第十一話~これは悲劇か?それとも奇劇か?~
どうもです。と言うわけで、十一話完成!!
皆さん応援ありがとうございます!!
それでは、どうぞお楽しみください。
俺は、自分の部屋、つまり二階にある部屋の窓から外を眺める。
俺は今幸せだ。
外の天気とは対照的に、俺の心は晴れ模様。
だって…外が雨だから!!
突然だが俺は、成り行きでエメリィーヌと同居することになった。
俺は毎日のように連行されては、公園に連れてかれ、いい年してブランコに乗せられ、滑り台もやらされた。
しまいには、その公園にいた見ず知らずの人に、『お父さんと遊んでもらってよかったねー』などと言われる始末。
せめて、お兄ちゃんにして欲しかった。俺はそんなに老けて見えるのだろうか?
そんな問いに、エメリィーヌが言った。『そのだらしない恰好のせいなんヨ』と。
たしかに、俺は日曜日のパパみたいな格好だが、さすがに見た目で分かると思う。
まったく。失礼極まりない。
そのあとも、用も無いのにスーパーに連れて行かれたり、そこらじゅうでいきなり、迷子と言う名のかくれんぼが始まったりと、エメリィーヌにさんざん振り回されていた。
エメリィーヌにとっては、地球にあるものはとても珍しいらしく、行くとこ行くとこ、目の色を変えて大はしゃぎ。
やっぱり子供なんだと俺は思った。
と、言うわけで、俺はとてつもなくハッピーだ。
外は雨。つまり、俺は家でくつろげる。
とてもじゃないが、あいつの体力にはついていけない。
毎日10時間近く連れまわされると、さすがに俺の体が持たん。
てな訳で、俺は今、とても気分がいい。
何かを『買ってー』とねだられたりなんかしたら、気分良く買ってしまうと思う。
「カイ、実はカイにお願いがあるんヨ」
突然エメリィーヌが言った。
普段は憎たらしいガキンチョも、気分がいい俺の前ではとても可愛い少女と化す。
「俺にして欲しい事?よかろう。何でも言いなさい。」
なんだって?お願いがある? そうかそうか。俺に頼むなんて、お前も可愛い所があるじゃないか。
「本当なんヨか!?じゃあお願いするんヨ!」
「おう!この海様に、なんでも言ってみなさい」
俺は、力強く自分の胸板をたたく。
それを見たエメリィーヌの瞳は、とても輝いている。
そして俺も、とても開放感に満ち溢れた顔になっているだろう。
「で、俺にお願いとは何だ?」
だがしかし、俺の言葉に帰ってきたあいつの言葉は…俺を唖然とさせるものだった。
「ウチにもプリンくれー」
……へ?
第十一話
~これは悲劇か?それとも奇劇か?~
…えっと……へ?
あまりの衝撃的な一言に、俺の思考回路が一瞬ショートする。
「だーかーらー、プリン!!」
…ああ、プリンか。
「悪かったな、エメリィーヌ。今プリン切らしているんだよ」
雨だし、買いに行くのもちょっとなぁ。
すると、エメリィーヌがまたしても、俺の思考回路の破壊にかかる。
「冷蔵庫にいっぱいあるんヨ!!ウチも食べてみたいんヨ!!」
…えー………へ?
なんだって?
「悪い。よく聞こえなかったんだが…」
停止した思考回路を、なんとか動かし、絞り出した言葉がそれだった。
そんな俺の言葉に、ぶち切れ寸前のエメリィーヌ。
「だから!!!冷蔵庫にある!!!味噌カスタードプリンを!!!ウチに!!!くれなんヨ!!!!」
あー………へ?
今コイツなんて言った?
味噌カスタードプリン?
俺の体の約九割がそれで出来ていると言っても過言ではない、俺の元気の源を、なんだって?
「過言すぎるんヨ!!ウチにも分けてくれって言ってるんヨ!!」
…え、ちょっ……へ?
何だコイツ。
俺の体の約九割がそれで出来ていると言っても…「だから過言なんヨ!!!」
ちょ、俺の考えの中に入り込んでくるな!!
まったく。
「で、頼みって何だ?」
「こんのっ…ドアホ!!ウチにもプリンをわけろゆうとんのじゃ!!ボケッ!!」
おいおい、急に関西弁が上手くなりおった。
「よかったな、エメリィーヌ。これでエセ関西人卒業だ。」
俺は、エメリィーヌの頭をなでながら、優しく褒めた。
「うん!ありがとうなんヨ!!」
とても嬉しそうなエメリィーヌ。
コイツも可愛い所があるじゃないか。
とりあえず、暇だ。
「おい、エメリィーヌ。お前、秋達と遊びたくないか?」
暇なときには、あいつをからかうのが一番だからな。
俺が来てくれと言っても、めんどくさがって来ないだろうが、エメリィーヌが遊びたいと言ったら別だ。
喜んでくるに違いない。琴音もいるし。
俺がエメリィーヌに聞くと、エメリィーヌは元気に、『うん!!』と、答えた。
「そうか、ならちょっと電話しといてやるよ」
俺はそうエメリィーヌに告げると、携帯電話を右ポケットから取り出し、秋に電話をかける。
しばらく呼び出し音がして、突然いつも聞きなれた間抜けな声へとかわる。
『あー、俺だけど?』
何だその間の抜けた返事は。
この間抜け!!
「この間抜け!!」
『はぁ!?』
凄い声でキレる秋。
やべぇ、思わず口に出してしまった。
とりあえず誤魔化しておくか。
「電話に出ていきなり間抜けとは、これいかに?」
『じゃあな』
ブチッ、という音とともに、電話が切れた。
何だよ、あいつ。最近の若者の考えるこたぁ分からん。
「いつも意味の分からない所でキレるんだから。」
俺が言うと、隣で電話のやりとりを聞いていたエメリィーヌが言ってきた。
「カイ。お前は本当になぜキレたか分からないんヨか?」
凄く呆れた顔のエメリィーヌ。
俺は、慌てて答える。
「わ、分かるから、その顔やめろ!」
俺がそう答えた瞬間、エメリィーヌは心の底から安心したようだった。
「良かったんヨ。もし本気なら、超能力で精神科に連れていく所だったんヨ」
せ、精神科!?俺はそんな所に連れて行かれるような、異常者じゃないぞ!?
多分俺は、今のエメリィーヌ以上に安心していると思う。
「異常者はひどいんヨ!!通っている人だって、好きで通っている訳ではないんヨ!!」
凄い怖い顔で言ってくるエメリィーヌ。
「わ、悪かった。謝る。本気で謝る。だからその顔やめて下さい。とても怖い。」
ここで茶化したら、多分俺は終わっていた。
人生も。人間性も。
「とりあえず、もう一回電話したらどうなんヨ?」
完全に呆れた声のエメリィーヌ。
それもそうだな。
俺は、もう一回電話をかけた。
『なんだよ』
そしてやはり、とても不機嫌そうな秋の声。
何だよはこっちだよ。
いつまで気にしてるんだ。
ガキか!!
「ガキか!!」
『じゃあな』
電話が切れ、ツーツーツーという音がむなしく響く。
またやっちまったぁ!!!また言ってしまったぁぁぁ!!
てか、あいつもあいつだ。なぜすぐ切る。
何のために電話してきたか気にならないのか?
そのやりとりを横から聞いていたエメリィーヌが、やはり俺に向かって言ってくる。
「はぁ…カイ。お前は何回同じ事を繰り返せば気が済むんヨ?」
その言葉からは、完全に幻滅したぜ!感が、ビシビシ伝わってくる。
なんだよ。お前大体偉そうなんだよ。何様だよ。ふざけんな。
俺がそう思うと、もうお約束のごとく、それが相手に伝わる。
「カイがそんなに死にたいとは知らなかったんヨ。気付かなくてごめんなさいなんヨ。」
ものすごい威圧感を感じる。
言葉では謝っていても、顔は殺る気満々だ。
俺は命の危険を察知した。
「い、いやぁ、そんな気にして貰わなくても結構ですよ…?」
俺が言っても、表情一つ変えずに一歩一歩近づいてくる。
自分でも顔が引きつっていくのが分かる。
声が完全に恐怖しているのが分かる。
その時俺は、エメリィーヌが小声で何かを呟いている事に気がついた。
そして、そのつぶやきと同時に、光を増す勾玉。
俺はここで悟った。
コイツ…本気だ。
もう俺には、死の一文字しかないんだろうか。
俺は考えた。
そこで、ある一つの生きる道を見つけた。
俺が見つけたと同時に、エメリィーヌが目を見開く。
俺は、無意識に横っ跳びをする。
多分俺の脳が、危険を察知したのだと思う。
俺が横っ跳びをしたと同時に、エメリィーヌが手を前に差し出し…
「念力!!」
エメリィーヌがそう叫ぶ。
すると、丁度俺の後ろにあったベッドが、華麗に宙を舞う。
そして次の瞬間、『ドガァン』という、近所迷惑間違いなしの音が響く。
ベッドが地面に叩きつけられたのだ。
くそぉ!怒られるのは俺なんだぞ!!床やベッドに、傷つけやがって!!
だがエメリィーヌは、そのような怒りさえも、出させてはくれなかった。
すぐに俺の方に手を向け
「カイ、よけちゃダメなんヨ」
そう静かに告げるエメリィーヌ。
おい、怖すぎる!!
「おい、エメリィーヌ!!お前にいい物をくれてやる!!だからやめるんだ!!」
俺は必死にエメリィーヌを説得する。
だがエメリィーヌは。
「カイ、何を言っているんヨ?これは、この小説の人気を出すために、今流行りのヤンデレと言うやつの実演なんヨ。だから…ね?」
はぁ!?何をわけのわからない事を言っているんだ!?
しかもヤンデレじゃない。
病んでいる。
デレがない。
お前はもう、病んでいる。
「念力!!」
「あぶねっ!?」
俺は、間一髪でよける。
だが後ろで、何かとても嫌~な音が……
……うわぁぁぁ!!!マイPCがぁぁぁ!!!!
くそっ!!あの有名な一言と、ヤンデレのコラボしている場合ではなかった。
急いでアレを。
俺は、アレを取りに行くために、冷蔵庫を目指す。
ちなみに、冷蔵庫は一階で、戦場は俺の部屋。つまり二階だ。
そこから冷蔵庫までたどり着くには、約10秒。
いけるか!?
いや、やるしかない。
俺は覚悟を決め、冷蔵庫に行くために、華麗にクラウチングスタートを決める。
「うおぉぉぉりゃぁぁぁ!!!!」
凄い声をあげながら、エメリィーヌの横を駆け抜け、ドアを開け廊下に出る。
エメリィーヌも意表を突かれたようで、しばらく硬直したのち、俺を追いかけて来る。
くそ、もっと早く。
俺は、階段に差し掛かった。
「だっぴょ~~ん!!!!」
そう叫びながら、一番上から飛び降りる。
一気に一番下まで下りて行く。いや、落ちていく。
足が地面に着くと、『グキュリッ』と嫌な音を立てる。
どうやら捻ったようだ。
当然のごとく、俺は激しく床に体を打ち付ける。
「ぐふぉぁ!!!」
でもこんな所で寝ている暇はない。
冷蔵庫まであと少しだ。
俺は立ち上がろうとした。
だが、痛い。
足が痛い。
俺は視線を感じ、階段を見上げた。
そこには、俺に手をかざしているエメリィーヌ。
やばい!!!
まだ死にたくはない!!
その一心で、俺はまた、クラウチングスタートを決める。
その衝撃で、足がおかしい。
だが気にしてられっか!!
俺は痛みにたえながら、冷蔵庫に到着した。
冷蔵庫の扉を開け、俺はアレを手にする。
そう。
それは。
味噌カスタードプリン!!
それを手にした瞬間、安心したのか、足が非常に痛い。
だがそうも言ってられず、すぐ目の前には、手をかざしながらエメリィーヌが迫ってきていた。
俺は、そいつにプリンを投げつける。
「それやるから、落ち着け!!」
俺の言葉に反応するように、エメリィーヌが足元に転がってくる味噌カスタードプリンを見る。
すると……
「やったーー!!!!なんヨ!!」
さっきまでの雰囲気とは一変し、目をキラキラさせながら、飛び跳ねているエメリィーヌ。
よかった。ようやく機嫌が直った。
俺は心から安心した。
だが、エメリィーヌが俺を見ている。
しばらく見ると、急に俺に向けて、手をかざしてくる。
「おい!?それやったんだから許してくれ!!」
「ちょっと、黙ってるんヨ」
俺が必死に説得しても、エメリィーヌは言う事を聞かない。
勾玉の光がとても強くなる。
来るっ!!!
俺がそう思った瞬間。
「治癒術!!」
エメリィーヌが唱えた瞬間、足の痛みが嘘のように引いて行く。
俺は驚きのあまり、頭が混乱しそうになった。
「エメリィーヌ…なんで…?」
「なんでって足怪我してるんヨ。階段の時も、なおそうと思ったのにカイが逃げるんヨから……」
そう、エメリィーヌが言った。
階段時のあれは、攻撃しようとしてるのではなく、治そうとしてくれていたのか。
「エメリィーヌ。ありがとう。」
俺はお礼を告げた。
「そんなことより、電話しなおした方がいいんヨ?」
プリンのふたを開け、おいしそうに頬張るエメリィーヌ。
「どうだ!!美味いだろ!!美味すぎて泣いちゃうだろ!!!」
俺はそんなエメリィーヌに、感想を求めた。
「確かに美味いんヨ!!でも泣きはしないんヨ」
なんだと!?なら食うんじゃねぇ!!!!
俺の体の約九割がそれで出来ていると言っても過言ではないんだぞ!?
いい加減にしてくれ!!
「分かったんヨ、謝るから、電話でもするんヨ」
「あ、ああ、そうか」
なんか上手くなだめられた様な気がするが、気のせいだろう。
とりあえずあれだ。電話しよう。
俺は、本日三度目。秋に電話をかけた。
もう聞きなれた呼び出し音が響く。
しばらくすると、もう聞きなれたあいつの声。
『お前、しつこい』
まだ不機嫌のようだ。
コイツ、毎度の事ながらめんどくさいな。
俺は、同じ失敗を繰り返さないように注意する。
仏の顔も三度までって言うしな!!
気をつけなければ。
そんな俺に、エメリィーヌは言った。
「二度ある事は三度ある。ともいうんヨ」
くっ!嫌味な奴だな。
「お前、なんでそんなことわざ知ってんだよ?しかも、超能力で考えを読み取るのやめろ。」
ホントに迷惑だ。
「ウチは落ちこぼれだったし、本を読むことしかできなかったんヨからねー。あと、超能力は使ってないんヨ。」
おい、今さらっと悲しい事言ったぞ?お前も苦労してたんだな。
一応、エメリィーヌがどうしてここに来たのかなどは、秋に全部聞いている。
てか…
「超能力使ってない?ならなんで分かるんだよ?」
俺だって、そう毎回のように考え事を暴露している訳ではないぞ?
そんな俺の問いに、エメリィーヌが平然と言った。
「そういう顔してるんヨ。」
なるほど。仏の顔も三度までみたいな顔か。
「どんな顔だよ!?気持ち悪ぃよ!!」
まさかこの俺が、そんなに表情豊かだとは思わなかったぞ。
俺とエメリィーヌのやりとりを、電話越しで聞いていた秋が、キレる。
『俺を放置するんじゃねーよ!!俺は電話の時まで忘れ去られる存在なのか!?』
「ああ、スマン」
今さらっと、秋の心の声が聞こえた。
お前、気にしてたんだな。
『スマン!?軽いな!!そこは誠意を込めてごめんなさいと言う所だ!!』
うわぁ。めんどくせぇー。
『めんどくせぇだと!!テメェふざけんな!!』
え!?なぜわかった!!
「エメリィーヌ、今俺、喋ってたか?」
俺は、プリンを食いながら、やりとりを聞いていたエメリィーヌに聞いてみた。
「全然しゃべってなかったんヨ。表情ででも分かったんヨ。どうせ。」
何だ表情か。いやぁーあせった。
あいつも超能力者かと。
まぁいいや。
「とにかく、暇なら俺ん家に遊びに来ないか?」
『そういう理由ならお断りだ。俺だって都合ってもんがある。』
なんだよ、お断りするなよ。
「あ、いい忘れてた。エメリィーヌが暇そうだから、俺ん家に遊びに来ないか?」
『分かった、琴音も連れてすぐ行くよ』
「おい、都合は?」
『え?何の事?』
「おい、お前俺に恨みでもあんのか?」
『ある』
即答だった。
そうか、お前が日ごろ、俺の事をどう思っているのかがよく分かった。
そして、お前に都合がない事も分かった。
「とりあえず、琴音に聞かなくていいのか?」
勝手に決めてたけど…
『ああ、あいつ最初の電話の時から用意始めてる』
「琴音すげーな!!お前の家系どうなってんだ!!」
『俺も驚いている』
「いやぁ、今年一番驚いたかもしれない」
俺が言うと、エメリィーヌがいってきた。
「ウチが登場した時は!?」
あーそんな事もあったな。
確か、20年ぐらい前に。
「20年!?貴様今いくつなんヨ!?」
お前何言ってるんだ。
「俺は、何と38歳だ!!」
「『アホか』」
電話越しの秋と、エメリィーヌが見事にハモった。
お前ら、息ぴったりだな。
さすがの俺も、寒気がしたぜ!!
まぁいいや。
「とりあえず外は雨だし、エメリィーヌでも迎えによこすよ」
超能力があれば一瞬だしな。
『ああ、わかった。10分後ぐらいに来てくれ。』
「わかった。エメリィーヌも、それでいいよな?」
俺は、まだプリンを食っているエメリィーヌに聞いた。
「全然オッケーなんヨ」
「エメリィーヌもいいみたいだし、10分したら行かせるよ」
『おう、じゃあ切るな』
「なにを?」
『電話だよ!!』
「何もったいない事してるんだ!!電話は高いんだぞ!?」
『お前はアホか!!』
そういって、秋が電話を切った。
ツッコミのキレは、今日も絶好調のようだ。
「じゃあエメリィーヌ、お前も準備しとけよ」
俺は、ひたすらプリンを食っているエメリィーヌに行った。
ん?ひたすら?
…ヴァッ!!!
「お前!!プリン何個食った!?」
エメリィーヌの前には、プリンのゴミの山。
俺が知らないうちに、勝手におかわりしていたみたいだ。
あまりの驚きに、変な声が出てしまった。
そんな俺の問いに、エメリィーヌは何事もなかったかのように言った。
「これが最後のプリンなんヨ」
最後!?あんなにあったのに!?
確か、15個ぐらい買っておいたはず。
俺の……俺の……俺の味噌カスタードプリン!!!
「エメリィーヌ!!てめぇ!!お前、生きてそのプリンを平らげられると思うなよ!?」
俺の心には、すでに殺意が目覚めていた。
すべて食い終わる前に、**してやるよ!!
「はぁ、美味かったんヨ。ごちそうさまなんヨ」
こやつ、完食しおったわ。
憎たらしいクソ餓鬼め!!
「あ、ゴミを捨てるの忘れてたんヨ。食べた後はお掃除なんヨ」
ジュリョァァァァァ!!!!ゴミダト!?ゴミニシタノハ誰ダ!!
貴様ガ食ワナケレバゴミニナルコトナンテナカッタノニ。
もうもはや、俺の思考は崩壊し、このままだと何かに変身してしまいそうだった。
かすかだが、角が生えてきた気が……気のせいだろう。
そんなわけで、俺はあいつを捻りたいと思います。
「エメリィーヌゥゥゥ!!!シネェェ!!!!」
俺は、エメリィーヌに殴りかかる。
だが我を忘れ、冷静さがなくなった俺が、超能力に勝てる訳がなかった。
「ホイっと、念力」
ゴミ箱にゴミを入れながら、こちらを見ずに手だけを向けるエメリィーヌ。
そして俺は、見事に直撃した。
あの時と同じ。
体が宙に浮く感覚。
いや、実際に浮いている。
念力でとらえられた俺を、そのままどこかに運ぶエメリィーヌ。
おい、どこに連れて行く気だ。
周りを見てみると、どうやら浴室のようだ。
そして、エメリィーヌがシャワーを手に取り、温度を水に切り替える。
そのシャワーが俺の顔に向けられ……
「発射!!」
そう言ったと同時に、シャワーの出る所を捻るエメリィーヌ。
その瞬間、勢いの強い冷水が、見事に俺の顔に直撃する。
「グボァァァ!!」
やめろぉ!!やめてくれぇ!!冷たいよぉ。痛いよぉ。俺が悪かったからぁ。
俺の怒りに燃えあがった頭が、一気に冷却される。
それと同時に、だんだんと怒りが小さくなる。
俺にシャワーを当てながら、エメリィーヌが言った。
「小さい子の前で、シネェ!とか、コロスゥ!とか、物騒な事言っちゃダメなんよ。」
俺は叱られた。
何が小さい子だよ。お前都合よすぎだろ。
だがそんなエメリィーヌのおかげで、俺は殺しをせずに済んだ。
てか…
「シャワーを止めろぉ」
「分かったんヨ」
俺の心の叫びが届き、エメリィーヌがシャワーを止めてくれた。
まったく…どこでこんな悪知恵を覚えたんだよ。
多分、コッカコラ星の時、超能力が使えないとバカにされ、超能力で仕返しができないからと、エメリィーヌなりに考えたんだとは思うが。
今はもう超能力は使えるんだ。悪知恵に超能力が合わさったら……考えるだけでも恐ろしい。
「とりあえず、俺を下ろしてくれ」
「了解なんヨ」
下ろしてもらった俺は、エメリィーヌにタオルを持ってきてもらい、ずぶぬれになった服を着替えるため、自分の部屋に向かった。
「はぁ、酷い目にあった。晴れてても、雨でも疲れることには変わりないな」
エメリィーヌのいない所で愚痴をこぼし、すぐに着替えて一階へと降りた。
一階に下りると、エメリィーヌはすでにパジャマ姿から、あの緑色の服に着替えていた。
「もう行けそうだな。秋達を迎えに行ってくれ」
俺はすっかり準備万端のエメリィーヌに行った。
「分かったんヨ!!」
そういって、超能力で瞬間移動した。
もうすっかり、呪文みたいなの言わなくなったな。飽きたのか?
そう思いながら、エメリィーヌがみんなを連れて戻って来るの、俺は一人で椅子に座って待った。
―――あれから十分が経った。まだ来ない。
まぁ、向こうがまだ準備できていないかもしれないし。
もう少しだけ待つか。
―――さらに30分経過した。
遅すぎる。さすがに遅すぎる。
あいつ何やってるんだよ!?
もしかして移動する場所間違えたのか!?
俺は少し心配になり、とりあえず秋に電話をかけようと、携帯を手に取った時だった。
『ピーンポーン』と、インターホンのチャイムが鳴る。
……おい、まさか…
俺は、嫌な想像を振り切り、玄関に向かいドアを開けた。
そこには……やっぱりいた。
傘をさしながら、楽しそうな三人が。
何やってんだ!?とりあえず理由を聞こう。
「えっと、遅かったじゃないか…」
俺がそう言った。すると…?
「うちのお袋がさぁ、雨で危ないから歩きで行けって言うもんだから」
おい。今の言葉に違和感を持とうぜ。
「何の為にエメリィーヌが行ったと思っているんだ!?」
俺は言った。
すると秋が
「何って、俺たちの迎えだろ?」
ああ、そうだ。お前たちの迎えだ。
だが
「じゃあなぜ、エメリィーヌの超能力でワープしてこない」
俺はそう言った。
言った後、謎の沈黙。
そして、皆の顔が合点の行ったような顔になり……
「「「ああ!!」」」
三人共、今気付いたような感じだ。ハハハ、嘘だろ?
「そういえばそうだな!お前頭いいよ!!」
そういって笑いながら、俺の肩をたたきだす秋。
お前はアホか。普通気付くだろ。
つーかエメリィーヌ。
「お前は何のために行ったんだよ?」
秋と一緒に笑っているエメリィーヌに、俺は呆れながら言った。
「いやぁ、その発想はなかったんヨ。」
はぁ!?あれよ!!その発想あれよ!!!普通分かるだろ!!
くそっ。説明しとけばよかった。
「これが、互いの行き違いが招いた悲劇」
と、琴音がなんかほざいている。
「悲劇じゃなくて、奇劇の間違いだろ?冗談じゃないぜ」
三人もいて何をやっているんだ。
琴音も時々アホだからな。仕方がない。
俺は、3バカトリオに早々に心が折れ、仕方なく家にあげたのだった。
第十一話 完
俺日!ご愛読ありがとうございました!!
今回は、海君がツッコミに回ってしまいましたww
秋君がいないときは基本、海がツッコミです。
そして、これこそまさに奇劇!!
ということですね、はいww
てな訳で
次回をお楽しみに!!