第6話 エルドラス
1ヶ月後。
俺の新たな領地であるエルドラスに到着した。
旅路の途中で、さんざん名所巡りをして観光し、地元の美味いものを喰いながら来たから時間が掛かった。
旅を満喫した。
満足だ。
「ここが城塞都市エルドラスか」
俺は馬車の窓から城塞都市エルドラスを見た。
俺の新たな領地であるエルドラス。
その最大の都市が城塞都市エルドラスである。
県庁所在地のような場所で、行政に関わる部署は全てここに集約されている。
「思ったよりも大きいにゃ~」
「辺境の割には綺麗な都市ですわね」
ルーナとミスラが言う。
2人の言うとおり、辺境の割には大きく、城壁や建造物が綺麗だった。
城塞都市エルドラスの正門から、領主である俺の屋敷に行く。
俺の屋敷はちょうど城塞都市エルドラスの中心部にあった。
白亜の城で、美しい外観をしている。
「予想外だな。辺境と聞かされていたが、ずいぶん経済的に潤っているようだ」
この城に来る途中の民家も綺麗だったし、市場には物が溢れていた。
商人の往来も多かったし、経済流通がしっかりしているのが人目で分かる。
「元々、貿易が盛んで、土地が豊かな場所なのです。エルドラス領の南には海もありますので大陸全土と交易しております」
ベルダンディが説明する。
才媛のベルダンディはすでに多くのデータを頭に入れているようだ。
「船による交易か。それは旨味があるな」
海路を使った貿易は今も昔も巨万の富を作り出す。
「よくこんな豊かな領地を、あの国王がご主人様に与えたものですわね」
ミスラが不思議そうな顔をする。
「良い所ばかりではありません。このエルドラス領の西は、魔王国と国境を接しております」
ベルダンディが説明する。
魔王国とは魔王がすべる魔族と魔物の国だ。
「領地を経営するにあたって、魔王国からの防衛も視野に入れないといけません」
「父王も随分愚かな事をするな。豊かで、しかも魔王国と隣接している領地。ここは有能な人間に与えるべき場所だろう」
なぜ俺のような無能に与えたのだろうか?
このエルドラスが魔王軍によって支配下におかれたら、王国にとっては国家の存亡に関わる。
ここは王国で最も優秀な人間を領主にして、万全の備えをするべき所だろう。
「端的に言えば国王が愚かだからです」
ベルダンディが容赦なく批評した。
「パウル国王は政治を理解する能力がないのです。自分の国の領地についての知識がありません。おそらく適当に決めたのでしょう」
「確かにそうですわね。ご主人様を左遷するなら、北の僻地の貧乏な領地でも与えれば良いですのに……」
ミスラが言う。
俺は苦笑した。
「まあ父上の教養の無さに俺は救われたという事だ。豊かな領地なら、お前達のような美女をかこい、酒を飲み、美味い飯を食い、怠惰に過ごせるしな」
「美女なんて、……照れるにゃ」
ルーナが頬を染める。
「お褒めにあずかり光栄です」
ベルダンディが背筋を伸ばして答える。
「容姿を褒められたのは嬉しいですけど……、ようするに『ダメ人間になるぞ』宣言ですわよね……」
ミスラが肩をすくめる。
その後、取り敢えず、俺たちは掃除から始めることにした。
まあ、俺はほとんど何もせずにベッドで昼寝をしていたが。
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