第十三話~開催!じゃんけん大会~
どもです^^待望の十三話。
是非ご覧ください
じゃんけん。それは、最もシンプルかつ迅速に勝敗がきまる。
じゃんけん。それは、いわば相手との心理戦。
じゃんけん。それは、時には戦場と化す、奥深いゲーム。
そう、じゃんけんは、運なんかではない。少しの油断が死を招く。
そう、じゃんけんは、神頼みなんかではない。己の実力。
そんな嵐のような大会が。
今、始まる――
第十三話
~開催!じゃんけん大会~
「おい、もう行かないと」
時計を見て時間を確認し、秋が言った。
「お、もうこんな時間か」
俺も時計を見て、言った。
時計の針は、12時20分を指している。
もちろん昼だ。
開始は1時。
今から出て行けば、まぁギリギリだ。
てな訳なので、皆が若干慌ただしくなりだした。
ちなみに、なぜこんな時間になってしまったかと言うと。
ほら、あれだよ。うっかり。
そんな感じで、俺たちは外に出た。
「そういえば、エメリィーヌどうするんだ?」
秋が言った。
そういえばそうだな。
みんな自転車だけど、エメリィーヌの分はないし…
それどころか、乗れるかすらも怪しい。
超能力で行くからいい。みたいなことも言っていたのだが、超能力を多用すれば、エメリィーヌの体が疲れてしまう。
さっきだって、やっと目を覚ました所だった。
今までは、デメリットなんてないと思っていたが、いまは違う。
あまり無理させるのは可哀そうだ。
あまり使わせないようにしよう。
俺は、小さく決心した。
「自転車のかごにでも入れとけ」
自転車のかごが目に入り、俺が言った。
「カゴ!? ウチは荷物じゃないんヨ! せめて荷台なんよ! 後ろの方がいいんヨ!!」
ん?コイツアホだなぁ。
「荷台って事は、モロ荷物置く所じゃねぇか」
俺は言った。
すると、エメリィーヌの顔が少し赤くなる。
「そそ、そんなこと知ってたんヨ!! 早く乗せるんヨ!!……カゴに!!」
「おい、最後になんか付け足したぞ」
荷台と聞いて嫌になったのだろう。
そんな所に乗るくらいなら、カゴの方がマシ、という事なのだろうか?
まぁいいや。
「じゃあお前、秋のカゴに乗れ」
「なんで俺? まぁいいけどさ…」
なんで秋の方に乗らせたか分かっていないらしい。
決まっているだろ、それは…
俺が言おうとしたら、先に、少し呆れ顔で琴音が言った。
「秋兄ぃが迷子になった時の為でしょ」
「む、失礼な!!」
む、失礼な!!じゃねぇよ。
「お前が道に迷ったらえらい事になるからな。24時間さまよったのち、エジプトに到着」
「アホか!!俺どうなんだよ!凄すぎるだろ!!」
「いやぁ、意外と誰にも知られていない、隠し通路かなんか見つけちゃったりして」
「あぁ、誰も迷いそうな所にまで迷い込むからなぁ…ってシバクぞ!!」
「なに…この茶番」
俺たちのプチ漫才は、琴音の強烈な一言により幕を閉じたのだった。
とりあえず急ごう。
こんな所でふざけている場合ではない。
そう思った俺は、エメリィーヌを秋の自転車の荷台に乗せ、自分の自転車にまたがった。
「ちょっと待つんヨ。なぜに荷台?」
「お前、カゴに乗せると前が見えないだろ。」
もしかしたら喜びすぎて立ちあがったり、かごが破損したりと、色々と危ないからな。
これからバトるってのに、余計な神経は使えん。
「バトるって…じゃんけんするだけでしょ…」
暗い声で、ツッコんでくる琴音。
なんだよまだスネているのか。
さっきまで遊んでいたババ抜きで、俺がインチキしたからって。
すると、秋がいった。…俺の考えが読まれている事には、あえてツッコまない。
「海、あれはインチキなんて生ぬるいものじゃない。世界ババ抜き選手権なら、死刑に処するぐらいの…」
なんだよ世界ババ抜き選手権って。
とてつもなくシュールな光景だな。
「なんだよ。トイレに行くふりして、手札をチラーッと見ただけじゃねぇか。」
「おまえなぁ、チラッじゃなく、チラーッってのがもうアウト」
「海兄ぃ、思いっきりガン見してたよ。」
「へへっすげーだろ。普通コソコソする所を、堂々と見てやったぜ」
「くたばれ」
とてもどや顔の俺に、琴音が言った。
俺はその時、初めて聞いたかもしれない。
琴音の口から『くたばれ』という単語を。
「とりあえず急ぐなんヨ」
荷台にただのっているだけのガキが、えらそうに命令しやがる。
でも確かに、急がないとまずい。
エメリィーヌの言葉で、秋や琴音も、自転車にまたがる。
「ちゃんとつかまってろ」
暴れるエメリィーヌに、秋が言った。
「分かったんヨ」
その言葉を合図に、皆が一斉に漕ぎ出した。
―それから三十分後。
俺たちは無事、公園に着いた。
時間は12時55分。
とてもギリギリだ。
自転車置き場が、自転車で溢れ返っている。
その数ざっと、二十台。
それほどでもなかった。
とりあえず俺達は、適当な場所に自転車を止め、公園へと入っていく。
まるで学校の運動会のように、人でいっぱいだった。
車で来た人も多いらしく、大人子供、俺たちも入れて40人弱ぐらいいる。
「すげぇ人だな」
秋がポツリと呟く。
その呟きをスルーし、俺たちは公園の入口付近にある、受付っぽい所に向かった。
そこには、とても優しそうなおばちゃん。
「あら、海ちゃんじゃない、それに秋くんと琴ちゃんも」
「あ、武藤さんこんちわッス」
「こんちわー」
「こんにちは、武藤さん」
俺があいさつをすると、それに続くように、秋、琴音と挨拶をしていく。
この人の良さそうなおばちゃんは、町内会の会長の武藤さん。
自称永遠の十八歳らしいが、どう見ても五十代のおばちゃんだ。
この武藤さんという人は、毎年いろいろな事を企画して、町内の皆を楽しませてくれている。
俺たちはいつも参加するので、お互い顔を覚えてしまったわけだ。
確か昨年は、ビンゴ大会だったな。
誰でも出来て、楽しく遊べるようなものが多い。
さすが武藤さんだ。
だけど十万円って、いつもは賞品だけなのに、いったい何があったんだろう。
毎年、賞品はあったものの、賞金というのは珍しかった。
なので、当然気になるわけで。俺は訪ねてみた。
「今年の景品、何があったんですか?」
すると武藤さんは、嬉しそうに話し始めた。
俺はそれを聞きながら、参加票にみんなの名前を書く。
「実はね。宝くじが当たったのよー。ねぇ、いくらだと思う?」
突然のクイズ。これも、武藤さんの特徴だ。
答えるまで聞き続けてくるので、いやでも答えなければいけない。
「えと、やっぱり十万くらい?」
賞金が十万なのだ。
多分そのくらいだと思う。
それを聞いた武藤さんは、嬉しそうに衝撃の値段を口にした。
「実は一万円なのよ~」
え、一万!?
俺が驚いていると、俺よりも先に秋がツッコむ。
「思いっきり、赤字じゃないッスか!!」
そう、実に九万円の赤字。
これは結構痛いぞ。
だが、武藤さんは嬉しそうな表情を変えずに言った。
「なんか嬉しくなっちゃったのよ」
…ははは。見ての通り、とても気前のいいおばちゃんだ。
だけど、武藤さんがそこまでしてくれているんだから、これは勝たないとな。
そこらのガキに、軽い気持ちで使わせてたまるか。
俺は、さらに気合が入った。
すると突然。
さっきまで嬉しそうに話をしていた武藤さんが、俺たちの方を見て、不思議そうな顔で尋ねてきた。
「そこにいる緑色の女の子、見ない顔だけど…どこの子かしら?」
緑色とは服装の事で、女の子は、もちろんエメリィーヌの事だ。
まいったな、どう答えればいいんだろう。
俺が悩んでいると、秋が俺を指差しながら言った。
「コイツのガールフレンドだ」
「あらまっ!!」
はぁ!?何適当な事言ってんだよ。
そして武藤さん! コイツに騙されないでほしい。
「おい秋。ぶっ飛ばすぞ」
「すまん、冗談だ。こいつは海の遠い親せきのようなもんだ。」
秋が、とても信じ込んでいる武藤さんに言った。
「なんだぁ、そうだったの。おばちゃんはてっきり…」
おい、てっきりなんだ。
最後まで教えてくれ。
…まったく。疲れるな。
そこに、秋がまた、いらん事を付け足す。
「今は訳あって、こいつの家にいるんですよ」
「あらまっ!!」
あらまっ再び。
おい秋!!
お前殴るぞ。
まぁ、間違ってはいないから否定はできないが…
とりあえず、あらまっはやめてくれ。
俺は心からそう思った。
「ウチは、エメリィーヌなんヨ!!」
と、手をあげながら言った。
「エメちゃんっていうのね。おばちゃんは、おばちゃんでいいわ。よろしくね。」
優しい顔でエメリィーヌに伝える武藤さん。
それに答えるように、『よろしくなんヨ!!』と、元気よく挨拶した。
それを見てにっこり微笑むと、武藤さんが言った。
「ほら、そろそろ始めるから、みんなの所に行ってきなさいな。」
それもそうだな。
そう思った俺は、人が集まっている方に歩き出そうとした。
だが、琴音の様子がおかしい事に気付いた。
さっきからあまり喋っていないし、ずっと俯いている。
俺は、気になって尋ねた。
「どうしたんだ琴音? 体調でも悪いのか?」
俺がきくと、小さい声で『大丈夫』と琴音。
だが、まだ俯いたままだ。
すると、秋が言った。
「…琴音。いやなら無理しないで、そこで見てろよ」
その言葉で、俺も理解した。
そうだった。
誰よりも人見知りで、恥ずかしがりの琴音。
そんなやつが、知らない人だらけの所で、平気なはずがない。
そんな琴音に俺は、優しく告げる。
「そうだぞ? 名前は書いちゃったけど、そんなもんどうにでもなるしな。俺たちに気を使って、無理なんかするな。」
「…うん。ありがと。みんなには悪いけど、私は見てるよ」
琴音はそういって、公園の隅っこの方に歩き出した。
それを見たエメリィーヌが、突然。
「ウチも疲れたし、琴音と一緒に見てるんヨ」
そういって、琴音の後を走って追いかける。
おいおい、走ってるじゃねぇか。
…これも、エメリィーヌなりの気遣いなのかもしれない。
追いついたエメリィーヌを見て、琴音は驚いた顔をしているが、どこか嬉しそうだった。
そんなエメリィーヌに俺は、元気良く言い放った。
「エメリィーヌ!待ってろ!!絶対勝って、お前に好きなもん食わしてやる!!」
そういって、俺は人ごみの方に、走った。
それを聞いた秋も、琴音に告げる。
「俺も、海なんかには負けない! まってろよ琴音!!…あと、おばちゃん。そういうわけだから、あの二人の名前、悪いけど消しといてもらえません?」
「もちろん。じゃあ、頑張っておいで」
「ありがとうございます!!」
そういって、秋も俺の方に駆け寄ってくる。
この勝負、絶対に負けられないな。
俺は心から思った。
広場…もとい公園の中央に、町内会の人たちが集まり、マイクで話し始める。
『えー、今日は暑い中お集まり頂き、ありがとうございます。』
というほど、暑くはなかったのだが。
さすがに、人が多いと熱気がすごいな。
『とりあえずルール説明。まず、Aブロック。Bブロック。Cブロック。Dブロック。Eブロックにわかれてもらいます。』
なるほど。なかなか本格的だ。
『方法は、くじ引きです。基本はじゃんけんですが、暴力、イカサマは禁止。それ以外なら何でもありです。もちろん…奇策なんかも…クックック』
おい、キャラが変わってるぞ。
それを聞いた、他の参加者だと思われる、小学生達が後ろで話し始めた。
「べつに、じゃんけんに奇策もくそもないよな」 「そうだよな。運だ。」
フフフ。残念だったなお前達。
そんな事を言っている内は、俺や秋には勝てないぜ。
俺には策がたくさんあった。多分秋にもあるだろう。
他のやつらとは、十万円に対しての覚悟が違うのだ。
――そのような調子で、ルール説明が終わる。
分かりやすくまとめるとこうなる。
参加者は、綺麗に40人丁度。
それぞれのブロックに8人ずつ。
計40人だ。
それをくじ引きで決め、それぞれのブロックで勝ち上がった人たちと最終対決。
最後はみんなで一緒に、つまり勝ち上がってきた5人でじゃんけん。
勝ったら見事優勝。十万円というわけだ。
そういうわけで、今はくじ引き中なわけで。
俺は、箱の中に手を入れ、中にあるくじを適当に一枚つかむ。
そして、引きだす。
三角に折りたたまれた紙。
見れないようにホッチキスで留めてある。
「じゃあ、そのくじのどこでもいいので、表面に名前を書いてください」
と、くじ係の女の人が言う。
なるほど。俺たちは最後の最後まで分からないというわけか。
できれば、秋とは、あたりたくないな。
俺は名前を書き終え、係の人に渡す。
これで、後は待つのみ。
俺は、他の人が引き終わるまで、琴音のとこで待っている事にした。
「オッス」
公園の端で、ベンチに座っている琴音。
その隣には、とても元気なエメリィーヌもいる。
どうやら楽しく遊んでいたようだ。
「あ、海兄ぃ。くじ引き、どうだった?」
声で俺に気付き、聞いてくる。
その顔は、さっきとは違い明るい顔だ。
エメリィーヌの相手をするので忙しく、恥ずかしさなどは、少し和らいでいるようだった。
これも、エメリィーヌのおかげだろう。
ナイスだエメリィーヌ。
すると、エメリィーヌが言った。
「ノド乾いたんよ~」
あ、そうか。
暑いもんな。
日陰にいるとはいえ、喉は乾く。
「琴音。俺の財布渡すから、喉乾いたりなんかしたら、適当に買って来てもいいぞ。」
そういって俺は、三千円入っている、黒い長方形の財布を琴音に差しだす。
「え、いいの? 多分凄く使っちゃうかもしれないけど…エメリィちゃんもいるし」
琴音は、申し訳なさそうな顔をしている。
そんな琴音に、俺はカッコよく言い放つ。
「これから十万を手にするんだ。遠慮することなんてない!!」
「…まったく、その自信はどこから……まぁいいや。とにかくありがとう」
そういって、財布を俺の手から受け取る琴音。
「ついでに、近くのコンビニで、弁当でも買って食ってろ」
「やったー。なんヨ!!」
…あ。
俺は、勢いで言ってしまった。
あの大食いエメちゃんがいるのにも関わらず。
…だがまぁ、勝てばいいんだ。楽勝だ。
俺は開きなおり、自分に言いきかす。
いろんな意味で負けられない戦いになってしまった。
まぁ、良しとしよう。
そのとき、丁度くじ引きを終わらせた秋が、こっちに向かってきた。
「おぉ、海もいたのか」
とてものんきな声だ。
だがその顔からは、覚悟が伝わる。
秋もそれだけ必死なのだ。
「あ、秋兄ぃ。今海兄ぃに、お金もらったんだよ」
「ああ、なんか食いたかったりするんじゃないかと思ってな。」
「お、そうなのか。じゃあ俺も何か…」
「お前は自分で買え!!」
「なんだよ。ケチ」
何がケチだ。
普通はお礼の一つでも言う所じゃないのか?
別に、お礼が欲しくてしてるわけじゃないが…
でも兄貴として、そこはお礼をするべきだろ。
「それだけ、仲が良いって事なんヨ」
と、エメリィーヌが言った。
…どうやら俺の考え事は、もはや筒抜けらしい。
でも仲が良いってことか。
少し嬉しいな。それ。
うん。それなら許せる。
俺は、エメリィーヌの一言で、とてつもなく納得した。
「とりあえず、ゴチになります」
「あぁ、エメリィーヌにも、好きなもの買ってやってくれ」
そういうと、琴音は公園を出て、コンビニの方に歩き出す。
ちなみにコンビニは、公園の向かい側だ。
なので、自転車もいらない。
…あ、そういえば。
俺は一つだけ気になる事が出来たので、秋に聞いてみる事にした。
「琴音、店員の人は平気なのか?」
あの琴音が、普通にレジに行けるのだろうか?
すると秋が言った。
「一応大丈夫だと思うぞ。一人の時は行きたがらないけど、ちゃんと買ってきた事もあったし。そばに知っている誰かがいると、強がって意外と平気みたいだ」
なるほどね。
まぁ、こんなみんなが注目する状況じゃない限り、心配はいらないだろう。
―秋とそんな事を話しながら、ベンチに座り、集計結果を待った。
10分ぐらいすると、琴音たちも戻ってくる。
どうやら大丈夫だったようだ。
両手に持っている、レジ袋以外は。
まぁ、エメリィーヌもいるし仕方ないだろう。
しかるにしても、人がいてあまり強くは言えないだろうし。
それから5分後。中央の方から声が聞こえた。
『皆さん!集計が終わりました。表を貼ったので、気になる方はご覧くださーい』
町内会の人がそういうと、ホワイトボードを指差す。
「おい秋。おにぎりなんか食ってないで、いくぞ」
「おう」
なんでお前が食ってんだよ。
…まぁとりあえず、向こういって見てくるか。
俺と秋は、ホワイトボードの場所に向かった。
だがそこには、人だかり。
後ろの方からだと全く見えない。
とりあえず俺は、俺のも見てきてもらうよう、秋に頼んだ。
すると秋は、見事に人の合間を縫って奥に行く。
こういうことは、無駄に上手い。
すると突然、『ギャーース』と、秋の悲鳴が聞こえる。
ギャースって言う人、本当にいたんだな。
俺は、とても珍しい悲鳴を聞き、少し呆れた。
それからしばらくすると、秋が戻ってきた。
……ボロボロで。
「何があったかは知らんが…とりあえずお疲れ」
「おう…、転んでメチャクチャに踏まれたが、しっかり生きて帰ってきたぜ」
「……お疲れ」
あちこちに、靴の泥が残っている。
相当踏まれたようだ。
「ところで、俺はどこの何番目だ?」
俺はきいた。
「ああ、お前はBの1だ。ちなみに俺はCの5」
Bの1。つまりBプロックの1番目という事だ。
とりあえずは、秋と当たらないらしい。
とにかく良かった。
それからすぐに、町内会の人が開始の掛け声を出す。
『はい、確認してくださいましたでしょうか。では、最初の人と、その次の人。前に出て来てくださーい』
そういうと、二名が人ごみの中から前に出て、それぞれが台の上に上がる。
あれ?いつの間にあんな台が。
その台は、半径約五メートルぐらいの丸型の台。
参加者の人たちがそこに乗ると、見る側もとても見やすくなる。
ふと、俺は琴音を見た。
すると琴音の手には、双眼鏡。
なかなか用意周到じゃないか。
そんな中、両者のじゃんけんが開始される。
『Aブロック!!最初の選手はかっこいいお父さん対町の小学生A!!それでは、始め!』
おいおい、小学生Aは可哀そうだろ。
それに、なんか気合入ってるなぁ、あの町内会の女の人。
後ろの方で、『お父さん頑張れー!!』という、声援が聞こえる。
そして、もう一方からも『さとし頑張れ!!』との声。
これは恥ずかしいだろうな。
俺がそう思っていると、決着がついたようだ。
さすがじゃんけん。
『あーっと、決着がつきましたぁー。勝ったのは小学生A!!お父さん残念でしたね。でも参加いただいたので、お茶をプレゼントします。』
おいおい、空気を読めよ。
無駄に気合の入っている実況に、俺は呆れた。
負けた家族は、一気に暗い雰囲気に包まれる。
お父さんは悪くない。頑張った。
一方、勝った方は歓喜の声に包まれる。
たった数十秒で、雰囲気が対照的の人たちが生まれた。
これがじゃんけんというもの。
すぐに勝敗が決まってしまう。
大人だろうが子供だろうが関係ない。
すると、また勝敗が決したらしい。
『おぉー! 三連続あいこと、いい勝負でしたが、勝ったのは気さくなお兄ちゃん!子供相手にも容赦はせずに、華麗にたたきつぶしましたぁー!!』
ちょ、実況!子供泣いちゃってるじゃん!!勝った方も気になっちゃって喜べてないよ!!調子に乗り過ぎだぁ!
俺のそんな思いもむなしく、ハイテンションで繰り広げられていく大会。
俺は少し、この大会に出た事を後悔し始めた。
こんな事されたら、琴音じゃなくても人間が嫌いになる。
ある意味出なくて正解だよ。
そんなこんなで、試合は進み、Aブロックは最終戦。
しかも、その二人が小学生だと言うのだから。
これがじゃんけんの現実だ。
『さぁ、お二人!がんばって~!!』
「「じゃんけんぽん!!」」
両者が一緒に唱え、それぞれの手を出す。
最後にもかかわらず、一瞬で勝負が決まる。
チョキとグー。
結果は右側の子の勝ち。
とても嬉しそうな顔。
だが負けた方は、悔しそうな顔をして、涙を押しころしているようだ。
そこで、またあの悪魔の声。
『おめでとうございます!!最後につなぐ切符を手にした少年A!!それとは逆に、負けてしまった、そこのきみ。残念だったねぇ。てな訳で、Bブロック戦突入です!!』
その一言で、負けてしまった子が泣きだす。
とうとう、心にとどめを刺した。
そんな実況の人が、同じ町内会の人に呼ばれ、人気のない所に連行される。
そして五分後。
凄い暗い雰囲気を漂わせながら、戻ってきた。
こってり叱られたのだろう。
その雰囲気の中、俺の番が回ってきた――――
第十三話 完
どもです^^
そして、十三話ご愛読ありがとうございましたー^^
中途半端な終わり方で申し訳ない。
実はね。長くなってしまったので、急遽分割ww
一話で終わる予定が、まさかの前後編ww
もしかしたら、前中後編になるかも。
途中でバッサリ切ったので、本当に中途半端ww
ギャグもあまり入りませんでした^^
本当に申し訳ない。心から謝る。
と、言うわけでして。
次回をお楽しみに!