第6話【始まりと剣】
取り敢えず僕達は
次の村で休憩することにした――
「おい創造者!
さっきから何で黙ってんだよ!
まさか死ぬのか「死ナンワ!!!」
………喋った
「何だ元気じゃん」
「ウム…ソウデモナイ」
………確かに火の玉が気持ち小さいような…
何かあったのかとみんな問い詰めたけど
創造者さんは「確信ガ無イ」としか言わなかった……
そして村の外れの木の下で休憩していた時
村人達の会話が聞こえてきた――
「また布の人形か…」
「あぁ、
全く誰だよこんなイタズラするのは」
「イタズラにしては手が込みすぎてる
何かの前触れか…」
「やめろよ!この前もあったじゃねぇか…」
会話している村人達の顔がどんどん険しくなっていった……
「ちょっとトーカちゃん
あの人達の話詳しく聞いてきてちょうだい」
「…はい」
確かに何か知っていそうだな…
「…あの」
「「ひぃぃい!!」」
…………え!!?僕何かしたか?
村人達は僕を怯えたような顔で見ている
???一体どうしたんだ?
「…な、何だい…少年」
顔も引き攣っている……
「…さっきの話詳しくお聞きしたいのですが」
「…さっき?あぁ布の人形のことかい?
さっき村の入り口に気持ち悪い黒い蛇がいてね」
「…黒い蛇ですか」
「この村では蛇を見ると
不吉な事が起こる前触れだと言われているんだよ」
「なるほど…」
「その蛇を退治した後に
布の人形が落ちていたんだ」
「見たこともない文字が巻きついていて
気持ち悪いやつでよ
俺の犬がその人形の匂いを嗅いだ後に
俺に噛み付いてきたんだよ
お陰でシャツがボロボロだ
この前流行り屋で買ったイカしたシャツだったのによー」
!!!…流行り屋
「流行り屋って…店主がおじいさんの?!」
「なんだ知ってるのか!
そうそう変な笑い方のじいさんだったから覚えてるよ
流行り屋なんて初めて聞いたしな!」
「いつそのシャツを買ったんです?」
「んーと、確か4日前だったな」
……4日前
僕の村に来る前日か………
流行り屋…偶然か…?
あのじいさん何か知っているのか?
「今布の人形はどこにあるんですか?」
「え?村長のとこだけど…」
布の人形…
僕達が見たのと同じだろうか……
ズキッ――ズキッ―――
まただ………
痛み出した左手を右手で押さえつけた…
「…………………」
「…だ、大丈夫かい?」
「前触れ………」
「…は??」
「この村で誰かいなくなったとか…?」
「!!!…何でそれを…」
「おい!まさかお前がやったのか!?」
「…いえ
さっき偶然村の人達が話しているのを
聞いてしまって…」
「……………何だそうだったか
疑って悪かったな」
「いえ…ありがとうございました
ではお気をつけて」
………………………
………………………
……………ただの妄想じゃなかった
この痛みと共に見える光景――
僕は……
「トーカちゃん?どうかしたの??」
「…いえ、何でもないです」
僕はさっき村の人達から聞いた話をみんなに話した……
「…村長が持ってんのか
確認する必要があるな!」
「もし私達が持ってるのと同じ物だったら
また魔人の仕業ってことになるね」
「あと流行り屋のことも気になるわね…」
「あぁ!じじぃをとっ捕まえるか」
「でも今どこにいるのか分からないし…
皆さんは剣と指輪が売られていた時の記憶はないんですか?」
「「「無いなぁ」」」
……そんな声を揃えて言わなくても
「シロくんは?」
「申し訳ございません…」
「無クテ当然……
魂ガ肉体二転移出来タノハ
トーカ殿ガ剣二触レタカラダ」
え?僕が剣に触れたから……
「創造者さん…
僕にも何か能力が付与されることって
有り得ますか?」
「…!?
何カアッタノカ??」
「…まだ信じられないのですが
走馬灯の様に光景が走り抜けるんです
上手く説明出来ないですけど…」
痛みを感じる時だけ……
頭の中が何かに支配されるような感覚……
「まさか!走馬灯の光景が
実際に起こってるってことなの?」
「…まだ何とも言えません
その光景が
過去なのか未来なのかも分からない」
「もし本当に視えるとしたら……」
おネエさんは焦ったように僕の肩を掴んで揺すった
「ダメよトーカちゃん!
この能力は他の人に知られたら
必ず利用しようとする輩が現れるわ!」
「…そんな、何の確証もないのに……」
おネエさんは真剣な目をして聞いたことも無い低い声で
さらに強い力で僕の肩を掴む
「トーカちゃん…人間は醜い生き物なの
手段を選ばない者なんて沢山いるわ!
いや!全員よ!全員!もうみんなよ!」
痛い……あれ?
「おネエさん…記憶思い出せたんですか?」
人間にそんなに恨みでもあるのか…
何だかそんな口振りだ
「あぁ!
さっきね!戦闘態勢に入った時に身軽になるしパンツも脱いでみようかなって思って
そこで理性が働いたのかしら?
人間だった時の記憶が少しだけ思い出せたの!」
「おまっ!あれわざと脱いだのかよ!」
なんつー思い出し方……
ミロクちゃんの目が
怖すぎる………………
「という訳だからトーカちゃん!
絶対私達以外に喋っちゃダメよ!」
…どういう訳だよ
「ところで…
ひとつ質問してもいいです「何ダトーカ殿!」
相変わらず早い…
「皆さんは
どうやって敵を倒すんですか?」
「…えっと…私はこれで」
ミロクちゃんは水晶の玉が沢山付いて輪になっているものを取り出した――
「綺麗だね!」
水晶の玉はキラキラと太陽の光に反射して輝いていた…
「でしょ?これは数珠って言うの!」
「数珠…」
「何でか最初から持ってたよ」
…最初から?
「俺は素手だ!
どうしてもって時は必殺アイテムあるけどな」
自慢気なイチさんの顔を見ながら
僕は冷静に考えてみる……
イチさんは素手で
目が沢山あるネズミを倒したのか……
僕には絶対無理だ――
「ワタシは暗器とかも使えると思うわ
身体が覚えてるっていうか…
木の枝とか持って構えると
興奮して高揚してしまうのよねぇ」
おネエさんは落ちていた木の枝を拾って
構えてみせた
「あぁーん!これよ!これ!」
………知らないよ
「私めは忍ぶ者
残影という双剣を所持しております」
シロくんは何処に隠し持っていたのか
シロくんの身丈ほどある巨大な双剣を出した
すぐ隠してしまったので一瞬しか見えなかったけど
硝子の様に透き通る刀だった――
「あの…もうひとつ聞いてもいいですか?」
「何かしら?じゃんじゃん聞いて!」
おネエさん…
いつまで木の枝振り回してるんだ
イチさんと本気で戦おうとしている――
おネエさんとイチさんの姿は見えない
つまりこの状況…
「これって周りから見たら
木の枝だけが動いてるってことですよね…?」
「トーカ殿…」
創造者さんが珍しく静かに話し掛けてきた
「な、何でしょう…?」
嫌な予感がする………
「モシカシタラ我々…見エテルカモ」
「「「「はぁぁあ!!?」」」」
シロくんは知っていたとばかりに
小さくため息を吐いた……
「だから村人達は
僕を見て顔が引き攣ってたんですね……」
「そうだったの!?
トーカさん可哀想……」
「ミロクちゃんはともかく…
あの2人と木の影と同化してる少年…
そして黒い火の玉は……」
「流石にヤバいよねー
一緒にされたくないわー」
急いで服を着ているおネエさんに
ミロクちゃんと哀れみの目を向ける…
「いやん!何見てるのよー!」
……いや嬉しそうだし
そして隠す気ないだろ……
「おら!お前ら歳上を敬え!」
叫びながら僕達を本気で追い回してくるイチさん…
創造者さんはオロオロしながら隠れ場所を探してる……
「あは!あははははっ!」
「トーカさんが…笑った」
「へ?」
……笑ったって?
「トーカちゃぁぁあん!!」
凄い勢いで飛びついてきたおネエさん
筋肉痛い…硬い…
てか何でまだ服着てないんだよ…
「何だよぉ!お前笑えグズッ…
よかっグズッ…
うぉおおおおおお!!」
…なんて??
「僕…普通に笑いますよ?」
「一応心配してたのよ
突然剣の器とか言われるし…
変なのが沢山出てきて
誰と話しててもクスリともしないし…
私達迷惑かけてるし…」
シュンとしているおネエさん
こんな時に不謹慎だけど
顔はかっこいいんだよな……顔は
「心配掛けてたんですね…すみません」
知らなかった…
確かに色んな事があり過ぎて
笑えてなかったかも
それに妹に会いに行く時は
罪悪感からか上手く笑えなくなる……
周りを見渡すと
みんながホッとしたような顔をしているから
何だか僕もホッとした気持になった…
「旅の御一行様……」
!!!!!
誰だ…?
こんなに近くに来ていたのに
誰も気が付かなかった――
「村長がお会いしたいと申しております…」