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モノクロ  作者: 砂漠の鷹


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プロローグ

カマキリのメスは交尾の後オスを食べるという話を聞いた事がある。どうやら卵を産むための栄養つける意味で食うらしいが、本能でお互いが『食う』『食われる』という行為に至るわけではないらしい。

ただ雌は卵の為に食い、雄は抵抗なく食われる。それが単体での例外なく一つの種としての行動が一貫してるのに、本能ではないとどっか学者が言っていた。

なら雌は本能ではなく『食べたい』という意思を持って行動している事になる。

その行動は栄養をつけたいという欲求からなのか。

それとも衝動的な行動なのか。

本当のところはカマキリに聞いてみないとわからない。

ただ、どちらにしてもお互いが『その』役割を遂行してるに他ならない。



この先にある細い路地で女が男の血肉をすすっていた。その女は男を殺し、喰らい、そして間も無く女も死んだ。これは本能ではないが、限りなく本能に近い事を今の俺は知っている。



動物のなかで子供が親に愛情を持ち、労わるのは人間だけという話を聞いた事がある。親が子を思うのは動物でもよくあるが子は親を思わない。

だがそれも合理的でわかりやすい。そう思うと人間はなんて複雑で、面倒な生き物なんだと思う。



だからこそこんな状況でも平気で他の事を考え、行動するのだろう。

俺はまだ人間であり、脳の領域にも多少の余裕はある。

例え今見えてるいるこの世界が灰色でも、他の事を考えば少しは楽にもなる。

そしてそう考えれば、幸いにもまだ自分が人間だと思える。



ついこの前までは当たり前だった風景は変わり、血肉を求めた『人間らしい』生物が徘徊するこの灰色の世界。

よく通った道、よく通った公園、よく通った喫茶店。

そのすべてが色を失くし、まるで壊れかけのビデオフィルムが映し出す、ノイズが走る映像のように見えた。

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