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ないものをあるふりはできない






「なんだか、騒がしくはない?」

 いつものように植物園で絵を描く夫の傍で、このところいつもそうするようにレースをあんでいたファナは、王女のフリーダにいわれ、頷いた。「そうですわね。なにかしら……」

 ふいっと、顔を、植物園の出入り口へ向ける。糸玉を掴んで、立ち上がった。どうも、騒がしい。外で誰かが走りまわっているようだ。声も、幾らか聴こえるが、言葉はわからない。

 フリーダは短く切った髪を、手で撫でつけた。彼女は修道院で清らかな生活を送ることを強く、強く望んでおり、いかなる相手からの求婚もはねつけてきた。王女であることを理由に男性にいいよられることには飽き飽きしているそうで、だから少しでも容色をどうにかしようと、髪を短くしているのだ。そうしても、フリーダは顔立ちがりりしいので、寧ろ似合っていた。貴公子のように見えてしまう。

 彼女は、王太后の葬儀に必要な花を摘みに、ここへやってきたそうだ。実際に作業をするのは官女達で、フリーダは花の選別をしている。そうして、随分花が集まり、丁寧につぼに詰められたところだった。そこには、透明に近い酒がはいっていて、花はその酒に香りを移す。花の香りの酒は、葬儀の参列者に振る舞われるだけでなく、霊廟へ捧げられる。先程、乗馬と弓の鍛錬を終えた夫は、興味深げにしばらくつぼを見ていたが、なにもいいはしない。


 フリーダが官女へ顔を向ける。

「誰でもいいから、見てきなさい。花を催促に来た侍従かもしれない。それに、なにかあったのかもしれないわ。おばあさまが亡くなってから、どうも、貴族達が落ち着かないもの」

 官女がお辞儀して、ふたり、出ていった。フリーダは溜め息を吐く。「そう、宮廷はからさわぎしてるわ。まだおばあさまの弔いも終わっていないというのに、はずかしい……誰も、お兄さまを尊重しないのだから。貴族達も、お父さま達も。そして、お兄さまさえもね」

 くらい響きのある言葉に、ファナは小首を傾げた。実際、王太后が亡くなってから、議会は紛糾しているらしい。ここぞとばかりに、ロートを廃嫡させようと動く貴族が居るそうだ。しかし、ロートは陛下の唯一の男児で、当然味方も多く居る。

 フリーダは苦く笑う。

「いえ、ひとりだけ居たわね。ファナ、あなただけよ、お兄さまを尊重しているのは。愚かな貴族は王太子に相応しくないといい、同じくらい愚かな貴族が王太子に相応だという。お父さまとお母さまは、可愛いお兄さまをずっと手許に置いておきたいだけ」

「フリーダさま、お言葉がすぎます。陛下は殿下の身を案じておいでなのでしょう。可愛い子どもを心配するのは、親として自然な心の動きです」

 思わず抗弁すると、フリーダは肩をすくめた。

「そうでしょうね。でもそれが負担になることもある。わたしはそうだわ。王女らしくしろとか、はやく結婚相手を選べとか。うんざりする」


 フリーダは顔を背ける。ファナはなにもいえず、黙っていた。王家に生まれたのなら、王女らしくするようにいわれるのは当然だと、そんなふうに思ってしまう。

 いや、そう思う、というのも、()()。生まれによって、すべきことがあるのは、当然だ。それは、責務というものだ。その立場に生まれた、責任というものだ。

 思想とか信念というものではなく、ファナにはそれが染みついていた。自分自身の考えか、それとも親やまわりの考えか、もはや判断つかない。

「わたしは、殿方と結婚するのは、無理だわ。わがままだけど、王女として丁重に扱われすぎたのか、殿方に頭をさげるのっていやなのよ」

 苦笑いでの率直なものいいに、ファナは目をまるくする。

「呆れるでしょう。でもね、だから修道院へ行きたいの。修道院には、煩わしい殿方はいない。女だけでばかができるってものでしょ。女に指図されても腹は立たないし、頭をさげるのも気にならない。どうしてだかはわからないけどね。……ああ、お兄さまに頭をさげるのは、なんにも文句はないわ。そう、だから、お兄さまを王にというのは、正しいのかもね。わたしみたいな人間でも、お兄さまへは正直に頭を垂れる」

「フリーダさま」

「お弔いがきちんと終われば、わたしも本当に修道院へ行けるでしょうし、お兄さまを宜しくね。別に、わたしは、お兄さまの面倒を見てきた訳でも、お兄さまの為になにかした訳でもないけれど」

 フリーダはそういって、兄を見る。ファナは、いいえ、といいたかったが、彼女の雰囲気に、言葉が出てこない。

 あの時……官女が、ロートと情を交わしたなどと嘘を吐いた時、フリーダはあの官女を一喝してくれた。その後、書簡をつくっただけでなく、フリーダとマグノーリエで、あの官女の父である子爵に厳重に注意したとも聴いている。

 それ以外でも、フリーダに限らず、王女達はなにくれと、ロートを気遣い、ロートを助けてくれていた。なにかした訳でもない、というのは、謙遜がすぎる。


 フリーダはふっと、兄を見た。ロートはふたりの会話など耳にはいらぬのか、遠くを見たまま絵を描き続けている。

「あのかたを本当に尊重しているのは、あなただけだわ。わたし達家族だって、面倒がって弓矢の話も、絵のことも、まともにとりあわなかった。お兄さまのいうことに、わかりもしないのにわかったふりをしただけ」

「ご家族ですから」ファナはいう。「近すぎれば、見失うものもございます。殿下の絵が、長い間誰にも見えなかったように」

「あなたって本当に、女にしておくのが勿体ない。男なら大臣だったわね」

 フリーダはにやっとする。「あなたが女でよかった。女で、お兄さまを()()()()()()


 愛?

 愛す、というのは、よくわからなかった。ファナは、責務を果たそうとしているだけだ。

 ウルー家に生まれ、よい婚姻をといわれたから、それを求めて行動した。ウルー家に生まれた以上は、ウルー家に益をもたらす婚姻を結ぶべきだと考えたから。

 へーレ家に、借金を肩代わりしてくれるのならもらってやってもいいといわれたから、喜んで承諾した。へーレ家は古い家柄だし、王家への忠義もある。その嫁になれるのならば素晴らしいと思った。ウルー家に素晴らしい栄誉をもたらす、と。

 王家に、ロートの妻になれといわれたから、そうした。

 そうしろ、といわれたから。

 ――いや。

 いわれたのは、便宜上の妻となってほしい、だ。ロートが、官女や令嬢達と、そういった関係になることを、泣いて拒んだからだ。だから、ロートは男女のことはわからないと、望まないと、陛下達は考えていた。無理強いしたくないようだった。

 でも、ファナは、それはいやだといったのだ。そうではなく、本当の夫婦になりたいと。

 それが責務だと思った。王家への忠義のあらわしかただと思ったのだ。

 だが、ファナはロートを急かそうとはしていない。あれだけの大口を叩いて子を成せねば、追い出される可能性もある。もう、半年も経つのだ。それに、あの愚かな官女のように、ロートをどうにか籠絡して、のし上がろうとする者もあるかもしれない。ロートを侮り、ばかにして、簡単にだませると思う者が近寄ってくるかもしれない。

 急げばいいのに、急いでいないのは、ロートを傷付けたくないからだった。ロートが納得していない状態では、なにもできない。

 王家の人間だから急いで子を成すべき、という「責務」とは、それは、相容れない考えではないか。

 あの段階までは、責務と考えていた、と思う。結婚を承諾したところまでは。

 だが、どこからだろう。なにか、別のものとして、結婚を捉えるようになった。責務だとか、王家だとか、貴族だとか、実家の地位だとか、そういうものを考えなくなった。


 どこからかはわからないけれど、ロートが「なんでもする」といってくれたた時、とても嬉しかった。

 ロートが、約束を破ったと、泣いていた時にも、それだけ約束を大切にしてくれるのだと嬉しかった。

 ロートが自分を描いてくれているとわかった時も、嬉しかった。


 なにか……別のものだ。

 責務、責任、というものではない、自分の感情がある。もしかしたらこれが、愛というものかもしれない。

 だとしたら愛というのは、随分利己的なものだ。――ああ、こういうものなのだろうか? 殿下以外、どうでもいい。殿下がおしあわせなら、殿下が平穏無事に過ごせるなら、殿下が心安らかに居られるのなら……。


 殿下が誰か、別の女性を、好きになるかもしれない。


 ふと、そう考えて、ぞくっと背中がひえた。その可能性はある。

 ロートは結婚というものを、そこまで深刻なものとは捉えていない節がある。多くの貴族や王族のように、結婚して子を成すのは責務、恋愛とはまた別の話、と、ロートはそんなふうには思っていないかもしれない。気にいった者だけでまわりをかためているそうだし、気にいった女性と結婚したいと考えることだってありうる……。

 悲鳴が聴こえて、ファナは我に戻り、ロートが木炭を握りこんで折ってしまった。

 フリーダは叫ぶ。「侍従、殿下をまもりなさい。ファナも。わたしは無視していいわ」

 フリーダの判断は正しかった。植物園に、無粋な連中が這入りこんだのだ。武装した男が数人、いや、十人以上、走ってくる。






 フリーダは男に頭をさげたくないといっていたが、それは彼女が毅然としていて、気高いからだろう。

「何事か!」

 ファナをひっぱって、ロートの傍へ遣ると、フリーダはつかつかと男達へ近付いていった。ガウンの裾をひきずり、足をさっさっと大胆に動かして。

 王女の威厳には、武装していてもたじろぐようだ。男達はフリーダの前で停まると、一瞬目を交わした。


 男達は、全員似たような鎧を、上半身に着けている。ふたりは手足にも金属製の防具を着け、別のふたりは簡素な兜をつけている。三人ほど、どこかで見たことのある顔だった。兵士のような格好だが、兵士ではない。剣をぬいて、王女に対峙しているのだから。

 糸玉と(シャトル)を、袖へ滑り込ませる。

「手を握らせてくださいませ、殿下」

 ファナは夫が頷いたのを確認してから、その手をとる。ロートは小さく、前後に揺れている。うさぎみたいな目が、男達を睨んでいた。怯えているようだ。それとも、戸惑っているのだろうか。いずれにせよ、ロートの精神状態が悪いほうへ傾いているのはわかった。


「なのれ」フリーダは胸を張り、顎を上げ、殊更居丈高にいう。「所属と、ここへ来た目的を述べよ」

 男達は目を交わし、兜を着けたひとりが応える。

「その必要はない」

「なにを!」

 雷が落ちるような鋭い声だ。男達はびくっと、震える。ファナも驚いたけれど、ロートは反応しない。

 フリーダはぎろりと、男達を睨む。

「貴様ら、王家の威光をなんと心得る? わたしは第三王女、フリーダ。わたしは貴様らに、なのるよういった。所属とここへ来た目的を述べるよういった。その程度の質問にも答えられぬほど愚かなのか? それとも、わたしを軽んじているのか!」

 男のひとりが、たしかに息をのんだ。


 侍従がそっと、ファナの袖をひく。低声(こごえ)でいわれた。「姫さま、殿下とともにお逃げください。裏口がございます」

「でも……」

「なにが起こったかはわかりませんが、ここよりは東宮殿のほうが安全です。あちらのほうが兵が多いですし、武器もあります」

 それは、そうかもしれない。植物園にも儀仗兵は居るし、今も、フリーダの大声に集まってきてはいる。だが、数は多くない。

 ファナは侍従へ頷いてから、夫の耳許へ口を寄せた。小さく小さく、いう。「殿下、お静かに願えますか。裏口から出て、東宮殿へ戻りましょう」

 ロートは小さく、頷く。侍従がファナを、そっとおした。ファナは夫の手をひいて、侍従達におされるまま、裏口へと向かう。フリーダがまた、男達を怒鳴りつける。「貴様ら、王家を愚弄するか!」




 大声を出してくれたフリーダと、そっと位置をかえてファナ達を見えないようにしてくれた侍従達官女達のおかげで、男達の注目を浴びることなく、ふたりは木の陰へいたった。

 ロートが、こっち、と小さくいうので、ファナはそれを信用し、彼に案内されるまま、小走りに移動する。ロートは植物園の内部構造を、完璧に理解している。彼の、奇妙な場面で驚くほどに発揮される記憶力が、そこでも発揮された。「あっちはだめ。こっちがいい」

 ぶつぶつとひとりで喋り、ファナよりも先に歩いている。ファナは夫とはなれぬよう、なにも考えずにぴったりついていった。考えたって、ファナはこの植物園にはくわしくない。ロートが絵を描く時に、一緒にその場に居るというだけだ。最近ではレースあみをしているが、植物園内を探索しようと考えたことは一度とてない。彼女にとって、夫の傍に居るのが重要なのであって、場所はどうでもいい。

 それに、宮廷のこんなに奥深くまで、不届き者がやってくるとは思わない。宮廷に這入るのにはゆるしが居るから、普通貴族ででもなければ門前払いされる。宮廷でも奥まったこの区画へ通じるあの橋は、多くの兵がまもっている。怪しからぬ者達が突破できる訳がないと思っていた。

 それに、仮にそこを突破してしまっても、儀仗兵達が植物園のまわりや出入り口近くに居る。侍従や官女も沢山が、ロートと一緒に居るから、安全だと思っていた。こんなふうに逃げる必要がある場所だなんて、ひと欠片も考えていなかった。


 いつの間にか走っている。しばらく行くと、裏口が見えた。そこには儀仗兵が、ふたり居た。ゆるしを得ていない人間が這入りこまぬように、だろう。

 そう思ったのに、ファナとロートがそちらへ走っていくと、儀仗兵は気付いて、槍をかまえた。




 ロートは、たちどまって、槍を見ている。ぎゅっと口を噤んで、緊張した様子だ。彼は王子として教育をうけているし、それには「戦いの練習」も含まれる。槍の意味はわかっているだろう。

 ファナは息を整えた。走ること自体は。さほど疲れはしなかった。そうではなく、殿下へ槍を向けられていることで、息が苦しい。あからさまな敵意を感じられるし、そもそも槍は武器なのだ。あれで傷付けられたら、下手をしたら死ぬ。いざとなったら、殿下をおまもりしなくては。

「儀仗兵、そこを通しなさい」さいわい、声は震えない。「不届き者がここへはいったのです。殿下には、安全な東宮殿へ、戻って戴きます」

 儀仗兵達は無言で、ファナへ槍を向けた。ファナはそれを、じっと見詰める。殿下へ向けられている時よりは、まだ気が楽だった。「お前達も、この騒ぎに関わっているの?」

「殿下、姫さま、お戻りください。捕まっていれば、怪我はしません」

 それは、捕まらないのならば怪我をさせるぞ、という解釈で、いいのだろうか。

 ファナはもはや、唖然として、なにもいえなかった。この者らはなにを考えているのだろう、と思ったけれど、わかりそうにない。王子に対して捕まれとは、侮辱も甚だしい。一体全体、なにを……。

 侮辱と愚弄に、ファナは怒りのあまり頭がまっしろになった。しかし、ロートは違う。明らかに敵意のある儀仗兵達へ、心配げな目を向ける。「あ、避けて」

 ファナはなにも喋らなかった。ロートのように慈悲深くはないからだ。

 植物園に、武装した儀仗兵達が、雪崩をうって這入りこんできた。






 儀仗兵と儀仗兵で、争いになっている。槍や剣が振りまわされ、ファナはおそろしさに身をすくませた。

 ロートは血の気を失っているが、ファナを抱きすくめ、儀仗兵達から遠ざけた。「殿下」

 儀仗兵のひとりが争いの輪から飛びだして、やってくる。マルモア家の若者だ。跡取りではないが、その弟である。マルモアは建国からの貴族、ロートを王太子にと奏上している派閥の家だ。

 ファナは戦っている兵達を見て、ほっと息を吐いた。ほとんどが、ロートを王太子にしようとしている家の若者達だ。ロートを傷付けようとする者はないだろう。

 ロートはうわずった、震える声を出す。「どうしたの」

「不届き者らが、謁見の間で、陛下を襲いました」

 夫は、なにをいわれたのかわからなかったらしい。眉を寄せる。

「へいか。おとうさまとおかあさまが、なあに」

「け、怪我をされたのです。大きな怪我です。王妃さまはなんともありません。おふたりとも、父とヴォルケ卿とで救い出しました」

「おとうさまが? おけが?」

 ロートは、ぽかんとする。

 マルモアの若者は、袖で顔を拭った。

「どうしてけがをしたの」

「不届き者のパウルが、反乱を起こしたのです」

 吐き捨てるような調子だった。卿とも閣下ともいわないところに、彼のパウルへの軽蔑が見てとれる。




 数が違いすぎた。ファナ達に槍を向けた儀仗兵は、あっという間に追い詰められ、降伏して、縛り上げられている。ロートはそれを横目で見てから、マルモアの若者へいう。

「おとうさまたちは? どこ? だいじょうぶ?」

「東宮殿へ逃げ込んでいます。宮廷のあちこちで、味方と敵が戦っています。ヴォルケ家、へーレ家、そして我がマルモア家は、すでに王妃さまのゆるしを得て、宮廷内へ私兵を投入しました。シュラム家とラーヴァ家も準備が整い次第動かすといっていたので、もうやってきているでしょう。姫さまのご実家からは、武器や鎧が届けられています」

 父さま。やはり、王家への忠を貫かれるのね。

 父が味方陣営であることに、ファナは心底ほっとした。不忠者にはなりたくないし、不忠者の娘もいやだったからだ。


 マルモアの若者は、ロートの前に膝をついた。ほかの儀仗兵達も、縛られている者以外は、そのようにする。儀仗兵のなかには、ファナがロートの妻となる前から、分け隔てなく接してくれた、伯爵家のフェルジャンスも居た。ロートの弓の師範、シュラム家のパンタオンも。

「殿下。陛下は今、指揮を執れません。どうぞ、殿下が我らをお導きください。我らに指示を」

「お、おとうさま、そんなにいたいの? しんじゃうの? おばあさまみたいに?」

 ロートの目から、ぽろりと涙がこぼれる。マルモアの若者はそれに、悲痛げにしたけれど、すぐに表情をひきしめた。

「どうぞ、ご決断を。殿下が指示してくださらねば、我らは動けません。諸侯は殿下のお出ましを待っています。殿下がお出でになれば、パウルのような慮外者から寝返る者はありましょう」

「しじ? しじってなに。ぼくわからないよ。おとうさまやおかあさまにおしえてもらわないとわからない」

 ロートは頭を振り、表情をゆがめる。ファナをぎゅっと抱きしめる。その行動に、儀仗兵の幾らかは、どうも、失望したらしい。咎めるような目を向けてくる。 

「殿下」

 ファナは成る丈、落ち着いた声でいって、夫を仰いだ。

 ロートは、おそれるような顔で、こちらを向く。

「ファナ。ああ……」

「殿下、お考えください」

「かんがえる? ぼくにはできない。僕は、かんがえたって、なんにもできない。おじさまがいってた」

 最後の言葉は、ごく小さなものだった。ファナは、以前パウルがロートのことを軽く扱っていたのを思い出す。あの愚か者は、ずっとあのような振る舞いをしていたのだろう。ずっと、ロートを軽んじ、侮辱していたのだろう。そういえば絵のことも、ロートは、自分は上手ではないといっていた。誰かにいわれたのだ。そのように思い込むくらいに、いわれ続けたのだ。

「殿下」

 ファナは、フリーダさまは間違っているわ、と思った。わたくしは、殿下を尊重などしていない。自分の気持ちだけ。すべて、自己本位な、わがまま。

 殿下がいかに素晴らしいか、殿下がいかにお優しくて、賢くて、あたたかい、素敵なかたか、それを知らしめたいだけ。殿下のできることを見せてほしい。そうして、ばかにしてくる者を、軽んじてくる者を、黙らせたい。

 こんなにも素敵な夫を持っていると、自慢したいだけだ。

「殿下、お願いがございます」

「なに……?」

 夫は戸惑ったようだけれど、それでもいった。「ファナのおねがいなら、なんでもしてあげる」

「ありがとうございます。殿下、どうぞ、指揮を執ってください。殿下が彼らに、戦うように命ずるのです」


「できないよ!」

 ロートは涙をぼろぼろとこぼし、頭を振った。「ぼくにはできない! ぼくはばかだから、ぼくは……」

「殿下、殿下はたしかに、ひとより劣っているところがございます」

 フェルジャンスが、はっと息をのんで、ファナを見る。「ファナ、なにを無礼な」

「お黙り」

 いつぞやの王妃のように威厳のある声が出たらいいのだが、そうはいかなかった。人間には、できることとできないことがあるのだ。ファナには王妃のような威厳はない。ないものをあるふりはできない。

 それは、夫に対しても同じだ。

 ファナはロートの手を、ぎゅっと握った。

「殿下は、読み書きが苦手ですし、計算もできませんよね」

「姫さま」

「貴族達のもってまわった話も、官吏達がなにか報告しても、残念ですがすべては理解されていない。化粧領も、執政官に任せきりです。そこらの子どものほうが余程聡いでしょう」

「姫さま!」

「それはこれからもかわりません。殿下が努力しても、いつまでもできないことはございます。弓や絵のように、殿下にとってやればそれだけ上達することばかりではないのです。わたくしがどうあがいても、このあおざめたような、醜い肌を捨てられないように」

 声が震え、ファナは自分が涙ぐんでいるのに気付いたけれど、()()()涙がこぼれませんようにと願った。「わたくしのこの、気色の悪い瞳を、素敵な紺碧の瞳ととりかえることなどできないように」

「きしょくわるくないよ」

 殿下はしゃくりあげ、あいた手で顔を拭った。「ファナはきれいだよ」

「ありがとうございます、殿下。わたくしも、殿下にできないことがあっても、それでもお慕いしております。殿下をきらうことなどできましょうか。殿下が今よりもっとできないことが多くても、きっと殿下を愛しました」

 半ば立ち上がっていたフェルジャンスが、戸惑い顔で腰を下ろす。マルモアの若者も、ファナへ、戸惑った目を向けた。

「殿下は、できることは努力なさる。それは素晴らしいことです。めぐまれているのにそうとも気付かないで、できないことがある人間を笑うのが、さもしい、愚かな人間というものです。そうでしょう?」

「わかんない……」ロートはいって、唇を嚙む。

「殿下。お願いです。殿下は半年もかけて、弓を習得されました。あのような素晴らしい技は、殿下以外にはできません。どうぞ、彼らを率いて、東宮殿へ。陛下の許へいらしてください。これは努力でどうにかなることです。殿下は、彼らへ、命じればよいのですよ。強く、意欲のある彼らなら、殿下の手足となって戦ってくれます」

 それで彼らが死のうと、知ったことではないと、ファナは考えている。ロートが正しく、王子であり続けられるなら。ロートが誰からも軽んじられず、平穏に過ごせるのなら。


 ロートは逡巡しているらしかった。小さな唸りが、絶え間なく聴こえる。ロートは涙をぼとぼととこぼしてから、口を開いた。

「さきに、うまやへいく。ファナ、ゼーにのせてあげるよ。そのほうが、すぐに、東宮殿へいけるから。そうしたら、ぼく……ぼく、ゆみなら、つかえる。弓なら、できるよ、おとうさまとおかあさまのこと、まもりたい」

 儀仗兵達が、ほっとしたみたいに息を吐いて、立ち上がった。






 植物園を出た。(うまや)は近くにある。ロートが、乗馬と弓の練習をした後、すぐに植物園へ行くから、その習慣ができた頃に厩を植物園近くに移動させたらしい。弓矢もそこで管理されている筈だ。

 フェルジャンスと数人は植物園へ残った。ロートがそう命じたのだ。フリーダをたすけて、と。フェルジャンスは数人の仲間とともに、フリーダをさがしに行った。

「東宮殿に行けば、陛下がいらっしゃいます。どのような情況かはわかりませんが、もし、みまかられているとしても、王妃さまの任命で殿下に王になって戴けます。戦時の特例ではありますが、誰も文句はつけぬでしょう。陛下が動けない状態であれば、殿下を名代にして戴けばいい。我らが殿下を戴いているとわかれば、寝返る者はかならず居ます」

 マルモアの若者――コンスタンチンは、ロートに、そしてファナに向かって喋った。ファナは、政治や戦に女が口を出すものではないと、わかっているが、それを破った。()()()()妻ならば、それがすべきことだと思ったからだ。ないものをあるふりはできない。あるものを見ないふりもできない。自分が、ロートの手助けになるのなら、する。

 ファナは女で、長くは走れないから、ロートに負ぶわれていた。「殿下、もし陛下が亡くなっていたら、殿下は王になります。陛下がおけがで動けなければ、殿下は陛下のかわりをします」

 唸り声が返ってくる。

「皆が戦う気持ちを維持するのに必要です。そうなっても、どうか、動揺なさらないで」

「できないよ」ロートはいい、しゃくりあげる。「でも、がまんはする」

 敵も、ロートの動きを予測していたようだ。厩のまわりには、すでに、パウルの手の者が居た。彼らはロートを見るや、襲いかかってくる。


 ロートは立ち尽くしていたし、ファナはその背中で震えていたけれど、コンスタンチンや儀仗兵達は、獅子奮迅の働きをしてくれた。そもそも彼らは強い。その上、王家への忠誠心がある。なにより、ロートが、おそれをおしころしてでも指揮を執ると宣言したのが、一番きいていた。父母を思うロートの気持ちに、心打たれたのだ。

 あっという間に、敵は切り伏せられ、或いは武器を失い、そして逃げていった。死体が幾らか残ったが、それだけだ。

 眩暈がしたし、吐き気もしたけれど、ファナはどうにかそれをこらえる。ロートも血の気を失っていたけれど、泣き叫ぶようなことはなく、兵がつれてきたゼーにファナをのせた。そのまま、ひらりと、馬へまたがる。コンスタンチンが見付けてきた弓矢は、ファナがうけとった。鍛錬用の弓は、ここに保管されているようだ。

 鞍は、その辺りにあったものを儀仗兵がつけたようだが、手綱がない。「ファナ、ゼーが動いてるとき、しゃべっちゃだめ」

 頷くと、ロートは手を伸ばし、ゼーのたてがみを指で優しくすいた。そのまま首を撫で、耳の傍を撫でる。「ゼー、はしろう」

 ロートがゼーの腹を軽くけると、ゼーは走り出した。




 コンスタンチン達も、それぞれ馬にまたがり、手綱もないのに上手に走らせている。ロートはなかでも、特に乗馬がうまいらしい。ファナにはわからないが、ロートは一度も落ちそうにならず、ゼーはロートの気持ちがわかるみたいに、東宮殿へ向けて一直線に走った。

 東宮殿までまだ距離がある、四色の花畑の辺りで、ぱっと、官女達が出てくる。そのなかには、ファナの侍女達も居た。


 ロートがなにかいうと、ゼーは大人しく停まった。

「姫さま」

「マセンシャ、無事だったのね」

「はい」

 侍女は泣きながら、その場にくずおれる。「ですが、東宮殿は、敵に囲まれてしまって……陛下と、王妃さまと、リーリエ殿下がなかに。侍従達と儀仗兵はいますが、あのままでは……」

「おとうさまは? けがは?」

 ロートがいうと、侍女はしゃくりあげた。「わかりません。東宮殿へ運び込む前に、止血はできていました。わたくし達は、薬房から薬をもらってくるつもりで外に出たんです。女だけなら、もし敵に捕まっても殺されないですから。薬はここに」

「ありがとう、マセンシャ。わたくしがあずかります」

「姫さま、まさか東宮殿へいらっしゃるんですか」

「陛下のお命の為です」

「ではわたし達も一緒に!」

 侍女が叫ぶと、官女達も同意を示した。コンスタンチンが優しくいう。

「女達よ、ありがたいが、あなた達は戦えない。我らが東宮殿を攻撃する不届き者どもを蹴散らすから、それまで待っていてくれ。なに、我らには殿下がいらっしゃる」

「ですが!」

「マセンシャ、命じます。お前が彼女達の命をまもりなさい。敵に捕まってもかまいません。絶対に死なないように」

 ファナはロートを仰ぐ。ロートは頷いて、ゼーの首を撫でた。「ゼー、すこしいそいで」

「お嬢さま!」

 懐かしい呼ばれかたに、ファナは一瞬笑みを向ける。ゼーは走るのがはやくて、侍女も官女も、すぐに見えなくなった。






 東宮殿が見えてきた。

 その周囲には、武装した兵士達が大勢立っている。馬にのっている者も多い。

 まだ距離のある場所で、ロートがゼーを停まらせた。儀仗兵達もだから、とまる。木々に囲まれた、少し高さのある場所だ。たまに、ロートがここで、虫を観察していた。この辺りの木の根近くを描くのを、気にいっているらしい。ロートが喜ぶので、虫や茸が住むのに適した倒木は、そのままになっている。木がごろごろと、転がっているのだ。

「殿下?」

「……ここからなら、や、とどく」

 まさか、と、誰かがいった。だが、ファナにはわかっている。ロートなら、この距離でも充分、矢は届く。

 けれど、数が違いすぎる。こちらは十数人、あちらには百人以上。どうやら、とりかこんで、王妃達が降伏するのを待っているらしい。時折、東宮殿の窓から、なにかが飛び出す。石かなにかを投げているようだ。

 ファナは、歴史書を思い出した。歴史書に描かれた、戦いの様子を。




 準備を整えた。

 ロートが弓を掴み、矢をつがえる。馬にのったままだ。弓を斜めにせざるを得ないが、彼は難なく弦をひき、かすかに右目を細めて、矢を放った。

 矢が勢いよく飛び出し、放物線を描く。

 狩りに出て、鳥を射止めた程の腕前だ。的の大きな人間に、あてられない訳がない。

 東宮殿を監視するのに夢中で、攻撃されると思っていなかった兵のひとりが、がらあきの手の甲に矢をくらった。そのまま倒れている。儀仗兵達が驚嘆の声をあげ、パンタオンが拳を軽くあげる。「流石!」

 ロートはそれを無視し、二射目を放った。今度も過たず、混乱で隊列を崩した兵の脚につきささる。パンタオンや、儀仗兵のなかでも弓を持っていた者達が、それをかまえた。しかし、まだ射はしない。

 ロートの三射目は、少々装備の豪華な、馬にまたがった人物にあたる。馬から落ち、動かない。

 東宮殿を囲んでいた兵の三分の一程が、くるりと反転した。こちらを狙っている。弓を持っている兵は居ないが、居ても弓はつかうまい。こちらのほうが、少しだけといえ高い位置に居る。不利すぎる。

 敵兵達は、かたまって、走ってきた。




「うって」

 ロートが低声(こごえ)で命じると、パンタオン達が一斉に矢を放つ。ロートと違い、外れた矢も沢山あったが、相手は怯んだ。ロートは正確に、装備の豪華な、位の高そうな人物を射貫く。

 しかし、人数が少ない。矢の数も少ない。敵兵は速度をほぼゆるめず、つっこんできた。

 先頭の兵は、ファナが木と木の間に渡しておいた、レース糸に、気付かなかった。「あ?」

 ひっかけて糸がとれる。それに連動して、(かずら)を利用して危うい状態で立ててあった倒木が、敵兵へと転がっていった。


 弓兵は接近戦に弱い。だから、弓兵は馬防柵の手前に配置する。なければ、杭を立てて保護する。槍衾でまもる。

 無防備な弓兵を見付けたら、敵兵はつっこんでくる筈だ。そう判断して、ファナが指示し、その罠を設置した。あちらが東宮殿を見るのに夢中だったのもさいわいした。工作が露見すれば、反対側からまわりこまれてお仕舞だからだ。

 倒木が敵兵達をはねた。潰した。馬が足をとられて転び、馬上の兵が投げ出される。コンスタンチン達が号令とともに飛びだして、まごついている敵を倒した。

「殿下、これを」

 パンタオンが傍に来て、矢筒をファナへさしだした。ファナはそれをうけとる。「我らでは外します。矢の無駄になる。殿下のお役に立ててください」

 ロートは返事をせず、早速弓に矢をつがえた。また、東宮殿をとりかこむ敵兵達から、幾らかこちらへひきつけられたからだ。


 ロートの弓の腕はまったく、凄まじかった。誤るということがない。彼が放った矢は、すべてが敵兵にあたった。矢を放つ速度も相当なもので、瞬く間に数本が空へ向かって放たれ、落ちていったと思ったら敵兵に刺さっている。

 近付くまでに数を減らされた敵兵は、儀仗兵達に屠られた。見覚えのある貴族の紋章が、これが内乱であることを思い出させる。

 矢が尽きそうになったところに、遠くから声が聴こえてきた。馬にのって、ラーヴァとマルモアの私兵達がやってきたのだ。

 ロートと儀仗兵達が減らしていた敵では、私兵達にかなわなかった。敵兵はすぐに撤退し、ロートはそれを見ると、ゼーを走らせた。




「おとうさま、おとうさまは?」

「ロート、ああ、無事だったの!」

 東宮殿の奥、東宮(おうたいし)の部屋に、陛下は寝かされていた。食器やなにかを投げてなんとか敵を追い払おうとしていた侍従達が、目を赤くしている。王妃は寝台の傍に座りこみ、陛下の手を握りしめていた。傍に、陛下のマントが落ちている。

「まだ、まだいきていらっしゃいます。ロート、お言葉を」

「ファナ、おくすりあげて」

 ファナは頷いて、侍女から預かった薬を懐からとりだした。粒状のそれを、顔を布で覆われた陛下の口へ詰めこみ、水を注ぐ。頭を少し浮かせて、のみこませる。

「ああ……あなた……ロートが、ロートとファナが、薬を持ってきてくれたのよ……」

「お兄さま」

 ガウンを脱ぎ、男のようななりをしたリーリエが、ラーヴァとマルモアの兵達との話を終え、近付いてきた。手には剣を持ち、また、矢筒を抱えている。ロートは矢筒を妹の手からひったくり、自分の(ベルト)へくくりつけた。

「見ていたわ。素晴らしいお働きでした、殿下」

「リーリエ、だいじょうぶだった?」

「ええ、わたしもお母さまも、お父さまがまもってくださったから」

 リーリエは頷いて、長い黒髪をぱっとはねのけた。「お兄さまは国をまもって。わたしがここを死守する。お兄さまは貴族達と一緒に、反乱者を捕らえるの」

「ううん」ロートはかすかに頭を振った。「ぼくがまもるのは、ファナだよ」


 リーリエはきょとんとしたが、すぐに微笑みになって、兄の頬へ口付けた。「それでこそお兄さまだわ。でも、ファナをまもる為に、パウルを捕らえなくては! あやつが勝手に国王をなのったら、諸侯が惑わされるかもしれない。情況はよくありません。謁見の間を占拠されてしまったの」

「へーレ家、シュラム家、ヴォルケ家の軍もやって参りました!」

 ラーヴァの私兵が飛び込んできた。コンスタンチンがロートへ顔を向ける。「殿下、ご決断ください。ここで籠城するか、打って出るか、どちらかです」

 ロートは目を落とし、黙り込む。王妃はなにかいいたそうに息子を見たけれど、なにも口にしなかった。


「……ファナ?」

「はい、殿下」

「ぼく、ファナをあいしているよ」

 ロートはそういうと、ぎこちなく微笑む。「ねえ、くちづけてもいい?」

「どうぞ」

 ロートはほっとしたみたいに息を吐いて、ファナにそっと、口付けた。

 すぐにはなれ、コンスタンチンを斜めに見る。落ちたマントを拾う。

「おじさまをつかまえる。おとうさまがおけがしてるから、ぼくがおうだ。それでいいよね」

 反対意見は、誰からも出なかった。
















 足手まといになりたくはなかったから、ファナはその場に残った。ロートが心配だし、生きた心地はしないけれど、それでも邪魔はしたくなかった。

 貴族達の私兵は訓練されていたし、陛下のマントを羽織ったロートが先頭に立って、不届き者どもを次々射貫いたので、日和見をしていた連中はこちらについた。ロートを侮っていた者ほど、弓や乗馬の腕に驚嘆し、その驚きのまま寝返った。

 パウルは謁見の間で見付かったが、すでに死んでいたそうだ。傍らに、もと・官女のリベレが居て、彼女は毒を呷って倒れた。






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