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もっちりベーグル

金曜夜七時台の

代々木公園店は、

いつもより少し静かだった。


飲み会に向かう人が多い時間帯で、

この店に入ってくるのは、

特に予定のない人か、

週の疲れを癒す何かを探しに来た人だ。


成城くんは、パンの棚の前で足を止めた。

選択肢は多くない。

もっちりベーグルを一つ、迷わずカゴに入れる。


平日の朝はこれに、卵焼きとベーコン。

それが、成城くんの定番だった。


「それ、美味しいですよね」


後ろから声がした。


振り返ると、

無地のTシャツに厚手のパーカーを羽織った男性が立っている。

石井さんだった。


「はい。僕はいつもこれです」


「俺も、それか、これです」


石井さんはそう言って、

もっちりイングリッシュマフィンを指さした。


「そっちも美味しいですよね。たまに、手にぱさぱさしたのつくけど」


「そうすね。たぶん、宿命なんでしょうね」


会話は、それだけだった。


一週間後、成城くんは、また同じ金曜に店へ寄った。

やはり、静かだった。


「今日も少ないですね」


今度は、石井さんのほうからだった。


「金曜は、こんな感じですね」


「外で済ませる人、多いですもんね」


二人は、自然と同じレジに並んだ。


「もっちりベーグル、今日も?」


「はい。三個入りなんで」


「すぐなくなるよね。分かります」


それ以上、会話は続かなかった。


会計を終え、店を出る。


「じゃあ」


石井さんが言った。


「はい」


それぞれ、違う方向へ歩き出す。

振り返らない。


家へ向かう途中、

成城くんは、

次は、もっちりイングリッシュマフィンを

買ってみようと考えていた。

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