ー2話 読まなくて大丈夫なやつ
?章は?章なので読んでも読まなくても何も変わりません。おそらく…
文字数(空白・改行含まない):1364字
少女は夢の中でいい匂いに釣られ、ヨダレを垂らしたことに気づいたことで目をさました。
昨日、師匠から相手の瞳を見て感情を読み取るという内容の授業を受けた。
しかし少女は何ひとつとして理解できなかった、師匠は「そのうち分かる」と言っていたが、少女は何百年後になってもわかる気はしなかった。
「おはよう、セルシア」
「おはようございます師匠」
その少女の名前はセルシア、気がつくと森の中で迷子になっていたところを、少女が師匠と呼んでいる魔女に拾われ、それから共に暮らしている。
セルシアという名前は魔女から貰った名前であり、少女がその魔女を師匠と呼んでいるのにほとんど意味は無い。最近読んだ本に影響されて師匠呼びが流行っているだけだ。
「やっぱり昨日の授業はまだ分からないかしら?」
「うん」
師弟関係という訳でもないので、セルシアは魔女相手に敬語を使わない時もある。
「師匠、この後散歩してきてもいいですか?」
「今日は私もついて行ってもいいかしら?」
「?いいですけど……」
セルシアが朝食後に森を散歩するのはまれなことではなく、ほとんど毎日のように散歩している、その度に魔女に許可を得ているが、今日の返しは少し違ったもので、セルシアも少し戸惑いを見せたが断る理由もないので当然許可した。
「なにかあるんですか?」
セルシアは気になったので普通に聞いてみた。
「どうでしょう」
その返しに魔女はまともな答えを言わなかった。
セルシアは魔女の片眼を覗き込む、反対側の眼はいつも長い前髪で隠れていて見れないのだが、片方の瞳はいつ見ても綺麗な青空のような透き通った瞳をしている。
「?」
いきなり覗き込んできたセルシアに魔女はクエスチョンマークを浮かばせながらも、何かを察してセルシアを見つめた。
「やっぱり分かりません!」
「あらあら」
しかし答えは出てこなかった、師匠は「答えは散歩の時に」と言って皿を片付けた。
△▽△
目的地もなく進むセルシアに師匠は笑顔でついて行く、この後セルシアが見つけるであろう"あるモノ"に対しての反応を楽しみにニコニコしている。
二人で暮らしているツリーハウスから出発して五分ほど、そう遠くもない場所をうろちょろ散歩しているセルシアは、いつも通ってる道の一角、なにか景色が違うことに気づいた。
「……!!!!!」
それを見て、セルシアはとても驚いた、セルシアにとってはとても驚いたことではあるのだが、この世界の人達が見たら失神する程に驚くものである。
「ししししし師匠?!」
「なにかしら?」
目の前の景色にただ驚いているセルシアを眺めて森の魔女はさらにニコニコと笑っていた。
悪い笑いなどではなく、ただ純粋にセルシアの反応を楽しんでいるのだ。
「師匠……これって……」
まだ少しばかり程しか落ち着きを取り戻せていないセルシアは、自分の認識を確かめるべく魔女に聞いてみる。
そして返ってきた言葉は、セルシアを恐怖に落とすわけでもなく、逆に安堵するような言葉であった。
「神竜。この世の何者をも下に見えると言われる最強の竜、……でも今は随分と弱っている様子ね」
神竜、その姿は白を主とした青い空、緑の地、蒼い海、赤い火山、黄色の月、眩しいほどの太陽、その何もかもを取り込んだかのような眩しくて美しい姿に、セルシアはもちろんのこと、気配を読み取っていた森の魔女ですら見とれていた。