


なるほど。


私が納得をしていると、海兄ぃが言った。


「とりあえず、お疲れー」


うん。確かに疲れたよ。


「みんな怪我がなくてよかった」


海兄ぃが言った。


この顔は多分無意識だ。


「おい、僕は殴られたんだぞ?」


あ、そうだ。


私を守るために。


メガ兄ぃは、私を守ろうとしてくれたんだ。


……メガ兄ぃ…いや。恭兄ぃ。ありがとう。


私は、恭兄ぃに言った。


「恭兄ぃも結構カッコ良かったよっ!!ありがとねっ♪」


本当にカッコよかったよ。


「琴音ちゃん!僕はカッコよかったろう?なら結婚するしか!!」


恭兄ぃが、私に張り付いてきた。


うわ、やっぱりやだ!!


「グフォラ!!」


「本っっ当にさいてい!!!メガ兄ぃなんか嫌い!!」


プールに流されていく恭兄ぃ。


「しかし、好きだぁー!!!!」


「メガ兄ぃ!うるさい!!」


「ははは、恭平のやつは、まったく」


「本当に懲りないんヨね」


「だな」



―――こんなに楽しくて、笑いあえる人たちがいる。


私は、みんなの事が大好きだよ。


もちろん、恭兄ぃも。


海兄ぃも。秋兄ぃも。


エメリィちゃんも。


みんな。私の宝物だよ。






第22.5話 完

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