第22.5話 その1~なんでやねんっ!!ツッコミだらけのお笑い集団誕生?~
あのプールの事件を、違う視点でお楽しみください。
ちょくちょく視点が変わるので、こんがらがりにご注意を。
「じゃあ、とりあえず行ってきなよ。私はエメリィちゃんに泳ぎ方教えてるから」
飛び込み台の事で、秋兄ぃ達がもめている。
私はとりあえず、そう言った。
そういえば、ずっと前。
エメリィちゃんに初めて会った日。
一緒にお風呂に入った時に、泳げないって言っていた。
だから、後で泳ぎを教えてあげるって約束した。
まさかこんな早く、教える事になるとは思ってなかったけど。
とりあえず、そんな感じ。
秋兄ぃが、嫌がる海兄ぃを無理やり連れて行く。
あーあ。海兄ぃ可哀そうに。
まぁ、いいや。
「じゃあエメリィちゃん。向こうの小さいプール行こうよ」
「分かったんヨ!!」
元気にエメリィちゃんが答える。
メガ兄ぃを見てみると、かばんの整理をしているみたい。
……うん。今のうちに行っちゃおう。
第22.5話 前編!VS不良編
~なんでやねんっ!!ツッコミだらけのお笑い集団誕生?~
とても楽しそうなエメリィちゃんの手を引き、奥の方の少し小さめのプールへ向かう。
エメリィちゃんが、うきわなしでも大丈夫なように。
「ほら、ここなら大丈夫でしょ?」
「おお!!小さいプールなんヨ!フッフッフ……これはウチだけのものなんヨ!」
「こら」
小さいプールに着いた私は、早速、エメリィちゃんに教える。
「じゃあまず、どのくらい潜れるか試してみようよ」
「分かったんヨ!」
そういって、すぐに潜るエメリィちゃん。
そして、5秒ぐらいで出てくる。
「ぷはっ!どのくらいだったんヨ?」
「5秒くらいかなー。結構いい方だよ」
「まぁね。ウチほどの使い手になれば、ざっと72時間ぐらい潜れるんヨ!!」
「なんでやねん!72時間って、三日じゃん。風邪ひくよ」
「ふふふ!ウチは風邪なんて引かないんヨ!!だからウチのいた星では、ウチはこう呼ばれていたんヨ!!!『バカは風邪引かない』ってね!!!」
「バカにされてるよっ!?それ絶対バカにされてるって!」
「そんな事はないと思うんヨ」
なんというか、エメリィちゃんも大変なんだね。
とりあえず、泳ぎの続きでも教えよう。
「エメリィちゃん、とりあえず、好きなように泳いでみてよ」
「えっと、こんな感じなんヨか?」
うわぁ、なんかウネウネしてる。
これは泳げない人の動きだよ。
みてて面白い。
「ぷはっ!どうだったんヨ?コトネ!」
「あ、うん。えー。うん。その、なんというか…うん。」
「コトネ……せめてもうちょっとだけ、上手く誤魔化せないんヨか…?」
呆れたように、エメリィちゃんが私に言った。
そんな事言われましても。私困りますぞ。
そんなとき、声が聞こえた。
『――うるせぇ!!』
『――うるさくねぇぇ!!』
声のした方に、無意識に振り返る。
「あ、シュウ達がアホなんヨ!」
エメリィちゃんも、気付いたみたい。
ここから、飛び込み台にいる秋兄ぃ達が見える。
そう、争っている秋兄ぃ達が。
「アホはひどいんじゃない?せめて頭がよろしくないとか」
「そっちの方が以外と効くんヨ」
「そうかなぁ?」
アホ!の方が酷いと思うけど。
「お、コトネ!シュウ達の所に誰か来たんヨ!!」
「あ、本当だ。さっきの警備の人だね」
「あーあ。シュウ達また怒られるんヨ」
「えっと、『ちょっと待ちなさーい。危ないからやめなさーい。ほら、もうやめて…ってうわぁぁぁー。助けてー。ボチャーン』みたいな?」
「あ」
「警備の人落ちちゃったよ」
「頭から落ちたんヨ」
「これはひどい」
「あの人ボロボロなんヨ」
「あーあ。」
「っと、コトネ!ちょっとトイレに行って来るんヨ!」
「あー。場所わかる?」
「分かるんヨ!だから一人でも平気なんヨ!!」
そういって走り出してしまったエメリィちゃん。
迷子になったら大変なのに。
すぐ追いかけなくちゃ。
「ちょっと待ってよ!!ここ広いから迷子に…っいた」
『うおっ!!』
「あ、ごめんなさい!急いでたもので」
って、エメリィちゃん早い!
追いかけなくちゃ!
『おい。ちょっと待ちな』
突然肩を掴まれたような感覚。
そう、文字通り、掴まれている。
私は振り返ると、以下のも怖そうな男の人が二人。
…やばいよね。
「え、えっとその。あの」
相手の鋭い睨みつけに、言葉に詰まってしまう。
『人にぶつかっておいて、それはないんじゃないのー?』
と、私の肩をつかんでいる、金髪の人が言った。
『って、おい。この子よく見るとメチャクチャ可愛いじゃん!』
隣にいた、黒髪の男が、私の顔をじろじろ見てくる。
……やばい、まただ。
また大事な時に。
『おい、このコ赤くなってんじゃん!!なに?嬉しかったの?へへへへへ』
うっ、気持ち悪い。
なんというか、メガ兄ぃの方がまし。
どうしよう。恥ずかしい。
顔を見られてると思うだけで。
別に恥ずかしがる事はないのは分かっているけど。
多分。あがり症なんだと思う事にしている。
もうこうなってしまったら、自分ではどうしようもない。
顔が勝手に赤くなる。
恥ずかしさと怖さで、上手く体の自由が利かない。
力が入らない。
『ほら、なんか言ったらどうなんだよ!!』
「うっ」
金髪の方が、怒鳴りつけてくる。
その勢いに驚き、声が出てしまった。
『ん?…なんだお前。ビビってたのかよ。』
そう言われて初めて気付く。
自分の体が震えている。
『ねーねー。きみ何年生ー?』
「あ、え、その」
上手く喋れない。
頭の中とは裏腹に、心の方は恐怖心でいっぱいのようだ。
『ねーお兄さん達に教えてよ!ねーねー。』
黒髪の人がしつこく追及してくる。
金髪の人は、ずっと薄気味悪く笑っているだけ。
どうしよう。
数少ないお客さんも、子供たちと来ている事が多く、みて見ぬふりをして離れて行く。
『ほら。早く答えろよ!!』
急に黒髪の人が怒りだす。
私は別に悪くないと思うのだが、不良に人には常識が通用しないんだと思う。
私は、その声に恐怖心を強くさせてしまう。
「あ…、そのいちね…せい…です」
不良の人たちの恐ろしい表情と声で、自然と答えてしまう。
『え?うそ!?一年て事は小学生じゃないよね?中学生!?うわ見えないわー。絶対小学生かと思ってたわー』
うわ、失礼な人。
私ってそんなに子供っぽく見えるのだろうか。
気にしている事を思いっきり言ってくれちゃって。
結構傷つくね。これ。
『おい、そろそろやめてやれ。ほらこの子怖がってんじゃん』
ずっと肩を強く握りしめていた金髪の人が、黒髪の人に言っている。
『…ああ』
『悪かったな。こいつがしつこくてさ。もういいよ』
……あれ?
金髪の人って、以外といい人?
見た目はこんな怖いのに。
金髪の人の意外な言葉で、多分私の顔は嬉しさでいっぱいのような顔だった思う。
だが、やはり金髪。
金髪の人に、いい人なんている訳がない。
いや、それじゃあ金髪の人に失礼か。
訂正する。自ら金髪に染めあげた人に、いい人はいない。
私の嬉しそうな顔を見た瞬間。
金髪の人が本性を現す。
『はっはっはっは!!見たかよコイツの顔!本当に開放してくれるとでも思ってんのかねこいつは』
『けっけっけ。だなぁ!!まったくお前も人が悪いな。ほら見ろよ。この女の顔!凄い変化っぷりだ!』
『…よう譲ちゃん。俺達と一緒に遊ぼうぜ?なんてな!!』
『おいお前、どこの愉快な不良たちのセリフだよそりゃ!』
『はっはっは。違ぇねぇ!』
そういって、愉快に笑いだす不良たち。
あーもう帰りたい。
最低だよこの人たち。
人をいじめるのにすべてを捧げてるやつらだよ。
そんな私の脳内とは裏腹に、体は勝手に震えてしまう。
心が勝手に。
一度すくわれると思った後の絶望に、勝手に涙が出てくる。
『ちょっとこっち来てくれるよなぁ!?お譲ちゃん?』
そういって、私の腕を乱暴に引っ張り、どこかに連れて行こうとする金髪。
痛いっ!
このままついて行ったらだめだ。
何とか逃げないと。
そう思った私は、震えながらも必死で抵抗する。
「ちょっと、やめて下さい!」
『いって!あーあー。なんて事してくれたんだよ?腕折れちゃったよこりゃ?はっはっはは』
「よわすぎでしょ、その腕」
『んだとコラ!?』
うわっ!やばい。いつもの調子でツッコんでしまった。
あー。やっちゃった。
もうだめだ。もう終りだ。
その時、突然強く腕を引っ張られる。
「や、放して!!」
必死に抵抗してみたは良いものの、男の人にはかなわない。
そりゃ二人がかりだもん。
勝てる訳がない。
でも、必死に抵抗する。
腕を振り回したりしてみる。
すると、運悪く、不良の顔に直撃。
『いてぇな!!なにしやがんだこのやろう!!』
『バシッ』っと、音が響き渡る。
なにが起きたのか、分からない。
ただ、自然と涙がこぼれ落ちる。
そしてしばらくして、やっと状況を把握。
痛い。特に右の頬が痛い。
じんじんと、焼けるような痛み。
ひどい。たった一人の非力な女の子に、平手打ちはいかんでしょうが。
だけど、その一撃で。
私の中にあった、小さな反抗心が一瞬にして恐怖へと変わる。
『へっ、俺にたてつくから悪いんだよ』
そんな不良の言葉も、今の私の耳には入ってこなかった。
……秋兄ぃ。助けて。
助けてよ。秋兄ぃ!!
「――大丈夫か!?」
………――――――
俺は確かに聞いた。
確認のため、海にも聞いてみる。
「なあ海!!今の琴音の声だよな!?」
「ああ、多分!」
海も聞こえたらしい。
くそ、どこからだ!?
俺はすぐに立ち上がり、あたりを見回す。
海も探している。
そして多分、海とほぼ同時に琴音を見つける。
だがしかし。
金髪男と黒髪男が、琴音の手首を乱暴につかんでいる。
琴音が危ない。
それを見た俺の頭の中は、それだけでいっぱいだった。
琴音がピンチだ。
琴音が助けを求めている。
「っ……琴音!!」
今行くぞ!!
『おい秋!!どうす――』
海が何か言っている。
だが今の俺には、その言葉さえも聞こえない。
ただ無我夢中で、飛び込み台から飛び降りた。
水面までが遠い。
実際はそれほどの時間でもないと思う。
だが、今の俺にはその時間でさえも、もどかしく感じる。
くそっ、まだか。
俺は頭の中でそればかりを、繰り返している。
『バシャァーン』
そしてやっと、水の中へ。
俺は水の中の様子を、頭で感じる前に陸地に上がる。
こんな所で時間を使ってられない。
俺が走り出した時。
恭平の声が聞こえた。
「おい、なにかあったのか?」
「琴音か不良に絡まれてんだよ!!」
「なんだって!?」
俺は、走るのをやめずに恭平に言った。
俺の言葉を聞き、恭平も後から追いかけてくる。
くそっ!!遠い!!
どんだけ広いんだよここ!!
俺は、必死に琴音のもとに向かう。
どのぐらいたったのだろうか。
結構走ったと思う。
そこでやっと、陰に隠れた琴音の姿が見える。
「おーい!こと……」
俺が琴音に呼び掛けようとした時、俺の隣を猛スピードで通り過ぎて行く何か。
そう。恭平だ。
その足には、ビーチサンダルにローラーがついている謎のサンダル。
だがそのローラーのおかげで、結構なスピードが出ている。
そしてその状態で、恭平は不良に突っ込んでいく。
………――――――
「大丈夫か!?」
確かにそう聞こえた。
私は、声のした方向を見る。
「秋に……メガ兄ぃ!!」
そこにいたのは、秋兄ぃではなくメガ兄ぃだった。
だけど、メガ兄ぃより後ろの方に、秋兄ぃの姿が。
よかった。助けに来てくれたんだ。
メガ兄ぃが、不良たちに言った。
「轢かれたくなければそこをどいた方がいい!!」
その言葉で、不良たちが私から離れる。
メガ兄ぃは、私の前まで来ると、停止した。
「琴音ちゃん!大丈夫かい!?」
「う…うん。なんとか。」
「よかった…って、どうしたんだい!?その顔!」
メガ兄ぃが、私の顔を見て驚いている。
多分、不良たちにぶたれた所だろう。
「あ、あの人たちに……」
私は言った。
するとメガ兄ぃの顔が、いつもと違う、とても真剣な表情になる。
……こんなんメガ兄ぃ、初めて見たよ。
その時、やっと到着した秋兄ぃ。
「はぁ…はぁ、琴音。もう大丈夫だぞ!」
肩で息をしているのが分かる。
よほど慌てて来てくれたんだと思うと、少し涙が出てきた。
「秋兄ぃ。メガ兄ぃ。ありがとう」
「琴音がお礼を言う事じゃない。悪いのは、全部あいつらだ」
「琴音ちゃん。さがってて」
「…うん」
メガ兄ぃの声が、いつもの感じと違う。
メガ兄ぃでも、こんなに怒る事があるんだ。
私の為に。
そんな私達を見て、金髪の不良が言った。
『おい!あぶねぇじゃねぇか!!怪我したらどうしてくれる!!』
「怪我…だって?ふざけるな!!こんな小さな女の子に手を出しておいて、馬鹿な事を言うんじゃない!!」
メガ兄ぃが、不良たちに怒鳴りつける。
すると、今度は黒髪の不良が言い放つ。
『なにカッコつけてんだよ!!このシュノーケル野郎!!』
そう、まだシュノーケルを装備中。
決まらない。
「うるさい!外見など飾り同然!!本当に大事なものはな……」
メガ兄ぃが、ゆっくりとシュノーケルを外す。
そして、眼鏡をクイッと上げ。言い放つ。
「少女達を愛する心だ!!」
『少女限定かよ!!』
「少女限定かよ!!」
『少女限定かよ!!』
見事にツッコみを入れる秋兄ぃと不良たち。
なに敵と仲良く漫才してんのよ。
よくこの状況を、こんなおかしなムードに持って行けるね。
「きみたち。少女を守る心は、なによりも強いんだ。知っているか?こんなか弱い少女を殴ったとなると、暴力の罪に問われるんだぞ!!」
か弱いって。
それって子供っぽいってことかな。
「いや、暴力以外にももっとあるだろう!!」
「竹田兄。僕は法律には詳しくないんだよ」
『じゃあなぜ言ったぁ!!!』
「じゃあなぜ言ったぁ!!!」
見事にツッコむ黒髪不良。…と秋兄ぃ。
なんか力が抜けるよ。
「だからな不良。僕はお前達には負けない!!」
『へっ、言ってくれるじゃねぇかメガネ。なら俺に勝ってみやがれ!!』
そういって、メガ兄ぃに殴りかかる不良。
だがメガ兄ぃは、動こうとしない。
「お前達に一つだけ言っておこう。僕は女の子を守るためだったら、容赦はしないぞ!!大体、少女というものはだな。小柄で。可愛くて。愛くるしくて。僕達男の楽園なのだよ。その純粋な心には何の陰りもない。やましい気持など一切ないその純粋さ。例として一つだけ挙げてみよう。そう、妹だ。妹というものは、兄に対してつらく当たりながらも、陰では兄の事を応援してくれている存在!だが素直になれない。恥ずかしさゆえのツン!でも苦しい時には必ず支えになってくれる優しい存在。時々兄に妙に甘えてくる。それがデレ!いわゆるツンデレの……ぐはぁ!?」
『うるせぇぇ!!!!』
なんか大事な時に覚醒してしまったメガ兄ぃは、なにもする事なく殴れてしまった。
綺麗に吹っ飛び、私の前に倒れこむメガ兄ぃ。
「人をそんな簡単に殴るなんて!!『ミスタービー』のタク君が言っていたぞ!!抵抗しない人間を殴るのは、心が汚れている証拠だと!!この汚れ人間!!このキモ男!!」
『お前ほどじゃねぇよ!!』
「お前ほどじゃねぇよ!!」
『お前ほどじゃねぇよ!!』
仲良くツッコミを入れる三人組。
あ、一人は秋兄ぃだった。
こっち側の人だ。
もうみんなでお笑い出た方がいいよ。
結構いい所までいけるって。
そして、ミスタービーのタク君って誰よ。
こんなときにまでアニメオタクを発揮しなくても。
とりあえず、凄い腫れているのでメガ兄ぃの心配をしておく。
「大丈夫メガ兄ぃ?凄い腫れてるよ?血も出てるし」
「琴音ちゃん。すまなかった。こんな奴らの為に心配かけてしまって」
「気にしてないよ。それよりも平気なの?」
「今はむかつきの方が上だからね」
うん。本当に大丈夫そうだよ。
とりあえず良かった。
その時やっと、海兄ぃが到着した。
そういえば、エメリィちゃん大丈夫かな?
心配。確かトイレがあるのあの通路だよね?
なかなか出てこないなぁ。
気になるよ。
本当にどうしちゃったのかなぁ?
………―――――
とりあえず、琴音が無事でよかった。
恭平も何とか平気そうだ。
しかしこいつら許せねぇ。
人の妹に手を出しやがって。
ただで済むと思うなよ!
俺は、琴音達の前に立ち、不良たちを鋭く睨みつける。
その俺を見た不良(金髪)は、俺に言った(黒髪の方って基本喋らないな)。
『はぁ?なんだお前?俺達に文句でもあるのか?』
凄い形相で、俺を睨み返してくる。
うわっ、結構怖いな。
ちょっと甘く見てたよ。
よくよく考えればあれだよな。
琴音が本気が出せなかったとはいえ、こいつ琴音をぶっ飛ばしたんだ。
あの琴音を。
なら、俺がかなうわけなくね?
だって俺普通の部類の人間だよ?
無理だって。無理無理。
よく見れば、こいついれずみしてるじゃん。
カッコよく言えば、タトゥーしてるじゃん。
なかなかの筋肉だし。
無理だ。俺のこんなひょろひょろの体じゃ無理。
しかも俺、喧嘩した事ないや。
今回初喧嘩だよ。
いや、確かにムカつくけどさ。
それとこれとは話が別なわけで。
どうしよう。
琴音がなんか凄い尊敬のまなざしで見ている気がする(※エメリィーヌの事が気になり過ぎてみていません)。
くそっ、どうする。
海も見てるし、ここで引くわけにもいかないよな。
あ、あれ?へんだな。膝が笑ってやがる。
心なしか、体が震えてきちょる。
やばい。ネガティブ思考が活性化してきた。
そんなとき、金髪不良が言った。
『おい見てみろよ!!こいつ俺達見てブルッてやがんの!!』
それに便乗して、黒髪不良も馬鹿にしだす。
『本当だぜ!!妹さんにかっこいい所見せたかったんですかー!?けっけっけ。弱虫は引っ込んでな!!』
え?引っ込んでええの?
いや、だがここで引っ込んだら男がすたる。
とりあえず交渉でもしよう。
俺は、怖いので小さな声で言ってみる。
「―――れませんか?」
『はぁ?』
よく聞き取れなかったのか?不良が耳をすませたフリをする。
なので俺は、ハッキリ言ってやったぜ!
「今日の所は、帰ってくれませんか?」
『ぷっ。ぎゃっはっはっはは!!!』
『おい聞いたか?お前の兄ちゃん怖いんだとよ!!』
不良たちが一斉に笑いだす。
ああそうだよ!!怖いよ!正直怖いよ!!
だってそりゃそうだよ!!痛いのいやだもの!!
やばい、琴音呆れてるかも。
俺は、そーっと後ろを確認してみる。
っておい!!琴音どこ見てるんだ!!
俺はピンチだぞ!?通路の方なんか見て何している!!
そして海!
お前、銃を持って何してる!
早く撃てよ!!こいつら撃てよ!!
あ、あれか。怪我を治すとかいうやつ。
足怪我してたのか。よし、なら治したら加勢頼むぞ!!
そして恭平!!今かばんの整理している場合じゃないだろ!?
なにしてんねーん!!
『俺達にビビって、なにも出来ないのか?このチキンのお.に.い.ちゃん!ひゃっはっははは!!』
くっそ!!ムカつくぜ。一発殴ってやる。
俺を馬鹿にしていられるの今のうちだぞ!!
海が治ったら、お前らなんてボコボコよ!!
お!?海が立ち上がったぞ!!
治ったんだな!?
よっしゃ、フォロー頼むぜ!!
「くらえぇ!!」
俺は、渾身の力を込めて、腕を振り上げる。
そして、不良の顔面へと……
『ボコッ』
見事な当たり。
急なパンチに、よける暇もなく食らってしまった金髪不良。
顔面を押さえながら、よろめいている。
よし。今だ。
「海!今がチャンスだ!!!俺と一緒に……ってあれ!?」
俺は、さっきまで海がいた方向に振り替える。
だが、そこには海の姿がない。
俺は必死にあたりを見回す
すると、明らかに不良とは逆方向に去っていく海の後ろ姿が、視界に飛び込んできた。
おい海。
お前どこ行くんだ?
俺が考えていると、金髪不良の声がする。
『ふふふ。ビビリのくせに良いパンチ持ってんじゃねぇか』
……あれ?
もしかして俺、非常にまずい状況?
『大丈夫かお前?鼻血出てるぞ』
黒髪不良が心配している。
もちろん、金髪をだ。
『ああ、鼻血が出ちまったんだよ。たぁっっっぷり、お礼をしてあげないとなぁ?』
『へへっ。そうだな。こいつには、絶対にしてはいけない事をしたということを、たっぷりと教え込んでやらなくちゃなぁ?』
……やばい。
海がいなくなった途端、また体が。
とりあえずあれだ。
「あーえっと、大丈夫で『あ゛ぁ゛!?』…じゃないですよね…当然…」
『こいつ全然反省してねぇようだな。俺と同じ目にあわせてやるよ。くたばれや!!』
「秋兄ぃ!!!!」
「うわぁぁ!!」
……続く。
後編へ続く。