スリハモ4 奇跡は作るもの
【奇跡を信じて】
おじさんの病気の告白から数日。
ユリとミカは何もできない自分に歯がゆさを感じていた。
「何か、助けられる方法はないのかな……」
ユリはスマホを握りしめ、ネットで病気の情報を調べ続けていた。
一方、ミカは図書館で医学書を探し回り、専門家のブログや論文に目を通していた。
「医者にもう一度、詳しく話を聞きに行こう」
ミカが提案した。
ユリも賛成し、二人はおじさんの同意を得て、病院へ向かうことにした。
病院の待合室。
おじさんは少し疲れた表情だが、2人の真剣さに心強さを感じていた。
主治医は優しく話し始めた。
「今の医療技術で、完治は難しいですが、進行を遅らせる治療法や、症状を和らげる方法は色々あります」
「何でもします。治療のために必要なこと、教えてください」
ミカが強い決意を込めて言った。
次の日から、3人は動き出した。
セカンドオピニオンの病院を探し
新しい治療法の情報を集め
体に良い食事や運動のプランを調べ
おじさんのためにできることを全力で模索した。
ある夜、ベンチに集まった3人。
「奇跡は起きるのかな……」
ユリが星空を見上げる。
「信じるしかないよね」
おじさんが微笑む。
「ありがとう。お前たちがいてくれて、本当に良かった」
ミカも頷いた。
「私たち、あんたの味方だから」
まだまだ戦いは続く。
でも3人は一緒に歩んでいくことを選んだ。
冬が過ぎ、春の風がやわらかく吹き始めた。
ユリは受験勉強に忙しい毎日を送っていた。
彼女の夢は医大に進み、将来は病気の人たちを助けること。
一方のミカは、地元の大学で研究者を目指し、日々実験や論文作成に励んでいた。
二人はおじさんのことを胸に刻みながら、それぞれの道を進んでいる。
ある日、3人は久しぶりにあのベンチで再会した。
「受験、どうだった?」
ミカが笑顔で尋ねる。
ユリは少し照れながらも、はっきりと答えた。
「合格したよ。医大、行けるって」
「すごい!さすがユリ」
おじさんは目を細めて誇らしげだ。
ミカも負けてはいなかった。
「私も、大学院の研究プログラムに推薦されたの。これで夢に一歩近づいたかな」
「おじさんに会わせたいな、研究成果」
「そうだね、きっと喜ぶよ」
3人は未来への希望を胸に、しばらく話し込んだ。
「おじさん、体はどう?」
「まだまだ負けてないよ。お前たちがいる限りな」
「うん。私たちも、あなたに恥じないように頑張る」
「だから、これからもずっと一緒に歩こう」
夕暮れがやさしく3人を包み込む。
新しい季節の始まりとともに、彼らの物語はまた、新たなページを刻み始めた。
【奇跡の光】
ユリが医大で学び始めて数ヶ月。
ミカも研究者として忙しい日々を送っていた。
そんなある日、おじさんの体調に変化が現れた。
以前よりも明らかに元気になり、歩く速度も速くなっている。
病院での検査結果が届いた。
「驚きました。症状が著しく改善しています。このまま経過を見ましょう」
主治医の言葉に、3人は思わず顔を見合わせた。
「まさか……奇跡かもしれませんね」
ミカは目を輝かせ、研究していた新しい治療法が功を奏した可能性を話した。
「ユリが医大で学んだ知識も、治療に大きく役立ったと思います」
3人はまた、公園のベンチに集まった。
「もう少し、たくさん一緒に笑えるね」
おじさんは、温かい笑顔で言った。
「これからも、ずっとよろしくな」
夕暮れの空に、希望の光が差し込んでいた。
【新しい風】
春の陽気が心地よいある日。
研究室での作業を終えたミカは、先輩の佐藤に声をかけられた。
「ミカさん、ちょっと話があるんだけど、いいかな?」
佐藤先輩は落ち着いた雰囲気で、でも少し緊張している様子だった。
「もちろん、何ですか?」
二人はキャンパスのカフェに座り、静かな時間を過ごす。
「実は、ミカさんのこと、ずっと気になっていました。真剣に交際したいと思っています」
ミカは驚きながらも、真剣な眼差しを受けて胸が高鳴った。
「……ありがとうございます。正直、驚いています。でも、嬉しいです」
一方、その話を聞いたユリは、複雑な気持ちを抱えていた。
「ミカ、いいんだよね?」
「うん。でも……おじさんのこともあるし、正直どうしたらいいか分からない」
夜の公園で3人が話し合う時間。
「みんなの気持ちが複雑なのはわかる。でも、一番大事なのは、自分の心の声を聞くことだよ」
おじさんが優しく言った。
「そうだね……私、自分の気持ちに正直になってみる」
ミカは小さくうなずいた。
ある夕暮れ、研究室の帰り道。
ミカは一人、公園のベンチに座っていた。
心の中で何度も繰り返していた。
「おじさん……やっぱり好き。
でも、私ももう大人になったんだ。」
スマホの画面を見つめながら、深呼吸を一つ。
「佐藤先輩には悪いけど、私の本当の気持ちは変わらない。」
次の日。
ミカは決心して佐藤先輩に話をした。
「先輩、ごめんなさい。あなたのことは尊敬してるし、感謝してます。
でも、私の気持ちは、おじさんにあります。」
佐藤先輩は驚いたが、真剣なミカの瞳を見て、静かにうなずいた。
「そうか……君が幸せなら、それでいい。」
その夜。
ミカはおじさんに連絡をした。
「会って話したいことがあります。」
公園のベンチに座る二人。
ミカは言った。
「やっぱり、あなたが好き。自分も大人になったつもりです。」
おじさんは少し戸惑いながらも、優しく微笑んだ。
「ありがとう、ミカ。君のその気持ちを大事にしたい。」
三人の関係はまた新たな段階へと進んでいく。
続く