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俺の日常非日常  作者: 本樹にあ
◆日常編◆
18/91

第十四話~終幕!じゃんけん大会~

どもです^^


今回は、じゃんけん大会編完結!


というわけです。ええ。


それでは、いってらっしゃいませ。




前回のあらすじだ。


じゃんけん大会に来た俺は、秋と参加した。


1ブロック8人×5ブロック。


計40人でやる、じゃんけん大会。


Aブロックの試合が終わり、とうとうBブロック。


つまり俺の番だ。


はたして、優勝するのは誰だ!!


そして、十万円を手にするのは!?


それでは。


はじまります。




第十四話

~終幕!じゃんけん大会~




とうとう俺の番が来た。


遠くの方で、エメリィーヌの声がする。


応援をしてくれているみたいだ。


秋を見ると力強い目で、こちらを見ている。


ここで終わるんじゃねぇぞ。という顔だ。



まかせろ。俺はこんな所じゃ負けない。


俺は気合を入れなおし、前に出る。



俺の対戦相手を見ると、同じクラスの山下だ。


俺の事を、いつも目の敵にしている。


金持ちだのなんだのって、俺の事を良く思っている奴なんて、学校にいないからな。


大体同じクラスのやつは、俺をバカにしている奴らだ。


そんなやつには負けない。



すると、山下が嫌味を言ってくる。


「お前、金持ちのくせにこんなとこ来て、何してるんだよ?」



今の山下の顔をみたら、多分みんなもむかつくと思う。


そういう顔をしている。



そんな山下を、俺は挑発する。


「うるせぇ。悔しかったら俺様に勝って見やがれ」


「この野郎」


すると、いい感じにむかむかしている。


怒った奴ほど、やり易い奴はいない。



台に上った俺らは、それぞれに向かい合う。


山下の顔は、チンピラの如くいらついている。


軽い挑発なんかに乗せられやがって。


だからお前はいつまでたってもチンピラなんだ。



俺が思っていると、山下が、テンション絶賛ガタ落ち中の実況の人に聞く。


「おい、たしか何しても良かったんだよな?」


その声に、とてもビビる実況。


『は、はい。暴力や、インチキ以外は基本OKです。』


「おし。わかった」


何か策でもあるのだろうか?



山下がかすかに不敵な笑みを浮かべている。



『では、はじめまーす。』


おい、さっきのテンションどこいった。


投げやりだな実況。


そんな実況の開始の合図と同時に、山下が動き出す。


俺に顔を近づけると、耳元でささやいてきた。


「てめぇ、調子乗ってっと、痛い目見るぞ?」


俺は、それを聞き、笑いをこらえるのに必死だった。


そして俺は、そんな山下に、馬鹿にした口調で言い放つ。


「プッ、お前、いまどき恐喝なんて流行らねーよ。学園ドラマの見すぎだろ。」


そういって、俺は山下の肩を豪快にたたく。



ふと、秋を見ると、とてもニヤニヤしている。



その時、俺の挑発に山下がキレる。


「そうか。よくわかった。帰り道、背後に気をつけとけよ?」


「これはご丁寧に。お前も、夏休み明けの抜き打ちテストには気をつけろよ?」


俺は笑いながら言い返す。



『えっと、そろそろ始めて下さい』


と実況。



しょうがねぇ。俺も動くか。



俺は、得意な心理戦に持ち込む。


「とてもおバカな君に、サルでもわかるようにいい事ををしえてやる。俺、実は空手やってるんだ。」



もちろん嘘だ。


「だからなんだよ」


「この前、有名な不良高校の奴らが、何者かにやられた事件あったろ? 新聞に出てたはずだ。まさか知らないのか? あぁ、お前新聞読めないんだっけ。悪かったな。」


もちろんすべて嘘だ。


だが山下は。


「…知ってるに決まってんだろ!! 新聞に出てたんだろ?それぐらい知ってる。逆にお前が新聞読んでたのが驚いて、腰が抜けそうになったぐらいだ」


おいおい、知ってるのかよ。


そんな事件、新聞に載ったことねーよ。


つーか、有名な不良高校に心当たりがあるのか。


俺は知らなかったぜ。


この辺りにもあるんだな。



「その事件。誰がやったか…わかるか?」



俺は、恐ろしい口調で、言った。



「…誰だよ?」


つい息をのんでしまった山下。


完全に信じていやがる。


「言わなくちゃ分からないのか? これだからバカは。バカでも分かるように、その体に直接教えてやるよ。」


ここで、キッと睨む。


睨むと同時に、俺は、山下に拳を見せつけるように、握りしめる。


これ重要。



俺はもともと目つきが悪いもんだから、真剣な表情になると、とても威圧感が出る。


つまりは、怖い顔が得意というわけだ。



「お、俺は騙されないぞ! 嘘付きやがって!!」


まるで自己暗示のよう。


だって声が震えている。


俺の睨みは、相当効果があったようだ。



「実は俺なぁ、グーが好きなんだよ。殴った時の感触が得にさぁ。」



いいんだよなぁ。枕を殴った時の感触。


皆さんもお試しあれ。いいストレス発散になりますよ。



「い、いいのか?殴ったりしたら失格だぞ!?」



コイツ、いまさら何をぬかしてやがるんだ?


さんざん俺の事、バカにしてくれただろ。


「失格?上等じゃねぇか。あいにく俺は、金持ちですから?」


「ひっ!」



すっかり、おびえている。



「じゃあそろそろ始めよう。いくぞ?じゃ~ん」


俺は振りかぶる。



「け~ん」


俺は殴りかかる。もちろんフリだ。


「ひぃぃぃ」


そういって、山下は反射的に、手のひらで顔を守る。


そこに俺は優しく。



「ぽん」


チョキを出した。


山下は、顔を守るために手を開いている。


つまりはパー。


よって、俺の勝ちだ。



「と、いうわけだから。お疲れ様」


俺は、満面の笑みで言い放った。


それを見て、やっとだまされた事に気付く山下。



そんな山下が、抗議を始める。


「おい、審判!!今のはインチキじゃないのか!?」


そう実況の人に言っている。


いつから審判になったのだろう。


とはいえ、実況でもないけどな。



とりあえず、今は審判の方向で。



「おい!聞いているのか!?」


審判にえらいブチ切れる山下。


相手にしてみれば、とんだ迷惑だ。


そんな審判が、言った。



『今のは、インチキ行為とみなし、失格とします!』


その言葉に、その場にいる誰もが驚く。


もちろん秋も。



ただその中で驚いていないのは、勝利を確信した山下と。


失格を告げられた俺のみだった。



クックック。あまい。あますぎる。


本当にこいつらは、俺がこの程度も予想できないとでも思っているのか?


秋もだ。俺の事をなめ過ぎている。



俺は、審判に問いただす。


「その判定。ちょっと待ってもらおうか。」



俺の言葉に、山下がしつこく反応する。


「なにいってんだ。お前は負けたんだ。さっさと帰れよ。」



俺が負け?そんなわけないだろう。


「最初に言っていただろう。奇策は、認めると。」


『え、ええ』


とても困り顔の審判。



だが俺は構わず続ける。


「俺はインチキではない。作戦だ。頭を使った。それだけだ。心理戦は禁止なんて、俺は聞いていなかったぞ?」


俺が告げる。


すると山下が。


「お前はバカか? そんなの言わなくても気付くだろ。」



バカはお前だよ。


「じゃあ俺のがインチキというのならばだ。最初にコイツがした事はどうなる?」



俺は、山下を指差しながら言い放つ。


すると、山下が自ら、俺の罠にはまりに来る。



「あ、あれは恐喝ではないぞ!?勝手な事をぬかすんじゃ…」


まだ喋っている山下に、俺はかぶせる。


「おや? 俺は恐喝なんて言っていないぞ? 最初にした事はなんだと言っただけだ。その言葉を聞いて、恐喝なんて単語を口にしたという事は、お前、自分で恐喝したと、認めてるってこと。つまり、お前は恐喝をした!! どうだみんな!?コイツの方が、よほどインチキだろ!!」


俺は、その場にいる皆に、問う。



そう。恐喝なんて言葉を聞いて、良く思う人などいやしない。


なら、俺がどんなに酷かろうが、自然と俺の味方になるわけだ。


その証拠に


「たしかに、恐喝はインチキだ!」


「その坊やのいう通りだわ!!」


(カイ)の坊主が正しい!! 立派に頭を使ったんだ!!」


という声が、次第に大きくなる。


そうだそうだ!!!


と、口ぐちにみんなが叫ぶ。


もうこうなってしまえば、審判的には、俺の味方をしなくてはならなくなる。



さっきまで、他の町内会の人と話し合っていた審判が、マイクを再度握りしめる。


どうやら、まとまったようだ。


『皆さんお静かに願います!!えー、 審議の結果。恐喝はいけないと判断し、エントリーナンバー39の、山空 海さんの勝利です!!』



つまり。


「山下!! お前の負けだぁ!!」


「そ、そんな」


そういって、ひざから崩れ落ちる山下。



全人々に批判されたとなっちゃ、さすがの山下もこたえるはずだ。


もう二度と、俺に生半可な覚悟で立ち向かってくるんじゃねぇぞ。



「じゃあな、山下」


俺はそういって台から下りて、琴音達のいるベンチまで歩いていく。



俺がよけなくても、人が勝手に道を開けてくれる。


そして俺が通るたび、感動の声を投げかけてくる。


「坊主やるな!」


「いい物見せてもらったぞ!」


「じゃんけん大会で、まさかあんなものが見れるなんて思ってなかったわ」


「感動しました! 尊敬します!」


俺はみんなに手を振り、さっそうと歩き続けた。



そんな俺の後ろから、秋が追いかけてくる。


そして、秋が言った。


「お前凄かったなぁ。スッキリしたぜ!」


「まぁ、俺が本気になればこんなもんだ。」


「俺はもうだめかと思ったぞ。…それにしても、山下も悲惨な奴だなぁ」


「まぁ、あれでこりてくれたら苦労はしないけどな。」


秋も、俺をほめている。


やめろよ。照れるじゃねぇか。



そんな事を話しながら、琴音のいるベンチに到着。



琴音もあの様子を見ていたのだろう。


俺を尊敬のまなざしで見ている。


「海兄ぃ凄かったよ!! 正直、あんなに凄いなんて思わなかった!!」



そうだろうそうだろう。


そして、エメリィーヌが言った。


「ごめん。おにぎり全部食べちゃったんヨ。」


そうだろうそうだろ…え?



「おい!俺の分はどうした! 俺の明太子おにぎりは!?」


取っといてくれって頼んだのに!!



「だから、謝ってるんヨ!つい食べちゃったんヨ!!」


つい食べただと!?


そんな事あってたまるか。



「おい、琴音!なぜエメリィーヌを止めなかった!!」


隣にいたなら止められたはずだ。


だがしかし


「いやぁ、海兄ぃので夢中になっててねー。」



なんだそうか。なら仕方がない。


くそっ、俺のおにぎり!!


もうこうなったら仕方ねぇ。



「十万とって帰るぞ!!」


「次、海と当たる奴に、すっごい同情するわ」


秋が言い終わったと同時に、実況の声。



『みんなの期待の星、海さーん!!出番ですよ!!』


お!?とうとう俺の番か。


まってろ、十万!!


俺の目は、多分、福沢諭吉になっている事だろう。


俺は十万目指して、再び戦場に足を踏み入れた。



『海選手ご到着です!!それではぁ、ファイト!!』



俺の次の相手は…って子供かよ!?


くそっ、本気が出しズラい。


だが、俺は手加減などしないぞ!!


獅子はうさぎを狩るにも全力を尽くすものなのだ!!



とりあえずあれだ。


説得の開始だ。



「えっときみ、名前は?」



まずは距離を縮める!


俺の急な質問に、しっかりと答えてくれた。


「おれは、かけるです!」


「かける君!!とってもいい名前じゃないか!! ところで、今ここに、親は来てるのか?」


俺は、とても優しい顔で聞いた。



かける君は、ちゃんと答えてくれた。


「お母さんと来てたけど、今はちょうどお昼食べに行ってる」



よしっ!これはチャンスだ。


これを逃す手はない。


「かける君が十万円欲しい理由はなんだ?」


「欲しいゲームがあるんだ!一万円あれば買えるんだけど…」


欲しいゲームか。なるほど。



でもこのくらいの年だと、そんな大金持たせようとはしないだろう。



「十万円ゲットしたとしても、お母さんとかに、千円ぐらいしかもらえないんじゃないかな?」


俺も良くあることだった。


宝くじかなんかをして、当たったとしても、必ず少しだけしかもらえなかった。



どうやら俺の言葉は、もろ図星だったらしい。


とても驚いた表情で聞き返してきた。



「なんでわかったの!?兄ちゃんすげー」



そうだろう。


子供の心は忘れてないつもりだからな。



そんなかける君に、俺は交渉を始める。


「なら、相談だ。もし俺が十万円とったら、一万円くれてやる」


「え…でも…」


困っているようだ。


それはそうだろう。



俺がもし負ければ、それまでだからだ。


かける君がもしも優勝し、十万円が手に入った時に、貰えるか分からない一万円に賭けるのと、


見ず知らずの人に賭けて、一か八かの大勝負に出るのか。


というのが、多分一緒。同じ確率。だから迷っている。


俺に頼んだ時。俺が負けるとすべてが台無し。


自分でやっておけばよかったという後悔。


それらを振り払うなど、多分無理だろう。


自分の力で勝ち取り、親を説得するか。


俺が負けなければ、確実に貰える一万円。


だが負ければそれまで。見ず知らずの人に運命を預けるのか。


究極の選択。


そんなもの選べるわけがない。


だがもしも、かける君にデメリットがなければ、どうだろう。


そう、何も失わない。


もしそんなものがあれば。


答えはそう。目に見えている。



「俺が負けても、一万円は絶対にくれてやる。」


「えっと…その…」


「親に言いづらいか?」


「うん」


見ず知らずの人にお金を譲ってもらったとなると、親としては困るだろう。


だが問題ない。


俺が無理やり押し付ける形にすればいい。


そうなると、向こうも嫌嫌だが、受け取るほかない。


俺が譲らなければいい。ただそれだけ。


「大丈夫だ。考えてある。お前はただ、俺を信じてくれるだけでいい。」


俺は、かける君に説得を続ける。


「お母さんも、最初は気にすると思う。でも、大丈夫。そもそも、プレゼントを貰って、嫌がる人なんていないだろ?」



そこまで言うと、俺は一呼吸置き、優しく。そして力強く告げる。



「だからだ。俺を勝たせてくれ!」


俺は、かける君の両肩に手を置き、力強いまなざしでかける君を見つめる。



しばらく考え込んでいたかける君が、とうとう口を開く。


「…うん、わかったよ、兄ちゃん」


かける君は、俺の言葉にうなずいてくれた。



「ありがとうかける君!!良く決心してくれた!! お前、かっこいいぞ!!」



よし。かける君のおかげで、今回も勝てそうだ。


一万円を浪費したが、これから手にするものに比べれば安いもの。



俺は、かける君に言った。


「じゃあ、俺がチョキを出すから。パーを出してくれ。」


「わかった」


そういって、じゃんけんが始まる。


俺とかける君は、一緒に唱える。


「「じゃーんけーんぽん!!」」



俺はチョキ。


かける君はパーを出した。



その瞬間。


俺は生き残ったわけだ。



最後に、俺はかける君に告げた。


「かける君、チョキは指のハサミだ。チョキでパーを切る。すなわち指きりだ。俺は絶対に約束は守る」


俺がそう告げると、かける君は力強く頷いてくれた。


もちろん、そんなやりとりは、みんなにも伝わっている訳で。



『えー、これは驚きです。じゃんけん大会なのに、頭脳のみで勝ち上がってしまいました!!これからどうなるのか。必見の選手です!!』



いいぞ実況!!もっと盛り上げてくれ!!



実況の人だけからじゃなく、周りからも、歓喜の声が飛び交う。



俺は、笑顔で手を振り返した。


なんという清々しい気分。




――そんな人たちに囲まれ、俺は次々に勝ち上がっていく。


誰もが予想もしなかった事を、俺がこなす。


そのたびに、声援。歓声の嵐。


そして俺は、とうとう決勝まで勝ち上がったのだった。





俺の戦いが終わり、次は秋のいるCブロック。


秋の強引な作戦が炸裂。


それと運のみで、決勝に勝ち上がって行った。


つーか、ほぼ運だ。


理由があるとすれば、その影の薄さ。


それゆえに、相手も気を抜いていた事だろう。




そのあと、Dブロック.Eブロック共に決着がつき、残るは俺たちの対戦となった。


『さぁー、泣いても笑ってもこれが最後!! はたして十万円を手にするのは誰なのか!! 運命の最終決戦!!開始です!!』



「海、お前がどんな借金地獄になろうが、お前がまいた種だ。手加減はしねぇぞ。」


秋が俺に向けて告げた。



俺もそれに答えるように、言った。


「あたりまえだ。手加減なんてしたらぶっ飛ばす。」



Aブロックの、町の小学生A。


Bブロックは俺。


Cブロックは秋。


Dブロックは、中坊。


Eブロックは、ノリのいいおばちゃんだ。


俺たちは、それぞれに頭を下げ、あいさつをした。



『それじゃあ、レディーファイト!!』


実況の合図とともに、五人全員が腕を振り上げる。


敵は、四人。


それに勝つ方法があるとすればだ。


これしかないだろう。


俺は大きく息を吸い、そして


「わっ!!!!」


凄い大声を出す。


それゆえに、みんなが一瞬固まる。


今だ。


俺はじゃんけんを始めた。


「じゃーんけーんぽん!!」



俺の声を聞き、慌ててみんなが出す。



みんな知っているか?


考える暇を与えず、しかも驚いた状態だと、複雑な形をしたチョキはあまり出さない。


いや、出せないのだ。



すぐに指先をを動かす事など、できない。


俺の言葉で、早く出さなきゃと言う事だけが頭を支配する。


そればかりが頭に残り、何を出すのかを考えるのが、0.数秒遅れる。


それで充分だった。


チョキの確率は低い。


すなわち、パーを出せば負ける事はない。


これらの事を踏まえていただくと、この結果にも満足していただけるだろう。


俺、秋、小学生はパー。


それ以外はグーだ。


「くそー、もうちょっとだったのに」


とても悔しそうな中坊。


「あんら、負けてしまったわ」


と、以外と平気そうなおばちゃん。


たった数秒で、すべての苦労が水の泡と化す。


これがじゃんけん。


俺に手加減という文字はない。


残るは、小学生ともう一人。


秋だ。



すると、秋が不敵な笑みを浮かべて言った。


「お前の考えそうなことなど分かっていたぜ」


…ならなぜ、お前もパーを出した。


思いっきり惑わされている証拠だろ。


するとその時、秋が唱える。


「じゃーんけーん」


くそっ、秋のせいで行動に移せなかった。


これが作戦か。


俺に考える時間を与えないため。


もうだめだ。


ここは、勘でいこう。


「ぽん!」


秋の声に合わせて、俺は手を出す。


俺と秋はグー。


小学生はチョキだった。



その結果を見て、秋が俺に言い放つ。


「お前との一騎打ちか。断わっておくが、俺は負けるつもりはない」


そんな秋に、俺も負けじと言い返す。


「もちろん俺もだ。俺は俺の戦い方で、挑ませてもらう」


お互いに、真剣だ。


たとえるなら、侍同士が、敵の様子を見る為に、間合いを取っているかのよう。


緊迫した雰囲気が、公園全体を支配する。



そして、動き出したのは秋だ。


「じゃんけんぽん!!」


俺もそれに合わせて、出す。


お互いにチョキ。


あいこだ。


次は俺が動く。


「秋。俺は、グーを出そうと思う」


俺は言った。


「なら俺は、当然パーを出す」


秋も、それに返してくる。


なかなか手ごわい。


最後の相手には、ぴったりだ。


「…。やっぱり、お前には小細工は通用しないみたいだな。」


まったく、つられない。


秋には、どんな手も通用しなそうだ。


「ああ。長い付き合いだからな」


俺と秋。


お互いに不敵な笑みを浮かべる。


だが秋。言ったはずだ。


俺は俺の戦い方でやると。



行くぞ秋!!いざ、尋常に勝負!!


「じゃん!!」


長かった戦いが。


「けん!!」


今。


「ぽん!!!」


………。



場に、沈黙が流れる。


その沈黙を破ったのは、俺でも、秋でもなかった。




『ついに、今。この長かった戦いが、おわりの時を迎えましたぁ!!』


そう。


勝ったのは。


『優勝者は、エントリーナンバー39。山空 海選手です!!!!』


その結果を聞いた他の参加者達から、『うぉぉぉ!!!』と、歓喜の声が浴びせられる。


俺は勝ったのだ。


「嘘だろっ!? なんで…!!」


驚きを隠せない秋。


そんな秋に、俺は言い放つ。


「残念だったな。お前はまんまと、俺の手のひらの上で転がされた訳だ」



俺がじゃんけんと、唱えるとき。


秋はずっと俺の顔を見ていた。


いや、俺が仕向けた。


俺が心理戦に持ち込もうとした時。


秋はつられなかったが、若干俺が何を出すか分からなくなったはずだ。


そこで、秋はどう出るだろう。


俺は、顔に出やすいタイプ。


秋はそれを見て、俺の考え。つまり、俺が出そうと思っている手を読み取ろうとした。


普通ならそこで、表情に出ないように必死になる所だ。


だが俺は違った。


あえて見せる。


嘘の考えを、秋に読みとらせたのだ。


そのあとは、もう簡単だ。


俺が思ったのと、違うのを出せばいい。


俺があのとき思ったのはパー。


当然、俺がパーを出すと思っている秋はチョキを出す。


そこに俺は、グーを出した訳だ。



俺はすべてを秋に説明した。


すると秋は。


「…やられた。海。お前はやっぱすげーよ!!」


落ち込むと思ったのだが、そんな事はなかった。


理由を知った秋は、とても感心した様子だ。



俺はそんな秋に、告げた。


「長い付き合いだからこそ、使える作戦もあるんだぜ」


この作戦は、俺の事を良く知っている、秋が相手だからこそ出来た事だ。



俺のそんな言葉を聞き、秋は、どこか満足そうな顔だった。




――そのあと俺は、みんなの歓声を背中で感じながら、賞金の十万円を受け取り、その場は解散となった。


賞金を手にした俺は、今までずっと応援をしてくれていた、かける君のもとに駆け寄る。


どうやらお母さんが来たみたいだった。


俺は、あいさつをする。


「あの、かける君のお母さん。これ…かける君に。」


そういって、俺は一万円を差し出す。


当然、かける君のお母さんは、驚いた様子だ。


「あの…これは?」


「俺は、かける君に励まされました。俺に負けた後も、ずっと応援してくれて。だから、これでかける君にゲーム機を買ってあげて下さい。かける君、ずっと欲しかったみたいですから。」


俺は、優しく微笑み、お辞儀をする。


そして、かける君の頭を、軽く撫でた。



「気持ちはありがたいです…でも『かける君は頑張ってました!!』


遠慮して受け取らない、かける君のお母さんの言葉に、俺はかぶせた。



そして俺は、かける君のお母さんの手に、無理矢理一万円を握らせる。


そのあとに、俺は静かに告げた。


「俺からの、かける君への気持ちです」


その言葉を聞き、かける君のお母さんが静かに頭を下げてくる。


そして、言った。


「…ありがたく、受け取らせていただきます」



…これでよし。


約束は、守ったぞ。


俺は最後に、力強く。


そして優しく、かける君に言った。


「おいかける。買ってもらったら、ちゃんと大事に使わなくちゃダメだぞ。」


俺が言うと、元気良く頷いてくれた。



俺は、二人にあいさつを済ませ、琴音達のいるベンチの方に歩き出した。



もうすっかり人はいない。


後かたずけをしている、町内会の人が数人いるだけだ。


そんな事を思いながら、俺は琴音の所に着いた。



「海兄ぃ。お疲れ~」


ベンチに座っている琴音が言った。



すると、琴音の隣に座っていたエメリィーヌも、俺に言った。


「カイ、お疲れさまなんヨ!!」


とても元気だ。



俺はそんな皆に、提案する。


「この九万なんだが…、武藤さんに渡そうと思う」


そんな俺の提案に、驚いたようだ。


特に秋が。


「え?なんでだよ!?」


「なんだよ、その『鳩が豆鉄砲食らいました』みたいな顔は。俺は最初からこのつもりだったぞ。」


ちなみに、武藤さんは、このじゃんけん大会を企画してくれた人だ。


賞金も、武藤さんが全額出している。


俺の手元には九万。


丁度武藤さんが出した分と同じ額だ。



俺は多分、はたから見れば、バカだと思われるだろう。


ただの自己満足かもしれない。


だがそれでいい。


俺がしたいと思うのだから、仕方がないのだ。



「まったく、しょうがねぇ奴だな。それはお前のだ。好きにしろ」


「私も賛成」


「ウチはどっちでもいいんヨ」


そんな俺の提案に、みんなは優しく了承してくれた。


そんな訳で、俺たちは、後かたずけをしている武藤さんの所に向かう。


走って来る俺たちに、武藤さんも気付いたようだった。


武藤さんは、作業を中断すると、優しく言った。


「あら、海ちゃんじゃないの。優勝おめでとう」


俺はそんな武藤さんに、きりだす。


「あの、その事なんですが…これ、武藤さんにと思いまして」


そういって俺は、九万の入っている封筒を差し出す。


それを見て、驚いた様子の武藤さん。


「あら、なんで?」


「一万は訳あって使ってしまいましたが、九万円あります。ちょうど武藤さんが、自腹で払った額です」


俺の言葉に驚きつつも、やはり断わって来る。


「いいのよ、気にしなくても。それはあなたのなんだし、好きに使いな」


さすが、大人って感じだ。


相手を傷つけないように、断っている。


そんな武藤さんに、俺は真剣に言う。


「俺がこうしたいからしてるんですよ。受け取ってください」


俺は頭を下げる。


そんな俺の言葉に、付け足すように秋が言った。


「こいつ、一度やるって決めたら、テコでも動きませんよ」


それに続き、琴音やエメリィーヌも、武藤さんに言った。


「私も、武藤さんに受け取ってほしいです」


「ウチもなんヨ」


みんなの言葉に続けて、最後に俺が言った。


「今日はとても楽しかった。俺はそれだけで満足です。」



俺たちの言葉を聞き、武藤さんの目は涙で潤んでいる。


「あんたたち。泣かせるじゃないか…わかった。そこまで言うなら、ありがたく受け取る事にするよ。ありがとね。」


武藤さんが頭をさげてくる。



「こちらこそ、ありがとうございました!!」


そんな武藤さんに俺は、お礼を告げる。


そして、俺たちは自転車置き場に向かった。




――自転車置き場に着くと、大量にあった自転車が、すっかり無くなっている。


俺たちは、それぞれ自転車にまたがり、エメリィーヌは秋の後ろに乗りみんな一斉に漕ぎ出した。




それから約30分ぐらいで俺の家に到着し、秋と琴音とはそこで別れた。



俺は家に入ると、スキップをして上機嫌なエメリィーヌにお礼を告げる。


「今日参加しなかったのって、琴音の為だろ? エメリィーヌありがとうな。」


俺がいうと、顔を赤くしているエメリィーヌ。



「べ、別にカイがお礼を言う事はないんヨ。ウチが好きでやったんヨから…」


そういいながらも、顔は真っ赤だ。


コイツ照れてやがるよ。


可愛い所もあるじゃねぇか。



「お前何照れてんだよ」


俺がそういうと、エメリィーヌが、むきになって否定してくる。


「う、うるさいんヨ!!照れてなんてないんヨ!!」


「嘘つけよー。顔真っ赤だぞ?」


「酔っぱらっているんヨ!!」


「お前、いつ酒なんか飲んだ。嘘をつくんじゃない!!」


「うるさいんヨ!!」




――こういうふうに、みんなでバカやったり。


ふざけあったりするのが一番楽しい。


ああ、今日も平和だ。


平和が一番。



俺は、平和なこの毎日を、静かにかみしめていたのだった。





第十四話 完


追記:


どうもです^^


始めに、俺日!十四話ご愛読ありがとです^^



と、いうわけで、じゃんけん大会編終わりました。


クッソ疲れたww


もうね、後半の進みがとても速かったのは、俺の体力の限界だからですww


でもまぁ、とりあえずは、お疲れ様でした―ww


もうちょっと、秋と海の戦いも書きたかった気もするけど……まぁいいか


あと、今気付いたんだけど、雨止んでるww


じゃんけん大会に行く前までは、ふってたのだが。


まぁ、十三話でババ抜きとかしてたみたいだし、その時に止んだのでしょうww



てなわけで。


次回をお楽しみにね!!

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