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俺の日常非日常  作者: 本樹にあ
◆日常編◆
13/91

第9.5話~それは、優しさがあってこその~

どうもです^^


今回は一連のいざこざを琴音視点でお楽しみください^^


では、どうぞ!



「何だってんだよ、めんどくせぇ。」



そう海兄ぃが呟いた。


エメリィちゃんは、謝るのに必死で気づいていないみたいだ。



だが、真剣に海兄ぃの言葉を待っていた私には、聞こえた。



秋兄ぃも聞こえたみたい。



秋兄ぃが、海兄ぃを叱っている。


しかし、海兄ぃは認めようとはしない。



いや、心では分かっているのだと思う。


でも認めない。


これは、海兄ぃの悪い癖だ。




「そんなもん知るかよ、勝手に謝られて、こっちは迷惑してるんだ」



秋兄ぃが、何度も海兄ぃを叱る。


そんな秋兄ぃの言葉に、出てきた海兄ぃ言葉がこれだ。



言い過ぎているのは、自分でも分かっていると思う。


でも、やっぱりダメだ。


これじゃ、後々損するのは海兄ぃのほう。


しかしそうなってからじゃ遅い。


エメリィちゃんのためにも、海兄ぃのためにも、ここは強く言っておこう。



「エメリィーヌ、泣くなよ………俺が悪かっ『もういいよ。』



そんな、その場しのぎで謝っても、あとでまた同じことを繰り返す。


そんな事の無いよう、海兄ぃには自分で分かってもらわないといけない。



「もう謝らなくていいよ、エメリィちゃん。海兄ぃなんかに謝ることないよ」



海兄ぃには悪いけど、今言っておいた方がいい。



「海兄ぃ。もう帰って、頭冷やしてきなよ」



それで、自分のしたことをよく考えて。


とりあえず、考える時間というものがあった方がいい。


エメリィちゃんを、家に連れて行こう。



「こ、琴音! ちょっと待ってくれよ!!」


「なに」


「あの、悪かっ…たよ……」


海兄ぃなら大丈夫。


ここで謝れるのだから。


「琴音、悪かったから、俺が悪かったから許してくれよ!!」



あとは一人でじっくり悩んで、その答えを私に聞かせて。


海兄ぃなら、大丈夫だから。



第9.5話

~それは、優しさがあってこその~





エメリィちゃんの過去を見た後、私たちはまた、家に向かって歩き出した。


だが、すぐに足の異変に気づく。



「いたっ」


そう言えばそうだった。


私は足を怪我していたんだ。


なぜ今まで普通に歩けたのだろうか。


多分、海兄ぃの事で頭がいっぱいだったからだと思う。


アドレナリンと言うやつかもしれない。



「大丈夫か?」


秋兄ぃが、足を押さえてしゃがみ込む私を心配そうに見ている。



「大丈夫……じゃないかも...っつ」


足を撫でると、激痛が走った。


本格的にヤバいかも知れない。



そんなとき、エメリィちゃんが言った。


「治すことはできないかもなんヨけど、少し良くするだけなら出来るんヨ?」


「マジか? じゃあ頼むよ」


秋兄ぃがエメリィちゃんと何かを話をしているが、痛みでそれどころではなかった。


すると突然、呪文を唱え始めるエメリィちゃん。



「コリクサコサクリエメラルドゥ!!はぁ!!治癒能力(ヒーリング) !!」


呪文を唱えたと同時に、温かい光が私の足をつつみこむ。


そして、凄い勢でに痛みが引いていった。



私は立ち上がり、その場でジャンプをしてみた。



「すごい。全然痛くないよ」


どんなに飛んだり跳ねたりしても、全く痛くはない。


正直、驚いた。



「軽い打撲程度になっているけど、無理しちゃだめなんヨ?」


「わかったよ。ありがとね、エメリィちゃん」



軽い打撲?どれどれ。


私はためしに、怪我をしてさっきまでズキズキいたんでいた所を触ってみた。


すこしズキッっとする。


たしかに完全に治ってはいないようだ。



「それにしても、超能力ってすげーな」


たしかに。


効果絶大だ。


「じゃあ、帰るぞ」


「うん」


私たちはまた、歩き出した。



外灯により照らされる道。


そこですれ違う人々にあいさつをかわす。



それから約20後、家に着いた。


「ただいま、お母さん」


「おかえりなさーい」


台所の方で声がする。



玄関のドアを開け、靴を脱ぐ。


続けて、秋兄ぃ、エメリィちゃんも入ってくる。



そういえば、エメリィちゃんの事をどう説明しよう。


全く考えていなかった。


こんな小さい子を勝手に連れて来て、怒られるに決まっている。


説明した所で、宇宙人なんて信じてくれないだろう。



「秋兄ぃ、エメリィちゃんの事、どうしよう?」



一人で考えていてもらちが明かないので、秋兄ぃに聞いてみた。



「あ、そう言えばそうだな、どうするか?」


やっぱり、秋兄ぃも忘れていたらしい。


どうしよう。


悩んでいると、突然秋兄ぃが言った。



「おふくろー!! ちょっと来てくれー!!」


「ちょっと、いきなり呼んでどうするの!? まだ何も考えてないのに!!」



秋兄ぃの思いがけない行動に、思わず大声を出してしまった。


そして、当然のごとく、お母さんの足音が聞こえる。


やばい、こっちにくる。


まぁ、呼んだのだから当然なんだけど。


だんだん近づいてくる足音とともに、お母さんが近づいてくる。


そして、その足音はとうとうこっちまで来てしまった。



「どうしたのよ?」


お母さんに陽気な声。


そして、その目線がエメリィちゃんの方へと向けられる。



「……その子……どこの子?」


エメリィちゃんの姿を見たお母さんが、至極当然の疑問を口にする。


もう、私は知らない。


秋兄ぃが呼んだのだから、秋兄ぃが何とかすればいいんだよ。



そして、その秋兄ぃが答える。



「コイツ、道に迷った俺たちを超能力で助けてくれてさー」


ちょっと!!超能力って言っちゃったよ!?


信じてもらえるわけないでしょ!?



「なに馬鹿なことを言ってるのよ、超能力なんてあるわけないじゃない」


お母さんは信じようとはしない。


まぁ、これが普通の反応だよね。



すると、エメリィちゃんがお母さんに向けて喋る。



「ウソじゃないんヨ、全部本当の事なんヨ」


「コイツ家出してきたみたいでさー、行く所が無いみたいだから、しばらく家で預かっていてくれないか?」


この、アホ兄ー!!家出なんて言ったら絶対だめでしょ!?


絶対怒られるよ!!



「……お父さんや、お母さんは?」


ほらほら、お母さん呆れてエメリィちゃんに聞くことにしちゃったよ!!


『わが子ながらアホだなー』とか思っている顔だよ!?


失望してるよ!?



「両親には、許しを得ているんヨ」


と、エメリィちゃんが言った。



どーすんの!!秋兄ぃのせいでやばい状況だよ!!


ほら!お母さん、無言になっちゃったよ!?


もっと他に言い方あったよね!?もっとうまい言い方が!!


正直者すぎるよー!!!


お母さん考え込んじゃったよ!!



しばらく無言で考え込んでいたお母さんが、とうとう口を開く。



「……そうなの、ならいいわ」


「えぇぇぇ!!!!いーの!?ねぇ!!そんなんでいいの!?」



お母さんの予想外の答えに、私は動揺を隠せなかった。



「だって、親がいいって言ったのなら、私に止める理由はないじゃない?」


「いや、あるよ!!十分あるよ!! そんな簡単に信じちゃだめだよ!!」



はぁ……なぜ私は自分の首を、自分で絞めているのだろう。


だけどお母さん、本当にそれでいいのですか?


私は、少しお母さんが心配です。



「いいのよ、可愛いんだから」



左様でございますか。


なら別にいいです。


もう何も言いません。



気まぐれなお母さんのおかげで、なんとか大丈夫そう。


とりあえず、一番心配していたことが無くなってよかったよ。



「あ、そうだ、お母さん包帯かなんかある?」


私は、足のけがの事を思い出し、お母さんに尋ねる。



「どうかしたの?」


心配そうな顔で、お母さんが私を見ている。



「いや、足捻っちゃったみたいで……今は痛くないけど、一応ね」



凄く心配そうなお母さんを、安心させるように言った。


お母さんは、『ちょっと待ってて』と言って包帯を取りに行ってくれた。



「よし、エメリィーヌ。とりあえず俺の部屋で遊ぶかー」


と、秋兄ぃが言いながら、二階へと上がっていく。。


「やったー、なんヨ♪」


エメリィちゃんが秋兄ぃについて行った。


その顔はとても嬉しそう。



しばらくすると、お母さんが戻ってきて、包帯を巻いてくれた。



「ご飯温めたら呼ぶから、琴音も遊んでいらっしゃい」


そう言って、台所へと戻っていく。



そうだ、今9時ぐらいだった。


夕飯作って待っていてくれたんだ。


お母さんには悪いことしちゃったなぁ。



そう思っていると、突然電話が鳴った。



「琴音ー、出てくれるー?」


「はーい」


電話は、ちょうど玄関の近くだ。


私は立ち上がり、電話の所まで行って受話器を手に取った。



「もしもし、竹田ですが……」


『……もしもし、俺…だけど………』


この声は、海兄ぃだ。


多分さっきのことだろう。



「………海兄ぃ、何か用」


私はまた、怒っている声を作る。



『あの……えっと……さっきの事なんだけどさ』


もちろん、さっきの事とはエメリィちゃんの謝罪の時のこと。


私は、海兄ぃが次の言葉を発するまで待った。



「………」


『その……エメリィーヌはどんな感じだ……?』



海兄ぃが、エメリィちゃんの様子を聞いてきた。


その声は、どこか暗い雰囲気を漂わせている。


さっきの事が、よほど応えたのだろう。



「今は普通だよ。秋兄ぃと遊んでる」


『そ、そうか……。良かった』


私の言葉に、海兄ぃが安息の息を漏らす。



「……それを聞きたくて電話してきたの?」


なかなか話が切り出せない海兄ぃの後押しをする。



『い、いや……それもある……けど…』


受話器越しに、海兄ぃの息を吸う音が聞こえる。


そして、すぐに海兄ぃの声が聞こえてきた。



『琴音………俺が悪かった……ごめん』


海兄ぃが、謝ってくる。


だけど私は、そんな海兄ぃの言葉の真意を確かめるため、聞き返した。



「…………それだけ?」


『……俺、サイクリングとかで疲れてて……それで……本当にごめん!!』


その海兄ぃの言葉には、不思議と、気持ちが感じられなかった。


何と言うか、心の底から謝って言う感じではない。



「………………で、海兄ぃの言いたい事は、それだけなの?」


私は確認のため、もう一度聞き返した。



『えっと……あの時は、俺どうかしてて……だから……その……』


海兄ぃの言葉からは、謝るよりも、私に許して貰う方に力が入っている。


心では本当に悪かったと思っているだろうけど、無意識に内にそっちの考えになってしまっているみたい。


海兄ぃごめん。


ちょっと、きつい言い方をするけど、海兄ぃなら大丈夫だよね?



「……海兄ぃ、私はいい訳が聞きたいわけじゃないよ。」



正直、この時に私は嫌な奴だったとは思うけど。


でもやっぱり、こう言う時はキッチリとしなきゃダメなんだよ。


海兄ぃだって分かっているはず。


海兄が一人で考えたのだから、後は私が後押しをしてあげなくちゃ。



「別に私は怒っている訳じゃない。ただ、海兄ぃの気持ちが知りたいだけ。今の海兄ぃからは、あまり気持ちが伝わらないよ」


そんな私の言葉に、一言だけ聞こえる。



『………ごめん』


海兄ぃはやっぱり凄い。


自分の間違いをすぐに認めた。


声で分かる。


普通なら、そんなすぐに自分の悪い所を認められないよ。


もう大丈夫だとは思うけど、最後に、一つだけ。



「海兄ぃは、一つだけ勘違いしてるよ」


海兄ぃは静かに聞いている。


そんな海兄ぃに、私は続けて言った。



「私に謝ったって、エメリィちゃんの心には届かないんじゃないかな」


私の言葉を聞いた海兄ぃは、言葉を失っているみたいだった。


少し言い過ぎたかも知れない。


私がそう思った時、



『……琴音……ありがとう』


その言葉には、ちゃんと気持ちがこもっていた。


ちゃんと、海兄ぃは分かってくれた。


私の言葉に文句も言わず、静かに聞いてくれた。


海兄ぃ、頑張れ。



「うん。海兄ぃの考えがまとまるまで、私、待ってるから」



私は、海兄ぃにそう告げると、受話器を置いた。


今の海兄ぃだったら大丈夫。



でも、ちょっと偉そうに言いすぎたかもしれない。


海兄ぃ、ごめんね!



そのとき、お母さんの声が聞こえた。



「ごはんよー」



お母さんの優しい声とともに、ごはんのいい匂いが鼻をくすぐる。


私は、お母さんが待っているであろうリビングに向かった。



リビングのドアを開けると、刺激的な匂いが漂う。


そして、テーブルの上にはきれいに並べられたカレーライス。


とてもおいしそう。



そのとき、階段をドタドタと降りてくる音が聞こえ、すぐに秋兄ぃとエメリィちゃんが来た。



「お、今日のはうまそうだな」


食卓に並べられたカレーライスを見て、秋兄ぃが分かりやすいほどに喜んでいる。


まるで子供みたい。



「やったー、カレーなんヨ♪」


エメリィちゃんもとても嬉しそう。



それぞれ、いつもの場所に座り、エメリィちゃんは、秋兄ぃの隣に座った。


なんか、凄い仲良くなっているみたい。


それよりも、今は夕食をたべよう。



「いただきまーす」


私は、両手を合わせながら言い、カレーを食べ始めた。



「そういえばさ、お前、カレー食べたことあるのか?」


とてもおいしそうに食べているエメリィちゃんに、秋兄ぃがきいた。


たしかに、エメリィちゃんの星にはカレーなんてあるのかな。



私も気になってきた。



「食べたことはないけど、本で読んだから知っているんヨ」


「へぇ」


地球の食べ物が書いてある本とかあるんだ。


ちょっと見てみたいかも。



「ずっと前から食べてみたかったんヨ♪」


「味はどうかしら?」


お母さんが、エメリィちゃんに聞いた。


「こりゃたまらんヨ」


「あらそう、なら良かったわ」



エメリィちゃんの言い方に、思わず笑ってしまったお母さん。


もうすっかり馴染んでいる。


……本当にこんな簡単でいいのかな…?


私は少し、どこか納得ができなかった。


でも、まぁ、エメリィちゃんも楽しいみたいだし……まぁいいか。


「おかわりー♪」


すぐに食べ終わったエメリィちゃんが、お母さんにお皿を差し出す。


食べるの早いなぁ。



「はいはい」


差しだされた皿を受け取り、隣の部屋の台所へと向かうお母さん。


お母さんも、もう一人娘が出来たみたいで嬉しいんだと思う。



......そんな事を話しながら、夕飯を食べ終えた。


エメリィちゃんは、あれから五回おかわりをしていた。


あの体のどこに入るのだろうか。


とにかく驚いたよ。



お母さんが、皆の食器を片づけ始める。



「あ、私も手伝うよ」


「あら、ありがと」


自分で食べたものぐらい、自分でやるのが当然だからね。


お母さんと一緒に、食器を持って台所まで行き、二人でそれを洗う。



四人分だけなので、すぐに洗い終わった。



「手伝ってくれてありがと。エメリィーヌちゃんと一緒にお風呂でも入ってらっしゃい」


濡れた手を、白い無地のタオルで拭きながら、お母さんが言った。



「わかったよ」


私は返事をして、二階で秋兄ぃと遊んでいるエメリィちゃんを呼びに行った。





―――――――海兄から電話があってから二時間近くがたった。



「あいつこねぇし、俺は寝るよ」


大きなあくびをして、自分の部屋のベットに横になる秋兄ぃ。



「うん、私はもう少し起きてる」


海兄ぃなら、多分来る。

そんな気がする。



「あまり夜更かしするなよ?エメリィーヌ」


「フッ、それはどうかなんヨかな?」


「あまり遅くならないようにするよ」



さっきまで楽しく遊んでいたこともあってか、どうやら眠れないみたい。


まだまだ元気のエメリィちゃん。


あんなにはしゃいでたら、普通疲れて眠くなると思うんだけど……


まぁいいや。



「じゃあ寝るわ、おやすみー」


「寝るなんヨ!今寝たら蹴るんヨ!!」


……とっても元気。



「まだまだだな、俺の眠りはそんな事では妨げられないぜ!!」


はぁ、眠いんじゃなかったの?


眠いにもかかわらず、エメリィちゃんとふざけあっている秋兄ぃ。



「くそっ、なかなかやるんヨね!なら、今寝たらずっと、ホラー映画の悲鳴の所だけを聞かせ続けてやるんヨ!!!」


「おい、それだけはやめてくれ!マジで死ぬ!!」



秋兄ぃが、慌てて飛び起きてエメリィーちゃんを説得している。


まったく……すごく怖がりなんだから。


まぁ、怖がりじゃなくても嫌だけどね。



「つーか、お前ら早く部屋から出てけよ。俺は眠いんだよ」


「あ、ごめん。おやすみ」


部屋の電気を消し、秋兄ぃの部屋から出て、階段を下りる。


リビングをのぞくと、お母さんが寝てしまっている。


よほど疲れていたのだろう。


お母さんは、内職をしている。


なんでも、『趣味の一つぐらいはあった方がいいらしく、どうせするならお金になる方がイイじゃない?』らしい。


そんな感じで一年前に始めた趣味を、私もたまに手伝ったりしている。


あの飽きっぽいお母さんが、なぜ一年も続くのかと聞かれたら、『お金』と答えることしか出来ない。


だけど、それでも良く続くなぁとは思う。


そんな事もあって、だいぶ疲れているみたい。



「お母さん、ご苦労様です」


私はそんなお母さんに毛布をかけ、台所で海兄ぃを待つことにした。



「エメリィちゃん。眠くないの?」


隣で台所にある椅子に座りながら、足をぶらぶらさせているエメリィちゃん。



「大丈夫なんヨ!」


「そうなんだ」


たしかに、眠そうには見えないね。


見るからに遊び足りない感じ。


元気だなぁ。



それからも、エメリィちゃんと どうでもいいような話をしながら海兄ぃを待った。


しばらくしてから、ふと、時計を見てみる。


時計の針は、11時丁度を指していた。



『ふぁ~』と、エメリィちゃんが大きなあくびをする。


エメリィちゃんも眠たそうだし、どうしようか悩んでいた時。


外で『キィィ』と言う自転車のブレーキの音が聞こえた。



私は、窓から外の様子を確認すしてみた。


そこには、息を切らせて自転車に乗っている海兄ぃの姿があった。


やっぱり、海兄ぃは来た。


少し嬉しくなり、慌てて玄関に走り、ドアを開けた。



ドアをかけた瞬間、海兄ぃが驚いたようにこちらを見る。


そして、海兄ぃが言った。



「琴音、足大丈夫なのか?」


心配そうな顔で、聞いてきた。


足?


そう思いながら、自分の足に目線を落とす。


その足には包帯が捲かれていた。



「ああ、エメリィちゃんの超能力で、なんとか………ね」


すっかり忘れてた。


思い出したら、ちょっと痛くなってきたかも。



「なるほど」


「まぁ、治ったわけじゃないけどね」



完全に治すと、それが癖になって体の抵抗力が弱くなるのだとか。


『だから、本当につらい時ぐらいしか、この超能力は使わないんヨ』と言っていた。


とにかく説得力があったので、あまり頼らないようにしよう。



そのとき、夜中の冷たい風が、体を震わせる。


すこし寒い。



「とりあえず、あがって」


このままだと風邪をひきそうなので、海兄ぃを家に上げる。


そして、台所へと案内した。



台所に着いたとき、海兄ぃがエメリィちゃんを見て言った。



「よく、エメリィーヌに合うサイズがあったな」


「ん? ああ、パジャマの事ね。私のお古だよ」



なんか海兄ぃって、普通の人なら気にならないような事を聞いてくるよね。


確か昔も、『なぜ指って五本あるんだろうな?』とか言っていたような気がする。


まぁ、誰も予想できないような事を普通にするから、海兄ぃは一緒にいて飽きないんだけどね。



そして、海兄ぃは時間の事を思い出したのか、エメリィちゃんに言った。



「エメリィーヌ? こんな時間まで起きていて大丈夫なのか?」


普通は、パジャマよりもそっちが最初だと思うんだけどなぁ。


エメリィちゃんまで起きているのは、思ってなかったみたい。


静かに驚いている。



海兄ぃが来たのが嬉しかったのか、エメリィちゃんは少し嬉しそうに答える。



「ウチは夜行性なんヨ」


「へ、へぇ」


海兄ぃを見ると元気になったのか、すっかり眠気が吹っ飛んだみたい。


また、いつもの調子に戻るエメリィちゃん。


海兄ぃもまた、そんなエメリィちゃんを見て、少し安心しているようだった。



「ごめんね。こんな所で。他の部屋はみんな寝てるから」


せっかく来てくれたのに、台所は無いだろうと思い、とりあえず謝っておく。



「いや、俺のほうこそ夜中に突然……ごめんな琴音。エメリィーヌも起きていてくれてたみたいで」


海兄ぃが言った。


その言葉には、もう前のような感じはしない。


二時間ちょっとで、すっかり変わった。


何と言うか、全体的に優しいオーラが…上手く説明ができないが、雰囲気が変わっている。



そしてとうとう、海兄ぃが切り出す。



「………琴音、エメリィーヌ。話があるんだけど」


その顔からは、真剣さがすごい伝わってくる。


そんな海兄ぃの言葉に、私は優しく答える。


「……なに?」

「……なんヨ?」


エメリィちゃんも、茶化さないで聞いている。


所かまわずふざけている訳ではないらしい。




海兄ぃは椅子から離れると、まず私のほうを向き頭を下げる。



「ごめん!!」


ただ一言だけ。


だけどその一言には、海兄ぃの気持ちのすべてが詰まっていた。


海兄ぃはやっぱり凄い人だ。


秋兄ぃの親友なのが信じられないほど。



そんな海兄ぃの言葉のどこに、許せない部分があるのだろうか。


そんなもの、あるわけ無いに決まっている。



「………うん。許してあげる」


私も海兄ぃに向けて、すべての気持ちを込め言った。



「いろいろありがとうな、琴音」


私の言葉を聞いて、海兄ぃがゆっくりと頭をあげる。


その顔は、とてもスッキリした表情になっている。


だがすぐに、真剣な表情に戻った。


そしてエメリィちゃんに向き合い、また頭を下げる。


それと同時に、エメリィちゃんも凄く真剣な表情になる。



「あと、エメリィーヌ。ごめん。本当に悪かった」


その言葉をきいて、エメリィちゃんは優しく微笑んだ。


「いいんヨ♪」


エメリィちゃんは、いつもの調子で言った。


頭をあげた海兄ぃの表情は、心から安心した表情。


そして、私のほうを見ると、海兄ぃが言った。



「後で秋にも、俺が謝ってたって伝えてくれるか?」


「うん」


私は、力強く頷いた。



そのとき、ふと気配を感じ、ドアのほうを見た。


閉めたはずのドアが、少しあいている。


本当に少しだけだ。


何かと思い見ていると、そのドアがゆっくりと閉まる。


そのあと、ゆっくりと。


そして、静かに階段を上がる音が聞こえた。




――――そのあとは、海兄ぃのおなかの音で、一気に場がなごみ始めた。


そんな海兄ぃに、おにぎりを作ってあげ、色々楽しく話もした。


そして、はしゃぎすぎて調子が悪くなったエメリィちゃんを寝室で寝かせ、その場は解散となった。


そのあと、私は海兄ぃを見送るために、玄関の外についてった。





「おやすみ」


海兄ぃにあいさつをする。


「ああ、おやすみ」


自転車をまたぎながら、海兄ぃもそれにこたえる。


勢いよく漕ぎ出していく海兄ぃに、何も言わず静かに手を振る。


すると、海兄ぃも手を振り返してくれた。


私は、海兄ぃの姿が見えなくなるまで、手を振り続けた。



その時、突然後ろから声がする。



「あいつ行ったか?」


「うわっ!!」


柄にもなく驚いてしまった。


声のした方を見ると、秋兄ぃが、パックの牛乳を持って立っていた。



「もう、飲むならコップ使いなよ」


「いいじゃねぇか、残り少なくて、全部飲める時しかやってねぇんだから」


「まぁそうだけどさ」



そのまま飲むのはやめてもらいたい。


なぜなら、飲みながら歩き回るもんだから、所々にこぼれているから。


掃除するのは私なんだよ?


というか、いい年してこぼさないでよ。まったく。



「そうそう、秋兄ぃに謝ってたよ。海兄ぃ」



私は、海兄ぃに頼まれた事を伝えた。



「ああ、知ってる」


「やっぱり、秋兄ぃ聞いてたんだ。」


ドアの前で立ち聞きしていた秋兄ぃ。


なんだかんだ言っても、やっぱり気になっていたんだと思う。


でもなんで、陰でこっそり聞くような真似をしたのだろう?



「秋兄ぃも、顔出せばよかったのに」


なんか無性に気になったので、聞いてみた。



「俺は、あの張りつめた雰囲気苦手なんだよ」


そう言うと、牛乳を飲み始めた。


やれやれ。


まぁ、秋兄ぃにも色々考えがあっての事だと思う。


そういうことにしておく。



海兄ぃの事が終わって気が抜けたのか、急に睡魔が襲ってきた。



「とりあえず、眠いから寝るよ」


「おう、おやすみー」


「おやすみなさい」



秋兄ぃと、あいさつをかわし自分の部屋に向かう。


そして、ベッドの布団にもぐりこんだ。



今日は色々あったなぁ。


サイクリングに行って、エメリィちゃんに会って。


海兄ぃとも言い合って。


色々と楽しい一日だった。


明日も楽しくなるといいなぁ。


今日よりももっと――――そう願いながら、私は目を閉じた。






第9.5話 完



追記:


どうもです^^ご愛読ありがとうございました^^


少々長くなってしまいまして^^;


呼んでくれた方々には感謝しています^^ありがとう。


最後の所の、『目を閉じた』は、けしてご臨終したわけではありませんからねw



と、いうわけで、次回は何が起こるのでしょうか?


では、次回をお楽しみに!!!

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