第10話 ザッツ駄目人間
三日後。
ブリュンヒルドと協議を重ねて、防衛戦争の計画が決まった。
城塞都市エルドラスの城壁の改修工事。
新規兵の雇用。
武器、防具、魔導具を新規に購入。
将兵の軍事訓練の強化。
食料の備蓄。
将兵が戦争や訓練中に死傷した場合についての各種の補償金の設定。
これらに対して必要な費用は、エルドラス領の公庫から出される。
俺はベルダンディと必要書類を作成した上で、ブリュンヒルドに渡した。
ブリュンヒルドは俺に感謝し、
「防衛軍の長として、任務に邁進致します」
と誓った。
良い感じだ。
しかし、思った以上に良い領地だ。
公庫には財源がタンマリあるし、海路の貿易網があるから、将来的にも金銭には不足しない。
調べた所、飢饉などもなさそうだ。
「最大の懸念はやはり魔王国の動向といった所ですね」
ベルダンディが、書類をめくりながら言う。
「俺は魔王国については詳しくないが、穏健派と強硬派、どっちが強いのだ?」
「強硬派の方が勢力が上です。現在の魔王と穏健派は内戦になれば不利でしょう」
ベルダンディが断言する。
「もし、強硬派が勝てば、魔王軍がこのエルドラス領に攻めてくる可能性もありますわね」
ミスラが言う。
「まあ、魔王軍が侵攻してきても心配は要らないにゃ、ご主人様だけで魔王軍を殲滅できるし」
ルーナが俺の膝の上で頬をすりよせる。
「まあな、よって俺はこうしてゴロゴロしても大丈夫というわけだ」
俺は現在、ベッドの上でパジャマ姿の使い魔3人娘とごろ寝をしている。
ちなみに現時刻は昼の2時。
ザッツ駄目人間である。
「公務が順調だと、ここぞとばかりにダラけますのね……」
ミスラは人間枕になって、俺の頭を腹部に乗せている。美少女のお腹の柔らかさは堪らない。後頭部に幸福な柔らかさがある。
「ダラけてはいない。ノンビリしているのだ」
「同じですわよ……。なまじ、キッチリ仕事をしている分だけ余計にタチが悪いですわ。だらけても叱りにくいですわ」
ミスラがあきれた声を出す。
「ご主人様、はい。お菓子です。あ~ん」
ベルダンディがお菓子を俺の口に入れてくれる。
ライチだ。
「あ~ん」
俺は口をあけてライチを食べる。うん。甘味があって美味しい。
「こんなに毎日ノンビリと過ごして、飽きませんの? 外出くらいはなさったら?」
ミスラが俺の頭をお腹に乗せたまま言う。
「飽きない。美少女たちをパジャマ姿にしてゴロ寝する。こんな悦楽を捨てられる人間はいない」
「駄目ですわ、この御方……。何か外出の目的でも探して差し上げないとヒキコモリになりますわよ……」
ミスラが、心配な顔で言う。
「外出ですか? ご主人様が興味を持つかどうかは分かりませんが、近場に温泉があるそうです。今朝、侍女の方々に教えて頂きました」
ベルダンディが言うと、俺はガバッと上半身を起こした。
「温泉とは聞き捨てならない。ぜひ行こう」
「おお、ご主人様のヤル気が久しぶりに出たにゃ」
ルーナが俺の太もも上に後頭部を乗せたまま言う。
「ご主人様は温泉が好きですのね」
ミスラが言う。
当然だ。
俺は、元日本人だぞ。
温泉と聞いてテンションが上がらないヤツなど日本人ではない。
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