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三題噺もどき3

掲示

作者: 狐彪

三題噺もどき―よんひゃくきゅうじゅういち。

 


 生ぬるい風が頬を叩く。


 昨夜からの雨のせいか、太陽は雲に覆われている。

 多少はマシになった日差しだが、普通に暑い上に雨のせいの湿気で蒸し暑い。

 蒸籠に入れられた野菜とかはこんな感覚なんだろうか。サウナもこの感覚に近かったりするんだろうか……苦手なので入ったことはない。

 一度入ろうとしたが、肺が焼けるかと思ってやめた。

「……」

 しかし、今日はやけに風が強いなぁ。

 帽子をかぶってこようと思ったが、あまりにも強くて飛ばされそうだったので諦めた。

 日差しもそこまで酷くないので今のところ特に支障はない。

 雨こそ降っていないものの、そのうち台風でも来るのかと思うぐらいに強い。

「……」

 吹き荒れる風に、前髪が乱され、毛先が目に入る。

 短く切りそろえていても、ぼさぼさになるのだから長髪の人とか大変そうだ。

 いやまぁ、纏めているんだろうけど。そう考えたらむしろましなのでは……。ここ何年かはずっと短くしているので、長かった頃の感覚が分からない。

「……」

 まぁ。そんなことはどうでもいいのだけど。

 とりあえず、目的地に着いてしまえば強風にさらされることも、暑さから逃れることもできるのだから。さっさと向かうとしよう。

「……」

 今日は行き慣れた図書館に向かっていた。

 借りていた本を返すついでに、文庫本でも借りようと思って。

 今回はハードカバーの本を借りていたので、鞄が少々重い。二冊程しか借りていないはずなのにこんなに重く感じるとは……借りてきたときはそうでもなかったような気がしていたんだけど。暑さで体力やらなんやらが削られているせいだろうか。

「……」

 歩きなれた図書館までの道を進んでいく。

 と、今までなかった掲示が電柱や掲示板に貼られているのが目に付いた。

 それもかなりの数。並んでいる電柱全てに貼られているんじゃないだろうかこれ。

「……」

 何だろうと、ほんの少し近づいてみてみる。

 ……あぁ、なるほど。もうそんな時期なんだろうか。

 そうか、毎年このぐらいの時期にしていたもんなぁ。数年前のコロナ渦では、できずにいて、去年一昨年あたりから再開されていたはずだ。去年からは通常開催になっていたかな。

「……」

 掲示ポスターに映るのは、大きな花火の写真。その中央には、夏祭りの文字。

 開催時期と、そのほか催し事の紹介も載っている。有名人かどうかは知らないが、誰か来るみたいだ。芸人だろうか……。あいにく知らない人だった。

 開催は今週の土日のようだ。

「……」

 そういえば、時折すれ違う学校帰りの学生たちが楽しそうに話して居た気もする。

 いやはや、楽しそうで羨ましいなぁという感想しか出なかったのだけど。

 メインの開催場所はここから少し離れたところだが、もしやこの辺にまで出店が出たりするんだろうか……。いや、別にいいのだけど。

「……」

 あぁ、そういえば。

 昨日妹から連絡が来ていたんだった……。疲れていたから適当に返事してしまった。『土日暇?』というだけの連絡だったから。何かするのかということも聞かずに……。

 いや、一緒に行くのはいいんだけど。あまり人混みに向かいたくない。

「……」

 祭りかぁ……。

 まぁ、花火やらお神輿やらは見ごたえがあるからいいんだけど。

 ぎゅうぎゅうに詰められた人の間に居るのがどうも……暑いし動きづらいし。

 でも屋台飯はおいしいものが多いよなぁ。トウモロコシとか焼き鳥とかイカ焼きなんかも好きだ。あとたこ焼き。かき氷は頭が痛くなるので食べられないんだけど。

 最近はいろんな流行りの食べ物も売っていたりするみたいだし。

「……」

 ま、あの妹の連絡の正体がこの夏祭りかどうかは分からないし。

 その時はその時で、甥っ子も居るだろうから、色々買ってあげれていいかもしれない。

 うんうん。最近会えていなかったから、そう考えれば楽しいかもしれない。

「……」

 なんだ。

 案外気力は残っているんじゃないか。

 体力は徐々に削られている気がするけど。

「……」

 帰ったら妹にもう一度連絡をしてみよう。

 とりあえずは、図書館に行って、涼を取らせてもらうことにしよう。







 お題:文庫本・祭り・学校

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