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俺の日常非日常  作者: 本樹にあ
◆日常編◆
29/91

第22.5話 その1~なんでやねんっ!!ツッコミだらけのお笑い集団誕生?~

あのプールの事件を、違う視点でお楽しみください。


ちょくちょく視点が変わるので、こんがらがりにご注意を。


「じゃあ、とりあえず行ってきなよ。私はエメリィちゃんに泳ぎ方教えてるから」


飛び込み台の事で、秋兄ぃ達がもめている。


私はとりあえず、そう言った。


そういえば、ずっと前。


エメリィちゃんに初めて会った日。


一緒にお風呂に入った時に、泳げないって言っていた。


だから、後で泳ぎを教えてあげるって約束した。


まさかこんな早く、教える事になるとは思ってなかったけど。


とりあえず、そんな感じ。



秋兄ぃが、嫌がる海兄ぃを無理やり連れて行く。


あーあ。海兄ぃ可哀そうに。


まぁ、いいや。


「じゃあエメリィちゃん。向こうの小さいプール行こうよ」


「分かったんヨ!!」


元気にエメリィちゃんが答える。


メガ兄ぃを見てみると、かばんの整理をしているみたい。


……うん。今のうちに行っちゃおう。




第22.5話 前編!VS不良編

~なんでやねんっ!!ツッコミだらけのお笑い集団誕生?~




とても楽しそうなエメリィちゃんの手を引き、奥の方の少し小さめのプールへ向かう。


エメリィちゃんが、うきわなしでも大丈夫なように。


「ほら、ここなら大丈夫でしょ?」


「おお!!小さいプールなんヨ!フッフッフ……これはウチだけのものなんヨ!」


「こら」


小さいプールに着いた私は、早速、エメリィちゃんに教える。


「じゃあまず、どのくらい潜れるか試してみようよ」


「分かったんヨ!」


そういって、すぐに潜るエメリィちゃん。


そして、5秒ぐらいで出てくる。


「ぷはっ!どのくらいだったんヨ?」


「5秒くらいかなー。結構いい方だよ」


「まぁね。ウチほどの使い手になれば、ざっと72時間ぐらい潜れるんヨ!!」


「なんでやねん!72時間って、三日じゃん。風邪ひくよ」


「ふふふ!ウチは風邪なんて引かないんヨ!!だからウチのいた星では、ウチはこう呼ばれていたんヨ!!!『バカは風邪引かない』ってね!!!」


「バカにされてるよっ!?それ絶対バカにされてるって!」


「そんな事はないと思うんヨ」


なんというか、エメリィちゃんも大変なんだね。


とりあえず、泳ぎの続きでも教えよう。


「エメリィちゃん、とりあえず、好きなように泳いでみてよ」


「えっと、こんな感じなんヨか?」


うわぁ、なんかウネウネしてる。


これは泳げない人の動きだよ。


みてて面白い。


「ぷはっ!どうだったんヨ?コトネ!」


「あ、うん。えー。うん。その、なんというか…うん。」


「コトネ……せめてもうちょっとだけ、上手く誤魔化せないんヨか…?」


呆れたように、エメリィちゃんが私に言った。


そんな事言われましても。私困りますぞ。


そんなとき、声が聞こえた。


『――うるせぇ!!』


『――うるさくねぇぇ!!』


声のした方に、無意識に振り返る。


「あ、シュウ達がアホなんヨ!」


エメリィちゃんも、気付いたみたい。


ここから、飛び込み台にいる秋兄ぃ達が見える。


そう、争っている秋兄ぃ達が。


「アホはひどいんじゃない?せめて頭がよろしくないとか」


「そっちの方が以外と効くんヨ」


「そうかなぁ?」


アホ!の方が酷いと思うけど。


「お、コトネ!シュウ達の所に誰か来たんヨ!!」


「あ、本当だ。さっきの警備の人だね」


「あーあ。シュウ達また怒られるんヨ」


「えっと、『ちょっと待ちなさーい。危ないからやめなさーい。ほら、もうやめて…ってうわぁぁぁー。助けてー。ボチャーン』みたいな?」


「あ」


「警備の人落ちちゃったよ」


「頭から落ちたんヨ」


「これはひどい」


「あの人ボロボロなんヨ」


「あーあ。」


「っと、コトネ!ちょっとトイレに行って来るんヨ!」


「あー。場所わかる?」


「分かるんヨ!だから一人でも平気なんヨ!!」


そういって走り出してしまったエメリィちゃん。


迷子になったら大変なのに。


すぐ追いかけなくちゃ。


「ちょっと待ってよ!!ここ広いから迷子に…っいた」


『うおっ!!』


「あ、ごめんなさい!急いでたもので」


って、エメリィちゃん早い!


追いかけなくちゃ!


『おい。ちょっと待ちな』


突然肩を掴まれたような感覚。


そう、文字通り、掴まれている。


私は振り返ると、以下のも怖そうな男の人が二人。


…やばいよね。


「え、えっとその。あの」


相手の鋭い睨みつけに、言葉に詰まってしまう。


『人にぶつかっておいて、それはないんじゃないのー?』


と、私の肩をつかんでいる、金髪の人が言った。


『って、おい。この子よく見るとメチャクチャ可愛いじゃん!』


隣にいた、黒髪の男が、私の顔をじろじろ見てくる。


……やばい、まただ。


また大事な時に。


『おい、このコ赤くなってんじゃん!!なに?嬉しかったの?へへへへへ』


うっ、気持ち悪い。


なんというか、メガ兄ぃの方がまし。


どうしよう。恥ずかしい。


顔を見られてると思うだけで。


別に恥ずかしがる事はないのは分かっているけど。


多分。あがり症なんだと思う事にしている。


もうこうなってしまったら、自分ではどうしようもない。


顔が勝手に赤くなる。


恥ずかしさと怖さで、上手く体の自由が利かない。


力が入らない。


『ほら、なんか言ったらどうなんだよ!!』


「うっ」


金髪の方が、怒鳴りつけてくる。


その勢いに驚き、声が出てしまった。


『ん?…なんだお前。ビビってたのかよ。』


そう言われて初めて気付く。


自分の体が震えている。


『ねーねー。きみ何年生ー?』


「あ、え、その」


上手く喋れない。


頭の中とは裏腹に、心の方は恐怖心でいっぱいのようだ。


『ねーお兄さん達に教えてよ!ねーねー。』


黒髪の人がしつこく追及してくる。


金髪の人は、ずっと薄気味悪く笑っているだけ。


どうしよう。


数少ないお客さんも、子供たちと来ている事が多く、みて見ぬふりをして離れて行く。


『ほら。早く答えろよ!!』


急に黒髪の人が怒りだす。


私は別に悪くないと思うのだが、不良に人には常識が通用しないんだと思う。


私は、その声に恐怖心を強くさせてしまう。


「あ…、そのいちね…せい…です」


不良の人たちの恐ろしい表情と声で、自然と答えてしまう。


『え?うそ!?一年て事は小学生じゃないよね?中学生!?うわ見えないわー。絶対小学生かと思ってたわー』


うわ、失礼な人。


私ってそんなに子供っぽく見えるのだろうか。


気にしている事を思いっきり言ってくれちゃって。


結構傷つくね。これ。


『おい、そろそろやめてやれ。ほらこの子怖がってんじゃん』


ずっと肩を強く握りしめていた金髪の人が、黒髪の人に言っている。


『…ああ』


『悪かったな。こいつがしつこくてさ。もういいよ』


……あれ?


金髪の人って、以外といい人?


見た目はこんな怖いのに。


金髪の人の意外な言葉で、多分私の顔は嬉しさでいっぱいのような顔だった思う。


だが、やはり金髪。


金髪の人に、いい人なんている訳がない。


いや、それじゃあ金髪の人に失礼か。


訂正する。自ら金髪に染めあげた人に、いい人はいない。


私の嬉しそうな顔を見た瞬間。


金髪の人が本性を現す。


『はっはっはっは!!見たかよコイツの顔!本当に開放してくれるとでも思ってんのかねこいつは』


『けっけっけ。だなぁ!!まったくお前も人が悪いな。ほら見ろよ。この女の顔!凄い変化っぷりだ!』


『…よう譲ちゃん。俺達と一緒に遊ぼうぜ?なんてな!!』


『おいお前、どこの愉快な不良たちのセリフだよそりゃ!』


『はっはっは。違ぇねぇ!』


そういって、愉快に笑いだす不良たち。


あーもう帰りたい。


最低だよこの人たち。


人をいじめるのにすべてを捧げてるやつらだよ。


そんな私の脳内とは裏腹に、体は勝手に震えてしまう。


心が勝手に。


一度すくわれると思った後の絶望に、勝手に涙が出てくる。


『ちょっとこっち来てくれるよなぁ!?お譲ちゃん?』


そういって、私の腕を乱暴に引っ張り、どこかに連れて行こうとする金髪。


痛いっ!


このままついて行ったらだめだ。


何とか逃げないと。


そう思った私は、震えながらも必死で抵抗する。


「ちょっと、やめて下さい!」


『いって!あーあー。なんて事してくれたんだよ?腕折れちゃったよこりゃ?はっはっはは』


「よわすぎでしょ、その腕」


『んだとコラ!?』


うわっ!やばい。いつもの調子でツッコんでしまった。


あー。やっちゃった。


もうだめだ。もう終りだ。


その時、突然強く腕を引っ張られる。


「や、放して!!」


必死に抵抗してみたは良いものの、男の人にはかなわない。


そりゃ二人がかりだもん。


勝てる訳がない。


でも、必死に抵抗する。


腕を振り回したりしてみる。


すると、運悪く、不良の顔に直撃。


『いてぇな!!なにしやがんだこのやろう!!』



『バシッ』っと、音が響き渡る。


なにが起きたのか、分からない。


ただ、自然と涙がこぼれ落ちる。


そしてしばらくして、やっと状況を把握。


痛い。特に右の頬が痛い。


じんじんと、焼けるような痛み。


ひどい。たった一人の非力な女の子に、平手打ちはいかんでしょうが。


だけど、その一撃で。


私の中にあった、小さな反抗心が一瞬にして恐怖へと変わる。


『へっ、俺にたてつくから悪いんだよ』


そんな不良の言葉も、今の私の耳には入ってこなかった。


……秋兄ぃ。助けて。


助けてよ。秋兄ぃ!!



「――大丈夫か!?」





………――――――


俺は確かに聞いた。


確認のため、海にも聞いてみる。


「なあ海!!今の琴音の声だよな!?」


「ああ、多分!」


海も聞こえたらしい。


くそ、どこからだ!?


俺はすぐに立ち上がり、あたりを見回す。


海も探している。


そして多分、海とほぼ同時に琴音を見つける。


だがしかし。


金髪男と黒髪男が、琴音の手首を乱暴につかんでいる。


琴音が危ない。


それを見た俺の頭の中は、それだけでいっぱいだった。


琴音がピンチだ。


琴音が助けを求めている。


「っ……琴音!!」


今行くぞ!!


『おい秋!!どうす――』


海が何か言っている。


だが今の俺には、その言葉さえも聞こえない。


ただ無我夢中で、飛び込み台から飛び降りた。


水面までが遠い。


実際はそれほどの時間でもないと思う。


だが、今の俺にはその時間でさえも、もどかしく感じる。


くそっ、まだか。


俺は頭の中でそればかりを、繰り返している。


『バシャァーン』


そしてやっと、水の中へ。


俺は水の中の様子を、頭で感じる前に陸地に上がる。


こんな所で時間を使ってられない。


俺が走り出した時。


恭平の声が聞こえた。


「おい、なにかあったのか?」


「琴音か不良に絡まれてんだよ!!」


「なんだって!?」


俺は、走るのをやめずに恭平に言った。


俺の言葉を聞き、恭平も後から追いかけてくる。


くそっ!!遠い!!


どんだけ広いんだよここ!!


俺は、必死に琴音のもとに向かう。


どのぐらいたったのだろうか。


結構走ったと思う。


そこでやっと、陰に隠れた琴音の姿が見える。


「おーい!こと……」


俺が琴音に呼び掛けようとした時、俺の隣を猛スピードで通り過ぎて行く何か。


そう。恭平だ。


その足には、ビーチサンダルにローラーがついている謎のサンダル。


だがそのローラーのおかげで、結構なスピードが出ている。


そしてその状態で、恭平は不良に突っ込んでいく。





………――――――


「大丈夫か!?」


確かにそう聞こえた。


私は、声のした方向を見る。


「秋に……メガ兄ぃ!!」


そこにいたのは、秋兄ぃではなくメガ兄ぃだった。


だけど、メガ兄ぃより後ろの方に、秋兄ぃの姿が。


よかった。助けに来てくれたんだ。


メガ兄ぃが、不良たちに言った。


「轢かれたくなければそこをどいた方がいい!!」


その言葉で、不良たちが私から離れる。


メガ兄ぃは、私の前まで来ると、停止した。


「琴音ちゃん!大丈夫かい!?」


「う…うん。なんとか。」


「よかった…って、どうしたんだい!?その顔!」


メガ兄ぃが、私の顔を見て驚いている。


多分、不良たちにぶたれた所だろう。


「あ、あの人たちに……」


私は言った。


するとメガ兄ぃの顔が、いつもと違う、とても真剣な表情になる。


……こんなんメガ兄ぃ、初めて見たよ。


その時、やっと到着した秋兄ぃ。


「はぁ…はぁ、琴音。もう大丈夫だぞ!」


肩で息をしているのが分かる。


よほど慌てて来てくれたんだと思うと、少し涙が出てきた。


「秋兄ぃ。メガ兄ぃ。ありがとう」


「琴音がお礼を言う事じゃない。悪いのは、全部あいつらだ」


「琴音ちゃん。さがってて」


「…うん」


メガ兄ぃの声が、いつもの感じと違う。


メガ兄ぃでも、こんなに怒る事があるんだ。


私の為に。


そんな私達を見て、金髪の不良が言った。


『おい!あぶねぇじゃねぇか!!怪我したらどうしてくれる!!』


「怪我…だって?ふざけるな!!こんな小さな女の子に手を出しておいて、馬鹿な事を言うんじゃない!!」


メガ兄ぃが、不良たちに怒鳴りつける。


すると、今度は黒髪の不良が言い放つ。


『なにカッコつけてんだよ!!このシュノーケル野郎!!』


そう、まだシュノーケルを装備中。


決まらない。


「うるさい!外見など飾り同然!!本当に大事なものはな……」


メガ兄ぃが、ゆっくりとシュノーケルを外す。


そして、眼鏡をクイッと上げ。言い放つ。


「少女達を愛する心だ!!」


『少女限定かよ!!』

「少女限定かよ!!」

『少女限定かよ!!』


見事にツッコみを入れる秋兄ぃと不良たち。


なに敵と仲良く漫才してんのよ。


よくこの状況を、こんなおかしなムードに持って行けるね。


「きみたち。少女を守る心は、なによりも強いんだ。知っているか?こんなか弱い少女を殴ったとなると、暴力の罪に問われるんだぞ!!」


か弱いって。


それって子供っぽいってことかな。


「いや、暴力以外にももっとあるだろう!!」


「竹田兄。僕は法律には詳しくないんだよ」


『じゃあなぜ言ったぁ!!!』

「じゃあなぜ言ったぁ!!!」


見事にツッコむ黒髪不良。…と秋兄ぃ。


なんか力が抜けるよ。


「だからな不良。僕はお前達には負けない!!」


『へっ、言ってくれるじゃねぇかメガネ。なら俺に勝ってみやがれ!!』


そういって、メガ兄ぃに殴りかかる不良。


だがメガ兄ぃは、動こうとしない。


「お前達に一つだけ言っておこう。僕は女の子を守るためだったら、容赦はしないぞ!!大体、少女というものはだな。小柄で。可愛くて。愛くるしくて。僕達男の楽園なのだよ。その純粋な心には何の陰りもない。やましい気持など一切ないその純粋さ。例として一つだけ挙げてみよう。そう、妹だ。妹というものは、兄に対してつらく当たりながらも、陰では兄の事を応援してくれている存在!だが素直になれない。恥ずかしさゆえのツン!でも苦しい時には必ず支えになってくれる優しい存在。時々兄に妙に甘えてくる。それがデレ!いわゆるツンデレの……ぐはぁ!?」


『うるせぇぇ!!!!』


なんか大事な時に覚醒してしまったメガ兄ぃは、なにもする事なく殴れてしまった。


綺麗に吹っ飛び、私の前に倒れこむメガ兄ぃ。


「人をそんな簡単に殴るなんて!!『ミスタービー』のタク君が言っていたぞ!!抵抗しない人間を殴るのは、心が汚れている証拠だと!!この汚れ人間!!このキモ男!!」


『お前ほどじゃねぇよ!!』

「お前ほどじゃねぇよ!!」

『お前ほどじゃねぇよ!!』


仲良くツッコミを入れる三人組。


あ、一人は秋兄ぃだった。

こっち側の人だ。


もうみんなでお笑い出た方がいいよ。


結構いい所までいけるって。


そして、ミスタービーのタク君って誰よ。


こんなときにまでアニメオタクを発揮しなくても。


とりあえず、凄い腫れているのでメガ兄ぃの心配をしておく。


「大丈夫メガ兄ぃ?凄い腫れてるよ?血も出てるし」


「琴音ちゃん。すまなかった。こんな奴らの為に心配かけてしまって」


「気にしてないよ。それよりも平気なの?」


「今はむかつきの方が上だからね」


うん。本当に大丈夫そうだよ。


とりあえず良かった。


その時やっと、海兄ぃが到着した。


そういえば、エメリィちゃん大丈夫かな?


心配。確かトイレがあるのあの通路だよね?


なかなか出てこないなぁ。


気になるよ。


本当にどうしちゃったのかなぁ?






………―――――


とりあえず、琴音が無事でよかった。


恭平も何とか平気そうだ。


しかしこいつら許せねぇ。


人の妹に手を出しやがって。


ただで済むと思うなよ!


俺は、琴音達の前に立ち、不良たちを鋭く睨みつける。


その俺を見た不良(金髪)は、俺に言った(黒髪の方って基本喋らないな)。


『はぁ?なんだお前?俺達に文句でもあるのか?』


凄い形相で、俺を睨み返してくる。


うわっ、結構怖いな。


ちょっと甘く見てたよ。


よくよく考えればあれだよな。


琴音が本気が出せなかったとはいえ、こいつ琴音をぶっ飛ばしたんだ。


あの琴音を。


なら、俺がかなうわけなくね?


だって俺普通の部類の人間だよ?


無理だって。無理無理。


よく見れば、こいついれずみしてるじゃん。


カッコよく言えば、タトゥーしてるじゃん。


なかなかの筋肉だし。


無理だ。俺のこんなひょろひょろの体じゃ無理。


しかも俺、喧嘩した事ないや。


今回初喧嘩だよ。


いや、確かにムカつくけどさ。


それとこれとは話が別なわけで。


どうしよう。


琴音がなんか凄い尊敬のまなざしで見ている気がする(※エメリィーヌの事が気になり過ぎてみていません)。


くそっ、どうする。


海も見てるし、ここで引くわけにもいかないよな。


あ、あれ?へんだな。膝が笑ってやがる。


心なしか、体が震えてきちょる。


やばい。ネガティブ思考が活性化してきた。



そんなとき、金髪不良が言った。


『おい見てみろよ!!こいつ俺達見てブルッてやがんの!!』


それに便乗して、黒髪不良も馬鹿にしだす。


『本当だぜ!!妹さんにかっこいい所見せたかったんですかー!?けっけっけ。弱虫は引っ込んでな!!』


え?引っ込んでええの?


いや、だがここで引っ込んだら男がすたる。


とりあえず交渉でもしよう。


俺は、怖いので小さな声で言ってみる。


「―――れませんか?」


『はぁ?』


よく聞き取れなかったのか?不良が耳をすませたフリをする。


なので俺は、ハッキリ言ってやったぜ!


「今日の所は、帰ってくれませんか?」


『ぷっ。ぎゃっはっはっはは!!!』


『おい聞いたか?お前の兄ちゃん怖いんだとよ!!』


不良たちが一斉に笑いだす。


ああそうだよ!!怖いよ!正直怖いよ!!


だってそりゃそうだよ!!痛いのいやだもの!!


やばい、琴音呆れてるかも。


俺は、そーっと後ろを確認してみる。


っておい!!琴音どこ見てるんだ!!


俺はピンチだぞ!?通路の方なんか見て何している!!


そして海!


お前、銃を持って何してる!


早く撃てよ!!こいつら撃てよ!!


あ、あれか。怪我を治すとかいうやつ。


足怪我してたのか。よし、なら治したら加勢頼むぞ!!


そして恭平!!今かばんの整理している場合じゃないだろ!?


なにしてんねーん!!


『俺達にビビって、なにも出来ないのか?このチキンのお.に.い.ちゃん!ひゃっはっははは!!』


くっそ!!ムカつくぜ。一発殴ってやる。


俺を馬鹿にしていられるの今のうちだぞ!!


海が治ったら、お前らなんてボコボコよ!!


お!?海が立ち上がったぞ!!


治ったんだな!?


よっしゃ、フォロー頼むぜ!!


「くらえぇ!!」


俺は、渾身の力を込めて、腕を振り上げる。


そして、不良の顔面へと……


『ボコッ』


見事な当たり。


急なパンチに、よける暇もなく食らってしまった金髪不良。


顔面を押さえながら、よろめいている。


よし。今だ。


「海!今がチャンスだ!!!俺と一緒に……ってあれ!?」


俺は、さっきまで海がいた方向に振り替える。


だが、そこには海の姿がない。


俺は必死にあたりを見回す


すると、明らかに不良とは逆方向に去っていく海の後ろ姿が、視界に飛び込んできた。


おい海。


お前どこ行くんだ?


俺が考えていると、金髪不良の声がする。


『ふふふ。ビビリのくせに良いパンチ持ってんじゃねぇか』


……あれ?


もしかして俺、非常にまずい状況?


『大丈夫かお前?鼻血出てるぞ』


黒髪不良が心配している。


もちろん、金髪をだ。


『ああ、鼻血が出ちまったんだよ。たぁっっっぷり、お礼をしてあげないとなぁ?』


『へへっ。そうだな。こいつには、絶対にしてはいけない事をしたということを、たっぷりと教え込んでやらなくちゃなぁ?』


……やばい。


海がいなくなった途端、また体が。


とりあえずあれだ。


「あーえっと、大丈夫で『あ゛ぁ゛!?』…じゃないですよね…当然…」


『こいつ全然反省してねぇようだな。俺と同じ目にあわせてやるよ。くたばれや!!』


「秋兄ぃ!!!!」


「うわぁぁ!!」



……続く。

後編へ続く。


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