第十二話~激闘!調味料vs俺達~
どもです^^待望の十二話が完成しました!!
ではいってらっしゃーい^^
それは昨日のことだった。
スーパーに買い物に来た俺は、目的の品を次々とかごに放り込む。
味噌カスタードプリンも欲しかったのだが、どうやら売り切れのようだ。
少しショックだった俺は、レジに向かおうと、調味料売り場を通った。
その時だった、誰かのささやく声が聞こえる。
俺はあたりを見回したが、誰もいない。
気のせいかと思い俺は再び歩き出そうとした。
だが、またしてもささやく声が聞こえる。
俺はまたあたりを見回した。
その時、俺の視界に飛び込んできた。
一つの調味料。
それはいたって普通の、どこにでもあるものだった。
俺はそれに、何かひかれるものを感じた。
そして俺は入れてしまった。
自分の買い物かごに。
あのささやきが…悪魔のささやきだとも知らずに。
第十二話
~激闘!調味料VS俺達~
俺に家に遊びに来た秋達。
外で立ち話をしていてもあれなので、とりあえず俺は皆を家にあげ、俺の家の中で一番広い部屋であるリビングへと案内した。
「みんな、汚い部屋だけど、ゆっくりしていくんヨ」
エメリィーヌがそう言った。
「お前が何偉そうに言ってんだよ。ここは俺の家だぞ。」
とりあえずツッコんでおく。
「まぁ、らくにしててくれ」
俺も、一応告げた。
思いっきり寝そべっている秋。
テーブルに置いてあった漫画を、勝手に読みだしている琴音。
なぜか壁と戦いを繰り広げているエメリィーヌ。
俺が言うまでもなく、皆それぞれにくつろいでいる。
いくらなんでも、くつろぎすぎだろ。
でもまぁ、このくらいの方が、俺も気を遣わなくて済むからいいんだけど。
皆がだらだらと過ごしている。
やる事がなけりゃ、人間なんてこんなもんだ。
そんな調子で10分ぐらいたつと、必ず誰かが発する言葉がある。
その言葉が合図みたいなもんで、誰かが言ったら、だらだらタイム終了だ。
そして、今回その言葉を発したのは秋だった。
「暇だし、なんかしようぜ」
その言葉を合図に、皆も暇だ暇だと騒ぎ出す。
俺はそうなる事が分かっていたため、今回、あるイベントを用意していた。
その名も……
「じゃんけん大会!!」
「うおっ!いきなり大声出すなよ!」
フフフ、そう文句を言っていられるのも今の内だ。
「これを見よ!!」
俺は、あらかじめポケットにしまってあったチラシを、バーン!とテーブルに叩きつける。
俺が叩きつけると、皆がそれに注目した。
「えーと、なになに…じゃんけん大会、優勝賞金は何と…十万円!?」
秋が、チラシに書かれている内容を見て、分かりやすいほどに驚いている。
「十万円って…じゃんけんでそんなに?」
琴音も驚いているようだ。まぁ、当然だと思う。
初めて見た時は俺も驚いた。
「十万円って凄いんヨ?」
そんな中、エメリィーヌだけが凄さを分かっていない様子。
まさか。
「お前、金を知らないのか?」
俺のこバカにしたような問いに、エメリィーヌは少し怒った口調で言った。
「お金ぐらい知ってるんヨ!ただ、ウチのいた星とは言い方が違ったんヨから」
ああ、ドルとかユーロみたいな感じね。
とりあえず、凄さを教えておこう。
「お前のいた星って、金はなんて数えてたんだ?」
「えーと、百円は1ペプシなんヨ、先生が言ってたから間違いないんヨ」
ちょ、ペプシて。
コーラに執着しすぎだろ。お前の星。
「てか、1ペプシが百円ってわかっているなら、計算すれば凄さが分かるんじゃ…?」
そこまで分かっているのになぜ?と思い、俺はエメリィーヌに聞いた。
するとエメリィーヌは、開き直ったように言い放つ。
「カイ…、ウチが計算できるわけないんヨ」
いや、しらんがな。
お前が計算苦手なんて、あれだよ。初耳だよ。
お前きっと、十より多かったら、たくさん!とか言うタイプだろ。
いるんだよなぁ~たまに。そういう奴が。
目の前に大量の札束があったら、とりあえず『すげぇ!一千万円あるぞ!!』とか言う奴。
おおけりゃなんでも、『たくさん』だの『一千万円』だのぬかす輩たち。
絶対コイツも、その部類の人間だ。…人間か?…まぁ人間か。
そんなエメリィーヌに俺は、十万円の凄さを熱く語る。
「いいかエメリィーヌ。十万円って言うのはな。ペプシでいうと……百ペプシ分だ!!」
「はぁ!?どんな計算だよ!?一万ペプシだろ!!」
「……千ペプシだよ…秋兄ぃ。」
あーもう!!ペプシペプシうるせぇ!!
そんなにペプシが好きなら買って来いよ!!
くそっ、こいつらのせいでペプシの夢を見そうだ。
とりあえず、
「千ペプシ分だ」
俺は、琴音を信じ、告げた。
「せせせせ、センペプシ!?そんなにあれば、灼熱の陽炎チョコがすっげぇ買えるんヨ!!!」
おい、一応女の子なんだから、すっげぇとか言うなよ。
しかも灼熱の陽炎チョコって。瞬時に溶けそうじゃねぇか。
お前の星おもしろいな。
十万円の凄さが分かり、とても興奮しているエメリィーヌ。
どうやら皆、十万円が欲しくなってきたらしい。
と、いうわけでだ。
「これに出場してみないか?」
俺はみんなに言った。
すると琴音が。
「でもこれ、開催日は昨日だよ?」
え!?昨日!?
「嘘だろ!?」
「うん。嘘だよ。」
「ちょ、嘘かよ!!!」
そういうのやめろよ。マジで。
少し涙が出てきたじゃねぇか。
琴音を見てみると、とても楽しそうに笑っている。
その顔が、俺には小悪魔に見えたんだ。
…まったく。人を驚かせるの上手すぎだろ。
すっかりだまされた。
琴音って、時々変なこと言うよな。
まぁ、そんな事よりじゃんけん大会だ。
「たしか、チラシには今日の昼と書いてあったよな?」
ずっとチラシを眺めている秋に聞いた。
「ああ、今からだと…約二時間後だな」
二時間後か。よっしゃ、燃えてきたぜ!!
「皆もちろん参加するんだろ?」
「おう!」
「うん!」
「なんヨ!」
みんなが、俺の言葉に続くように答える。
「ちなみに場所はどこなの?」
と、琴音。
まったく…、ノッてるときに、そんなリアルな事を気にするんじゃねぇよ!
俺は少し呆れつつも、質問に答える。
「ここから30分行ったぐらいの、広い公園でやるらしい」
そう、そこは、公園というより広場といった方が正しいかもしれない。
学校の校庭を想像してくれれば、間違いないだろう。
そのくらい広い。
しかし十万円か…これを逃す手はないな。
最近、エメリィーヌのせいで金かかるからな。
あとで、両親に相談でもするか。
ちなみに、俺の両親は、仕事で海外に行っている。
母はファッションデザイナー。
父は映画監督。
二人とも結構稼いでいて、食費兼、生活費などは入れて貰っている。
だが、こづかいは月に五千円と、他の人達と変わらないと思う。
お金の大事さを知っておいてもらいたいという事で、私利私欲のために小遣いアップをねだると、凄く怒られてしまう。
なので、俺はそれでやりくりしている訳だ。
その小遣いの中で、エメリィーヌの分を出しているとなると、当然ピンチ。
おかげで、いつか来るであろう、大事な時に備えてしていた貯金も、すべて使ってしまった。
特に使う予定はなかったのだが。
っと、俺の話はこれぐらいにしておこう。
とりあえず、しばらくは暇だ。
秋もそう思ったのだろう。
暇そうな俺達を見て、秋が言った。
「しばらく時間があるから、なんかしようぜ」
そんな秋の問いに、俺は言った。
「なにを?」
「なにを?って、なにがあるんだ?」
俺の質問に、質問で返す秋。
えーと、四人で出来るもの…か。
……うーん…難しい。
……っあ!そういえば。
「俺、朝飯食ってねぇや」
俺がそう言うと、秋が無表情で言ってきた。
「俺の質問に対しての答えになっていません」
なんだよ。『只今電話にでる事ができません』みたいに言いやがって。
…まぁいいか。とりあえず。
「俺が飯食い終わるまで、適当になんかしててくれ」
俺は、暇そうなみんな。特に秋に向けて言った。
「カイー、ノド乾いたんヨー」
俺が冷蔵庫に向かうのを見て、俺に向かってエメリィーヌが言っている。
俺は『ん』と返事をする。
「さて…なんかあるかな?」
冷蔵庫を開けると、一番手前に置いてあったじゃがいもが、視界に飛び込んでくる。
だがあえてそれをスルーし、その隣にあった卵に手をのばす。
今は芋より卵が食いたいのだ。
俺は卵をパックから一つ取りだし、昨日の残りの白米を茶碗に盛る。
そこに卵を入れ、醤油と塩、隠し味に、昨日スーパーで買った『特製ハバネロソース』を適量かけて、味を付ける。
それを茶碗の中で豪快にかき混ぜた。
これこそが俺流。生卵かけご飯。
茶碗の中の真っ白い白米に卵が絡みつき、黄金色に変化する。
かすかに鼻を突くハバネロが、とても食欲をそそった。
これはうまそう。
俺は我慢できず、立ち食いそばならぬ、立ち食いご飯を始める。
とてもうまそうな見た目。香り。それらの歓迎を受けながら、口の中に運ぶ。
そして…
「ヒョァァァッグヒョリャァァァァァ!!!!!!」
痛いぃ!!!痛すぎる!!!
口の中に入れた瞬間、ハバネロが口の中を支配する。
そして、辛さではなく痛みが、俺の口の中に広がる。
焼けるように痛い。
喉が、舌が、食道が。
なめていた。ハバネロを、特製をなめていた。
俺は辛い物は平気なタイプなので、調子に乗って三十滴ぐらい入れたのが間違いだった。
もはや隠し味どころではない。あまりの主張に、メインが隠れてしまっている。
もう味ではない。まるでガラスをかみ砕いているような痛み。
これは凶器だ!!!どんなに強い人だろうが、楽に暗殺できる勢い。
そう、かの有名な織田信長でさえも、一撃、ならぬ一口で悶絶するであろう。
とりあえず、水!!
コップなど探している暇もないので、目の前にあったどんぶりに水を注ぎ込む。
そして、顔面を突っ込んだ。
とても冷たい水の中で、必死に口を開け痛みを逃がそうとする。
普通ならここで和らぐのだが、こいつは比べ物にならないほどの問題児だ。
水の冷たさが感じない。
おい、大丈夫かよ俺の舌。
そんな俺の姿を見たみんなが、いい感じに誤解してしまった。
「カイー!ウチのジュ……っカ、カイ!?何やってるんヨか!?」
「ん?どうしたの、エメリィちゃ……しゅ、秋兄ぃ!!!! 海兄ぃが自殺してる!!!」
「ちょ、おい、何があった!! 飯食いながら自殺はやめろ!!!!!」
みんながとても慌てて俺に駆け寄り、水から引き離そうとする。
やめろ!! やめてくれみんな!! これは生きる為にしている事なんだ!!
俺も必死に抵抗する。
だが、三人の力にかなうわけもなく、見事に水から引きはなされる。
その瞬間。
俺の舌が空気に触れた瞬間。
「ぎゃぁぁう''ぁぁぁぁ!!!助けてくれぇッぇ!!!」
地獄再発。
「おい!!しっかりしろ!!なにがあった!!!」
「海兄ぃ!!落ち着こう!!いったん落ち着こう!!!」
「カイが死んじゃうんヨ!!!ご臨終なんヨ!!!!」
そんな俺の様子を見て、よりいっそうパニックになるみんな。
俺を止める皆の目からは、涙があふれていた。
そして、その涙を止めることすら忘れ、必死に俺に呼び掛けてくる。
もう一種のホラーだ。
俺の為に泣いてくれているみんなに、感謝する暇もない。
俺は、麻痺しながらも、必死に言葉を絞り出す。
「は、はへて(や、やめて)」
だがしかし、俺のイカレタ呂律では、上手く言葉を作れない。
上手く作れないという事は、当然相手にも伝わりにくいわけで。
「なんだ!? 何か伝えたい事でもあるのか!?」
でもどうやら、何かを伝えたいという熱意は伝わったようだ。
くそっ!! どうする! 今の俺じゃ、理解されない。
そこで俺は、あることを思いついた。
そう、思いついてしまった。
なぜ思いついてしまったのだろう。
だがその時の俺は、これが一番の解決策かと思ったんだ。
とにかく、こうなった理由を伝えよう。
そうすれば分かってくれるかもしれない。
そう思った俺は、すぐに実行に移した。
「ほ、ほれ(こ、これ)」
俺はそう言って、すべての元凶となったハバネロを指差す。
すると、琴音が気づいてくれたようだ。
「これ!? これがどうかしたの!?」
必死に俺に説明を求めてくる。
くそっ、運悪く、琴音からみたら、ラベルが後ろ向きだ。
ハバネロと書いてある面が見えない!!
とにかく伝えなければ!!
「ほれ、ふひ(それ、くち)」
そう言って、ハバネロと口を交互に指差し、最後に自分のイカレタ舌を指差す。
だがパニックになっている琴音には、うまく伝わらない。
すると、隣でそれを見ていたエメリィーヌが『そうか!』と、言わんばかりの顔になる。
よかった。エメリィーヌが気づいてくれたみたいだ。
俺は少し安心し、エメリィーヌの言葉を待った。
だが……
「そのトマトジュースを、飲ませてほしいんじゃないんヨか!?」
……え?
「そうか!エメリィちゃん天才だよ!!」
そう言って、ハバネロの瓶を取り、ふたを開ける琴音。
そして、俺の顔にだんだんと近づけてくる。
…おい!? 正気か!? 冗談だろ!? 死ぬ!! 琴音達は俺を殺す気か!?
どこの世界に、この状況でトマトジュースを欲しがる奴がいるんだよ!!
違う!! たのむ、気付いてくれ!!
「なぜ暴れるんヨ!! 少しだけ落ち着くんヨ!!」
俺は必死に首を横に振ろうとした。
だが、エメリィーヌに頭を抑え付けられる。
口を閉じようと抵抗もしてみたが、痛すぎて口を閉じれない。
何としてでも伝えなければ!!
俺はその一心で、『早まるな!! やめてくれ!!』そう伝えようとした。
「はっ…はやっ…やえ…ふれ」
やはりうまく喋れない。
すると琴音に、すっごい間違って伝わった。
「ん?…早く…くれ? うん!! わかった!!」
んなこと言ってねーーーー!!!!! ストップ!! たんま!! やめてくれぇ!!
俺の目からは、大量の涙がこぼれ落ちる。
だが、琴音とエメリィーヌは必死すぎてそれに気づいていない。
すると、ずっと隣にいて声をかけ続けてくれた秋が、『特製ハバネロ』と、忌々(いまいま)しく書かれている面をみて、気付いたようだった。
「…あ!?」
あ!? じゃねーよ!!気付いたなら琴音たちを止めてくれー!!
俺の願いが通じ、秋が琴音に呼び掛ける。
「琴音!! ストップ!!ストップ!!!」
その言葉で、琴音の動きが止まる。
俺の口と、ハバネロの注ぎ口までの距離、わずか5cmほど。
あぶねぇ!!危機一髪!!
秋!!お前最高だ!!!
気付くと、痛みも少しだけ引き、多少だが喋れそうだ。
「あ、あふねー、しゅう、たすはっは」
俺は秋にお礼を告げる。
すると秋は笑いながら、でもとても優しい口調で言った。
「ホント、危なかったな。ってか、お前も紛らわしいんだよ。ははっ」
秋の顔を見ると、心から安心したようで、それがものすごく伝わった。
いやー、そうまとうが見えた。
初めて恐怖で涙が出たぜ。
「ほれより、こおひくれ」
「わかった。氷な?」
「ほう」
俺が氷を求めると、秋は快く引き受けてくれ、俺のそばを離れて氷を取りに行ってくれた。
そんな俺たちの会話について行けず、まだ理由が分からないエメリィーヌと琴音は、立ち尽くしたままだ。
その時、エメリィーヌが正気に戻り聞いてきた。
「いったい、何なんヨ!?」
「ほら、ほっちきてひてひろ」
「こっち来て見てみろ? いったいなんなん…うわっ!」
俺が言った所に行き、琴音の持っている瓶を見たエメリィーヌは、とても驚いていた。
「なんだ。カイはハバネロに毒を盛られただけだったんヨかぁ」
恐ろしいどくろのマークの上に、禍々しい字で『特製!ハバネロ』と書かれた部分を見て、すべてを理解したエメリィーヌ。
その顔からは、秋と同じく、安心した感じが凄く伝わってきて、とても嬉しかった。
そのエメリィーヌにワンテンポ遅れ、琴音も正気に戻る。
そしてまた、あの質問。
「いったいどういう事なの?」
俺の舌は、痛みこそあるが、何とか喋れるぐらいに回復しているみたいだった。
まだひりひりするけど。
「お、もう喋れる!っと、琴音、それハバネロだ。」
「うそぉ!?」
俺はエメリィーヌのように、何も言わずに見せて驚かそうとも思ったが、何せハバネロは今俺の真上。
驚いて落とされたりしたらかなわん。
一応俺が言っても驚いてはいたが、落とさせずにすんだ。
すると、琴音が瓶を回して文字の部分を確認する。
でも、あらかじめ言ってあるのでもう安心。
かと思っていた。
だがそこには、もう一つの罠があった。
禍々しい字と、そこのバックに描かれた、恐ろしい顔のドクロ。
琴音はそれを見て…
「…わっ!」
琴音の声と同時に、『パッ』っと、瓶から手が離れる。
そして、瓶が空中で逆さまになり……『バシャ』
「ほら海。こお…り!?」
俺の今の状態を見て、秋のとても驚いた声が聞こえる。
なぜかって?
おいおい、皆も人が悪いな。
そんな事俺の口から直接言わなくちゃいけないのか?
もう分かっているだろうに。
そうだよ。
ハバネロソースが、俺の顔面に…
「モッツァレラカルパッチョォォォォォッォッォ!!!!!!!!!!!!!」
激痛で、俺はとうとう頭までおかしくなってしまったようだ。
わけのわからない単語が、悲鳴となって口を出た。
ハバネロが、顔の穴という穴に入り込む。
目が。
耳が。
鼻や口が。
そして、皮膚まで。
皆さん。
多分俺は、死ぬ。
今日ここで。俺は死にます。
海!!死にまーーーす!!
ハバネロの強烈なカウンタークリティカルヒットをモロにくらった俺は、次第に意識が薄れ、そして……
ポク、ポク、ポク、チーーン……――――――――
――――――――――「ってなった方がどんなに楽か!!!」
激痛で永遠の眠りにつく事さえ許さない、ハバネロソース。
とりあえず風呂場!!!
風呂場!!に行きたいが、前が見えない。
痛すぎて目が開けられない。
「エメリィーヌ!!風呂場に連れてってくれ」
やっぱりこう言う時に頼ってしまう。
あいつの超能力には。
「分かったんヨ!!念力!!」
超能力を発動した声が聞こえるとほぼ同時に、体が浮く。
ちゃんとやってくれているようだ。
しばらく空中にゆられ続けると、浴室のドアを開ける音がした。
どうやら到着したようだ。
「カイ、この後どうすればいいんヨか?」
エメリィーヌが俺に尋ねる。
「とりあえず、しゃわーで洗いははほう」
やばい。また舌が麻痺してきた。
だけど、伝わったはずだ。
「分かったんヨ!」
エメリィーヌがそういってからすぐ、シャワーの水が、床にたたきつけられる音がする。
俺、目が見えない人の気持ちが分かった気がする。
良く音を探すね。これ。
そんな事よりも、とりあえず
「ひゃわーおはひへふへ」
「シャワーを貸してくれ?」
おお!!伝わった。
この伝言ゲーム楽しいな。
伝わったら、何ともいえぬ達成感が生まれる。
って、それどころじゃなかった!!
痛い!!
エメリィーヌの言葉に小さく頷き、シャワーを手に取る。
そして、その水で顔を洗い流した。
だが。
くそっ!全然痛みが取れない!何ともいえぬ激痛が。
だが、もうどうしようもない事だった。
自然に痛みが取れるのを待つだけ。
くっ、さっきは10分ぐらいで痛みはひいたけど。
今回はそうはいかないだろう。
なにせ浴びたのだから。
軽く見積もって、三十分と言ったところか。
それまでの辛抱だ。俺!
たった今から、俺とハバネロの三十分戦争の始まりだ。
だけどこれ大丈夫か。特に目。
失明なんて事になったら、俺泣いちゃうぜ?
心配だから、少し開けてみるか?
まぁ大丈夫だとは思うけど、一応開けてみよう。
そう思い、俺はまぶたを開いた。
……おい。
俺本当に目、開けてるよな?
ならなぜ見えないんだ!?
おい、おいおい、おいおいおい!?
嘘だろ!?
冗談じゃねぇぞ畜生!!
「これで良しなんヨ」
エメリィーヌの声が聞こえたと同時に、失明したと思われた俺の視力が復活。
というか、視界を遮るものがなくなった事により、見えるようになったわけだ。
つまり、失明はしていなかった。いたって元気。
そうか。俺の顔面の肌は、刺激にやられて感覚をなくしていたのか。
まさか、タオルで顔を拭いてもらっているのに気がつかないなんて。
ちょっと本気で心が折れかけたわ。
いやー良かった。
しみまくるけど、エメリィーヌの顔が見える。
見えるってサイコー!!!!
意外な事で、いつも何気なく使っている目に感謝をしたな。
…ってか、エメリィーヌ!!
お前、超能力で治せるか!?
そう思った俺は、必死に伝え始める。
「ほまへ、ひょうほうひょふではほへふは!?」
何語!? ゴリラにしか聞こえないよ!!!
って、自分で言った事に自分でツッコむなんて。
悲しくなってくるな。
「カイ!? 何言ってるんヨ!?」
さすがのエメリィーヌにも伝わらなかったらしい。
まぁそうだよな。
これで伝わる方がすごい。
すると突然、浴室のドアの開く音が聞こえ、すぐに琴音の声が聞こえる。
「はまち、給食で出てたよな!? って言ってるんだと思うよ!!」
帰れ!! お前もう出てくるな!! ややこしくなるだけだ。
だから何度も言うけど、仮に俺がそう言ったとして、俺は何がしたいんだよ!!
はまちが給食に出たらなんだってんだ!?
やったー!!はまちだいすきー!!とでも言うつもりか、俺は!?
そして、見事にそれを信用するエメリィーヌ。
「そんな事ウチに聞かれても困るんヨ」
ですよねー。ってか、お前も信じてるんじゃねーよ。
あり得ないだろ。はまちの存在なんかどうでもいいよ。
俺が二人に幻滅していると、そこに、秋登場。
「お前ら、アホだろ。そんなこと言っている訳がないだろ。」
秋だけがまともな事を言っている。
やばい。
なんか秋が救世主に見えて仕方がない。
痛みとは違う涙が出そうだ。
秋!今のお前、最高にかっこいいぜ!!
とりあえず、秋もいるので、もう一回伝える。
超能力で、治せないか?と、言いたいのだが…
「ひょうのふひょふへ、はほへはいは?」
やっぱりうまく伝えられない。
だけど秋は、期待を裏切らなかった。
「エメリィーヌ。超能力で、治せないのか? 多分そう言っていると思うぞ」
しゅうぅぅ!!お前すげーよ!!
完全に見なおしたよ!!
やばい、感動の涙が止まらない。
俺は、必死に秋の言っている事に相槌を打つ。
ずっと頷いている俺を見て、琴音とエメリィーヌがすごく驚いていた。
「なんで、分かったんヨか!?」
「秋兄ぃ、すごいよ!!」
二人はとても不思議そうに、秋に問いかけている。
早く助けてほしいのだが、俺も気になったので良しとしよう。
「言葉で理解するんじゃなく、心で理解するんだ!!…って言うのは嘘で、表情に出やすいんだから、表情見れば一発だろ。」
お前と言う奴は…!!
俺を理解してくれただけじゃなく、さんざん苦しめられて、嫌いになりかけてた俺の分かりやすさを、初めて活躍させてくれた!!
俺の癖までもを、活用してくれるなんて。
持つべきものは、親友だ!!!
――秋の言葉で納得をしたエメリィーヌは、すぐに超能力で俺を治してくれた。
その効果はいつものごとく絶大で、すぐに痛みが引いた。
俺は、濡れた服を着替え、ハバネロソースの掃除を始める。
だがエメリィーヌは、治癒術は多用すると疲れるらしく、ソファで横になっている。
やはり誰かを治すというのは、とても気力を使うのだろう。
秋と琴音は、俺の騒ぎを聞き、駆けつけてくれた近所の人たちに、お礼と謝罪を言ってくれている。
やっぱり、皆優しい奴らだ。
俺は改めて、皆に感謝した。
余談だが、エメリィーヌが頼んだ飲み物の存在と、
超能力で考えを読み取れば早いという事には、俺も含め誰も気づいていなかった。
第十二話 完
はいどうもー
十二話を読んでくれて、本当にありがとうございましたー!!
本当はね。こんなはずじゃなかったんですよw
普通にじゃんけん大会の話にしようと思ってたんですww
だけど今回。みんながイイ感じに活躍できたと思います^^
やっぱりみんなが揃うといいもんですね^^
次回は多分、じゃんけん大会ですw
たぶん。
と、言うわけでね、みなさん!!
次回をお楽しみに!!