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滅亡国家のラグナテア ~リアルがゲームに入れ替ったけどデータ引き継ぎで現代無双~  作者: 萩鵜アキ


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第45話 工作開始

 大庭剣斗が目を覚ましたとき、既にここに呼び出していた下級生たちの姿はなかった。


「く……!」


 殴られた頬を押さえながら立ち上がる。

 気絶するほどの攻撃を受けたせいか、頭がまだクラクラする。


「うう……」

「く、そっ!」

「ここは……」


 丁度同じタイミングで、仲間達も目を覚ました。

 いずれも三年生の中では実技で優秀な成績を修めている者ばかり。

 にも拘わらず、一瞬で気絶させられてしまった。


 その瞬間を思い出し、大庭の背筋がぶるりと震えた。


(あの男、一切躊躇しなかった……)


 仲間たちに銃口を向けた男――白河颯は脅し文句を口にすることなく引き金を引いた。

 ――あまりに手慣れている。


 普通の生徒は、相手に怪我をさせたくない、という躊躇が生まれる。

 あるいは殺してしまったらどうしよう、という怯えが生まれる。


 にも拘わらず、彼は命を奪える武器を人に向け、敵意も殺気も怖じ気もみせず、引き金を引いた。

 その冷淡な態度は、とても学生とは思えない。


 素直に『怖い』と思った。

 反面、己の怯えを一瞬にして凌駕するほどの憎悪がわき上がる。


(大庭家の跡取りである俺に、よくも乱暴を働いてくれたなッ!)


 学校創立当初より続く貴種派代表が、たかが下級生の平民に負けたとあってはメンツが丸つぶれだ。


「……あの下級生どもを、徹底的に叩き潰す」

「い、一体どうやって潰すんだ?」

「そうだぞ大庭。正直、また戦っても勝てる気がしないんだが」

「皆、どうやら混乱しているようだ。諸君、俺たちは貴種派だ。武器は腕力だけじゃない。だろう?」

「な、なるほど」

「たしかに、そうだったな」


 皆、圧倒的な実力差を見せつけられて混乱していたのだろう。

 大庭の言葉と共に、自分たちの本領がどこであるかに気がついた。


「なあに、手段を選ばなければいくらでもやりようはある。ひとまず、貴種派傘下の教師に接触しよう」


 自分たちの体についた証拠が消えないうちに、教師に暴行事案をたれ込む。

 これは貴種派が用いる常套手段の一つだ。

 傷はなくても教師を動かせるが、あればより問題を大きく出来る。


 そう思って教員室に向かったのだが――、


「大庭くん。申し訳ないが、今回は難しそうだ」

「先生、どうしてでしょう? このように、俺たちは白河ら3名から、間違いなく暴行を受けたんですよ!?」

「い、いてぇ」

「肋骨が折れてる……」

「先生ェ」


 大庭が殴られたアザを見せると同時に、取り巻きの同級生も攻撃を受けた箇所を抑えて懇願する。

 この程度の証拠でも、貴種派傘下の教師なら確実に動く。

 その目論見は、容易く潰える。


「これを見ろ」


 そう言って、教師がデバイスの画面を大庭に向けた。

 するとすぐに、動画が再生される。

 俯瞰映像は学校の校舎裏。

 ――自分たちが先ほどまでいた場所だと気づき、大庭ははっと息を呑む。


「これは……」


 自分たちが、暴行を加えようとした瞬間の映像だ。

 じわじわと血の気が引いていく。


「一体誰が?」

「一年生からだ。大庭たちが一年生を囲んで乱暴を働こうとしたところを、映像に抑えられている。こんな証拠があったら、さすがに庇いきれない」


 白河たちは先輩たちから暴行を受け、正当防衛を行ったにすぎない。

 これが映像に残っている以上、たった一人の教師が糾弾したところで、何の役にも立たない。


「承知しました。先生、今後なにかあれば、宜しくお願いします」

「あ、ああ」


 大庭の言葉に、教師が頬を引きつらせた。

 今回願い事を聞いてくれなかったから、次のお願いは無理の上乗せをする。

 そんなふうに受け取ったのかもしれない。


 だが、彼はこちらの提案を断ることは絶対に出来ない。


(チッ。役に立たないクズ教師め。今すぐ秘密をばらしてやろうか?)


 大庭は彼が、女子更衣室にカメラを仕掛けていた証拠を掴んでいる。

 あれは外道のクズだ。


 いますぐ暴露したい衝動に駆られるが、手札は多ければ多い方がいい。

 自分から切り捨てるのは、こちらに害が及びそうになってからでも遅くはない。


「こ、今回はほんとうに済まなかったな」

「いえ。それでは先生、失礼します」


 教員室を辞去し、次なる一手を模索する。


「一年坊主のくせに、映像を残すとはやるな」

「ドローンで撮影したたんだろうが、飛んでたか?」

「光学迷彩能力付きだったのかもな」

「そんな高級機、一年坊主が買えるかよ」

「じゃあなんだってんだよ?」

「まあまあ、諸君。一旦落ち着こう」


 少しヒートアップし始めた取り巻きに、大庭は笑顔を浮かべる。

 この程度のことで内部分裂などしては困る。


「あの一年が我々の想像を超えていたことは、事実として認めよう。だが、教師へのたれ込みは序の口。逆に、これで終わらず良かったと思おうじゃないか」


 大庭は作戦の幅が広いわけではないし、手札が誰よりも多いわけでもない。

 にも拘わらず、貴種派代表として君臨しているのは、用いる策略がいずれも致命的だからだ。

 特に、自分をコケにした相手は徹底的に叩き潰す。


「でも、実力じゃどうにも出来ないし、教師からのアプローチも出来ないとなると、どうやってアイツを追い詰めるんだ?」

「いくらでもやりようはある」

「……えっと?」

「ぐ、具体的には……?」


 大庭はうっかり、呆れてため息を吐くところだった。

 クズめ。貴種派ならば自分の頭で考えろ。

 その程度が出来ずして貴種派を名乗るべきではない。


 だがその感情をおくびにも出さず、


「たとえばOBやOGを使うのも一つの手だ」

「し、しかし、それでは俺たちの醜態が……」

「なにもすべてを素直に語る必要はない。違うか?」


 大事なのは、自分たちにとって『何が見せたいか』だ。

 不要な部分は教える必要はない。


 人心は、そうやってコントロールするものだ。


(しかし――そうだな。一例で出したが、OBを使うのは良い手かもしれん)


 貴種派のOBやOGには、中堅どころのクランに所属しているハンターもいる。

 学生などではない、本物の実力者が出てくるとなれば、いかに白河とてただでは済むまい。


「奴らがいかに下等な生物であるか、きちんと教えてやろうじゃないか」


 大庭は腫れた頬を撫でながら、クツクツと嗤う。


「みんな、奴がどんな命乞いをするか、楽しみだね」

「お、おう」

「そう、だね」

「……うん」


 周りが引いていることも気づかず、大庭は次の策略に向けて準備を始めるのだった。

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