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呪剣で魔人は倒せますか?誰かを救えますか?  作者: 雪海
第1章『呪いの剣?証拠は?』
7/8

第7話【預言者と剣】

「待っていた……」




村長はそう言うと

僕達を奥の部屋に招き入れた……




「驚かせてすまなかったね…

私はこの村の村長ゴウ

君達はこの人形を知っているかな?」



村長は目の前のテーブルに

人形と呼ばれるものが2つ入った箱を

静かに置いた……





同じだ――


魔人が使うという文字が巻きついた人形……




「ここに来る途中で同じものを拾いました」



「ほう……してこれは何なのだ?」



白い顎髭を触りながら

じっと僕達の様子を伺っている……




「…分かりません」



「そうか……では何故

この村の民がいなくなったことを知っていた」



「村の人達が話しているのを偶然聞いて…」




「ほう……

お主は嘘をついているな」



村長は目を見開いて僕を見た――


ギクッ――バレてる…





「知っているのは私と蛇退治をした憲兵のみ」




そうか…


「あのおふたりは憲兵でしたか」



「変な旅の一行がいると報告が入ってな

村に入ってからずっと

監視させてもらっていた」



村に入ってからずっと……



「急に服を脱ぎ出す者もいるそうな…」



ギクッ―――



「いやん!」


おネエさんが嬉しそうに僕を見た…変態め



「民がいなくなったと村人が知ったら

混乱を招く

この事は極秘なのだ」



「わざと僕達に聞こえるように

あの会話をさせていたんですね……」



「その通り……

何か知っていそうな気がしていた

年寄りの勘と言うやつだ…」







全て仕組まれていたのか…




「ではこちらも聞きますが

いなくなったのは……貴方の奥様ですね」



「!!!!!

やはりお前達が犯人だな!」



やっぱりか……

あのおばあさん…

いやあの女性は…村長の奥さん




「妻をどこに隠したー!!」




先程まで落ち着き払っていた村長が

奥様という言葉を聞いた途端に

取り乱し始めた――




「ちょっとトーカさん!

大丈夫?あのじいさん…様子が…」



ミロクちゃんが心配そうに

僕の後ろから顔を出した……



「うーーん…

ミロクちゃんちょっと…」


僕はミロクちゃんにある事を耳打ちした…



大丈夫ではなさそうだ……けど

僕が言っていいものか……




「あの…村長さん?」



「妻は何処にいるんだ!無事なのか?!」




「ちょっと話を「何処にいるんだと聞いているんだ!!質問に答えろぉおぉおお!」




これじゃ話を聞いてくれないな…

村長の大きい声を聞いて駆け付けた憲兵達




「取り押さえろー!!」村長の掛け声で

あっという間に拘束されてしまった僕達…




「トーカ殿!我ハ自由デスゾ!」



…創造者さんは縄で縛れなさそうだ

それ以前に憲兵さん達不気味がって

触れようとすらしなかったな……



そしてこのタイミングで喋らないでくれ

これ以上混乱を招きたくないっ!





「…………」



「トーカ殿!無視カー!!」



……ごめん創造者さん…ごめんっ!!






「あーあ…捕まっちゃったね」


「ほんとねぇ…拘束プレイよ!

ってこらっ!シロちゃん!

捕まったふりだけでもして!」


「うるせぇな!妻妻妻ってよぉ!

ぶっ〇してやろうか!」




この方達は本当に自由すぎる……

物騒な事言わないで……

















!!!!!


「旅の御一行様…

村長の命で御命…頂戴します」



さっき村長の家に案内した女性が

いつの間にか僕の目の前に立っていた――





「主様お下がりください」




「ぐぇっ!」

ドンッ――ドシャァ……


僕はシロくんに襟首を掴まれ

後ろに放り投げられた――


主様の割には…乱暴じゃね?

イチさんとおネエさんが

僕の下敷きになっている……



「痛てーなシロ!てめぇ!」



「痛たた…

イチさん、おネエさん大丈夫ですか?」



「きゃあ!トーカちゃんが抱きついてきた!」



ぎゅうぅううう……


いや…抱きついてないし…

嬉しそうに撫で回すのやめて……

って2人とも縛られてたよね…??





キンッ――キンッ―――


女性とシロくんは戦闘を続けていた…が


速すぎ…全然見えないんですけど…






キンッ――キンッ―――




「ねぇねぇトーカさん…

戦いはシロくんに任せて大丈夫じゃない?」



「1人で本当に大丈夫なの…?」





キンッ――キンッ―――




「大丈夫だよ!

シロくんまだ武器使ってないし」




…………え??武器使ってない?


じゃあさっきから聞こえるこの音は

何がぶつかってる音なの??




もう一度シロくんを見てみるけど…

やっぱり速すぎて全然見えない……




「ミロクちゃん…

シロくんは今何の武器で戦ってるの?」



「トーカ殿!ソレハ「んー戦ってないね…

避けてるだけ」




「避けてる……?」




「正確に言うと爪で刀の軌道を変えてる」



爪!!!???

爪って…指先にもれなく付いてるあの爪!?




「……へ、へぇ……」



何それ…爪で刀の相手出来るもんなの!?






「……イチさん達もこんなに強いの?」




この方達は普通じゃないと思っていたけど…

色んな意味で

いつも想像を遥かに超えてくるからな…




「トーカ殿!ソレハ我ガ「んー強いんじゃない??」




……まさかの疑問形??



まぁ…確かに

この状況下でジャンケンしてるしな…

緊張感の欠片も無い……








「トーカさん…村長さん忘れてない?

早く話してあげた方がいいよ」



あ……!

すっかり忘れてた……



村長はまだ発狂して騒いでいる……

後ろから憲兵さん殴ってるし…




「なかなか話を聞いてくれそうにないな…」



……どうしようか…



「仕方ないなぁ…」



ミロクちゃんは溜息をついて

数珠を取り出した――

…みんなギッチリ手首縛られてたよね…??

出来れば僕のも解いて欲しいんだけど……





ジャラジャラ………



「さぁねんねの時間だよー」



ミロクちゃんの両目が怪しく光ったと同時に


ドサッ…ドサッ…ドサッ……




次々に憲兵さん達が倒れていく…

よく見てみると


鼾をしながら寝てる……





「憲兵さん達寝たよー」



「寝たよーって…」


嘘だろ…こんな簡単に眠らされるの!?








「………………

創造者さんも寝てるんだけど……」



黒い火の玉が床にデロンと……



「え?ちょっとうるさ…間違えちゃった…

あはは」



あははって…

今ばっちりうるさかったって言ったよね




「広範囲になるとさぁ…対象物の認識がどうしても遅くなっちゃって…そこから術発動までの間にも認識してるんだけど…何か面倒くさくなってきちゃって…適当になるの」





……ちょっと言ってる意味が分からない

要は適当に眠らされるってことだな…




「……お前達っ!」



怒り狂って顔を真っ赤にした村長は

プルプル震えながら僕達を見ている……





「トーカさんまた村長忘れてたでしょ!」




あ!………うん

いやミロクちゃんが

よく分からないことするからだよ…




「村長さん「何だこれは!憲兵起きんかっ!」



あーあ…今度は憲兵さん達を怒り出した…

みんなぐっすり寝てるけど……





「…何でこんな事が出来る!?

お前達何者だっ!」




「「「魂です!」」」



いやいや…確かに魂だけど……














「村長さん…ひとついいですか?」



村長さんは僕を見ると

ふぅと息を吐いて椅子に腰掛けた……



「何だ……」




「村長さんの奥様が

いなくなった件ですが……」



村長は両手を組み顎を乗せ目を伏せた…
















「奥様自ら出て行ったようです…」



ガタンッ――

「…なんっだ…と!?」


村長は驚いて椅子ごと倒れそうになっていた





「確かにー

私だったらこんな乱暴じじぃ無理」



乱暴じじぃって……




「…………そんな筈はないっ!」




「……僕のことを信じてくれなくて結構です

奥様は隣村にいますので

会いに行ってみてはどうですか?」




「…………」



村長さんは納得していなかったようだが

隣村に行く支度をしていた…

信じてくれたのかな…?





「マジかよ!ただの家出!」


「奥さんも出ていくなんて…

もう限界だったのかしら?

……はっ!分かったわ!

隣村に好きな殿方が出来たのよー!

それで!あーしてこーして……」




………もう何も言うまい








「トーカさん…

早速バレちゃったけどいいの?」



…………?



「もしこれでトーカさんの言う通り

隣村に奥さんがいて自分で出て行ったことが本当だと分かれば…」



「うん…まぁ仕方ないよね…

僕も確証はないけどね」




「そしたらトーカさんは……預言者だね」



預言者………なんかかっこいいな






「おい!そろそろ行くぞ!」



「そうですね…」




「人形確認出来ただけでも

よしとしましょうか」




「魔人の仕業かと思ったら…

まさかの家出かよって感じー」













「……お、お待ち…下さい」



さっきまでシロくんと戦っていた女性が

片膝を着いて立ち上がろうとしている――





「へぇーお姉さんやるね…」



ミロクちゃんが

口元を袖で隠し妖しく笑った――








「………シロ…様」





「「「「様!!!!??」」」」




「…まだ…勝負は………

いえ……そんな事は、もう良いのです

私は……貴方様をお慕い申しております」





はぁ!?

戦闘中に何があった!!?!?





「シロ…やるじゃねぇか!」


「ほんとねぇ!うふふ」


「…こんな無表情の何処がいいんだ!?

しかもまだお子様だろ!」


「このお馬鹿っ!11歳よ!立派な男よ!」


「まぁ色恋沙汰に歳は関係ねーよな!」




ニヤニヤしながらシロくんの肩を組む

イチさんとおネエさん…


か、絡まれたくねぇ………






「…………………」


シロくんは無言のまま……







「…また…会えますか?」





「…おい!何か喋れよ!失礼だぞ!」


イチさんがまともな事言ってる……











シロくんはチラリと女性を見た……




正直羨ましい………


僕…15年間生きてきて

こういうの…一度もない………











「………たぶん」




その言葉を聞いた女性は

頬を赤らめながら下を向いた………




くそっ…何だよ…ほんと羨ましいな………








「っておい!名前くらい聞いて!

シロくん失礼だよ!」



さっきから失礼だと周りに言われて

シロくんもどうしたらいいか

分からないようだ……


そりゃそうだ…僕だったら…

……どうしたらいいんだ?









「………春華(しゅんか)と申します」










「……………じゃあ…また…」



シロくんはふいっと顔を背けて歩き出した…




「春華さんまたねー」



袖をひらひらさせるミロクちゃんの後ろで

僕は軽く頭を下げた――



「どこをどうしたら…

この短時間で対戦相手を好きになるんです?」



「トーカちゃん

時間なんて関係ないわ…

恋に落ちる瞬間なんて一瞬あればいいのよ

刃を交えて芽生える恋…

自分より強い男の存在…

それもまた自然の摂理よね…」



…ちょっと意味が分からない

まず刃交えてないし……







村長さんの家を出るともう夕方だった――



「これからどうしましょうか」



この村で一晩過ごすか隣村まで進むか………



「隣村はここからどのくらいなの?」



「本当に隣りです」



「村長さんも気になるし…

見に行っちゃわない??」




完全にからかってるな……

でも僕が見た光景が当たっていたかどうかも

確かめたいような――




「行ってみましょうか…

仲直り出来てるといいんですが…」







「オイ!オーイ!!」



……??何だ???





「ウオォオオオオイ!我ヲ忘レルナ!」



はっ!創造者さん!




「コヤツラナラトモカク…

トーカ殿マデ……」



火の玉が今にも泣き出しそうに

プルプル震えている…



「創造者さん…すみません」



「寝てるのが悪いんだよー」



「ミロク!オ前ノセイダロウガッ!」



「えー

トーカさんなんか無視もしてたよ!」



ギクッ―――



「ウオォオオオオ…トーカ殿……」




あわわ…

「すみません!わざとじゃ…」




創造者さんを必死に宥めている間に

隣村まで来てしまった……



「近っ!これがほんとの隣村だな!」



「村長さん何処かしら??」






あの時僕が見た光景は―――



「緑の屋根の家ですね…」



辺りをキョロキョロと見渡す――





「あれじゃない?」



ミロクちゃんが指さす方を向くと

確かに緑の屋根の家があった――



当たってる………

そうだ!この光景を見た気がする……






「当たってるじゃねーか!」



「ここに村長さんがいるのね!」



「嫁に愛想つかされてたらおもしれーな!」



「何言ってるの!

これはただの家出じゃないのよ!

駆け落ちよ!駆け落ち!」





もうこの二人は放っておこう……











「村長ーーー!大丈夫かー!?」



いや…何家の外で大声出して叫んでんの?

イチさん…あんたが大丈夫か!?






ガチャッ―――



「……お前達っ!何故ここに!?」




「村長さんが心配で来てみたのよ」




「…そうだったか…まぁ入りなさい」




村長に促されるまま僕達は家に入った…




「奥様には会えましたか?」




「あぁ…暫く家には帰らないと言って

部屋に閉じこもってしまった…」



村長さんはしょんぼりしながら

困った様子で僕達を見た……




「当たっていたな…」



「…そうですね」


嬉しいような…まだ信じられない

複雑な心境だ……




「嘘だと思っていた…すまなかった」



「それはそうですよ…」


僕自身もやっと確証が持てた所だ…














「ひとつ聞いてもいいか?」




村長さんは静かに僕に問いかけた…












「お主…

魔法は使えるのか?」





????

魔法………?




「いえ……

一度も使えたことはないですけど」




「そうだろうな…」




「………?」

村長さんは何が言いたいんだ…??










「……使えないならいい」







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