第4話【魂達と剣】
「……あの、創造者さん?」
待ってましたとばかりに黒い炎が揺れる――
「ナンダトーカ殿」
「魂を肉体化したって…どういう事ですか?」
僕は先程アスカさんが言っていたことが気になっていた…
そもそも何故剣から魂が出てきたんだ?
と言うか……
何で僕の名前知ってるの??
「フッ……簡単ナコトヨ
怨ミノ強イ魂ヲヨビヨセタダケダ」
「……怨み?」
「ウム
魂ノ怨ミト幾千ノ人ヲ斬リシコノ剣ノチカラデ魂カラ得タ情報ト知識ヲヨビヨセタ
コレニヨリ魂ガ集結シ肉体ヲ構成スルモノトナッテ△÷□※×………」
…話が長すぎて訳分からなくなってきた
「…つまり
強ーい怨みを持った魂が
他のそうでもない魂達が集結して構成された肉体と呼ばれるモノ?
に乗り移ったって…こんな感じ?」
イチさんの後ろからひょっこり顔を出したミロクちゃんが見事に駄弁してみせた
「チッ…後ろを彷徨くんじゃねーよ」
悪態をつきながらミロクちゃんの頭を撫で回している……イチさん優しいな
「…ウ、ウム」
創造者さん…もっと喋りたかったんだろうな
「じゃあワタシ達は
怨みの強ーい魂だったってことなのかしら…
んー全然記憶にないわね」
「…俺は少し記憶があるぜ
毎日鍛えて鍛えて走ってた気がする…」
……ただの筋肉バカ………
「私は魂が集結した時、何かトラブルがあったみたいだよ…ほら」
ミロクちゃんが指をパチンと鳴らすと
「あぁん?何この辛気臭くて狭苦しい部屋!
何よ!私の顔になんか付いてる訳!?
ジロジロ見てんじゃねーよ!!」
……………………え?誰?
パチンッ――
「…てへ!二重人格ー
もう1人は20代のお姉さんかな?」
いやいや怖すぎる……
もう1人は、20代のキレキャラだと?
「シロちゃんは?記憶とかあるのかしら」
……プイッ
「んもう!
そっぽ向くシロちゃんもかわいいわぁ」
アスカさん完全に無視されてる……
「…あの、
シロくんは何か知ってるんじゃないかな」
僕はシロくんが何か知っているような気がした何故なら……
「もう1人のミロクちゃんが出てきた時から
瞳がブレブレだよ」
ギクリとしたシロくんと目が合う――
「…さすが主様
私めのことなどお見通しでしたか…」
「「「喋った!!!」」」
…………ん?主様?
「…えっと、僕はきみの主じゃ」
「いいえ
貴方様は剣の器です」
…………剣の器
さっき創造者さんも言ってたな
「それは、どういう……」
そう言いながら創造者さんを見ると
早く話したそうに炎をグラグラさせている…
「…話ハ長クナルガ……「トーカは剣に選ばれたってことだよ」
…ミロクちゃん喋らせてあげて……
「…でも僕にはなんの力もないし…」
「…すみません
私めもそこまでしか存じ上げません」
そっか……
この剣に選ばれたと言われても……
「こうやってワタシ達が出会えたのも
剣のおかげってことね」
にこりと笑うアスカさんは
記憶がないからか分からないけど
不安そうにも見えた――
「…なぁ、どーでもいいんだけど
何で俺ら肉体化したんだ?」
いやそこどーでも良くないよ…
「…皆さんは、仇討ちにでもきたんですか?」
「…仇討ち……
そうね!ワタシを殺した奴くらい知っておきたいわ」
「うんうん!私のような幼気な少女を殺すなんてどんな奴か見てみたい!」
アスカさんとミロクちゃんの瞳が輝く――
「俺よりも強い奴ってことだよな!
そりゃー興味あるぜ!」
イチさんは親指で腕立てしている
…何やってんだ……
「…………」
シロくんに視線を合わせてみるが
何も言わずにこちらをじっと見ている…
感情は伺い知ることは出来ない…か
「…どうやったら知ることができるんだろう」
その、皆さんの末路…
過去にタイムスリップなんて物語の話だし…
いや、既に物語じみた事が起きている
もしかしたら…
「トーカ殿…
剣カラ何カ伝ワッテ来ナカッタカ」
「…え??」何かって??
「例エバ…剣ノ記憶」
記憶――――――――――
ドクンッ――ドクンッ―――
痛い――
な、んだ…これ――――――
「トーカちゃん?!トーカちゃん!!」
「はっ!!」
「トーカさん大丈夫??
どうしたの?手痛いの??」
心配するアスカさんとミロクちゃんの声で我に返った……
何だ………またこの脈打つ感じ……
ボーッとしている間
走馬灯のようなものが見えた気がした――
これが…剣の記憶なのか――
剣の記憶というより…
剣の中の魂達の記憶
と言った方が正しいのかもしれない――
少なくともここにいるみんなの記憶が
断片的にほんの少しだけど
見えた気がした――
まだ頭の中で整理出来てない……
ただの僕の妄想でしかないのかもしれない…
まだみんなに言うには
確信がなさすぎる……
「……ちゃん?トーカちゃん?!」
気がつけば僕の肩を掴みグワングワンに揺するアスカさんが目の前に見えた
「ぼーっとしちゃって!どこか調子悪いの?」
「……大丈夫です」
「なぁ、どーでもいいんだけどよ
この村の奴らは何で武器を持ってねぇんだ?」
イチさんは窓の外を眺めながら不思議そうに
道行く人々を見ている――
「どうしてって…
もう武器を持って戦う時代は終わったんですよ」
「…………マジかよ」
「でも、魔法ならまだ使える人達がいますよ」
「ま、魔法!!!」
ミロクちゃんは目を輝かせて興奮している
「この国で魔法が使える人達は貴重な存在で
僕の妹もその1人なんです
都市の学校に行って勉強でき
おまけにお金も貰える
一見待遇が良いように思えますが
何らかの危機が迫った時身を呈して国を守らなければならないと決まっています」
…そう、妹は自分の意思など関係なく
都市へ行くことになった
僕は…
何も言えなかった……
ただ妹が都市へ行くのを見送っただけ――
「そうだったの……
妹ちゃんは魔法士なのね!
でも今は平和な時代なんでしょ?
なら心配いらないじゃない」
おネエさんの言う通りだ……
何も心配いらないと妹も言っていた
国の意向に逆らえる訳がなかった…
母さんも僕も……
「そうですね」
「おい!辛気くせぇ顔すんなよ!
今から死ぬのかてめぇは!」
イチさんは僕の頭を撫で回しながら舌打ちをした……
「主様のお望みとあらば
この国を滅亡させることもできるかと」
いや…目が真剣すぎる……
本気だ………
「いやいやシロくんそれはダメっしょ」
バシイィィ――
ミロクちゃんが笑いながらシロくんをわりと本気でどついた
「そうよぉ!物騒なこと言わないの!
まぁワタシなら?気に食わないヤツの1人や2人すぐ地獄に送ってやれるけどね♡」
この魂達………怖すぎる……
ふと創造者さんに目を向けると
今にも家具に燃え移りそうな勢いで揺れている
「あ、あの……創造者さん?「何ダ!??」
返事早っっっ!!
「何か言いたいことがあるんじゃ…」
「フフフ…ハハハハ!!
ヨク分カッタナトーカ殿ォ!」
いやいやいや
ここにいる全員気づいてたよ?
みんなガン無視してただけだよ?
「デワ話ソウ!
ソナタラ魂ハ普通ノ人間ニハ見エヌゾ」
……??何と?!
「えと…肉体化したんじゃ……」
「ウム…
肉体化シタトテ所詮魂ノ寄セ集メダカラナ」
「…チッ
肉体化っつーから…なんだよ人間になれたって訳じゃねーのかよ!」
「使えねー
私も期待してたんだけどなー」
……創造者さんかわいそう
「肉体化ハ肉体化ダッ!
姿ガ人デアロウ!!!」
「ふーーん…」
「…チッ」
「うふふ」
「……………」
………創造者さんかわいそう
「…じゃ、じゃあ皆さんも行きます?
妹に会いに行くんですけど…」