第5話 単眼の巨人(サイクロプス)
「にゃ~、ご主人様はパンツが見たいの? 私のパンツなら見てもいいよ?」
ルーナがスカートを少しまくる。
「わ、私もご主人様が御所望なら、すぐに脱ぎますが……」
ベルダンディが理知的な顔をほんのりを赤らめる。
「だから、2人とも甘やかし過ぎですわ! 2人がそんなだとご主人様がドンドン駄目人間になりますわよ!」
「ミスラ。それはお前の間違いだ。俺は既に駄目人間だ」
「だから、美男な顔と声で、最低の台詞を言わないで下さいまし!」
「つれないな~。可愛いミスラのパンツを見たかったのに……。まあしょうがないか……。諦めるよ」
俺は吐息をついた。そして悲しい顔をしてルーナのお尻と太ももを撫でる。
「ミスラは酷い子だにゃ~……。ご主人様が可哀想……」
ルーナが同情して俺の頭を撫でる。
「ミスラ、あまりご主人様に酷い事を言ってはいけませんよ」
ベルダンディが吐息を出して首を振る。
「なんで私が悪い感じになっているんですの!」
ミスラの絶叫が馬車の中に響いた。
次の刹那、俺の直感が警報をならした。
そして、禍々しい魔力を感知する。
「敵襲だな」
俺が呟くと使い魔3人の顔に緊張が走る。
ドオオオオオオン!
という轟音が響いた。地震のように地面が揺れる。
俺、ルーナ、ベルダンディ、ミスラが馬車の外に出る。
辺りは山岳錯綜地帯だ。
「シオン殿下! お逃げ下さい!」
馬車にいる御者が叫び、侍女や侍従たちがパニックなる。
俺は敵に視線をむけた。
一キロほど先に『単眼の巨人』がいた。
小山のような巨体をしており、名前通り、一つ目の巨人である。
全長は1000メートルを超えているだろう。
一歩ずつ歩く度に地響きがする。
「単眼の巨人ですか……」
ベルダンディが眼鏡を中指でなおす。
「デカイにゃ~」
ルーナが楽しそうに笑う。
「おかしいな。『単眼の巨人』は、S級の魔物だ。王都の近郊であんな高レベルの魔物が出るなど聞いた事がないが……」
俺が疑問を口にするとミスラが答える。
「ご主人様、最近は大陸全土で魔物が活発化していますのよ。今まで安全地帯だった所に信じがたい程の高レベルの魔物が出現する事態が数多く報告されておりますの」
「そうか。いきなり出現した所を見ると、魔物か魔族がどこかに封印されていた『単眼の巨人』を呼び起こしたか。もしくは召喚術だろうな」
「倒す?」
ルーナが俺に問う。
「いや、俺がやる。ミスラのパンチラを邪魔した罪は重い。ヤツには死で償ってもらう」
「だから、そういう事を言わないでくださいまし! まだ私のパンチラを諦めていませんの?」
ミスラが叫ぶ。
「当然だ。俺はどんな障害があろうとも一度決めた事はやり抜く男だ」
「カッコイイにゃ、ご主人様」
「素晴らしい美学をお持ちですね。流石は我が主です」
ルーナとベルダンディが俺を褒める。
「騙されたら駄目ですわよ! ご主人様はパンチラを見たいだけですわ!」
「ミスラ。あいつを倒したらパンチラを頼むぞ。よし約束した」
「勝手に約束されましたわー!」
ミスラが頬を赤らめる。
俺は単眼の巨人に右手をかざした。
そして、詠唱破棄で、『獄炎』の魔法を放つ。
轟音が響いた。
単眼の巨人の足下に魔法陣が展開し、黒い炎の火柱が天空高く噴き上がる。
『獄炎』は、対象物を黒い炎で焼き尽くす、火炎属性の超位魔法だ。
地獄の業火を召喚して放つ魔法で、その威力は城塞都市をまるごと消し炭に出来る威力がある。
単眼の巨人は恐怖の叫びを上げた。
黒い炎で出来た巨大な火柱が単眼の巨人を包み込む。
十数秒後、単眼の巨人は消滅した。
「凄いにゃ~。さすがは伝説の英雄」
「相変わらず、ご主人様の強さには感服します」
「その気になれば世界を滅ぼせますわね……」
使い魔3人が感嘆の声を出す。
「世界を滅ぼすなんてするわけがないだろう。そんな面倒くさい事を誰がするか」
「世界を滅ぼせる事は否定しませんのね……」
ミスラは肩をすくめた。