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公共の場で私が冤罪をかけられて突然婚約破棄をされてしまいましたが、昔遊んでいた幼なじみが実は王子様で私を助けに来てくれました!!?

初日にして総合ポイント『50ポイント』を達成しました! 感謝しかありません!!


ブックマークも評価も、本当にどれだけいただいても嬉しい物です!! ありがとうございます!!


誤字脱字報告も感謝です! 見つけたら報告してもらえるとありがたいです!


今後ともよろしくお願いします。

 周りに暖かな空気が広がる草原の中、二人の子供が元気にはしゃぎ、そして足を止めて面と向き合い話し合っていた。


「ミューサちゃん! 大好き! 将来結婚しよ!!」


 少年からかけられる言葉に、少女は困ってしまっていた。


「私も、貴方の事が好きよ……でも、私は親に結婚相手を決められているの」

「そんな! 好きでもないのに結婚するの!?」

「仕方ないの。それが皆の為だから」

「でも君のためじゃないじゃないか!!」


 少年はこのやりとりを通して決意を固めたように引き締まった表情になった。


「なら、僕がそんなこと変えてみせる! 僕が君を迎えに行くよ!!」





 そんな子供時代の思い出。思い出は過ぎ去ると共に段々と薄くなっていき、成長した貴族令嬢『ミューサ』は、婚約者の主催する社交会の中で当然に一つの大きな事を言い放たれてしまった。


「ミューサ、本日この時をもって、君との婚約関係を破棄させて貰う!!」


 ミューサは驚きのあまり絶句して身体が固まってしまった。


 ミューサはこれまでの人生、両親の期待に応えるために一流の令嬢として、婚約相手たる青年、『フィルカム』の相手としてふさわしい存在になるために。

 フィルカムとの関係もついこの前まで良好だったはずだ。何故今こんな事になっているのか、ミューサは訳が分からなかった。どうにか口から吐き出した言葉は、率直に何故こんな事態になったのかについての質問だ。


「な、何故ですかフィルカム様! どうしてこんなことを!?」


 抽象的な質問に対し、フィルカムは機嫌の悪い顔で怒声をあげ始めた。


「どうしてだと!? ここまでのことをしておいて被害者のように振る舞うとは! 本当に最低な女だ!!」

「何を!? 何を言っているんですか!?」


 事態が理解しきれず混乱するミューサ。そんな彼女を差し置いて、フィルカムの元に一人の女性が現れ、彼にすがりつくように身体をくっつけていた。

 ミューサは彼女に見覚えがあった。いや、忘れるはずがなかった。何故なら彼女はミューサの妹、『ローム』だったからだ。


「ローム!? 何故貴女が!?」

「ウッ! ウウゥ……フィルカム様」

「大丈夫だよ、ローム」


 まるで愛しい人に接しているかのように話すフィルカム。二人の妙に親しげで距離の近い態度に、ミューサは察するところがあった。


「まさか、ローム貴女!!」

「怖い! そんな目で見ないでお姉様! 私は、貴女が過ちをただしてくれると思って、フィルカム様に正直に報告したまでです」


 可愛い子ぶりながら涙目で放すローム。もちろんミューサに彼女の言う悪事など全く憶えが無かったのだが、彼女が背中に隠し持っていた書類の束をフィルカムに手渡し、彼は固まったままのミューサに見えるように放り投げる。


 書類を拾って内容を見てみると、捏造された冤罪の証拠として用意された文書ばかりだ。これにフィルカムは畳み掛けるように怒鳴りつけた。


「これが証拠だ。極悪非道の犯罪人ミューサ! お前がこれまでやって来ていた犯罪行為の数々! この場にて処断させて貰う!!」


 そんな彼に身体を寄せてすがりつくロームは、またしてもあざとい態度でそれっぽい言葉を並べて口にした。


「フィルカム様。姉は決して悪い人ではないんです! ただ一時の気の迷いがあっただけ、どうか寛大な処置を!!」


 白々しい。大方ロームが黒幕、フィルカムはそれに準じただけなのだろう。しかしそれを反論するには証拠は何もない。





 ……かに思われた。広間の突然開いたその瞬間までは。





「その断罪、ちょっと待った」


 広間全体にかかっていた暗い空気を一発でかき消してしまったその一言、全員が一斉に注目すると、キリッとした目付きに爽やかな青い髪を纏めた容姿端麗、かつ美しい青年が広間に入って来ていた。


「だ、誰だ貴様は! 突然に!! ここはこの貴族、フィルカムが主催する場だ! 呼んでもいない奴は帰れ!!」


 来ていきなり一蹴される青年だが、全く動じることはなく、むしろ目付きを鋭くさせて自身の顔を向けただけで、怒声を浴びせてきたフィルカムを恐怖させた。


 なにか独特な気配を放つ青年にザワつく周囲の人達。青年はミューサの元にまで歩いて近付くと、彼女の前で膝をつき、震えていた彼女の左手を優しく右手に触れて上げつつ、さっきまでとは違う透き通るような優しい声で話しかけてきた。


「ようやくもう一度会うことが出来ました、ミューサ嬢」

「貴方、一体……」


 ミューサは彼が誰なのか分からなかったが、青年は自ら名乗った事で周囲を含め状況は一変した。


「お忘れですか? 僕です! 『シルゴ』です!!


 ミューサは衝撃を受けた。『シルゴ』。かつてミューサが幼いときに家族には内緒で仲良くなり、秘密で何度か遊んだことのあった幼なじみだった。

 数度それを繰り返してあるタイミング以降遊びの場にやってくることのなくなったはずのシルゴが、今イケメンとなって目の前にいる。

 ミューサは情報の処理に時間がかかってしまい、目を回してしまう。


 そんなミューサにシルゴは一度微笑みかけると、ここは任せて欲しいとばかりに前に出てフィルカムとロームに対し威勢良く出た。

 反対に二人、特にフィルカムはさっきまでの威勢は何処へ行ったのか顔を青ざめており、ロームは何故彼がこんな顔になっているのかが分からないようだった。


「ど、どうしたのですかフィルカム様!? あの男性が何だというのです!?」

「馬鹿者! あの御方が誰なのか分からないのか!?」

「え? 知っているのですかフィルカム様!?」


 近付いてくる相手に関する説明を始めるフィルカム。その顔は相手が近付いてくるほどに冷や汗の数が増えていく。


「か、彼は……いや、あの御方は! 隣国の第一王子だ!! 私達のような一貴族など、その気になれば、小指でチョンだ」

「ハイイィィ!!?」


 小声での話を終えたときには、既にその王子様がフィルカムの目と鼻の先にまで迫っていた。その表情は不気味なほどに優しい笑顔をとり、フィルカムは彼の得体の知れ無さから口の中に残っていた唾を一気に飲み込んでしまう。


 そんな彼の隣にまで移動したシルゴは彼の震える肩に手を軽く置き、小声で軽く台詞を吐いた。


「嘘はいけませんよ。これ以後は気をつけてください」


 シルゴの含みのある台詞を聞き、彼が肩から手を放して下がると、フィルカムあまりの恐怖から泡を吹いて倒れ気絶をしてしまい、ロームは何がどうなっているのかとフィルカムに寄り添って声を掛けようとするも、去り際にシルゴから捨て台詞を吐かれた。


「貴方も悪い遊びはやめておいた方がいい……今まで貴女が仲良くした方々から、怒りの声が上がっていましたよ」


 ロームは自分さえも既に追い詰められていた事に気付かされ、表情が固まってしまい、もうミューサに何も言えなくなってしまった。


 あれだけ威勢良く脅しをかけてきていた二人があっさりと撃退された事に面食らって何度かゆっくり瞬きをしてしまうミューサ。

 彼女の元に戻って来たシルゴは、困惑したままの彼女に再び手を触れた。


「お待たせしてしまったね。じゃあ、行こうか」

「ほえっ? 行くって何処に?」


 シルゴはミューサの手を取り彼女の身体を起き上がらせる。

 台詞の意味が分かっていないミューサが動揺したままにしていると、シルゴは一方的に彼女を引っ張って社交会の会場から抜け出した。


 屋敷を出た先にはいつの間にかセッティングされていた馬車に目を奪われた。


「こ、これは?」

「もちろん、僕の城に向かうためのものだよ。婚約が解消した今、君と僕が結ばれない理由はなくなった。これからはコソコソしなくていい。君を自由に連れ出してあげられる」

「ちょ! それってどういう……」


 混乱から令嬢らしからぬ声を出してしまうミューサだったが、そんな彼女の目の前に跪いたシルゴは、さっきまでの優しい顔から真剣な表情に変わると、ハッキリ聞こえるように突然台詞を言い始めた。





「ミューサ……僕と、結婚してください」





「ハイイイイイイイイイィィィィィィィィィィィ!!!!?」



 婚約者との縁談解消から畳み掛けるように起こった幼馴染みからのプロポーズ。ミューサの頭の中は処理能力の限界を迎え、頭から湯気を出して後ろに倒れてしまった。


 すかさずミューサの身体を受け止めるシルゴ。彼は優しく微笑みながら彼女の髪に触れて聞こえないはずの声をかけた。


「色々すっ飛ばし過ぎちゃったな。ま、ゆっくり、一歩ずつ進めていくさ」


 貴族令嬢、ミューサの苦労は、まだまだ終りそうになさそうです……

 普段はこちらの物語を書いております。


 ゲームのような中世ヨーロッパや魔法少女のいる現代日本、半漁人達が住まう海中都市に貴族社会の近代国家、忍者の里まであらゆるジャンルの世界観を旅する物語、


『FURAIBO《風来坊》』。是非共に一読お願いします!!



FURAIBO《風来坊》 リンク 『 https://ncode.syosetu.com/n3786ib/ 』



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― 新着の感想 ―
拝読させて頂きました。 さらっと読めて短いお話でしたが読後感も気持ちよかったです。 タイトルから予想はついてはいましたが、 やはりハッピーエンドで終わってくれて安心致しました。
よかったよかった( ˘ω˘ )
[良い点] サクサクテンポでとても読みやすかったですっ! 連載でキャラや背景を深堀りされたら、更に魅力が増すストーリーだなと思いました!
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