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久し振りの太陽の光が目に染みる。


「わお、短い間に、こんなに変わってるなんて」

「私も毎日驚いていましたよ」


ロクスソルスは名実共に、黄金の都市へと変わっていた。



〜 ヴォイドの呼び声Ⅱ 神々の鼓動 〜



ロクスソルス城前の無駄に広い大理石の道を歩き、無駄に広い階段を降りていく。


以前とは街の様子が大きく変わり、様々な種族も溢れかえっている。


中央広場のなんちゃら連合がいた塔は見当たらず、ウルカヌスの像も既に撤去され、代わりにメトゥスに似た黄金の像が建てられていた。


「ヴォイドの像かな?」

「そうですよ」

「仕事が早いわね」

「ニオス卿が急かしていたとか」

「あぁん、文化の破壊ね。それで〜。でも思ったより反発は無かったのね」

「それは、私達が尽力していたからですよ」

「はぁ〜、分かっていたけど、嫌な立ち回りよね。片棒担がされて、後始末を押し付けられてる」

「気持ちは分かります。でも皆に感謝されるのはニオス卿ではなく、マーラ様です」

「ンフ」


複合徴兵所へ向かう傍ら、聖堂が目に入る。


「立派になったわね」

「聖堂ですか?」

「そっ」

「最初はどうだったんですか?」

「知らないの?」

「はい。私がこの国へ着いた時には、既に現状と同じでしたから」

「元々は古い聖堂で、孤児院だったの。まあ、デーモンを追い出す時に色々あってね。それで最終的には問題が解決して、住人達から多く寄付が集まったの。それで他より予算が有り余ってた訳」

「なるほど、いち早く再建できた訳ですね」

「今も孤児院をやってるの?」

「そのようですよ」

「安心した。ジャスミンは気に入ってたから」

「御友人、でしたよね」少し気まずそうなゼナ。

「今もそうよ」

「…………」

「確かに会えないって意味なら、そうだけど。元気でやってるわ。もしかしたらまた会えるかもしれないし」

「会えると、いいですね」

「ええ」

「どっちにしろ、後で聖堂には寄らなきゃいけない」


暫く街を眺めながら歩く。

街はパレードの影響か、活気が凄い。


「まるで宴ね」

「暗い時代ですから、皆、はしゃぎたいのでしょう」

「後で寄ってみる?」

「ええ! 勿論!」ゼナが普段あまり見せないような表情で高揚としている。


「ここら辺よね?」

「そうですよ」

「どの建物かなの?」

「ンフフ、あれですよ」ゼナの指差す方を見ると、予想以上に立派な建物が。

「冗談よね?」

「本当ですよ」

「うっそ! 外はあんな事になってたの!? 派手すぎない!?」

「マーラ様、お願いですから、兵士達の前では言わないで下さいよ。トップが知らなかったなんて知ったら兵達の士気が」

「大丈夫よ」建物正面の両サイドに埋め込まれるように獣人の銀像が建てらていた「あれは?」

「マーラ様を模した像ですよ」

「やめて、恥ずかしい」

「その内肖像画も自室に飾らないといけないと思いますよ」

「よくみんな恥ずかしげもなくやるわね。悪趣味だわ」

「こればかりは慣習なので仕方ないですよ」

自我像を眺める。

「……う〜ん、プッ。ンフフ、やっぱり可笑しいわ。ねえゼナ」

ゼナが一切表情を変えず、無表情で待っていた。

正面入口の2人の見張りの兵士が私に敬礼してくる。

彼らも話が少しは聞こえていた筈なのに一切表情を変えていない。

部隊の統一装備である茶色い鎧に黒いペイントが入った装備を全身に身に着けていた。

深く考えずに言った事なのに…こうして見ると、自身の言葉の重みが増しているのが少し怖くなってしまった。

冗談も真に受けられそう。

貴族が会議や宴で下品になるのも、今なら理解出来る。

「ンンッ」見張りの兵士達に何度か小さく頷き、ゼナと一緒に建物へ入る。


「私は誰かの上に立つなんて、まだ早い気がする」

「大丈夫です。すぐに慣れますよ」


「ですから〜」

見慣れない装備の兵士が3人、何やらゲート前で話している。

全身青い装備に金の刻印。間違いない。財務官。

「マーラ様、あれは恐らく」

「ええ、分かってる。財務省よ」

「何の用でしょうか?」

「良い兆候じゃないのは、確かね」


茶色いローブにオレンジの帽子を被ったゲート管理官の老フェイファーが急いで駆けてくる。

「ああ! マーラ様! 丁度良い所に! 問題が!」


財務官の指揮官らしきアンデッドが鞘に片手を置き、こっちへ振り向く。


ロレンツォの部下じゃないわね。

「分かってる。落ち着いて」


指揮官らしきアンデッドが前へ出てくると、他のアンデッドもゆっくりこちらを向く。


「これはマーラ卿、おはよう御座います」片手を胸に当て、軽く頭を下げる指揮官のアンデッド「調子は如何ですかな?」

「いいわよ。あなた達が来る前までは」

「御気持ちは分かります。お互いにとって、気持ちの良い仕事ではありませんから。ですが仕事は仕事です」

「それで、何の用?」

「私はフォルディ。知っての通り、ゲルズ様の命で、予算の整合調査に御伺い致しました。詳細については、2人で」

「分かったわ」

ゼナに待機するよう指示を出し、フォルディと一緒にオフィスへ向かう。


「立派なオフィスですね」

「ええ、あまり使わないし、私の趣味ではないけど…」デスクに向かい、軽く資料を退けてから両手をデスクにつく「何してるの?」

「盗聴調査を…………ええ! 問題ないようです」

「そんなに聞かれちゃまずい事?」

「はい、権限レベル2。上級諸侯以上に限られる事案です。余っている予算硬貨をお願いします」ボタンを押し、奥の壁を上部へスライドさせる「随分と貯めていらっしゃいますね」

「もっと強い兵士が必要だから。まあ、色々と考えているのよ」

「それはそれは、大変素晴らしい事です。陛下もさぞ、お喜びになる事でしょう」

フォルディが見慣れない魔道具で硬貨を照らしていく。

「少々時間が掛かるでしょう」

「ねえフォルディ、オフレコで。本当の目的はなに?」

「御気持ちは分かります。ですが、裏など何もなく、純粋な調査です」

「その言葉を信用しろって?」

「ゲルズ様は陛下同様、他の諸侯とは異なり、生者に大して嫌悪を抱いておりません。勿論、私もですが」

「それが本当だとしても、すぐに気が変わるかも。貴族って服を着替えるようにすぐに付く側を変えものよね」

「否定は出来ませんね。しかし皆、自身の財を守ろうとするのは正常な事です」

「ゲルズには私達に味方するメリットがある訳?」

「はい。隠すつもりは毛頭ありません。ですから一度、直接御話を」

「招待が何度か来たけど、考えとく」

「有難うございます」


デスクに座り、椅子に足を置く。

「それで、何の調査をしているの?」

「偽造硬貨です」

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