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滅亡国家のラグナテア ~リアルがゲームに入れ替ったけどデータ引き継ぎで現代無双~  作者: 萩鵜アキ


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第54話 胸に空いた穴は

「クヮーッハッハッハ!!」


 シャドウは大暴れし、さらに下等種を踏み潰したことで、すこぶる気分が良かった。

 もっと戦っていたいが、相手が壊れてはもったいない。


 ――食べるところが少なくなってしまう。


 想像すると、ぐぅ、とお腹がなった。

 先に食べた人間がマズすぎたせいだ。

 もっと栄養豊富な人間を食べなければ、この渇きは収まるまい。


「さて、そろそろ宴もお開きにするのである。人間を糧にして、外に出て行くのである。……む? そういえば、この次元層はいつ頃消えるのであるか?」


 見たところ、次元層は徐々に減衰している。

 この様子なら一週間後には消えるだろう。


「……よもや我が輩、一週間も断食!? ショック! 我が輩ウルトラショック!! どうにかして次元層を開く方法はないものか……。一週間も血がないと、我が輩枯れて死んじゃうかも――」

「じゃあ、今すぐ死ね」


 ズドン。

 背後から轟音が響き、背中に強い衝撃を受けた。


「……にん、げん?」


 声の主は、間違いなくあの人間だった。

 だが人間は自分が拳で吹き飛ばしたあと、今も次元層で崩れ落ちたままだ。


 視線を落とすと、自分の胸元にぽっかりと穴が空いている。

 振り返る。

 そこには、次元層で崩れ落ちているはずの人間がいた。


 その人間は先ほどとは違い、巨大な魔銃を抱いて、こちらに銃口を向けていた。


「何故、人間がそこに?」

「それはな――」

「よもや双子だったか!」

「違ぇよッ!!」

「ははは。これはこれは、不意を突かれたのである! ぬふっ!」


 血液を操り、空いた穴を修復する。

 人間ならば即死だろう傷だが、ヴァンパイアは心臓を消された程度では死なない。


 シャドウの胸元の穴は、十秒足らずで消え、さらに失われた燕尾服の一部も元に戻った。


「やるな、人間。この我が輩を騙すとは、やられたのである。しかぁーし!! ネタがバレた以上、我が輩にはもう同じ手は通用しないのである!」


 先ほどは慌てたが、冷静になって考えて見ると人間が使った手がおぼろげながら見えてきた。


「人間が使ったのは自動人形オートマタ……いいや、分身創造デュアルであったか! 先ほど、妙だとは思っていたのだ。戦いの最中に、何故か魔力弾しか使わなかったからな」


 人造人形は使用者と同等の動きが可能だが、高度なスキルは使えない。


「隠密は厄介であるが、注意すれば気がつけるのである。残念だったな人間。一撃で我が輩を倒していれば、勝利していたものを。もう、人間に勝機はないのである! しかし我が輩から提案させていただこう! 我が輩の部下になれ! そうすれば、命を助けてやってもいいのである!」


 人間を倒せば一週間、飲まず食わずでいなければならない。

 死にはしないが、さすがに辛い。


 もし人間を生かしておけば、新鮮な血液製造袋として利用出来る。

 一週間、少しずつついばめば、苦しい思いをしなくても良くなる!


(我ッが輩、頭イーイ!! 天才なのであるッ!!)


「我が輩の手を取れば、先ほど胸に穴を空けたことも水に流してやろう。さあ、答えを聞かせるのだ。我が輩の手を取るか、このまま八つ裂きに――」

「おい、いつまで喋ってんだ?」

「――なるか、ぬ?」

「さっさと来いって言ってんだ」

「ぐぬぬぬぬ! 生意気な下等種め! よろしい、ならば遊びは終わりであるッ! 今すぐ蹴散らして――んむ?」


 胸元が、スースーする。

 見下ろすと、先ほど修復したはずの穴が再び開いていた。


 攻撃を受けた、というわけではない。


「うむぅ、人間界に来た故かミスってしまったようである。ふぬん!」


 修復を試みるが、傷が消えたと思いきや再び穴が開く。


「おやおやぁ? これはどういうことであるか。このままでは我が輩、胸に穴が空いた状態で生きねばならないではないかッ!」


 自らの力で傷口が修復出来ないなど、ヴァンパイアにとってはあり得ない事象だ。

 しかし、シャドウにはこの現象に心当たりがあった。


「たしか、怠惰の魔王から攻撃を受けた時も、同じような状態になったのである……」


 あれは魔王の権能故だった。

 あの時は五年近く傷が回復せず、おまけに大幅に弱体化してしまった。


 五年もの間ずっと影に隠れて過ごした、苦い思い出である。


 しかし此度の相手は人間であり、魔王ではない。

 未知の魔法の効果に違いない。


「……良かろう。我が輩に一杯食わせたことは認めるのである。人間にも出来る奴はいるのであるな。故に惜しい。いまここで、殺さねばならないのであるから、なっ!!」


 全身の血を活性化し、全力で距離を詰める。

 だが、


「――踊れ」


 銃口が明滅。

 瞬間。

 太い光の筋が飛来。


「なんのッ!」


 体を捻って回避。

 その光の筋が、突如無数に拡散した。


「んほおぉぉぉッ!?」


 回避、回避、回避、回避!!

 あらゆる角度に体を捻る。


 しかし、胸に穴が空いている――背骨が繋がっていないため、うまく避けられない。

 回避をミスって、かすかに被弾。

 それを呼び水に、次々と光の魔弾が体を貫いた。


「ぎゃぁぁぁぁぁぁ!!」


 シャドウはバランスを失い、きりもみ状態で落下した。


 体中が穴だらけだ。

 すぐに回復を試みるが、上手くいかない。

 やはりこれも、回復を阻害する魔法のようだ。


「ぐ、ぬぬぬッ!! 我が輩、人生最大の不覚である!!」


 他にも不覚はたくさんあったが、人間にコテンパンにやられたのは初めてだ。

 このままでは、殺される。


(せっかく人間界に来たというのに、何も出来ずに消されるのはごめんである!)


 ここは恥を忍んで、一旦身を隠す。

 逃亡を用い、闇に潜伏して体の回復に専念する。


 今は次元層に捕らわれているが、たとえ同じ空間にいたとしても、逃亡中のシャドウを捕らえることはどの魔王にも不可能だ。


「わ、我が輩、今日はちょっとポンポンがペインなので、この辺で失敬させていただくのである!」


 ジュワッ!

 とスキルを発動。

 闇の中に体が溶けていく――はずだった。


「俺が逃がすと思ってんのか?」

「な、んであるか、これはッ!?」


 空中に浮かんだ赤い宝玉が、闇に溶けようとしていた体を大地に束縛していた。

 闇に変化した体が、再び元の肉体に戻っていく。


「ば……馬鹿な……」


 決して失敗するはずのない逃亡スキルが――失敗した。

 これまで千年以上生きてきて、初めてのことだった。


 あらゆる戦場、あらゆる状況で使用して、失敗した試しのないスキル。

 それが、破られた。

 あまりの衝撃に、シャドウは目眩さえ覚えた。

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