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童話集「下駄箱」

モーリィとアルベルト

作者: 星野紗奈

どうも、星野紗奈です(*'ω'*)


以前書いた童話を投下しておきます。

冬の童話祭はまた別の作品を書いて参加する予定です!

短めのお話なので気軽にお楽しみいただければと思います♪


それでは、どうぞ↓

 これは、そう遠くない昔のことです。ある山奥の小屋で、魔法使いのおばあさんと、モーリィというライオンと、アルベルトという少年が、仲良く暮らしていました。

 ある日、魔法使いのおばあさんはこう言いました。

「私はね、もうすぐ死んでしまうんだ」

「なんでわかるの?」

 アルベルトが不思議そうに尋ねると、おばあさんは笑いながら、「そりゃあ、私が魔法使いだからだねえ」と答えました。

「いいかい、よく聞いておくれ。私が死んだらね、ここらでかけた魔法が次第に解けていくんだ。毎日実がなるトマトは枯れて消え、町のことを教えてくれる伝書鳩はどこかへ飛び去り、モーリィはいずれアルベルトと話ができなくなる」

「ボク、アルベルトとお話しできなくなるの?」

 モーリィが悲しそうにそう尋ねると、おばあさんは「そうなんだ。すまないねえ」と謝りました。

「でも、私が死んでもね、お前たちはいきていかなきゃならない。アルベルト、お前は町へ行きなさい。私の知り合いの優しい農婦が、お前の世話をしてくれるはずだから。モーリィ、お前は向こうの山のふもとへ行きなさい。前に助けてやったクマが、今度はお前を助けてくれるはずだから」

 笑ってそう告げた日の夜、おばあさんは姿を消してしまいました。

 次の朝が来て、モーリィとアルベルトは一日中泣きました。お腹の減ったのも気づかないで、一日中わんわん泣いていました。

 それからもう一度朝が来て、モーリィは言いました。

「アルベルト、何も食べないと、ボクたち死んじゃうよ。ボクは木の実がなっている場所を知っているから、とってこようと思う」

 それを聞いたアルベルトは言いました。

「そうだな。僕たちはいきていかなきゃならないんだ。じゃあ僕は湖で水をくんでくるよ」

 帰ってきたモーリィとアルベルトは、貧相なご飯をいつもと変わらず楽しそうに、美味しそうに食べました。

「なあ、モーリィ。おばあさんはああ言っていたけれど、僕はモーリィと離れたくないよ。だから、これからもこうやって助け合いながら、僕たち一緒に生きていこう」

 アルベルトがそう語りかけると、モーリィはぱっと笑みを見せてこう返しました。

「ああ、アルベルト。ボクたち、バラバラになんてなってやるもんか」

 その晩、モーリィとアルベルトはお互いの存在を確かめるように、ぴったりと寄り添って眠りました。

 しかし、それから何日か経つと、モーリィとアルベルトはご飯にありつけなくなっていきました。低いところにあった木の実を全てとりつくしてしまったせいで、モーリィは食べ物を集められなくなりました。アルベルトは、木の実だけの食事のせいでやせ細り、水をくんでくることができなくなりました。

 日に日に弱っていく中、ある日の夕暮れ、モーリィはアルベルトにこう言いました。

「アルベルト、人間は動物の肉を食べるんだろう? なら、ボクの肉を食べてくれよ」

 それを聞いたアルベルトは、かっとなって言いました。

「モーリィ、お前は肉食動物っていうんだろう? お前こそ飢える前に僕の肉を食べなよ」

 モーリィはむっとして言い返します。

「ボクはそんな野獣みたいなことはしないよ」

「ああ、そうかい。僕だってな、お前を家畜みたいに扱う人畜生にはなりたかないさ」

 アルベルトはそう吐き捨てて、小屋から飛び出しました。モーリィは慌ててそれを追いかけます。しかし、走り出したアルベルトは途中で力尽きて、近くの原っぱの真ん中に倒れ込んでいました。それを見つけたモーリィは黙ってアルベルトのそばに座りました。

 しばらくして、アルベルトは口を開きました。

「モーリィ。僕は君と一緒にいきたいんだ」

「ああ、ボクもだよ。アルベルト」

 モーリィがそう返事をすると、アルベルトの目はだんだんと滲み、夕日の光をきらきらと反射させました。モーリィは尋ねます。

「なあ、アルベルト。人間は泣きたくなった時、こうやって寝ころんで空を見上げて、星を眺めるんだろう?」

 モーリィが寝ころぶと、アルベルトも同じように寝ころんで、こう答えました。

「ああ、そうだよ。なあ、モーリィ。ライオンもこうして星空を見上げるのかい?」

「ああ、見上げるとも」

「そうか、そうか」

 アルベルトが満足げにそう呟くと、モーリィとアルベルトはぴったりと寄り添って、静かな原っぱの真ん中で一緒に眠ったのでした。

最後までお読みいただき、ありがとうございましたm(__)m

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― 新着の感想 ―
[一言] 泣いちゃいました…。。 なんて美しいんだろうって思うのに目から水がぽろぽろと。ううー。 ふたりの気持ちがどこまでも離れませんように。
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