第2話 第二王子オスカーに絡まれる。
こいつは俺の兄貴だ。
金髪碧眼で年齢は18歳。
王位を狙い、第一王子であるエダードと宮廷闘争を繰り広げている。
「貴様! 追放されたのに何をニヤけている!」
オスカーが怒りの形相で怒鳴る。
やばい。バレてたか。
こいつは王様になることを人生最大の目的にしている為、俺のように権力から遠ざけられて嬉しがる人間の気持ちが理解できないのだ。
それと俺という愚弟が追放処分されて無様に泣きわめく姿を見れなかった事も腹立たしいに違いない。
「いやいや、失礼。ニヤけていたわけじゃない。花粉で少し鼻がムズ痒くてね」
俺は鼻をかいて誤魔化す。
「ふざけるな! 王都を追放され、辺境に左遷されるというのに何故お前は余裕なんだ!」
いや、だってそれが俺の目的だし。
追放されて辺境に行くのが生まれた時からの俺の目標だったんだよ。
まあ、コイツに行っても理解できまい。自己の主観でしか他人を測れないタイプだからな。
「まあ、良かったんじゃないの? 俺が消えればあとは第一王子であるエダード兄貴と、お前の2人だけが王位を狙える立場になる。ライバルが消えて嬉しいだろ? まあ、エダードの方が能力も派閥の力も上だからお前にとっては厳しい戦いになるだろうが……、応援してるよ。玉座獲得レース頑張れ!」
俺は親指を立てて激励してやった。オスカーは、ますます激怒した。
応援してやったのになぜ怒るだろうか?
「無能めが! 貴様のそういう所が子供の頃から気にくわんのだ! 無能のクズの癖に、いつも俺を上から目線で見下しおって!」
オスカーが腰から大剣を引き抜いた。
オスカーの後ろに控える臣下達がさすがに動揺する。
「オスカー殿下!」
「お止め下さい! ここは王城ですぞ!」
「黙れ、シオン! 貴様は今ここで斬り殺してやる」
オスカーが大剣を上段に構えた。
「おいおい、オスカー。辞めておけ。お前ごときじゃ俺を斬るのは無理だ」
俺は親切心で忠告したのだが、オスカーは発狂したように怒声を上げた。
「死ねぇええええ!」
オスカーが叫びながら俺に大剣を振り下ろす。
ダメだ。こいつ。
王城で王族が抜剣して、弟を斬り殺したらどういう事になるのか、まるで理解出来ていない。
自分が処罰される事を理解できないのか?
これだからボンボンは嫌なんだ。常識がまるでない。
「将来、国王を目指すのなら、もう少し物事を深く考えて行動する癖をつけろ」
俺はデコピンでオスカーが振り下ろした大剣をたたき折った。
水晶が弾けるような音がして、大剣が砕け散る。
「は?」
オスカーが茫然として固まる。
「え?」
オスカーの取り巻きたちも茫然として固まる。
「なんだかお前の相手は疲れるな。少し寝とけ」
俺は『精神魔法』を発動した。
眠気を誘発する魔法をかけて、オスカーと取り巻き達を眠らせる。
オスカーと取り巻き達は、急激に襲い掛かる眠気に対抗できず、廊下に倒れるようにして眠った。
「安心しろ。6時間もすれば目覚める」
俺はそう告げると回廊を歩き出した。
遠くにいる侍従や侍女たちが驚いているが、無視して自分の部屋に向かう。