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推しと恋をする世界線 〜大好きな歌声に導かれてタイムリープした私が、疎遠になっていた親友からの溺愛に気づくまで  作者: 矢口愛留


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50/50

50 全ての世界線で、あなたと共に(2)



 私は、夢で見たことを全て、包み隠さず優樹に話した。

 masQuerAdesマスカレードの専用スタジオ前にある休憩室で、隣同士の椅子を向かい合わせて座っている。

 優樹は難しい顔をして、口元に手を当て考え込んでいた。


「……不思議なこともあるもんだな」

「うん」

「つまり、愛梨はタイムリープしたわけじゃなくて、別の世界線の愛梨と記憶を共有してたってこと?」

「多分、そういうこと……なのかな?」


 けれど、きっと優樹の言った通りなのだろう。私自身も、いまいち理解できていないけれど。

 優樹は、口元から手を離すと、私の瞳をまっすぐ覗き込んで、尋ねる。


「愛梨、知ってるか? この宇宙には、いくつもの並行世界があるんだっていう理論」

「並行世界?」

「うん。パラレルワールドってやつ。俺も詳しいことは知らないけど、時間の流れが違ったりするらしいぞ? もしかしたら愛梨は、別の世界線の愛梨と、何かのきっかけで記憶を共有することになったのかもな」


 私はこれまで、自分がタイムリープしたと思っていたのだけれど――もしかしたら、優樹の言うことの方が正しいのかもしれない。

 きっと、世界を越えて、別の世界、別の時間の私の記憶が流れてきたのだ。


「つまり、別世界の愛梨も、こっちの愛梨が経験したことを見てたってこと。だから、きっともう大丈夫だ。あっちの愛梨も、あっちの俺も。――だって」


 優樹は私の頬に手を添えて、やさしく見つめる。


「こっちの俺たちが、こんなに幸せなんだから」

「優樹……」


 優樹はそう囁いて、私の額にキスをする。その瞳には甘い熱が込められていて、私の胸に幸せが満ちていく。


「――そうだね。私たちが幸せになったのを見てたなら、向こうの私も、きっと一歩踏み出してると思うな」

「ああ。向こうの俺も、愛梨が手を差し出してくれたなら、きっとしっかり掴んで離さないと思う。未来は自分の手で掴むものだって、向こうの俺も知ってるだろうから」


 優樹は自信たっぷりに頷いて、今度は、私の唇を塞いだ。

 他のメンバーが急に来ても困るから、唇はすぐに離れていく。けれど、私の胸は、これだけですぐにぽかぽかと温まってしまうのだから、単純だ。


「――向こうの伯爵(アール)も、もしかしたら愛梨なのかもな」

「え? でも、私」

「きっと、こっちの世界に存在しない、その『玄野(くろの)さん』が鍵を握ってる。パラレルワールドのことも、伯爵(アール)のことも」


 向こうの世界の伯爵(アール)をmasQuerAdesマスカレードに加入させたのは、マネージャーの玄野さん。

 そして、メンバーの誰も、伯爵(アール)の素性を知らない。

 絆や繋がりを重要視するmasQuerAdesマスカレードのメンバーとして、向こうの伯爵(アール)の存在は、異質だ。


「その人は、向こうの伯爵(アール)が、王子のキスをきっかけにして二日後に目覚める……って予言したわけだろ? で、実際に二日後に目覚めたのは、あっちの愛梨。つまり、さ」

「……向こうの伯爵(アール)も、やっぱり私……? でも、どうやって?」

神様(クロノス)の導き、かもな」

「……玄野さんは、人智を超えた存在?」

「そう考えるしかないだろ。俺の頭じゃ、分かんねえや」


 優樹はそう言って、はは、と笑い、立ち上がった。


「さ。それより、皆が来る前に、もう一度、二人で合わせようか」

「――うん!」


 スタジオへ続く二重扉を開けて、愛しい人がやさしく微笑む。私はその後を追いかけて、扉を閉めた。



 ――さあ、仮面舞踏会(マスカレード)がはじまる

 百鬼夜行、花の輪舞(ロンド)

 踊ろう、星の夜を

 踊ろう、月が消えるまで

 今宵だけは、身分を忘れて


 君は誰? 僕は誰でもない

 僕は誰? 君は誰でもない

 そんなこと、関係ないのさ

 何故なら今宵は仮面舞踏会(マスカレード)

 僕はずっと待っていた

 君は最初(ハナ)から、僕の手の中


 さあ、仮面舞踏会(マスカレード)がはじまる

 百鬼夜行、魂の輪廻(ロンド)

 踊ろう、千の夜を

 踊ろう、命尽きるまで

 今宵からは、身分を忘れて――



 masQuerAdesマスカレードは、時空を超えて、私の命を、絆を、愛を繋いでくれた。

 私は最初からずっと、彼らの舞台で踊っていたんだ。


 公爵(デューク)と、優樹と、声が重なる。

 視線が重なる。心が重なる。想いが重なる。

 (みち)が、重なる。


 それはとても甘美で、何ものにも変えがたい、尊いもの。とても、とても幸せなこと。



 ――音楽には、言葉には、不思議な力がある。

 私の奏でる音が、紡ぐ言の葉が、描き出すものが、誰かの運命を変えるかもしれない。

 私の運命を、masQuerAdesマスカレードが、公爵(デューク)が、優樹が、変えてくれたように。


 あれは別世界の私だったのかもしれないけれど、私は確かにあの時、不幸のどん底にいた。

 そして、今はすごく幸せだ。

 不幸と幸福の落差が大きすぎて、この今が泡沫にしかすぎないのではないかと不安にもなった。


 ――けれど。

 ここにある音楽に。まなざしの甘さに。触れるぬくもりに、実感している。

 確かに私は、今ここに立っているのだと。今を生きているのだと。


 全ての私に、全ての優樹に、全ての世界に。

 そして、masQuerAdesマスカレードに関わる全ての人に。

 自分が幸せになって、皆に幸せを、共有すること。

 世界中が幸せで溢れるぐらい、たくさん、めいっぱい、届けること。

 それが私の、今の目標だ。


 隣で、大好きな最推しが――愛する人が歌ってくれる限り、ずっと。ずっと――。




  ――――推しと恋をする世界線 fin.



 最後までお読み下さり、ありがとうございました!

 皆様のあたたかい応援、ご感想、とても嬉しく励みになっていました。


 もしよろしければ、お一手間ではございますが、下部にある星の部分をタップして、応援していただけたらとても嬉しいです。


 改めまして、当作品をお読みくださった皆様、ありがとうございました!

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