第3話【自己紹介と剣】
「…んーー」
トーカは眩しい朝日の光で目が覚めた
……そうか
昨日疲れて寝ちゃったのか
カーテンの隙間から漏れる朝日が
チラチラと顔に当たり目を閉じる――
ドクンッ――
「…っつ!!」
まただ――
右手から昨日の脈打つ違和感がする
そうだ!剣は……
隅に立て掛けた剣をカッと見ると
トーカは自分の目を疑った―――
「………誰?」
「オドロカセテスマナイ」
「…ひぃっ!!」
「ワタシノ名ハ創造者…
ワケアッテココニ参上シタ」
……???
何でこの火の玉喋ってんの?
え?しかもカタカナ?
?だらけの僕は開いた口が塞がらない
「理解ニクルシムダロウガ聞イテクレ」
「…は、はぁ」
「ワタシハ剣ノナカノ魂…
コノ剣ニハ魂ガヤドッテイル」
何言ってんだろう……?
剣の中の魂が出てきたなんて
本でも読んだことないぞ………
「…それで、僕に何か御用ですか…?」
「ウム、貴方ハ器ナルモノ…」
「…器???」
「剣二選バレタ者…」
「…???
すみません…理解できません」
「ワタシモワカラナイ…」
いや何でだよっっ!!
「…えっと……」
「コノ剣二触レタ時…」
あぁ!あの脈打つ感じの違和感のことか!?
「剣ガ光輝イタダロウ…」
…………いや全然、寧ろ
「…全く
キラリともしませんでしたけど…」
「ソンナハズハナイッ!」
何で怒ってる?!
「本当ですよ…」
「………
デハオマエハナンダ!」
僕が聞きたいよっ!!!!
「……ハァ」
今ため息ついたよね…?
火の玉ため息ついたよ
「…あの、人違いじゃ…」
「ソンナハズハナイッッッ!!!」
何なんだよっ!!
何で僕が怒られるんだよ!!
「………………」
「………………」
「はいはい2人共!その辺にしなさいな」
僕と創造者とやらの沈黙を破ったのは
また知らない声の知らない奴だった―――
「…誰ですか??」
「あはっ♪」
………………また意味分かんない奴増えた…
「ワタシはアスカ
お姉さんって呼んでね!」
………え
「どう見ても、おとk」グエッ―――
「お・ね・え・さ・ん」
「…ゲホッ…ゴホ…す、すみません…」
力強っっ!!
すごい速さで首締められたんですけど…
オネェさん………
「創造者さんたら、お話しが下手よ!」
「………何故ダ」
「ごめんなさいねトーカちゃん
この創造者さんは魂に肉体を転移させることに頭使いすぎてイカれちゃったのよ」
…今サラッと凄いこと言ったよね
魂を……何だって??
それよりも……………気づいてしまった
何で目を向けてしまったんだ僕!!
変な汗が背中をツーッと流れた――
「………あの…それよりも
あそこに立ってる方々も…その…
魂さん達です…よね?」
失礼のないよう気をつけなければならない
また首を絞めあげられるかもしれないし…
「あら!気づいてたのね!」
いや…気づかないわけないだろ…
この狭い部屋にあと3人も立ってるんだぞ…
また変な汗が額から流れて頬を通り
ポタリと床に落ちた……
汗が床に落ちるまできっと一瞬の出来事なのに
僕には汗の粒が鮮明に見え
重力で変形しながら落ちていく様まで見えた
そうして床に落ちて潰れるまでの時間が
とてつもなく長く感じた―――
「チッ…」
怖そうなお兄さんが1人―――
さっき僕が床に落とした汗を拭き取った――
それはそれは凄い速さで………
「……どうも」
女の子が1人―――
ニコニコしているが何だか瞳の奥が邪悪に光っているのは、きっと気のせいだろう…
「……………」
少年が1人―――
何も言わずこちらを静視している…
微動だにしないで…怖すぎる……
「嫌だわ!みんな無愛想ね」
「あ?うるせぇな!」
オネェさんに悪態をつきながら
今度は僕の靴を目に見えない速さで磨いている………
間違いない!このお兄さんは超絶優しい!
そして言動と行動が激しく一致しない…
「…イチさん。今日も優しい。きゅん。」
……あのお兄さんはイチさんと言うのか
女の子は目をキラキラと輝かせて僕の靴を磨くイチさんの、お尻を凝視している……
「ほらミロクちゃん!
あんな奴の尻なんて見てたら目が腐るわよ」
「えー!
イチさんのお尻見たい!お尻見たい!」
「ダメよ!見るならワタシのにしなさい!」
「嫌だよぅ…そんなデカくてゴツイのー
綺麗な曲線と無駄のないラインのお尻がミロクの好みなのにー」
「まぁ!なんて失礼な子!」
…何だこの会話
チラッ――
……………………
あの無口な少年は相変わらず僕を見ている…
何だろう…僕は獲物か何かか…
「…それよりもアスカさん
シロくん…いいの?ずーっと見てるよ」
「…………ホントね!
仕方ないわ…シロくん獲物からは絶対に目を離さないもの」
「えー食い散らかした後のお片付け
ミロク大変だからイヤー」
…やっぱり獲物だった
…食い散らかすって何を?人を??
…………………………
「…た、食べないでほしいのですが…」
シロと呼ばれる無口な少年に
恐る恐る話し掛けると
灰色の瞳が僅かにこちらを向いた―――
あれ?僕を見てたんじゃない……
じゃあ一体何を………
…あぁ、君も尻か―――
磨き上げるたびに小刻みに揺れる尻か…
よーく目を凝らすと凄い速さで瞳が左右に揺れてるね……
速すぎて止まってるように見えたよ…
「…尻ですか」
「何故わかった…」
「「「シロが喋った!!!」」」
一気にシロに視線が集中する―――
「…何だよ喋れるんかいバーカ!タコ!」
シロくんに悪態をつきながら抱きつき号泣しているイチさん…
ミロクちゃんはまだ尻から目を離さない――
そして創造者さん……
そんな存在感の塊みたいな黒黒しい火の玉なのに
影が誰よりも薄いのは気のせいだろうか…
「さ、さぁみんな!
そろそろトーカちゃんに自己紹介しましょうか!」
「…いえ、大丈夫です」