到底想像できないような理由で婚約破棄されてしまいました!? 〜楽しい日々が待っていました〜
「いきなり呼び出してすまなかったな」
「はい……何でしょう」
「伝えなくてはならないことがあるんだ」
婚約者ラーデスに呼び出されたのはいつ以来だろう。
彼は基本私のことを放置しているから。
向こうから動きがあるということは極めて稀なこと、それゆえ、一応彼に合わせて対応しながらも実は戸惑っている。
「君との婚約だが、破棄とすることにした」
ラーデスは澄んだ瞳でこちらを見つめながら言った。
「実は、君の耳の形があまり好きでなくて。前から、この関係はいつか必ず終わらせようと考えていたんだ。ただ、思いきりがなく、ここまで遅れ遅れになってしまっていた」
彼は淡々と言葉を紡ぐ。
「だが! もう決めた! 覚悟は決まった、もう揺らぐことはない。なので君とはさよならだ。……ああ、これでもう、自由になれる……そんなみっともない形の耳を見なくて済む!」
最後まで酷い言われようだった。
◆
耳の形という想定外の理由で婚約破棄されてしまったが、直後に思わぬ出会いがあった。
親友と一緒に出掛けていた時、眼鏡を紛失してしまい困っている青年を助けたのだが、その青年に惚れられたのだ。
そこからその青年と関わるようになった。
何回も顔を合わせ、いろんなことを語り合い、そんな風にしているうちに仲は深まり……やがて共に行く未来を見つめるようになっていった。
そうしてついに婚約することとなる。
ラーデスに切り捨てられた時はどうなることかと思ったが、そのおかげで新たな縁を得ることができた。そう考えると、ある意味すべては運命であったのかもしれないとも思う。そんなことを言えば単純すぎる馬鹿だと笑われてしまうかもしれないけれど。それでも今は希望ある未来を見つめていたい。輝きに満ちた明日を信じていたい。
◆
あれから数年、私は青年と結婚し穏やかに暮らしている。
彼は今もたびたび眼鏡を紛失する。
だがそういうところも含めて好きだ。
ドジっ子さん! と言いたくなるような瞬間は多々あるが、それも彼の個性の一つだと思うので、悪い部分ではないと理解している。
そして、何より、彼とのお喋りは楽しい。
ちょっとした日常が笑顔で溢れている。
それこそが理想の暮らし。
だから今の生活はまさに理想の生活だと思う。
ちなみにラーデスはというと、私との婚約を破棄した数ヶ月後散歩中に野犬に襲われ耳を負傷してしまったそうだ。
また、その事件によって酷く落ち込んでいたところに愛犬が何者かに殺められる事件まで発生し、不眠が著しく悪化してしまったらしい。
いくつもの不幸が重なったことで心を病み、情緒も壊れていってしまい。
ある夜突然家を飛び出し行方不明となり、数日後、命を落とした状態で発見されたそうだ。
◆終わり◆




