第21話 一大事
1ヶ月後。
人類と魔王国の相互不可侵条約と通商条約が締結された。
人類側の代表は、アガレス王国の第三王子シオン。
魔王国側の代表は、魔王ジークリンデ。
シオンとジークリンデは、エルドラス領にある宮殿で、条約にサインをし、握手を交わした。
魔王国は、シオンによって強硬派が全滅させられており、残ったのは穏健派の魔族と魔物だけであった為に、平和条約の締結はスムーズに行われた。
元々、穏健派の魔族と魔物は、人間との共存共栄と経済圏の融合を望んでいたので、魔王ジークリンデとシオンの平和条約締結は喝采を浴びた。
人類の国家群も、魔王国との平和条約締結を喝采して受け止めた。
魔王国との防衛にさく予算が浮く上に、魔王国との経済交流が深まれば、国家も財政的に潤う。
数百年にわたる魔王国との戦争状態を終わらせた英雄として、アガレス王国の第三王子シオンの名声は人類全体に鳴り響いた。
「ご主人様は世界中から褒められているにゃ~」
ルーナが、俺を膝枕しながら言う。
俺は今日も自領のエルドラスの宮殿で、使い魔の美少女三人とベッドの上でゴロゴロしていた。
「特に褒められても嬉しくない」
俺は、膝枕してもらっているルーナの太ももに頭を擦りつけた。
「捻くれてますわねぇ。称賛は素直に受け止めればよろしいですのに」
ミスラが、シオンの足をマッサージしながら言う。
「前世では称賛が、非難に変わる様を沢山体験した。世間の評価なんて幻想みたいなものさ」
俺は欠伸をした。
「確かにそうかも知れません。さすが、ご主人様です」
ベルダンディが、真面目な顔で頷く。
「ん? なんか慌ただしい声が聞こえるにゃ」
ルーナが、猫耳を立てた。
直後、慌ただしい声と足音が扉の奥から響いた。
「シオン殿下! 大変です!」
いきなり扉を開けて侍女が部屋に入り込む。
ノックもしないとは余程の緊急事態のようだ。
「何事だ?」
「一大事です! だ、第一王子エダード殿下と第二王子オスカー殿下が死去されました!」
侍女の言葉に、俺は目を見開いて起き上がる。
使い魔の三人娘も驚いて目を見張った。