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滅亡国家のラグナテア ~リアルがゲームに入れ替ったけどデータ引き継ぎで現代無双~  作者: 萩鵜アキ


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第52話 クラン試験その3

 レギオンを構え、発砲。

 躱された。

 反動を利用し、夢幻機動。

 俺の顔面スレスレを、怖気が走る音と共に悪魔の手刀が通過した。


 一瞬遅れたら顔に穴空いてたな……。


 石棺から現われたのは――想像してた中で一番ヤバイ奴だった。


 赤い眼に尖った耳。

 顔立ちは非常に整っていてAIが生み出したみたいだ。

 燕尾服を着ているその悪魔は――純血吸血鬼トゥルー・ヴァンパイアだ。


 深度Ⅵで純血吸血鬼、それで名持ちは、一体しかいないんだが……。

 あいつかぁ……。


「クワァーッハッハッハ! 我が輩降臨! 人間、早速だが我が輩の糧に――」


 ピチュンピチュン。

 魔力弾を放つ。


「い、痛い痛い。我が輩が喋ってる時に攻撃をするでないッ!」

「戦闘中に喋んなよ」

「ま、まだ戦闘中ではないではないかッ!」

「お前から攻撃しかけといて戦闘中じゃないわけねぇだろ」

「正論ッ! まさに正論ッ!!」


 鬱っっっ陶しい……。

 ピチュンピチュン。


「い、痛い痛い! に、人間、我が輩せめて名乗りたいのだが?」

「はぁ……。はい、名乗ってどうぞ」

「くはーはっはっは! よくぞ我が輩の名を聞いたな人間! よかろう。喜べ、人間。貴様には人類で初めて我が輩の名を耳にする栄誉を授けてやろう!!」


 う、うぜぇ……。

 あまりにウザすぎて引き金に乗った指がぷるぷるする。


「聞け、見よ、傅けッ! 我が輩の名はシャドウ。魔界いちの魔王に使える直参であり、真なる血を持つヴァンパイ――タタタ!! 痛い痛い! 撃つの早い!」


 うん。我慢出来なかった。

 だが反省はしない!


 こいつ、ゲームでもこうだったんだよなあ。

 遭遇するとムービーが始まるわ、口上が長いわ、スキップ出来ないわで、めちゃくちゃイライラさせられた記憶がある。


 おまけに、なんだかんだで強いんだよなあ、こいつ。

 実際、魔力弾を痛がってるが全然ダメージ与えられてねぇし。

 避けようとしないのがその証拠だ。


 たぶん俺の魔力弾は奴にとって、子犬の甘噛みくらいなもんなんだろう。

 俺も俺で、深度Ⅵの悪魔を魔力弾程度で倒せるなんて思ってないけどさ。



「シャドウ。なにをしているんですか。さっさとこの下等種を殺してしまいなさい!」

「……だとよ? 早速始めるか」

「で、あるな。始めるとしよう。が、その前に――」


 シャドウが素早く移動。

 堤の背後に回り、片手で頭をわしづかみにした。


「い――ッ!? 悪魔払いの十字架を持っているというのに、何故私に攻撃が出来るんですか!?」

「む、これのことか?」


 シャドウが堤の首元に手を入れ、悪魔払いの十字架を引きちぎった。


「ほうほう? このようなもので我が輩を退けられると思ったのか、人間? カッー! 舐められたものよのぅ! 悲しい、我が輩とても悲しい!」


 顔は泣いた振りをしてるけど、まったく悲しそうに見えないんだが?


 悪魔払いの十字架は、使用者の位階によって効果が変化する。

 深度の高い悪魔を避けようとすれば、使用者は同じくらいの位階が求められる。


 ――って、堤は知らなかったのか?

 知らなかったんだろうなあ。


 この世界じゃあまり出回ってないっぽいし、特定の人間だけで使い回して、きちんと検証してなかったんだろうな。


「さて人間。我が輩に何故、命令出来ると勘違いした?」

「――ッ!」

「人間は我が輩たちの食糧でしかないのだ。さて、我が輩はいま、次元を超えたばかりで幾分乾いておる」

「ま、まさか……やめ――」

「己が立場を教えてやろう」


 シャドウが堤の首筋に牙を突き立てた。


「――グアァァァァァ!!」


 堤の体がピンと伸び、小さく痙攣を繰り返す。

 体がみるみる縮み、干からびていく。


 シャドウが牙を離した時、地面にうち捨てられた堤は干からびた古木のようになっていた。


「はぁ。とんでもなく不味い血であったわ。一体どのようなものを食べれば、こんなに血が不味くなるのだ?」

「……」


 血を吸収して、さらに圧が増す。

 さっきまでのシャドウが十なら、今は二十から三十はありそうだ。


「さて、人間よ。食後の腹ごなしに付き合ってくれ」

「……いいぜ、来いよ」


 ゴクリ。

 唾を呑み、シャドウを迎え撃つ。




 人間界に呼び出されたシャドウは、感情が非常に高ぶっていた。


 魔界では、10いる魔王に邪魔をされて頂点に上り詰めることが出来なかった。


(我が輩を散々こき使って、損な役回りばかり振られてきたが、それはもう今日で終わりであるッ!!)


 未だ魔王はおらず、名だたる悪魔も存在しない。

 この人間界ならば――シャドウこそが世界の王になれる!


 誰にも使われず、損な役回りもせず、偉そうにしているだけで飯が食える!!


「くわーっはっはっは!!」


 まず手始めに、勘違いした人間を食らった。

 こいつはどうでもいい、取るに足らない力しか持たない底辺である。


 魔界から人間界に来たことで失われた力を、これで幾分は取り戻せたが……まだ足りない。

 その足りない分は、目の前の人間から頂くことにする。


(ほほぅ? なかなかやるではないか)


 シャドウの小手調べを丁寧に捌いていく。

 小手調べ、とはいっても格が二枚も劣れば対応出来ず、あっさり命を失うほどの苛烈な攻撃だ。


(この人間、なかなか出来るのである)


 あくまで人間にしては、だ。

 本気を出せば、一瞬で勝敗が決するだろう。


 しかし、すぐに勝負を付けるつもりはない。

 それはシャドウの美学。こだわりだ。


 相手が強ければ強いほど、時間をかけて戦う。

 それは相手の武に対する敬意から――ではなく、強き者を舐るのが好きなだけだ。


 弱い者は逆に一瞬で終わらせる。

 先ほどの人間のように、舐るほどの価値もないからだ。


 そして、さらに強い相手が現われた場合は、簡単だ。

 ――全力で逃げる。


(我が輩の逃げ足には魔王も叶わぬことよッ! フヮーッハッハッハ!)


○スキル 逃亡〈極〉

 己の肉体のあらゆる機能を最大限まで駆使して逃亡する。


 シャドウ――凶悪な相手に喧嘩を売ってしまい、長年逃亡生活を続けた結果、その名が付いたのだが……いまは人間界だ。悲しい過去は忘れよう。


 さておき、戦闘だ。

 この人間について、シャドウは先ほどから気になっていたことがあった。


(この人間、何故魔力弾しか放たぬのだ?)


 この人間ならば、最低でも上級魔法くらいは放てるはずだ。

 にも拘わらず、未だに中級のみならず、初級魔法すら放っていない。


(気にはなるが……人間のことだ。我が輩が考えても詮ないことか)


 人間について、ほとんど何も知らない。

 故に、考えても意味が無い。


 頭を切り替え、戦闘に集中することにした。


「そろそろギアを上げるぞ人間。我が輩の華麗な攻撃についてこられるかな!?」

「さっさと来いよ……」

「よろしい。真なるヴァンパイアの真の力、魅せてやるのであるッ!!」


 体中の血液を普段以上の速度で動かし、体中の細胞を活性化させる。


 すると、どうなるか?

 身体能力が大幅に増強する。


「――このよぉぉぉぉうにッ!」


 シャドウが放った拳が、人間に直撃。


 ――ドッ!!


 本来は心臓を抉るつもりだったが、寸前のところでガードされた。

 だが、衝撃までは受け止められない。


 地面を抉るほどの圧を受け、人間が後方に吹き飛んだ。

 建物の壁を破壊し、真っ赤な次元層に激突して止まった。


「にょほーっほっほ!! 両腕粉砕コース! いやあ、腕だけじゃなくて体もイっちゃったであるかな? あれだけの衝撃である。人間の体では耐えられないはずである!」


 人間はがくりとうなだれたまま、動く様子がない。

 ――もはや、勝負は決した。

Tips

『悪魔払いの十字架』

 使用者の位階によって効果が変化する。

 深度の高い悪魔を避けようとすれば、使用者は同じくらいの位階が求められる。


 販売価格:100,000ゴールド


○ハヤテメモ:経験稼ぎにならない雑魚戦回避で体力を温存したい時に重宝するアイテム。――だが、ぶっちゃけ使わん。

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 トゥルーヴァンプなのに、小並感が溢れかえっている……
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